Fate/alternative   作:ギルス

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ーーソラは、真っ黒に焦げた太陽に侵され。
大地は、赤々と舌舐めずりする炎に満たされ。
僕は…絶望を知った。

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これはFate/staynight、及びFate/GrandOrderの二次創作です。
捏造設定、独自解釈、オリキャラなどが入る可能性があります。

また、原作をなぞる展開、演出上止むを得ず原作からの引用文が入る事があります。

それでも構わないという心の広い方のみ、先へとお進み下さい。
無理!という方にはブラウザバックを推奨致します。

士郎とぐだ子を軸に物語は展開します。

現在判明している正史との相違点。

◇ マスターは衛宮士郎では無く、ぐだ子。
◆ 切嗣は死が確定しておらず、行方不明。
◇ アルトリアは召喚されず、バーサーカー。
◆ バーサーカーがクー・フーリン・オルタ。
◇ アインツベルン陣営はセイバーを召喚。
◆ ランサーが、近代中国の英霊らしい。

また、ぐだ子はカルデアでの事は覚えていませんし、そもそも並行世界の同一存在です。
しかし、同じ人間ではありますから…何かはある、かもしれません?

ぐだ男は………。

それではどうぞ、拙い作品ではありますがお楽しみ下さい。



第6話 『絆/傷の名』

 

炎。

真っ赤に灼けた空が、今にも降ってきそう。

喉はカラカラに涸れて、声を出すたび痛みが走る。

 

助けて。

自分だけが助かって、それでいいの?

死にたくない。

無理だよ、だって君達はーー

 

もう、死んでいるじゃないか。

 

灼けた空が照らし出す、真っ黒に炭化したヒトだった、者達。

中にはまだ、動いているものもあったが…

太陽すら真っ黒に焦げ付いてしまったこの空の下では…生きている方が奇跡だった。

 

ああ、でもね、きっと僕はーー遠からず君達の仲間になってしまうんだ。

 

ああ、せめて…僕がかわりに、声を出さなきゃ。

 

「ああーー苦しいなあーー。」

 夢は、そこで途切れた。

 

***************ーー…

 

ーーなんて、夢。

陰鬱にも程がある。

 

「おはよう凛、寝覚めは如何かね。」

 

「ーー夢見が悪い、最悪。」

 

ふわり、とダージリンの良い香りが鼻腔をくすぐる。

目を覚ませ、と言う事か。

 

「おはよう、アーチャー…」

 

きっと今、私は酷い顔をしている。

サーヴァントとはいえ、異性に見せたい顔では無い。

 

「…顔、洗ってくる…」

 

「ああ。」

 

カチャカチャと、私が一息に飲み干した紅茶のカップを片付けるアーチャーを置き去りにして、バスルームへ向かう。

 

ああ、いっそこのままシャワーも浴びようか。

と、考えてスルリと寝巻きを脱ぎ捨て、寝ぼけまなこで浴室へ。

熱めに設定したシャワーを頭から浴びて、意識を覚醒させる。

 

ーー少しは夢の残滓が吹っ切れる、と言う様に。

 

「凛。」

 

突然、脱衣場からアーチャーの声。

 

「ひゃっ、な、なな、何よ!?」

 

思わず胸を掻き抱くようにして脱衣場のほうを見る。

磨りガラスだから見えはしないが、しかしシルエットはわかるだろう。

 

「シャワーを浴びるなら着替えくらい持って行きたまえ、裸でうろつくつもりか、君は。」

 

「あ」

 

…うかつ。

今迄一人だったせいかそのあたりまったく警戒していなかった。

 

「着替え、置いておくぞ。」

 

脱衣カゴにパサリ、と衣服が置かれる音。

僅かに開いてカゴを見れば、制服一式が…下着も含めて(、、、、、、)

置かれていた。

 

「ーーちょっ、アーチャーッ!!」

 

 遠坂の屋敷に、賑やかな声が響く。

 これまでなかった空気。

 悪い気はしない。

 

「まったく…なんなのよあの駄サーヴァントッ…後で後悔するほど面倒な作業させてやるからっ…!」

 

はあっ、と息を吐き出しながら脱衣場に出て、着替えを乱暴につかみ、慌てて着替える。

髪を乾かし、戻る頃にはーー

 

食卓には朝食が並んでいた。

ルッコラとブロッコリーのサラダにスクランブルエッグ、トーストに紅茶。

どれも完璧な仕上がりである。

 

「ーーこんな材料あったっけ…」

 

「何、君が寝ている間に少しね、コンビニでも今はなかなか良い食材が揃うものだな、割高ななだけが玉に瑕だが。」

 

「え…お金は?」

 

「財布を置いたままにするのはあまり感心しないぞ、凛?」

 

ーー確かに…財布はリビングに置いたままにしたけど…だって、この屋敷に通常の侵入者とかあり得ないし。

二重三重の魔術防御と結界、罠の宝庫なのだ。

侵入した時点で命の保証すらできない。

ーーそもそも、侵入する前に人払いの結界に引っかかるから常人が侵入すること事態があり得ないのだが。

 

「勝手に使わないでよ…もう…。」

 

「そう思うなら食材くらいもう少し揃えておきたまえ。」

 

ああ、完全に毒気を抜かれてしまった。

許したわけではないが…まあ、先延ばしにしておくことにする。

椅子に腰掛け、サラダを一口。

 

「…むぅ、美味しい…」

 

自家製のドレッシングだろうか、これは、梅?

刻んだ梅と、黒胡椒に、あっさりした和風ドレッシングが野菜にマッチして、美味だ。

 

なんか悔しい。

私だって料理くらいできるのだ、その気になれば。

…特に中華なら負ける気はしない。

 

「アーチャー、今日帰りに買い物に寄るわ」

 

なんだ、やけに素直だな、なんて…今だけ言ってなさい、夜にはぎゃふんと言わせてやるんだから。

 

ーー呑気なものである。

 

 

******************

 

「さて…俺は学校に行くけど…九重はどうするんだ?」

 

先輩がそう、下駄箱から靴を出しながら聞いてきた。

 

「一応行きますよ、バーサーカーだって霊体化して常にそばにいますからね。」

 

「霊体化か…便利なもんだなあ、サーヴァントってのは。」

 

「…先輩、一応言っておきますけど…何か起きても手出しはしないほうが無難ですよ?」

あまりに呑気な先輩に、忠告。

 

「…確かに俺にできることは少ないだろうけど…もし九重が危なけりゃ、手は出す。」

 

ああ、この人やっぱりわかってない…私はあの夜本気で、死にかけた。

魔術師ができるのは精々がサポートに過ぎない。

サーヴァントとはそれほど規格外の強さなのだ。

迂闊に手を出したが最後ーー先輩は間違いなく、死ぬ。

 

「死にたい訳じゃないでしょう…私だって助けはありがたいですけど…住まいだけでも充分過ぎるくらいですから。」

 

「欲の無い奴だなあ、九重は。」

ーー先輩にだけは言われたくないです、それ。

 

半眼で呆れる内にいつの間にやら通常の住宅街を抜け、商店街に差し掛かっていた。

 

「お、士郎じゃねえか…あれ、なんだよお前、桜ちゃんからのりかえやがったのか!?」

 

「ま、おばちゃん感心しないわあ…」

 

などと。

商店街のおじちゃんおばちゃん方からいきなりディスられ始める衛宮先輩。

 

「いや、まてまて皆っ、こいつは後輩で、しかも親父の知り合いの娘さんなんだよ!住むところを探してて、親父の縁故を頼ってうちにしばらく住むことになっただけだ!やましい事は何も無いから!」

 

「ど、同棲!?」

 

「桜ちゃんという通い妻だけじゃ足りねえってのかい、うらやま…いや、けしからん!」

 

「きゃー!おばちゃん後30若かったらほっとかないのに!」

 

と、一気にまくしたてる先輩、囃し立てる商店街の方々。

火に油じゃないですか…。

 

 

*********

 

 

そんな暖かくも馬鹿馬鹿しいやりとりをして、学園にたどりついた矢先。

濃密な魔力がーー私達を出迎える。

 

「……っ、!?」

 

「な、なんですコレ…!」

 

感じるだけで頭がおかしくなりそうな…甘く、危険な、蜜ーー例えるなら食虫植物が虫をおびき寄せる匂いの様なーーー

 

「へぇ、貴女が昨日のーー」

 

背後からかかる声。

そして明らかに威嚇する様な…攻撃的な、魔力!?

 

この人、サーヴァントの、マスター!?

 

「はじめまして、外様の魔術師さん。」

 

「あ、え…遠坂…?」

 

振り返り、困惑顔の先輩。

いや、私も訳がわからない。

 

「おはよう、衛宮君ーー、まさか貴方までとは気がつかなかったわ。」

 

「貴女、真逆…」

 

「ーーそう警戒しないでもいいわ、昼間からやり合うつもりは無いし、聞いておきたい事があったけど…その反応を見る限りあなたたちが仕掛けた訳じゃあ無いのね。」

 

「ーー仕掛けた、ってこの…なんていうんだ…校門くぐった途端に感じた…むせ返りそうな甘い匂い、か?」

 

「ーーそう、貴方はそう感じたの。」

まるで、食虫植物ね、と私と同じ感想を呟いた後視線が此方を向く。

 

「ーーさて、貴女…一体どこの派閥の何様かしら?」

 

「…派閥も何も…私はただの二流魔術師ですよ、遠坂さん。」

 

「ーーだが、何方かはマスターではある…そうだな?」

と、校門の陰から一人の男が姿を現す。

 

「アーチャー…迂闊に姿をさらさないでよ…」

 

「なんだ、アンターー」

先輩が向けられた視線に怒る様に言葉を返した、瞬間。

 

ボグ!、と音を立てて衛宮先輩が体をくの字に曲げて咳き込んだ。

 

「が、グハッ…!?」

 

「アーチャー!」

やり過ぎだ、と遠坂さんが嗜めるとアーチャーの手は止まる。

しかし、眼は依然として先輩を睨んだままで。

 

「こんな脆弱なガキがマスターとはな…」

 

咳き込む先輩を見下す様に告げる赤い人。

なんだろう。

ムカムカする。

きっとあれが遠坂さんのサーヴァントだとわかっていて尚。

昨夜のランサーみたいに恐怖は無い。

だが、それはきっと怒りのせいで。

 

「マスターは、衛宮先輩じゃない。」

先輩は、無関係なのにーーコイツッーー!

 

「表出ろや、このクソフェイカー(、、、、、、、)が。」

実体化したバーサーカーが。

私より素早く喧嘩を買っていた。

 

*********

 

校舎裏の林。

其処に私達は居た。

授業が開始される直前となれば人気は無い。

 

「…アーチャー、貴方が余計な事をしたからよ…どうするの、コレ…」

 

本来なら休戦を申し出て、この結界を張ったやつを締め上げるまでは互いに不干渉を提示するつもりだったのだが、台無しだ。

 

「フン、軽く撫でた程度だろう…マスターでも無いのに首をつっこんだあの小僧が迂闊なのだよ。」

 

「お喋りは、楽しいですか?ワタシーー怒っています、とっても、怒ってるんですよ?」

 

バーサーカーは無言で、しかし武装し、構える。

 

「やだ…槍ーー?」

赤い人、アーチャーのマスター、遠坂と言ったか、が驚きの声を上げる。

それはそうだ、ランサーはすでに昨日遭遇しているはずだから。

先ほどは頭に血が上って気がつかなかったが…この、今対峙する赤い人は昨夜、ランサーと対決していた英霊だ。

 

「テメェは何処で出会ってもいけすかねぇ野郎だな…」

武装し、黒く捻じれた無数の突起に、怪獣みたいな脚で大地を踏みしめ、手にはあの朱槍を構える。

 

「君の様な粗暴な知り合いは居ないはずだがね…」

そう言いながら双剣を握るアーチャー。

 

「マスター、やるぞ?」

 

「…ええ、行きなさい…バーサーカー!」

 

「■■■□ッーーーーーー‼︎‼︎」

 

咆哮が、音が時間差で聞こえるほどの速度。

バーサーカーの巨体がアーチャーの痩躯に迫る。

 

ガキィ!

双剣が槍の穂先を挟む様にして止める。

 

「何っ!?」

 

だが。

止めた筈の槍が、穂先からさらに分かれる。

槍から槍が生えて(、、、)いた。

 

「ぬ、うぁっ!?」

 

上半身を後ろに全力で反らす事で辛うじて直撃を避けるアーチャー。

前髪が数本、ハラリと切り落とされる。

 

「何だ、その槍は…!?」

解析ーー構造、読めぬ。

材質ーーー魔力を帯びた、何かの骨?

似た材質の何かを見た様な気はする、しかしーー今までに見たどの武具にも該当しない。

恐らく素の状態から大きく、材質すら変質している?

 

「俺の槍が気になるか、だがそんな余裕があるのか、え?」

 

「さぁーー怖じ、惑え!」

バーサーカーの全身から立ち昇る異様な気配。

ソレが空間を支配し、蹂躙する。

大地から、木々から。

仄暗い輝きが噴き出し、アーチャーだけでは無い、周り全てを飲み込んでいく。

 

スキル「精霊の狂騒」。

周囲の全ての敵を恐怖と錯乱に陥し入れ、精神干渉により対象の筋力、敏捷を著しく下げる広範囲精神干渉。

 

「ぬ、く…力が…抜ける、?」

 

「ほう、アーチャーの対魔力か…多少レジストした様だが…しかし、あちらはどうかな?」

 

「な、何…これ…っふ、震えが止まんな、嫌っ、あ、あ、あ!?」

 

アーチャーが斜め後ろを僅かに見やれば、己のマスターが両肩を抱き、過呼吸に陥っているのが目に見えた。

 

「き、貴様っ!」

 

「ねえ、アーチャー?今、どんな気持ち?」

突然、話しかけたのは朔弥。

 

「な、なに?」

 

「親しい人をいきなり苦しめられて…どんな気持ちか、そう聞いてるんです。」

 

「……そ、それは…」

 

「アー、チャー、謝罪…なさい…今のは明らかにこちらの、はぁっ、不手際、でしょ、う。」

 

息も絶え絶えに、しかし非を認める遠坂さん。

しかし。

 

「っ、しかしなーーこいつらはいずれ敵にまわる…それがわかって言っているのか、凛。」

 

頑固モノっ。

自分のマスターが非を認めているのにまだ食いさがるか、コイツ。

 

「アーチャー、これ以上、く、言う、…令呪を使う…らね?」

 

「ーー仕方あるまい…今回は凛に免じて矛を収めるとしよう…だが…」

 

まだ、何か言うつもりか、と少しムッとした瞬間。

 

パァン!!

林の中、乾いた音が響いた。

アーチャーの頬を遠坂さんが平手打ちにしたのだ。

 

「いい加減に、しろっ!」

 

涙目で、バーサーカーのスキルに侵されながらの一撃。

それもサーヴァント同士が、立ち会う中に踏み込んできて、だ。

ヒュウ、とバーサーカーが口笛を吹くのが聞こえた。

 

「ーーーー!」

泣き笑いの様にも見える複雑な表情をしたかと思うと、アーチャーはそのまま霊体化して消えた。

 

今の一瞬で、スキルの効果が、途切れた。

いや、バーサーカーが意図的に解除したのかもしれない。

少しむせ込んだ後、遠坂さんは私、いや…衛宮先輩に向き直り、頭を下げる。

 

「ーー悪かったわ、ウチの駄サーヴァントの非礼…許せとは言わないけど…今は置かせて欲しいの。」

 

未だに鳩尾を押さえ、声も出せない衛宮先輩に変わり私が答える。

 

「ーーいえ、遠坂先輩、それは私も同じですから…頭に血が上ってやり過ぎました、ごめんなさい。」

 

互いに深々と頭を下げる。

それを、バーサーカーはどうにも振り上げた拳を持て余したか、どうしろってんだ、と言う顔で見つめるのみであった。

 





【後書き的なもの】

はい、今晩は。
あるいは…おはようございます、こんにちわ。
グーテンモルゲン、グーテンダーク!

バームクーヘン、って切り株って意味だそうですよ?ドイツ語ドイツ語。
…だからどうした。←

微妙なエヴァネタでした。
さてさて、今回またもかませにされてしまいました…テリーマン状態の赤い人…ごめん、俺君は大好きなんだよ、カッコイイんだよ、でも朔弥を絡めると途端に残念になるのは何故だホワイ?

今回、鋭い方は指摘しそうないわゆる「ボロ」を出した人が。
はい、何故この第五次がイレギュラーだらけなのかーーその事に関わるものなのか?

多分、段々といろいろ違和感が増えていくかと思いますが、もしかしたら「歴史そのものが改変」されるかも、しれません。

様々なルートがある第五次聖杯戦争ですがーー
この事態は歴史上、決して自然には起こらない。

「人為的」なイレギュラー、なのかもしれません。

次回はオルタニキ、アーチャーだけでなく他陣営にもスポットライトが当たります。

それでは、皆様また次回お会いしましょう!

2016.5.29 19:07 某所にて初稿投稿。

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