Fate/alternative   作:ギルス

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長きに渡る妄執。
かつて抱いた理想は見えず。

人に、500年の時は長きに過ぎた。

呪い、あれ。
現世全てに──、救いをもたらしたモノに。

希望?
絶望?

人が望むは────




第36話『500年の妄執』

 

 

「…お、父様…?」

 

「ああ、そうだ…おまえの元、父親だった人非人だよ、私は。」

 

赤いスーツ、ステッキ、口髭に、整った髪。

何より炎の如き意思を示すその瞳の奥の光。

 

まごう事なき先代セカンドオーナー、遠坂時臣がそこに立っていた。

 

「…そんな、お父様は第四次聖杯戦争で亡くなった筈…!」

 

「ああ、私は死人だよ。」

 

「な、何を言って…何を!!」

 

最早桜の心は崩壊寸前だった。

無数の蟲に蹂躙されようと、純潔を奪われ、人と言って良いのかすら判らない程に胎内を造り替えられてすら残っていた桜に残された希望。

 

繰り返すこの坩堝…、必ず、必ずいつか打破されるものと。

 

「た、助けて…先輩、先輩いぃ…!」

 

だが。

繰り返すだけでなく。

死者を操ることすら、蘇生すらできるというのなら。

 

もう、抗う意味すら無いのでは無いか?

いかに足掻こうと (、、、、、、、、)無意味なのではないか。

 

頭を抱え、涙していると時臣の大きな手のひらが頬を撫でた。

 

「…桜、おまえの役目は楔に他ならぬ…おまえが未だ引き継いだ記憶と自我を保てるはその役目故よ…私のような端末では無く、おまえには可能性が残された。」

 

「…私の、可能性?」

 

「そうだ、世界を繋ぎ、希望をもたらす…」

 

唯一の可能性だ、と。

 

「希望、私が、希望?」

 

「人という種の可能性、それこそを我が主は望まれた。」

 

ステッキを一振りし、暗闇に火が灯る。

明かりは、今迄見えなかった洞窟の奥を照らし出した。

 

そこにあるのは、黒。

昏く、光を浴びて艶を見せる黒曜石の如き黒。

 

伸び上がる巨大な腕。

その頂きに見える、結晶体。

 

翡翠色をした結晶が光を返す。

結晶の中には影が見えた、少年の影。

そこに…無言で寄り添う、一人の女性。

 

否。

アレは──

 

裁定者。

無慈悲に、定められた調律を守る者。

 

「…ルー、ラー?」

 

何故だろう、わかるのだ。

アレがなんであるか。

 

「…ええ、桜…私はルーラー、ジャンヌ・ダルク…彼を守り、人を人たらしめる最後の砦となる者です…ようやくわかりました、貴女の様なモノが居る…そしてそこな男…桜の父だと、死人だと言っていましたね──」

 

「遠坂時臣、かつてそう呼ばれた者ですよ。」

 

「…端末…ですって?良くも私や彼の前に…姿を見せたものですね、その男の姿とて殻に過ぎない癖に…ええ、本当に良くも…!」

 

穏やかだったその顔に僅かな苛立ちが見えた。

救国の聖女と呼ばれた彼女が嫌悪するなど。

彼女は旗を翳し、立ちはだかる様に結晶の前に立つ。

 

 

「近寄る事など許しませんよ…◼︎◼︎◼︎!」

 

 

◼︎◼︎◼︎?

聞き取れないが、なんと言ったのか。

 

「貴様がいる限り無駄だからな…今はまだ、その男に触れはせんよ、イレギュラーの裁定者よ。」

 

「…イレギュラー、やはり私は冬木聖杯に呼ばれたのでは無く──」

 

「ああ、そうだ…所謂世界の矯正力という奴だろうな…世界からすれば我々こそが異端なのだから…対抗措置にアヴェンジャーを喚んではみたが、真逆貴様らに縁ある男を呼び寄せようなど…腹立たしい限りだ。」

 

「…帽子男を御しきれなかったわけね…ざまあみなさい、◼︎◼︎◼︎…!」

 

一瞬、聖女の顔が憎しみに歪む。

言葉まで荒げる姿は何処かおかしそうに笑う童女の様な、純粋な悪意に満ちていた。

 

父は、いや、父如きこのナニカは。

彼女に一体何をしたのか。

 

そして──翡翠に閉じ込められた、少年。

彼は、一体誰なのか?

 

橙色の髪、何処か憎めない顔立ちをしている、しかしごく平凡に見えるその少年は。

 

その手に。

盾を模した「令呪」を宿していた──。

 

 

 

*********

 

 

 

「…クソ、なんだというのだあれは!」

 

伸び上がる光の柱。

ロードエルメロイII世、ウェイバーは毒づいていた。

 

「…あの場所は…大聖杯…!」

 

第四次聖杯戦争以降、調べに調べた。

冬木は円蔵山に安置された巨大術式…、冬木の大聖杯。

 

急がねばならない。

事態は私が知らない場所で深刻な局面へ進行している様だ。

 

走る、走る、走る。

走り、もつれ、転んだ。

 

「ぐぎゃっふ!?」

 

そう、そうだった。

 

「わ、私と言う奴は…此の期に及んで…!」

 

体力不足で力尽きるなど。

 

「ゆ、許されるはずが、なかろう!?」

 

ガバ、と起き上がり…ひいひい言いながらお山の上を目指す。

 

「シット…、やはり身体は鍛えておくべきだった、のか…」

 

などと項垂れていると、不意に林道の奥から何かがヌウ、と現れた。

それは。

 

「な、何いっ、犬…いや、狼?」

 

体長数メートルはあろうかと言う巨大な獣がそこにいた。

スンスンと鼻を鳴らし、こちらを値踏みするようにして──

 

「くっ、南無三!!」

 

などと、日本で影響されて覚えた言葉…義妹あたりが聞いたら馬鹿にされそうだ。

──毒づき、小声で唱えていた魔術を発動。

驚愕の言葉を挙げたふりをしながらの裏詠唱…サイレント・キャストと呼ばれる小技である。

…まあ、小手先と笑わば笑え。

 

コレが、使い魔でも、サーヴァントであっても、逃げねばならない。

故に。

 

「食われてなど…やらんからなあ!」

 

風が特大の断頭台(ギロチン)と化し、獣を両断せんと放たれた。

この上なく会心の出来。

この一撃ならば僅かながらサーヴァントにも届くのではないかと。

 

手にした魔力増幅のタリスマンを握りしめてその一撃に期待──を持つ前に自身に失望する。

 

ひらり、と。

不可視のギロチンは容易く回避されて林道の樹木数本を両断するに止まった。

 

そしてあっさりと襟首に、その巨大な牙が突き刺さ…らなかった。

 

はぐ、と。

咥えられたままに獣が階段を駆け上り始めた。

 

「な、ん、だ、と、おおおおぉ──!?」

 

 

ウォ────ン!!

 

咆哮が響く。

ロードを咥えた獣だけでは無い。

さらに現れたもう一頭が並走する。

 

「こ、コレは…魔獣か!?」

 

訳がわからない。

この魔獣…殺す気ならば先ほど簡単に自分を噛み殺せた筈だ。

 

一体、何者の使い魔なのか。

 

「止まれ、獣。」

 

そんな事を考えている内に。

いつしか道を登りきっていたらしい。

 

「ぐぬわっ!?」

 

いきなり落とされた。

 

「ぬ、ぬぐ…貴様何者だ…?」

 

不気味な矮躯の老人。

杖に寄りかかる様に立ち、視線を向けてくる。

その身から感じられるのはとびきりの邪気。

 

「ふぇふぇふぇ、知っておるぞ、貴様…前回の聖杯戦争であの征服王とおった小僧じゃなあ…背丈だけは伸びたようだが──相変わらず魔術は拙いままか?」

 

ウゾウゾと老人の足元から湧き出す、無数の奇怪な蟲。

 

「…その、蟲…そうか、間桐の…マキリ・ゾォルケン…!!」

 

咄嗟に懐から取り出した試験管を投擲する。

そこに封ぜられた魔力が。

火と言う型を得て爆ぜた。

 

「ほっ、火か、怖や怖や!!」

 

ザア、と。

蟲が数を増し、炎に飛び込んで行く。

生物が燃える嫌な臭いが漂いだし、火が蟲壁に遮られる。

その壁からバチバチと音を立てて弾けた蟲が焼けた呪い、鉄の針と化して飛び出した。

 

「火針蟲…焼けて弾ける呪言の塊よ…さあ、悶えて死に行くがよいわ、獣めが!!」

 

此方を見てすらいない。

渾身の一撃も利用され、その燃え立つ呪針は火を纏い二匹の獣に殺到する。

 

だが。

並みの魔術師ならば百度は死ねる呪いの針を受けて、獣は微動だにしなかった。

 

その毛皮は呪いを弾き、針はその先端を肉に届かせることすらなかった。

一匹は老人に飛びかかり、そして先まで私を咥えていた方の獣が私を守る様に立ち塞がった。

 

「…おまえ…?」

 

ぐるぅ。

静かに唸るその瞳には確かな知性がある。

 

「カッ、畜生風情が──このワシに…ワシの、500余年に渡る悲願を邪魔立てするか!」

 

ズア、と。

地面から二匹の巨大な百足に似た巨大な蟲が頭を出し、飛びかかった狼を牽制する。

 

更に老人、マキリ・ゾォルケンの身体から弾丸の様に飛び出した甲虫が獣に向かい、かわされて樹木に大穴を開けた。

 

「…何という威力だ…対戦車ライフルではあるまいし!」

 

ある人物の影響で、にわかとは言え知識を持ってしまった重火器の知識と照らし合わせても、遜色どころか上回るのではないかという威力。

 

「醜いのう…高々500年程度…生き足掻いた末に目的すら見失った小僧っ子が。」

 

カン、と。

杖を立て、地を叩く音。

 

振り返るとそこには、散々探し回っていた人物が居た。

 

「貴方は──、やはり!」

 

やはり、唯人ではなかったか、と。

問いを投げかけようとしたロードを手で制して、老人は笑う。

 

「ほほ、また会ったのう…ヌシとはやはり縁があった、か…おぬし…覚悟はあるか?」

 

「…覚悟?」

 

「おうよ、果てなき知識に身を浸し、かつ…英雄の道を歩む覚悟はあるか?」

 

「…何を言って──」

 

会話はしかし、続かない。

 

「なんじゃ、貴様はっ…小僧だと、ワシを小僧などと宣うは何処の馬の骨か!!」

 

百足擬きがさらに湧き出し、こちらに殺到する。

その鋭い顎門から覗く牙は鋼鉄すら容易く咬み裂くだろう。

 

「…黙れ、小僧。」

 

そう、老人が言葉を放った瞬間。

先ほど自分が放った炎が児戯に見える程の激しい炎が一瞬にして吹き上がった。

 

「…これは、原初の秘蹟文字(ルーン)!?」

 

キエェーー!

 

金切声を上げ、百足擬き数匹が瞬きの間に灰と化した。

 

「…この、魔術──キャスターの、サーヴァントか!」

 

マキリ・ゾォルケンが憎々しげにこちらを睨む。

 

「…黙れと、言わなんだか?」

 

ヒュ、と。

軽い風音が鳴ったかと思えば。

 

マキリ・ゾォルケンの胸から槍が生えていた。

 

「ゲアッ!?」

 

見えなかった。

狼の動きも目で追いきれない程だったが、今…いったいいつ槍を投げた?

 

格好だけ見れば、古ぼけた服に片目を覆うものもらいを隠す様な…眼病でつける様な使い捨てのアイパッチ。

 

手に持つ杖はいつのまにか無くなり、肩には一羽の鴉が止まっている。

 

「──それと、一つ間違いを正しておこうか…儂はキャスターでは無い。」

 

「ガ、ならばこの槍…ランサーだとでも、いうの、か…ごふっ。」

 

口から血反吐を吐きながらマキリ・ゾォルケンが問う。

 

「…儂はグランドキャスター、冠位を持って世に降りたちし者──あの好色なアーチャーの同類よ。」

 

「ぎ、ぎざ、ま…も、か──」

 

「そろそろ黙れ。」

 

言葉と共に老人の姿が変わる。

ボロは黒いローブ、アイパッチは黒い革の眼帯に。

 

顔も幾分か好々爺じみていたものから鋭い眼光を宿すに至り。

その身体から滲み出る言い様のない威圧感。

 

「やれ」

 

アオーーン!

アオッ、アオッヴォウ!!

 

二匹の獣が吠える。

 

「ぎ、ぎああああっ!?」

 

それが振動の波となり、マキリ・ゾォルケンを捉えた。

 

「から、だが…崩れっ、ぎいいっ!?」

 

ボロボロとゾォルケンの身体から蟲達がこぼれ落ちていく。

 

「…貴様とて最初はその様な妄執に囚われてはおらんかったであろうにな…」

 

「…な、何を…ワシは、ワシは…生きるのだ、永遠を生きて、生きて──」

 

ハタと。

その先を紡ぐことができずにゾォルケンは言葉を詰まらせる。

 

「──生きて、何を…したかったのだ、ワシは、私、は──?」

 

虚空を見つめる瞳が、大空洞の方角を向いた。

 

「…ユスティーツァ?」

 

それを最後に。

マキリ・ゾォルケンと呼ばれた男の殻は破れた。

 

バリン。

その矮躯を突き破り、世に産声を上げるのは…呪い。

 

ノロイ、のろい、呪い。

怨念の塊が噴出する。

 

地を汚し。

空を染め上げて。

瘴気の柱が噴き上がる。

 

『カツて高貴たレと、悲願を求メタ魂を以ッテ…、』

 

白く、僅かに灰色に燻んだ巨大な肉の柱。

側面には無数の巨大な眼、眼、眼、眼。

十字型に割れた虹彩を持つ紅い眼は此方を睨め付けており、ギョロ、ギョロと不気味に蠢いている。

 

『我、怨嗟ト憤懣ヲ抱き…今、此処に──魂の坩堝へ…現、界、セリ。』

 

 

「な、なんだ…なんだアレは!!」

 

 

悍ましい、悍ましい、悍ましい、悍ましい!

見ただけで目を潰したくなる。

声を聞いただけで発狂しそうになる。

 

いかん、落ち着け…ある種の神殿と同じだ──精神を鎮めろ。

 

「…ヌシに力を授けてやろうと思うたが…これはそれどころではないな…さて、どうしたものか…この様なモノ…いかにして葬るかのお…」

 

「…っ、ご老人!何を悠長なことを…貴方がいかなる英霊かは存じ上げませんが──あのような化け物…倒せるのですか!」

 

と言うか、なんなのだ、アレは!

やはり厄イ。

あの義妹にふられた仕事や話がまともであった試しがあったか?

いや、無い…帰ったら必ず何らかの形で報復してやる…絶対にだ!

 

「倒すだけならなんとかな、しかし今は儂の力もまだ安定しておらんしな…何より下手に倒せばアレは、その身に孕んだ瘴気の塊を山裾からふもとに垂れ流すぞ?」

 

唖然とするしか無い。

あの様なサーヴァントすら飲み込みそうな極大の悪意を前に。

この老人は、なんとも飄々としているでは無いか。

 

『グランド、クラス──その名を騙るか、塵芥メがァあァ!』

 

カッ!

 

瞳が輝き、爆発が巻き起こる。

地面を捲りあげながら光の波が押し寄せる。

 

「う、わっ!?」

 

「カァッ!」

 

杖の一振りで活性化した林の木々が枝葉を伸ばし、塞ぐ。

それらの葉は全てが硬化のルーンを刻まれていた。

 

鋼以上の硬度と強力な魔力に覆われた防壁が壁となる。

 

『その様なモノ、無力と知れ…貴様が如何に強力な英霊であったとしても──この街にいる限り…勝ちは、ない──お前には、無理だ。』

 

一際強く、眼群が輝く。

 

『友は全て──消えゆく。』

 

紅眼は更に無数の爆光を生む。

これでは反撃すら出来ない………!

 

ルーンに強化された樹木は爆光を防いではいるが、このままでは押し負ける。

 

ウォーン!

 

魔獣が飛びかかり、爪牙を振るいその肉塊を切り裂く。

しかし、浅い。

 

「…あー、埒が開かんのぉ…」

 

老人が、つい、と腕にはめた黄金の腕輪に触れようとしたその時。

 

「魔神柱──そう、ならば…アレが関わっていると?」

 

憎々しげに呟いたのは、フードを目深に被った、美女だった。

 

「ほ、コルキスの──動いたか。」

 

「…貴方、何者かしら、私のことを随分と訳知り顔で…まあ、いいわ…」

 

階段を駆け上がり、抱えられ、或いは息を切らしながら現れたのは、少年少女達。

 

中には知った顔もあった。

 

「…君は、遠坂の?」

 

紅い外套の男に抱えられていた黒髪の少女。

資料で見た顔だ。

 

「貴方はっ、確か時計塔の…君主 (ロード)──、エルメロイ?」

 

「…II世、をつけてくれ給え…正直私の様な未熟者が背負う看板ではないよ、五大元素…アベレージワンの天才、遠坂凛。」

 

気の強そうな、それでいてその目には優しさが宿る。

 

「…同じ御三家でも随分な違いだなマキリ。」

 

肉塊を目に、呟いたその言葉に。

 

「ま、マキリって…あれが!?」

 

呪いの塊の様なそれを見上げ、驚愕する凛。

 

「…と、遠坂…アーチャーに運ばせるとかずるいぞ、くそ!」

 

その背に、気を失った橙色の髪をした少女を背負う少年。

 

「──あれが、間桐の…?」

 

「間桐って…待てよ、まさか慎二が──」

 

少年が慌て、肉塊を見た。

 

「ガッ…あ!?」

 

身体が震え、多量の汗を吹き出し始める。

──さもありなん、天才、遠坂はレジストした様だが…凡百の身なればあの呪いはキツかろう。

 

「落ち着け、少年…あれは極大の悪意…まともに意思を開いてあれを見てはならん…己の心の前に壁を作るイメージをしろ、息を整え…己を切り離せ。」

 

この状態でも少女を落とさないのは見上げた根性だ。

 

「あ…カハッ、はあ、あ!」

 

…意外に飲み込みが早い。

この少年…見た感じ才能は「私同様」無いに等しい…だが、長所だけを伸ばせば案外化けるのではないか?

 

「落ち着いたか。」

 

「は、ハイ…ありがとうございます…えと。」

 

「…ロードエルメロイII世、時計塔のロードの末席に身を置かせて貰っている、魔術師の端くれだよ。」

 

「…ロードの癖に端くれとか、嫌味?」

 

半眼でそう足したのは遠坂凛。

 

「…私がこの立場にいるのは…偏に過去の過ち故だからな…はめられた様なものだ、分不相応にも程がある。」

 

『…囀りオルワ、人間共!!』

 

「ふん、マキリ・ゾォルケンに寄生してまで何をしたい?」

 

ロードが呟く。

 

「…あの妖怪みたいなジジイ…とうとう人間辞めたわけ…なるほど。」

 

凛が納得顔をした言葉に少年の方が何故かホッと息を吐いた。

慎二が、と言っていたがマキリの関係者だっただろうか?

マキリにはもう、直径の…魔術師足り得る子孫は居なかったはずだが。

 

「…アレは…魔神柱、忌むべき人理の敵よ。」

 

バサ、とローブを翻して先ほどの美女が杖を翳した。

 

「消え去りなさい──コリュキオンッ!!」

 

ボッ、と。

空気を裂く音を立てて無数の魔力弾が肉塊を直撃した。

 

『ガアァあぁッ裏切りの魔女、メディア…我が主人が見逃していたからと…調子にノルで、ナイゾ!』

 

傷口から煙と、黒い呪いの泥を吐き出しながら、肉塊が怨嗟の声を上げる。

 

「…醜悪極まりないな。」

 

「ふん、真逆また、あれを見るはめになるとはな…さっさと抉り殺すか。」

 

紅い外套の男が呟き、続けて現れたのは半裸で、身体中に棘の様なものを生やした奇形の槍を持つ男。

 

「…やめんか貴様ら、下手に倒せば呪いを撒き散らしかねんからワシが抑えながら手を考えていたと言うに。」

 

「…ご老人、しかしあの巨体…もはや街への被害は免れないのではないか?」

 

と、二度目のやりとりに紅い外套の男が口を挟んだ。

 

「…あの化け物を…結界に取り込んだ上で倒せば問題あるまい。」

 

ク、と。

唇の端を吊り上げて笑う男。

 

「…結界じゃと…、馬鹿を言うな障壁を張ろうがあの呪いの濃さではすぐに溢れ出すわい…それこそ禁呪でも持ち出さねば──」

 

バッ、と。

 

老人の横に着地した男は、背中を向けたまま言い放つ。

 

「ふん、問題無い──なんならトドメを刺してしまって、構わんのだろう?」

 

顔は見えない、見えないのに。

…そのドヤ顔してるのがまるわかりな声音だった。

 

「なあ、(マスター)?」

 

 






【後書き的なもの】

ハイ!急展開ですよ!
やっと話がいろいろ進んできたわよ!

他の陣営も書かなきゃならないからこれ、まとめるの辛いの!!←

老人「自業自得じゃろ?」

狼ズ「「わっふ。」」

フィン「と言うか我々忘れられてないか。」

バゼット「…どうせ本編でも影薄いですからね、私…プリヤに帰りたい。」

プリヤの扱いも出番こそあれどうかと思いますがしかし。

兎にも角にも。
マキリ・ゾォルケンから顕現したのは一体何なのか!
魔神柱って何なのか!(棒

そしてグランドキャスターを名乗る爺さん何者だ!?←

あれこれバレバレながら!
やっと次回はアーチャー(エミヤ)に見せ場を作れそうだよ!!

後、朔弥の記憶の話はまだ引っ張ります、ごめんなさい。

謎の少年「いやあ、出番あったね…俺。」

ありましたねえ。
これに関してはもう前々から伏線は張り続けていましたが。

伏せたけどどれもバレバレな感じの今回!
後早く…はくのんも早くしなきゃ!

頑張るよ、頑張るよ…頑張って書くよ!

ではでは。
今回はこの辺りで──
ぐだぐだ明治維新…魔人セイバー来ちゃうのかな…お金やばいよやばいよ?、ライダー/ギルスでした!
またね!

しーゆーねくすとえぴそーど!

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