捏造設定、独自解釈、オリキャラなどが入る可能性があります。
また、原作をなぞる展開、演出上止むを得ず原作からの引用文がある場合があります。
それでも構わないという心の広い方のみ、先へとお進み下さい。
無理!という方にはブラウザバックを推奨致します。
今回、日常パート。
…話が進む進む詐欺。
それでは、拙い作品ではありますが宜しければお楽しみ下さい。
それは、稲妻の様な切っ先だった。
心臓を串刺しにせんと繰り出される槍の穂先。
躱そうとする試みは無意味だろう。
それが稲妻である以上、人の目では捉えられない。
死ぬ、シヌ、死んでしまう。
なに一つ成さず、残さず、生きた意味すら解らぬままに。
私は、兄の為にも、生きなければならない。
死んで。
たまるか。
身体中に巡る魔術回路。
数にして200余。
数だけなら一流の魔術師を越え、超一流、いや、人外の域。
しかし。
それら殆どが機能していない。
眠ったままの、役立たず。
いま、起きなくてーーなんの為の、魔術回路、か!
(なんでもいい、コイツを…)
どうにかする、力を!
強いーー力を寄越せ、私は、死ねないんだ!
ズクン。
手の甲が、熱い、身体が、揺れる。
ーー否。
視界が、緋く染まり…何かが私に。
《欲しいか、全てを蹂躙する、王の力が!》
寄越せ。
誰であれ何であれ構わない。
私を害するモノをーー全て吹き散らす力を!
それは一瞬。
思考が、私に投げかけて来た言葉に、ただ心が無意識に答えを返していた。
《聞き届けた。此れより俺は貴様の、牙だ!》
閃く、闇。
闇が凝縮したかの様な、光を吸い込んで行く闇の帯。
それが、土蔵の床に記された古い魔方陣を書き換えて。
噴き出す様に。
顕現した。
******************
誰も居ない家庭科室。
そこに、胸部を穿たれ、半ば砕けたマネキンと強烈な光に晒され、僅かに焦げ臭くなった空気だけが残されていた。
「アーチャー。」
「すまない、凛…どうやらランサーを見失った様だ、魔力どころか痕跡らしい痕跡が見当たらん…どんな手品だ、これは。」
「…今は良いわ、それよりこれ。」
「あぁ、一流とは言えんが、魔術、だな。」
幻惑のルーン。
それに加え、魔力を視覚に強烈に作用する様調整された、魔術的な
外からもわかるくらいに強い光を窓越しに放っていた。
全く知らない手口だ。
しかも状況からして、これを仕掛けたのは先ほどの生徒。
改造制服か、或いは他校の生徒か?
何にせようちの学生服とはいささか違っていた様に記憶している。
ならば必然、私の知らない第三者だ。
「どこの田舎魔術師かしら…セカンドオーナーであるウチに…遠坂に挨拶も無しとか。」
「怒るところは其処か…、君は」
少々呆れ顔のアーチャーは放置して調べを進める。
まあ、正直な所ほっとしている。
一般の生徒が巻き込まれたわけではなくて。
死体を拝むのはできれば、したくないと思っていたから。
「今日はもう帰るわよ。」
「そうだな、魔力の回復は必要だ。」
頷き、霊体化したアーチャーから視線を外し、一階玄関へと足を運ぶ。
ああ、明日からやる事は山積みだ、などと思いながら。
******************
ガバ、と。
布団を跳ね除け、起き上がる。
「し、死んでたまるかーーー!?」
開口一番。
口をついて出たのは、そんな言葉。
「よぅ。」
くわ!
っと見開いた瞳に飛び込んできたのは。
自分の中では先ほど見たばかりの、浅黒い肌に、獣の如き双眸のーー、バーサーカーの顔があった。
ただ、格好は随分と違う。
足や手に、捻じれた角の様な突起も無ければ、服装もまたジーンズと言うラフさ。
槍も今は構えていない。
「あ…れ?」
自分が盛大に寝ぼけていたのを自覚。
顔が一気に熱くなった。
「バーサーカー?」
「おぅ、そうだ…おまえの呼び出したサーヴァントだよ、マスター。」
やはりあれは、夢ではなかった。
…しかし。
ここは、何処だ?
作りからして日本家屋。
畳に敷かれた客室用らしい羽毛布団に寝かされていたのか。
畳を形作る藺草の匂いが、何処か懐かしい。
そ、っか…昨日の武家屋敷の中か。
「お、目が覚めたか、転校生。」
ス、っと襖が開き癖のある赤毛に柔和な笑みを浮かべた男が、手に盆を持って入ってきた。
盆の上には湯気を立てる美味しそうなご飯、味噌汁と焼き鮭に、漬物が乗っている。
「はへ???」
くぅ、とお腹が鳴るのを感じながら私の目はお盆に釘付けだった。
「ああ、腹減ったろぅ、まずは食べなよ。」
差し出されたご馳走に、食いつこうとして、躊躇う。
がっついたら…なんか女の子としてだめな気がしたから。
キュルルル…クゥ。
「あっ…」
しかし、腹の虫めが全て台無しにしてくれた。
「い、いただきましゅ…」
噛んだ!よりによってこのタイミングで!
し、死んでしまいたいっ!?
恥ずかしさに悶えていると、バーサーカーがニヤニヤしながらこちらを見ていた。
ああああああっ、何だかわからないけど物凄く恥ずかしいっ!
ーーで。
結局、空腹に負けておかわりまでした後、ようやく自己紹介と状況把握タイムと相成った。
「…つまり、君は偶然その、聖杯戦争とやらに巻き込まれて…偶然うちの土蔵に逃げ込んで…死ぬかと思った矢先に彼、バーサーカーが召喚されて助けられた、と?」
「はい、荒唐無稽な話です、信じろと言う方が無理な話ですがーー
「信じるよ?」
ーーはっ!?」
「いや、だって俺の親父、魔術師だったし。」
「マジで?」
「ああ、普段は隠さなきゃならないらしいが同じ魔術師、しかも敵意がない相手なら問題ないだろう。」
呆れた。
この人お人好しにも程がある。
「いやいやいや、あっさりバラしてどうするんですかっ、私が実は悪い女って可能性は考えないんですかっ!?」
「信じるよ、君が悪女なら…最初に魔術師だなんて話さないだろうし、目を見れば悪人かどうかくらいわかるさ。」
な、何と言う…ど天然。
あまりにも、純粋培養過ぎるんじゃなかろうか。
「それに、正義の味方はーー女の子を大事にするもの、だろう?」
【後書き的な何か】
はい。
順調に餌付けされるぐだ子。
エミヤさんの調理スキルは高校生当時すでにプロに迫ると思います、原作見る限り。
とりあえず前回長くて仕方なかったから日常パートで短く区切りました。
こんな感じで、お話は徐々に進めて行きます。
多分、きっと。
次回は桜登場予定。
SYURABA、になるのか否か。
それでは次回、またお会いしましょう!
2016.5.26.18:55 某所にて初稿投稿。