ゆっくりですが、シリーズ執筆再開していきます、またおつきあいのほど、よろしくお願いします!
半ばが焼け焦げた木々の間を走り抜け、夜の公園の中で3つの影が交差する。
「最初から互いの場所が知れているなんて…どうにも不利だ、ね!」
と、愚痴をこぼしながら腰のホルスターから抜いた短銃を連射する。
「ハハハハハハッ、無駄だ、衛宮切嗣!」
嬉しくてたまらないといった表情で黒鍵──、代行者が使う簡易式典礼装を扇状に展開して弾丸を弾き、躱しながら迫るカソックの男…言峰綺礼。
「私を、忘れていただいては困ります!」
横合いから飛び出したエレインが尋常でない速度で体当たりを仕掛ける。
「──身体強化か、驚異的な速度だが…緩いな、女!」
あっさりと体当たりの勢いを肩から僅かに触れるようにして受け流した綺礼は、そのままエレインの背後にまわり…深く踏み込み、足裏から腰、肩にかけて練りこんだ螺旋運動のみでエレインの華奢な身体を弾き飛ばした。
「きゃあっ!?」
意外に可愛らしい声を上げて吹き飛ぶエレイン。
木の幹にぶつかり、ウッと呻いて崩れ落ちた。
「
ニヤ、と口角を吊り上げてエレインを一瞥した後直ぐに切嗣に視線を戻す綺礼。
「緩くなったのは…君じゃあないのか、言峰綺礼!」
足で踏んで仕掛けていた罠を起動。
綺礼の足元から真上に吹き上がるのは対人地雷、凶悪な威力を誇る鋼弾が、人の身体など易々と──
「は、見越していないと思ったか?」
綺礼の身体は驚くことに、その衝撃をものともしなかった。
否、正確には鋼弾が…爆風に捲き上る土煙までが全て滑るようにして身体に触れずに通過していく。
ありえない。
「な、なんだと?」
驚く切嗣を見て益々口角を吊り上げ、答えを出す綺礼。
「クク、貴様がこうした道具に頼る事は分かっていたのでな…ギルガメッシュから借りた矢避けの護りを付与した魔術礼装だ。」
チャラ、とカソックの中からネックレスを取り出してみせる。
「チ…やっかいな!」
不味い状況である。
近接戦闘に秀でた相手に対して飛び道具が実質封じられた。
地雷が吹上げた爆圧や鋼弾まで「飛び道具」と認識するのか。
…わざわざ銃を防いで見せた後から明かしたあたり、何度でも完全に防ぐと言う訳ではなさそうだが…あと幾度叩きこめば通じるかが解らない以上望みは薄い。
あちらからすれば致命的なもの、躱しきれないものを礼装で無効化するだけの話だろう。
仕方なくスーツの内側、銃とは逆に吊るしてあったサバイバルナイフを抜き、ホルスターと役立たずになった銃を投げ捨てた。
これで手持ちの武装はナイフと…懐のコンテンダーカスタムのみ。
「ぐ、噂にたがわぬ実力…流石は元、代行者…人外を相手に立ち回る化け物揃いとは聞いていましたが…私も拳法、習っておけば良かったなんて今更思いましたよ…つぅ…!」
顔をしかめ、ふらつきながら立ち上がるエレイン。
「…頑丈だな、背骨が折れていてもおかしくない当たり方をした筈だが…。」
僅かに眉を上げ、エレインの頑健さに驚く綺礼。
「生憎、頑丈さだけが取り柄なんです、私。」
「下がれ、君では足手まといにしかならない…むしろアーチャーの補助に回る方がいい。」
「何を…貴方も攻め手がないんじゃないですか、
強がるように軽口を叩くエレイン。
「…だが、君がいても変わる訳では、」
「あまり見せたくはありませんでしたが致し方ありません…!」
と、先ほどと同じく無策に体当たりを仕掛けるエレイン、あれでは先の繰り返しだ。
いや、僅かに違うとすれば左手が何故か曲げられ、何かを構えるような動作で突き進んでいるが…肘打ちでも加える気だろうか?
「やめろ、無駄だ!」
叫ぶが、遅い。
「…愚かな!」
綺礼も先と同じようにエレインの肩口に合わせて受け流そうとして──
吹き飛んだのは言峰綺礼の方だった。
「ぬぐわっ!?」
バチ、と弾かれたようにエレインの身体に触れる前に、綺礼の身体がまるで車に跳ねられたかのように錐揉みしながら空中に投げ出される。
「…な、んだと!?」
しかし、体操のオリンピック選手もかくやという身のこなしで僅かに体制を崩しながらも着地する。
「…何をした、女!」
「さあ?手の内を明かすのは三流のやる事ですから?」
先ほどの綺礼の行動を揶揄するように言い返すエレイン。
戦局は膠着し始めていた。
互いが互いの手の内を見破れない、或いは対処に困る現状。
エレインのなんらかの手もまた、綺礼に致命傷を与えるには足らない。
数度、繰り返されたその攻防に区切りがついたのは綺礼と、エレイン双方が唐突に呻き、飛び退いたからだった。
「く、アーチャーっ、宝具を連続展開しましたね…ま、魔力を使いすぎ、で…う!」
「ち、ギルガメッシュめ…まさかアレを抜いた、な?」
互いが魔力をサーヴァントに吸い上げられたのだろう。
本来なら絶好のチャンス…しかしあの矢避けのネックレスがある以上切嗣には手段が無い、バーサーカーもまだランサー戦のダメージから回復していない。
「この場は…預けたぞ、衛宮、切嗣!」
口惜しそうに吐き捨て、言峰綺礼は去っていく。
「悔しいのは此方だよ…全く忌々しい…大丈夫かい、エレイン?」
膝をついたエレインを抱き起こし、支える。
「だ、大丈夫…魔力を…かなり持っていかれてしまいましたが…。」
蒼白な顔。
あまり大丈夫には見えなかった。
********
「疾く、滅びよっ!」
黄金の波紋から無数の宝具が飛び出しアーチャーを襲う。
剣、槍、斧、刀、様々な武具は全てに神性を打破するための力を備えた宝具だ。
「…こりゃあ、喰らえば痛いではすまんな、あ!」
アーチャー…、ゼウスも負けじと雷光を激しく迸らせて宝具の群れを撃ち墜とす。
「我(オレ)は貴様ら神々がどうしようもなく煩わしい、虫唾が走るわ!」
「初対面からなんだかんだと言われても困るな…貴様はあれか、現代で言うところのボッチか、ボッチと言う奴だな、うわはははは!」
「我を…出来損ないの凡百と同列に扱うでないわ、この愚神めがっ!!」
激情に駆られたギルガメッシュの背後と言わず、あらゆる方向から宝具群が顔を覗かせると一斉に発射された。
それはさながら黄金の竜巻の如く波紋は次々展開されてはゼウスへと宝具射出を繰り返す。
「は、こいつぁかなわんな!」
僅かに慌てるそぶりをみせたゼウスだが、声にはまだまだ余裕がある。
「現世より疾く去ねっ!」
恐ろしい轟音と閃光が辺りを染め上げ、嵐の様な攻めが終わる、と同時に。
「油断大敵、と言う言葉を知っとるかっウルクの英雄王!!」
頭上より声とともに降り注ぐ極太の雷光。
ゼウスの姿は先ほどまでの重厚な黒い鎧ではなく、眩い輝きを纏う純白の軽鎧に換装されていた。
宝具、
雷光が如き動きを可能にする雷光そのものを凝縮した光の鎧。
ランサーに見せた雷速の移動を常に、それも空中ですら飛行可能にしたその速度は黄金の竜巻を逃れて余りあるものだった。更にはその効果は速さのみではなく、雷を増幅する効果も備えている。
「な、めるなっああああっ!!!」
ギルガメッシュの背後から飛び出した自動迎撃宝具である銀の円盤群が雷光を遮り、威力を減衰させる。
が、打ち消すことは叶わず押し負け、煙を吹いて爆散した。
が、威力を落としたソレを新たに取り出した雷光を吸収する効果をもつ剣で払い、ようやく相殺する。
「これを受けきるか…英雄王の名は伊達ではないな、んんっ!?」
「貴様に褒められようと…苛立ちしか湧かんわ戯けっ!!」
ともに破格の霊格を備えたアーチャー同士。
恐ろしいまでの遠距離戦が繰り返される。
ただ、多彩な宝具を操るギルガメッシュに対してゼウスはその手数はともかく、種類は少ない。雷と、電磁誘導によるレールガン化した物質射出のみだ。
だが。
ギルガメッシュに乖離剣「エア」がある様に。
ゼウスにもまたまだ見せていない残り10の神具がある。
オリュンポス12神の力の象徴たる神の扱う宝具が、そして自身の切り札たる神の雷も。
「ふははははは、当たらねば意味がないぞっ英雄王っ!!」
神性を打破する宝具をいくら撃ち込もうと、確かにゼウスのあの速度では当たるもなにもない。
「ならば…縛り上げてやろう、天の鎖よ!」
ギルガメッシュが手を振り上げ、振り降ろすと360度あらゆる方向から鎖が飛び出した。
その先端は尖っており突き刺されば無事ではすまないだろう。
「は、どうしたところで囲みを抜ければ同じこ…ぬ!?」
先ほどと同じく鎖の囲みを抜けようと速度を上げると、鎖もまた恐ろしい勢いで加速し、ゼウスの脚を捕らえた。
「馬鹿な、なんじゃこれは!?」
「天の鎖…我が友エルキドゥが遺した対神宝具…原初の神すら拘束せしめた神縛る鎖よ、そぉら、締め上げてやろうぞ!」
左脚がギリギリと鎖に締め付けられ、肉を裂き、血が滲む。
「は、神の血も赤色であったか!」
愉快そうにギルガメッシュが笑い、更に手を振り下ろす。
鎖がゼウスの四肢を拘束し、宙空に磔にした。
「ふははははっ、その鎖は貴様の神性が強ければ強いほど強度を増し、なおかつ締め上げるっそのまま手脚を引きちぎるか、或いは串刺しか…選べ…愚神!!」
「やれやれ…この様な切り札を持っておったか…仕方あるまいっ大盤振る舞いじゃ…神の権能、我が系譜──顕れ出でよ。」
ゼウスを中心に膨れ上がる神気。
鎖はそれを感じ益々締め上げるが、ゼウスは僅かに顔を歪めたのみで宝具を発動する。
「
手を封じられているからか、ゼウスの眼前に顕現した黒い刃をもつ諸刃の片手剣。
それは一種恐ろしい黒々とした刃に光を反射させ…生じた赤黒い火閃が天の鎖を一瞬にして焼き切った。
「なぁ、にぃっ!?」
驚愕しながらも再度鎖を展開しようとするギルガメッシュ、だが。
「天の鎖よっ!!」
鎖は、姿を見せない。
「な…、天の鎖よっ!?」
悲鳴に近い声で、ギルガメッシュが珍しく取り乱す。
「…貴様とその厄介な鎖のえにしを一時的に断ち切った…いかに叫べどもその鎖は応えぬよ…では…反撃といこうかの!!」
軍神の剣が消え、ゼウスがそう言った直後。
ギルガメッシュが爆ぜる様に飛び出し、手にした剣で切りかかった。
「ぬわっ!?」
鬼気迫る勢いと、その異常な速度。
先ほどまでのギルガメッシュとどこか違う。
「貴様、貴様っ、よくも…エルキドゥとの絆を、断ち切っただと…許さん、許さんぞこの、この…クソ戯けがああああっ!!!」
語彙が貧弱になるほど、ギルガメッシュは怒りに狂いながら剣を振るう。
「ぬわっ、と、ほ、おおっ!?」
ギルガメッシュの周りにいくつもの文様の様な輝きが見える。
おそらくあれらがギルガメッシュの身体能力を限界以上に引き上げているのだろう。
「い、イランプシィの雷速に追いすがるなど、出鱈目だな貴様っ!!??」
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、消え失せろこの愚物がぁーーー!!!」
剣で切り掛かりながら宝具を射出し、更には自動迎撃宝具を攻撃に転用し、自らを掠める様な射出の仕方のなりふり構わない血眼の攻め。
それでも躱し続けるゼウスに業を煮やし、再び大量の宝具を連続展開する。
「ちょこまかとぉ…逃げ回るしかできんのか、貴様はっ!」
そして、先ほど以上の速度で撃ち出された黄金の竜巻、その流れに放たれた雷を放ち、吸収もする自動迎撃宝具。
それを盾にして引き抜いたのは──
黒い螺旋を描く幾何学的な尖塔に赤いラインが走る奇形、英雄王が誇る最強最大の対界宝具、世界を撃ち壊す創世の剣。
「ちいいっ、ソレは、まさか…!」
「知っていたか…ならばこれを拝謁する栄誉に咽びながらあの世に行け!…我が最大の一撃にて幕引きとしてやる…滅ぶがいい…っ、
乖離剣の螺旋塔部分が回転をはじめ、今にも放たんと振り上げた、その刹那。
ドクン、と鼓動が跳ね上がる様に。
ギルガメッシュの脳裏に記憶が駆け抜けた。
「なんだ、この…記憶──は、く…n?」
唐突に動きを止めたギルガメッシュを訝しみながらもゼウスもまた助かったとその隙に離脱する。
「なんじゃ、あ奴?…まあ、マスターに無理をさせすぎたよってな…ちょうど良いわ。」
頭を抱えるギルガメッシュを他所に。
ゼウスは逃げの一手を打つのであった。
【後書き的なもの】
皆さま…大変、大変っ、お待たせ致しました!(平伏)
エミヤ「( ^ω^ )」
朔弥「( ^ω^ )」
エックス「( ^ω^ )」
三人「「「出番は??」」」
ごめんっ、めっちゃごめ…いや!朔弥っ、君は別シリーズでエミヤとイチャコライチャコラしてたやないかっ!?
こっちが停止してたのそちら書いてたからだし!?
朔弥「そこまでして未完結じゃないか。」
うっ、それは…
エックス「筆者の文才と集中力の無さを責めてはいけませんよ?」
グハァッ…!?(クリティカル)
さ、流石アサシ…ぶべらっ!?
エックス「セイバー死すべし慈悲は無いっ!」
ちょ、まっ…俺はセイバーじゃねえだろうっ!
みぎゃああああっ!?(斬
エックス「悪は滅びた…」
朔弥「…筆者を斬ってしまったら誰が続きを書くのかな…?」
エミヤ「……アンデルセンあたりに?」
二人「「やめろ、それはいけない!」」
アンデルセン「失敬な、だが私に書かせたらあまりハッピーエンドにはならんかもしれんな!ふわははははっwww」
…てめえら、覚えてろよ特にエックス!!
四人「「「「あ、生きてた」」」」
=
と、いうわけで久々にシリーズ再開しました。
いろいろ書いてるので前みたいな速度は出ませんが、暖かく見守っていただけたら幸いです。
以下、宝具データ。
【内包神具】
○ 「
もえ、やきたつぐんしんのけん。
オリュンポス12神が一柱、軍神マルスが腰に佩刀していたやはりヘパイストス製である無銘の片手剣、空間を裂き「縁」すら断ち切る断絶の刃である。
神鉄をバターの様に焼き切る恐ろしい斬れ味。
使い方次第では魔女メディアの宝具、ルールブレイカーに近い使い方も可能とする。
但し射程は刃そのものか、射程半径1メートル程の刃から生じる火閃で触れていなければ概念や縁は断ち切れない。
他にも権能を備えるが、ゼウスは本来の使い手では無いため扱いきれるかは未知数。
剣としても優秀で、本来の持ち主であるマルスがセイバーとして召喚された場合はエクスカリバーガラティーンに似た炎熱纏う斬撃を熱衝撃波を伴う光の帯として照射する。
【筆者蛇足。】
セイバーはビームを放つモノ…型月的な話ならそうなる、え?沖田さん?はあ、セイバー、あ、ハイそうですか…何事も例外はあるんですねー(棒)。
では、皆さままた次回更新で会いましょう!
しーゆー!!