Fate/alternative   作:ギルス

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今回は、無駄にお酒的な知識回。
まあ…少し調べただけのにわか知識がもとだから、詳しい方間違いとかありましたら教えてください、はい。

因みに作中に登場するお酒は実在するお酒をモデルにしています。
お値段とかマジでそんな価格。

ん…あれ?ラブコメ?あれ…?


第27話 『酒精』

酒屋兼居酒屋、コペンハーゲン。

 

新都のオフィス街にある洒落た内装を持った店で、店舗は地上部分には酒屋、地下に続く階段の下にはバーがある。

昼は配達も承る酒屋、夜は居酒屋にと忙しい隠れ家的な人気店。

 

冬木市にある酒屋の中で、ある意味最も品揃えがマニアックな店。

それにはとある理由と、負けず嫌いな店員、音子(ネコ、と読むべし、おとこと正しく読んではいけない。)に原因があるのだが。

まあ、今はそこは割愛しよう。

 

「と、言うわけでさあ士郎ちゃん、頼んだよ〜〜上得意様なんだよ、ご予約の方。」

 

「ハイ、任せてくださいお二人にはお世話になりぱなしですから。」

 

切嗣が居なくなった後、蓄えだけでは不安だからと探したバイト。

しかし、未成年を雇い入れてくれる筈も無くどうしたものかと思いながらも探していたら、ネコさんの親父さん、コペンハーゲンの店長は事情を聞き、快く雇ってくれたのだ、その恩には報いねばなるまい。

 

そんな話を、一度店長に話したら「最初は兎も角途中からはむしろこちらが大助かりだ」とはありがたい言葉も頂いた。

 

「で、これなんだけどさ。」

 

と、店長が取り出したのはやたら厳重に鍵がかけられた黒いアタッシュケース。

 

「…はい?なんですこれ…なんでこんな厳重に??」

 

「いやね、凄くお高いお酒なんだよ、コレ。」

 

「はぁ、にしても大袈裟じゃありませんか?」

 

「ははは、値段聞いたら飛び上がるよ〜」

 

と、士郎の腕に手錠をはめ出した。

 

「え、ちょ??」

 

「こうして万が一にも誰かに取られない様に、ね!」

 

「や、待ってください…店番するんですよね?」

 

カチャカチャ、と。

アタッシュケースと腕が繋がれる。

 

「うん、でもこれ本気で高いからさ。」

 

嫌な予感しかしない。

 

「…幾らなんです?」

 

「んー、都心に家が建つよ?」

 

「え、はぁ!?」

目を見開いて驚愕する士郎を面白そうに見守る店長。

 

「あははは、いやあ、コネと言うコネを駆使して手に入れたんだ、ネコが連れてきた客がとんだ富豪で、しかも我儘放題な青年でねえ、世界一の酒を献上してみせよ、なんていうのさ、献上だなんてうちはプライドを持って店を開いてるから、どんな王侯貴族にもタダで酒をくれてなんかやらないって柄にも無く熱くなって啖呵をきってしまってねぇ。」

 

なんだか少し楽しそうな店長。

碌でもない話じゃないか、それ?

 

「そしたらさ、面白い。ならば金はくれてやるから最高の一品を届けてみせよ。でなくば貴様らの尊厳、命共々消えることになろう!だよ?いつの時代の暴君だよ、って思わない?」

 

「──店長、その暴君の相手を俺にしろ、と?」

 

「あははは、メンゴ☆」

 

古っ!?

いや、店長の世代ならそうかもしれないがそうじゃない。

 

「は、嵌めましたねネコさん…!」

 

どうにも、ネコさんの体調不良とやらも怪しくなってきた。

 

「と、じゃない店長〜早く連れてけ〜あたしゃ病人だぞ〜?」

 

と、一階の方からネコさんの声。

 

「…元気じゃないかよ…ったく。」

どうやら、面倒な客を押しつけられたか。

 

「あ、お酒の説明とかはそこのメモに詳しく書いてあるから、後はいつもの士郎ちゃんなら大丈夫大丈夫、宜しくね。」

 

(シロウ…私、なんだか嫌な予感がするのですが?)

 

とは、気配遮断で隠行中のはずのアルトリアの念話。

 

何故だろうか、その意見に激しく賛同している自分がいる。

 

「何故かな…うん、嫌な予感しかしないぞ?」

 

と、慌ただしく二人が出て行く音がして、店内がやけに静かになる。

 

「…そういや、何も受け渡しだけならバー (こっち)じゃなくて良かったんじゃないか…?」

 

「シロウ…問題はそこではないでしょうに…」

 

と、声がして振り向いた先にはアルトリアがいた。

但し、ネコさんがいつもしているのと同じ黒いエプロンに、給仕服(メイド服)に近い可愛らしいドレス姿だ。

 

「────…」

 

士郎が、たっぷりと2秒ほど固まった。

 

「シ、シロウ?やはりこの格好は変でしたか??」

 

変なものか、寧ろ…

 

「あ、ああ、似合ってるぞ?」

 

「あ、ありがとうシロウ…そう言われるとやはり嬉しいですね…?」

 

はにかむ様に上目遣いで呟くアルトリア。

ご、後光が差して見える…!?

 

「しかし、先ほどのネコとか言う女性…侮れませんね、私の存在を見破られようとは。」

 

「え、嘘だろ?」

今のアルトリアはアサシンクラス。

気配遮断している彼女を見つけるなんて人間業じゃないぞ?

 

「いや、それが意味不明でして…いきなりこう…エミヤんを狙う牝の匂い…出てくるが吉だよ!?──などと言われてしまいまして…意味はわかりませんでしたがとんでもない気配察知能力でした。」

 

「…それでアルトリアから出て行った訳か。」

 

「ええ、まあ…その後はなんだか分からない内にこの服を着せられまして…恥ずかしいですね、これは…」

 

「いや、似合ってる、凄く。」

 

「シ、シロウ…」

 

ぱぁ、と頬を桜色に染め、士郎と向き合うアルトリア。

やがて、アルトリアは目を伏せ、閉じる。

 

「──え、え?」

 

士郎とてお年頃、いかに鈍感でもそれが何を意味するかは──

 

「酒蔵の雑種はいるか!」

 

バァーンッ、と勢いよくバーの入り口が開き、入ってきたのは白のラインをアクセントにした黒いジャケットに白いワイシャツ、黒のパンツ姿の金髪、紅眼の美丈夫だった。

 

「あ…ぇ、ぃ?」

アルトリアが口をパクパクさせながらその闖入者を見て眼を白黒している。

 

「──なんだ、おらんの…む?」

 

男は、そう呟いた後にアルトリアに眼をやり、ニタリ、と満足そうな、しかしどこか高慢な表情でこちらを睥睨する。

 

「本来ならば…我を出迎えぬ時点で死をもって贖わせるところだが──なかなかどうして、気が利いておるではないか…なぁ、セイバー?」

 

「なんだ、あんた──?」

 

「痴れ者が、我とセイバーの逢瀬に立ち入るでない、今ならば見逃してやるから疾く失せよ…雑種。」

 

フン、と鼻で笑いながら士郎を歯牙にもかけぬとあしらう男。

 

「な、何故貴方がここにいるのだっ、アーチャー!?」

 

「ハ、我を誰だと思っている…?高々数年の魔力などどうとでも維持できるわ。」

 

「──さ、サーヴァント!?」

 

「察するに、その雑種が此度のマスターか…随分と貧弱な…セイバー、貴様のステータスにも影響があるのではないか、ん?」

 

まあ、その美しさと変わらぬ「愛嬌」があるならば強さの是非なぞ我は問わぬがな?

と、男、アーチャーは勝手な理屈を並べたてる。

 

「ギルガメッシュ…、古代ウルクの英雄王──シロウ、気をつけて下さい…あれはこと英霊を尽く凌駕しうるだけの財を持つ難敵です…!」

 

「…!」

 

士郎もまた、聞いた事のあるとんでもない大英雄の名に慄く。

 

「ふん、そう褒めるな、こそばゆいでは無いか…まあいい、セイバー、お前が居るのは嬉しいが…今日は酒を買いに出向いたのだ、酒蔵の雑種がこの我を唸らせる品を用意すると豪語したのでな…戯れに金を与えて奔走させて見たのだ、今日が期限であったのだが──」

 

「…へ、じゃあ…お客様じゃないか、すみません、これは大変失礼致しました…ではこれを買い付けにいらしたのはお客様、ギルガメッシュ様でよろしかったでしょうか?」

 

と、士郎が突然がらりと対応を変え、接客モードに移行する。

 

「え?え?し、シロウ??」

 

アルトリアはその急変に頭が追いつかずに混乱する、が。

 

「──ほぅ、客と認識した途端に掌を返すが如き…いや、そのプロフェッショナル振り、見事である…少しはましな雑種であったか、良い…では酒を出して見せよ。」

 

「はい、少々お待ちを。」

 

返事を返し、アタッシュケースの鍵を一つ一つ開け、開く。

手錠も外し、中身をバーカウンターに置き、開帳する。

 

「えー…銘はマッカ◯ン・インペリアルM、その試作品との事ですが…最高の腕前を持つ硝子細工職人が創り上げた至高のボトル、中に封入されたのは万を超える樽から選び抜いた7種から、25〜75年物の最高品質の物を調合したウィスキーであるとの事…王にご満足頂くため、マスターが苦心の末に手に入れた、まだ市場に出回る前の最高級品をご用意しました。」

 

アタッシュケースから取り出された、琥珀色の液体を湛えた美しいボトル。

それは、後に市場にて約65万ドルで落札される事になる正規の品の、いわば刀で言う影打ち。

真打の名刀の如き譽れは無くとも、その切れ味に変わりは無い。このウィスキーもまたそういった珠玉の逸品であった。

 

後の正規品と比べ幾分か職人の遊び心の入ったボトルは古風なデザインであり、そこには宝石の様に一見して誰にでも高い、と思わせる装飾は無く、しかし見事なカッティングと、どこか幻想種に似た雰囲気を持つそのデザイン。

本来市場に出すには少々趣味に走りすぎて蔵入りしたモノ。

ボトルの先端には天馬があしらわれ、表面には美しいカッティングを施されたガラスがさながら琥珀の海に宝石が膜を張るように、輝きを放つ。

 

しかし、今回ギルガメッシュにこれを用意するにあたり、敢えてこのデザインのものを選んだ店長の眼力、正直何者だ。←

 

「ほぅ…悪くは無い、見た目は合格だ。」

 

ギルガメッシュがそう呟き、手を翳すとそこに黄金の波紋が浮かぶ。

波がおさまると、そこにはキラキラと光を零す妖精の様なものが舞っていた。

 

「な、なんです、それは!?」

アルトリアが警戒心露わに声を上げる。

 

「静かにせよ、これは酒精の一種だ…我が宝物庫の酒蔵に住まうものでな、飲まずともその酒が我が財宝に足るか否かを見分ける生き物よ。」

 

「はぁ、便利だなそれ…目利き、いや酒利きの必要無いじゃないか。」

 

「中には希少性から開封を躊躇う場合もあろう、それが真に価値あるものかを見極めるにはちょうど良いのよ。」

 

フン、と士郎の言葉に存外丁寧な解説をする英雄王。

 

やがて、光はボトルに纏わりつく様に円を描いて飛び回り始めた。

 

「…どうやら此奴の眼鏡にかなったようだな、良い…あの雑種には褒美を与えると伝えておけ、そうだな、貴様にも一つ褒美をやろう。」

 

そう言って、ボトルを先ほどの波紋にしまい込むと、光はそれを追って波紋に消えていった、そして英雄王は、何の気まぐれか士郎に向き直る。

 

「本来ならばセイバーにふさわしくない貴様のような雑種、斬り捨てても良いのだがな…先の応対、粗はあるがその年齢からすれば悪くはない、励めよ。」

 

そう言って差し出されたのは、一揃いのショットグラスだった。

美しく、先ほどのボトルを上回る精緻な細工が施されている。

 

「…あの、これは…?」

 

「貴様は雑種としてはましな部類に入る、故につまらん事で死んでしまうなよ、セイバーも一時預けてやろう…まあ、最後には我に傅くのだ…火遊びの一つくらいは容認する度量も王たる証よな。」

 

「…ああ、簡単に死ぬ気なんかないさ、感謝するよ…英雄王、ギルガメッシュ。」

 

今度は店員では無く、マスターとして、一人の衛宮士郎として答えた。

 

「シロウ…」

アルトリアが、ほぅ、と熱い吐息を吐き出して士郎を見つめる。

 

「故に、勝ち残り、最後に殺しあう前に一献飲み交わすくらいはしようではないか。」

 

つまりは、英雄王は士郎に、聖杯戦争で生き残り最後に己の前に立つことを許すと言っているのだ。

 

「そうだな…でも、お前と酒を飲むことはできないな。」

 

今の今まで上機嫌だった英雄王の眉間に皺がよる。

 

「ほぅ…つまらぬ事を、何故だ?」

 

「いや、だって俺未成年だから。」

 

それを聞いて。

英雄王は紅い眼をめいっぱい見開いた後、大声で笑いだす。

 

「ハ、クハハハハハハ!堅物すぎるであろう、小僧、少しは融通を効かせるくらいはせぬとセイバーに愛想つかされてしまうぞ、んん?」

 

クイ、と士郎の顎を持ち上げて瞳を覗き込む。

不意打ちのような動きの急変にアルトリアも慌てるが間に合わず。

 

「気に入った、お前が生き足掻く様を見るも一興よな。セイバー?」

 

「なんです、マスターから手を離しなさい英雄王!」

 

「貴様も──無様に生き足掻いてまでも此方側に舞い戻りたかったか…小僧の影響か?」

 

叙事詩に名高い英雄王、ギルガメッシュ。

その瞳に射抜かれ、士郎は身動きできずにいた。

 

(まずい、簡単に間合いを詰められちまった…この男の気分一つで、俺は死ぬ…)

 

ギルガメッシュの顔が息がかかるほどに近い。

ニィ、と口元を歪めて笑う。

 

「中々楽しい反応をしてくれるな、死ぬなと言ったところだ…まだ殺しはせぬから安心しろ…まあ、くれぐれも我を失望させるな、小僧。」

 

「英雄王!それ以上は許しません…!」

 

アルトリアが臨戦態勢に入り、服装はそのままに、手には黄金の剣が顕れる。

 

「ハ、最初から剣を露わにするとは…よほど此奴に執心とみえる…まあ良い、続きはまたにしておこう。」

 

と、バーカウンターに一枚の紙片を置くとギルガメッシュは直ぐに出て行った。

そこには小切手。

100000000、と記されたそれは確かに本物だった。

 

「英霊って…お金あるんだな…」

 

その後。

帰ってきたネコさんに散々からかわれた。

やれ、アルトリアの具合はどうだった、とか。

店を汚してないだろうな、勿論性的な意味で、とかなんとか。

 

そして、約四千万の仕入額との差に。

店長が喜色ばんだ悲鳴をあげたのだった。

 




【後書き的なもの】

はい皆様こんにちは。もしくはおはようございます、こんばんは。
ライダー/ギルスです。

今回、ラブコメ目指したはずだったのですけど。
AUOさんが引っ掻き回すに止まりました…

あるぇ??

そしてかなりどうしようもない理由からギルガメッシュ生存フラグが割れました。

何故貴方が、とか言ってますがアルトリアさん、落ち着いて?
貴女はちゃんと知っていたはずよ?

まあ、乱入そのものの話でしょうけどね。
食べ物やラブコメで重要な事を話すのが遅れたわけじゃないよ、多分?

さて、そこで今回は話は進みませんでしたが、
謎のアルトリアXさんの現状について触れておこうかと思います。
以下、ステータス。

クラス:アサシン(自称セイバー)
真名:アルトリア・ペンドラゴン
出典:路地裏さつきヒロイン十二宮編?
地域:サーヴァント界?
属性:混沌・中庸  性別:女性
イメージカラー:青
マスター:衛宮士郎

ステータス
筋力:B
敏捷:A+
耐久:C
魔力:B
幸運:D

宝具:EX

宝具:咆銘勝利剣・双極闇夜星光剣 (エクスカリバー・スターバースト)

やる事は無銘勝利剣 (ひみつかりばー)と変わらないが、威力は士郎と言う最高相性のマスターに加え、SN時点の様に魔力不足の問題もないことから最高威力の斬撃を複数回叩きこみ、如何なる幻想種も斬り伏せる絶技と化した。(故にランクEX)
また、無銘勝利剣と違い、闇色のモルガーンは星光を纏い、黄金と星光の共演に見る者を魅了する程美しい軌跡を残す。

ネタ時空で発生したアサシンクラスだが、真っ当な騎士王の意識が入る事、最高相性のマスターを得る事で大化けした成功例。

以上がアサシン、謎のヒロインXの霊基に入ったセイバーアルトリアのステータスでした。
まだ、記載していないモノも後々でてくるかもしれません。

それでは、また次回更新にてお会いしましょう!

しーゆー!!

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