アルトリア、君は悪くない。
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(;゚Д゚)
(゚Д゚;)
(;つД⊂)ゴシゴシ
(゚Д゚)え?
アーチャー、落ち着け?
聖杯戦争とは、願いを叶える願望機、聖杯を巡り願いを叶える為に七人のマスターと、サーヴァントが争い、聖杯を得るに相応しいと証明し、手にする為の闘争である。
要約すればそう説明を受けた後、士郎と朔弥はそれぞれ別の意味で首を傾げた。
「何故、わざわざ殺し合わなきゃならないんだよ、それこそスポーツみたいにルールを設けて競っちゃいけないのか?」
「衛宮士郎、だったな──ならば貴様は、大切な誰かを生き返らせたかった、として…誰かが決めたルールで、やりようによっては勝てたかもしれないとなって負けた時に納得し、願いを諦められるとでも?」
「う、いや…それは──」
「そらみたことか、ヒトは所詮ヒト…譲れない願いを抱えた者が、命もかけずに引き下がるなどと甘いのだよ、だからこそ聖杯も争いを長く凄惨なモノにしない為に…いわば慈悲をもってこの形式を定めたのでは無いかと思うがね。」
「そんな人間ばかりって訳じゃ…」
「そうだな、諦められる者もいるかも知れぬ、しかし全ての参加者がそう言えるとは流石に君でも思えるかね?」
「…っ!」
唇を噛み、黙る。
悔しいだろうな、この人心底お人好しだから…
そう考えながら、次は私かと声をかける。
「──貴方、本当に神父様?」
皮肉でもなんでも無い直球の疑問。
なんせ目の前の人物はあまりにも嬉しそうに衛宮先輩を論破し、愉悦に満ち満ちた顔をしていたから。
「…いかにも、迷える子羊に応える神父だとも、ああ…私ほど敬虔な信徒もそうは居らんよ、可愛らしいマスターよ。」
「…綺礼…あんた真逆ロリコンだったわけ?」
「何を言うのかね、これでも死別はしたが妻帯者だぞ、私は?」
聞いていた凛が驚愕している、知らなかったのだろうか。
「…色白で、可憐な女性でな──私のような殺伐とした男には似合わぬ聖女の様な女性だったとも…もっとも、私などに関わったが故に幸せらしい幸せを知らずに天に召されてしまったがね。」
「…あんた、元代行者だものね…奥さん、普通の人だったの?」
「ふむ、アレは代行者の妻になるには余りに普通の人間らしい幸せを感じ、私の様な者まで包もうとする変わり者であったがね、なんだ凛…男女の機微でも学びたいのか、なんなら教えてやらんでも無いぞ?」
ヌたりとした笑顔を向けられ、凛が怯む。
「お、お断りよこの変態!」
「ふむ、残念だが仕方ない…まあ、バーサーカーのマスターよ、君が言う様に私は人間味に欠ける男であるとは思うがね、しかし紛れも無く神職につくものだ。」
「…確かに淡々と教えを説くには良いのかもしれませんけど…いや、そんな話をしに来たわけでは無かった…。」
つい、脱線してしまったが。
いや、意図してさせられたのかな?
「…言峰神父様、貴方が代行者で、その上、私の父、九重十蔵について知っていると聞いたので…教えてください、父は…殺されたんですか?」
「──驚いたな、真逆君が、あのアジ・ダハーカの娘、とは…」
間を空け、応える様は本当に驚いた様にも見える、が。
「ならば、役割とは言え君のお父上には気の毒な事をした──私もまた、アジ・ダハーカ封印の現場に立ち会った一人でね…最後に手をかけたのは私では無いが…な。」
「なら、やっぱり…?」
「ああ、封印指定を受けた君の父上は不死殺しの刃で四肢を落とされた後、魔術協会の封印指定執行者がとどめを刺した。」
「…その、執行者の名前、は?」
怒りが、目の前を赤々と染める。
「流石にそれは話せない、聖堂教会と魔術協会とが連携して行った数少ない事例ではあるが、故にこそ機密を漏洩するわけにもな、それとも私を今すぐここで殺すかね、サーヴァントを従えた今の君にならば容易い事だ。」
一瞬、バーサーカーに命じそうになるが、怒りを必死に押しとどめる。
「──いい、です…実行犯でも無い人に手をかけたくは、ありませんから。」
実行犯でも無い人に、それはつまり…そういうことなのか。
自分で言いながら驚きだ。
「そうか、ならば…君は命の恩人と言えるな…ひとつ、ひとつだけ教えてやろう…その実行犯、此度の聖杯戦争の参加者の一人、マスターだ。」
「…ありがとうございます、神父様。」
「なに、これも神の使徒としての役目だとも」
「綺礼──あんたねえ!」
反射的に食ってかかったのは、凛。
「遠坂先輩!」
「なによ?」
「大丈夫、大丈夫ですから。」
「…九重、お前…」
士郎も、凛もそれきり黙る。
気まずいまま、もう聞いておくことは無いかと言峰が問うと、誰もそれ以上聞きはしなかった。
なんだか──妙に疲れた。
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「なあ、九重。」
「ナンデスカ、エミヤシロウ先輩?」
「なんでカタコトだよ…八つ当たりするなよ…いや、したくもなるだろうけどさ、気にしすぎるなよ、無理なら無理で吐き出しちまえ。」
「…衛m…いや、士郎あんたねえ…」
凛が呆れ顔で、言峰教会からの下り坂を歩きつつ士郎にぼやく。
「なんで、って…先輩が優しくするからじゃないですか──もう、馬鹿。」
「は?なんだそれ??遠坂、わかるか?」
「あたしに振らないでよ…わかるけど。」
「そうですよー、先輩はもう少し自覚してくださいね、この天然スクエア先輩はっ!」
ぺち、と脛を蹴飛ばされ、士郎は困り顔で唸るばかり。
(鈍いなー、鈍すぎるなー…こいつ、本当に──ん?スクエア、四角??)
はたと、凛も思いあたり、思案する。
(朔弥でしょ、桜でしょ…本人入れたって三角じゃ──ん、まさか…)
「ちょっと、朔弥っ、貴女まさか私も数えてないでしょうねっ!?」
「────え?」
心底から、違うの?そんな馬鹿な、と言う顔をされた。
「ちっ違うわよ馬鹿っ!?!?」
真っ赤になって否定する凛。
「違うと言われましても…ねえ?」
と、何故か実体化して歩いていたアーチャーを振り返り同意を求める朔弥。
「いや、私に振るのかね…君は…」
至極複雑な顔で言い淀むアーチャーの顔に何故だか溜飲が下がった。
「──んん〜??」
と、首をかしげ…
「ま、いっか。」
急に笑顔になる朔弥。
「「女(の子って)と言うのは──」」
何故かハモる、士郎とアーチャー。
「黙りたまえよ──」
「いや、お前が真似すんなよな?」
急に険悪な二人。
「「男って────」」
今度は、凛と朔弥の声が同期するのであった。
…お互い様だろう、これ。
そう思って見ているのは、意外にもバーサーカーである。
「全く、世話の焼けやがるマスターだ。」
面倒そうに、しかしどこか嬉しそうに。
その端正な顔を綻ばせる様を見たら。
メイヴは、あの我儘女王様はなんと言うだろうと。
薬代も無い事を考える程にはバーサーカーらしく無い思いを巡らせながら。
並列してその思考は。
この、聖杯戦争を捻じ曲げている何者かを。
どう、殺してやろうかと。
朔弥の父を殺したと言う執行者もまた、事実なら如何に苦しく、無惨に殺せば良いのかと。
あまりに「らしい」思考を巡らせていた。
結局。
ああ、俺はやはり、狂ってるな。
と、思い至るのみであった。
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「──いや、らしくねぇ。」
全く、本当に自分はどうかしてしまっていた。
教会でのやり取りを思い出し、冷や汗をかきそうな現実に辟易する。
「本当によ、ぬるま湯に浸かりすぎてふやけっちまってたなあ…」
あわや、士郎とともにマスター、朔弥までが宝具に吹き飛ばされる所だった。
ギチ、と尖った歯が唇を切り、血が流れた。
「感謝する、ぜぇ…青いの。」
バーサーカー、クー・フーリン・オルタが目を向けた先。
士郎と、朔弥を護るように飛び出した一人の少女。
その手には、英霊ならば、見間違えるはずも無い燦然とした輝きを放つ剣。
「──エ、エクス…馬鹿な、君は今回、現界していなかったのでは無いのかっ!?」
「──エ、え、…」
「──あ?」
「エーーーーックス!!!」
はあ?
と。
アーチャーの顔が面白い事になった。
「我が名はエックス!謎のヒロインエックス!けっして、けっして…アルトリア・ペンドラゴンなどではなあいっ!!!」
「────」
(;゚Д゚)
(゚Д゚;)
(;つД⊂)ゴシゴシ
(゚Д゚)え?
こんな感じに。
アーチャーは面白いくらいに二度見、三度見していた。
「えー、と…アサシ、ン?」
マスターにのみ見えるステータスウィンドウを見て声をかける、と。
だばーー、っと。
本当にだばーー、っと。
涙を溢れさせながら「ジャージ」に、「体操着」に、「ブルマ」ハーフパンツではない。
更に胸には「あるとりあ」と平仮名で書かれている少女──あるぇ、さっき自分でアルトリア・ペンドラゴンでは無いとか言いませんでしたか。
さておき、少女は、泣きながら答えた。
「セッ、セッ──」
「セッ○○?」
「小学生みたいな煽りヤメろ馬鹿!?」
戯けた事をほざいたバーサーカーにはハリセンで突っ込んでおいた。
さっきふやけっちまってたなあとか言いながらしっかりボケかましてるよこの狂犬…って。
「セイバーなんでずううう、アルトリアでいいんですう〜っう、うわああん!?」
なんか、大号泣された。
「こ、この
「…その、剣…間違いなく君はアーサー王…いや、アルトリア・ペンドラゴンなの、だな?」
「し、信じてくださるのですね、流石アーチャーですっ!!」
眼を潤ませながら息つく暇もなく訴えているアサシ…いや、自称、セイバー。
「話が全くわからないんですが…」
凛は完全に置いていかれ。
朔弥はなんだか首を何回も何回も傾げていた。
「…なあんだろう、何回もこんな光景を見たような、でもコレジャナイ感がある、ような気が…???」
「まて、落ち着け、アサシ── 」
「違いまずゔ〜セイバーなんでずうう!?」
「あ、わかった、わかったからセイバー!」
泣きながら鼻水を擦り付けるセイバー(仮)にどうしたらいいのかと言う顔の士郎。
「…なんだろう、何か、何か壊れちゃいけない幻想が壊れたような気がしてならないっ!」
困り顔で器用に泣き笑いの様な声で呟く士郎の声で、何故かアーチャーが
「俺は、答えを得たから──だからもう、いいよな…?」
呟く台詞がなんだか不味い。
「…ちょっとあなたたちっ…いい加減に…ッ、しろーーーーーッ!!」
カオス極まりかけたその場に。
凛の大音量の一喝が響き渡った。
「はっ!」
「あ。」
「…め、面目ない…ちとトリップしてしまった様だ…クッ…!」
いや、アーチャー、くっ殺さんですか?
違うよ、貴方にそんな属性ないからね?
「なんだかわからないが凄く悲しくなったんだ…なんだろう、本当になんだろう…」
衛宮先輩、頑張って下さい、なんだかわかりませんがわかる様な気もします。
「す、すみません…取り乱しましたはい、私はアーサー王の別側面…かなりふざけた時空で発生した…所謂黒歴史なんです…でも意識は、意識はきちんと私ですからっ、セイバー死すべしとか無性に叫びたくなるけど、私は私ですからっ!」
「…セイバーに何か恨みでもあるの?」
遠坂先輩の至極まともなツッコミ。
「…聞いたら駄目だと思います、本当に勘弁してください…」
アーサー王、また泣きそうだった。
「…と、とりあえず…気を取り直して!」
パン!と頬を叩いて気合を入れ直したアサ、いやさセイバーが士郎に向き直る。
「ス──、ハァ、問おう。」
「え、あ?」
「貴方が、私のマスターか?」
「……あ、ハイ多分…?」
困惑顔のまま、士郎は令呪を翳す。
両手、共に。
「では、これより、我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある──サーヴァント、アルトリア・ペンドラゴン…これより貴方の剣と成ろう…。」
粛々と、金砂の髪を揺らしながら告げる、彼女は確かに美しい。
しかし、ブルマが。
体操着の名札が。
「あ、ああよろしく、セイバ…ブフゥ!」
今、そこに気づいた士郎が吹いた。
盛大に吹き出した。
「し、シローーゥ!?」
今度こそ、騎士王がマジ泣きした。
…ねぇ、大丈夫?この聖杯戦争、大丈夫?
とりあえず。
新たな仲間が加わったのである。
──どうしてこうなった。
【後書き的なもの】
はい。
ごめんなさい、長い長いシリアスに耐えきれなかったんです。
とうとうシリアスブレイクしました、セイバーファンの皆様には本当にごめん、マジごめん。
でも。
セイバーがアサシンクラスで現界した事、士郎に6画二種の令呪が宿った事にはきちんと意味があります。
今後そこは明かしていきますので、最後まで是非、呆れずにお付き合い頂けたら幸いです。
と、言うわけで。
前回の回答は②。
アサシンが正解でした。
最後の「セイバー!!!」、はイリヤの叫びでもなければ記憶を持っていた士郎の叫びでもありません。
アサシンアルトリア──謎のヒロインXの、雄叫びだった、と言う酷いオチでした。
うん、自分でも酷いと思います。
あ、胸のゼッケンは中の人が隠す気皆無なため「あるとりあ」になっています。
当初は、違う形のはずでしたが。
この方が面白いよね?
たまにはハメを外そう?
と。
ナイアルラトなんたらさんが囁きました。
煮え 滾る 混沌 の核 !!! (CV 折笠愛&若本規夫)
いや、よそうぜ兄弟。
次回には修正しよう?
本当に修正しよう?
…大丈夫、さすがに脱線したままにする気はありません。
シリアスに戻るから。
シリアルじゃないから。
信じて、お願い?
と、言うわけで!
また、次回更新でっ、会いましょう!!
しーゆー!