Fate/alternative   作:ギルス

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祖は雷(イカズチ)、神鳴るモノーー
狂気の月は昇り、戦局は混迷を極めてゆく。
果たして、争いは誰が為か。
新アーチャー、参戦。

☆【現在判明している正史との相違点。 】
◆ 主人公は最近影薄いけどぐだ子(朔弥)。
◇ ぐだ子(朔弥)がオルタニキを召喚。
◆ 衛宮士郎が実戦レベルの魔術を使える。
◇ 切嗣は死が確定しておらず、行方不明。
◆ アインツベルン陣営はセイバーを召喚。
◇ ランサーが近代中国の英霊。
◆ 一部鯖にカルデアの記憶が…?
◇ 聖杯により(?)裁定者(ルーラー)&復讐者(アベンジャー)召喚。
◆ 更に7騎の英霊が追加召喚される。
◇ 間桐慎二と英雄王が組まない。
◆ 慎二の第二鯖はフランシス・ドレイク。
◇ ドレイクは月の聖杯戦争の記憶がある。
◆ バゼットの鯖はフィン・マックール。
◇ 大聖杯の存在する大空洞内に謎の結晶。

また、ぐだ子はカルデアでの事は覚えていませんし、そもそも並行世界の同一存在です。
しかし、同じ人間ではありますから…何かはある、かもしれません?
と、言っていましたが段々それも怪しくなってまいりました、果たして…真実は?

ぐだ男は………。



第17話『雷霆』

「ーー慎二、あれはマズイ…気づかれる前に逃げるよ。」

 

「おいおい、あれだけ自信満々だった癖に何言ってんだよお前…」

 

「ーーそうじゃない、格が違いすぎるんだよ…あれは最早サーヴァントであってサーヴァントですら無い…神霊クラスの化け物だ。」

 

目の前に立つのは二人の巨人。

その傍らにはそれぞれ愛らしい少女が見えた。

方や、灰褐色の肌に癖の強い髪を撫でつけ、束ねた巨人と美しい銀の髪に紅眼を持つ美少女。

慎二にすればライダー(メドゥーサ)の仇。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとセイバーのサーヴァントだ。

 

方や、紫がかった薄桃色のショートカットにオーバルフレームの眼鏡に白衣と黒いシャツ、ネクタイと養護教諭ーー所謂保健室の先生の様な服装の女性。

その前に立つのは、豪胆な表情、やたら立派な髭を生やした初老の男性。

その体躯はゆうに190cmはあるだろうか。

灰褐色の巨人ーーセイバーと比べれば低いものの肉体の厚みはセイバー以上。

重厚な黒い鎧に身を包み、両腕を組んだままにあのセイバーをーー格下を見る様にして睥睨している。

 

「ーー久しいな…一応はセイバーと呼んでおこうかのぅ?」

 

「ーー何故貴方が…貴方ほどの方がサーヴァントとして召喚に応じただと…、冗談では無い、イレギュラーにも程がある…!!」

 

「ーーセイバー、何なのアイツ…失礼極まりない奴だけど…とんでもない魔力を感じる…それこそ、サーヴァントなら7騎全てを束ねても及ばない位のーー」

 

「ーー力だけは有り余るが、中身は唯の好色家だ…イリヤ、決して奴に近づいてはならん、孕まされるぞ。」

 

「ーーは、はらっ…なっ!?」

 

生真面目なセイバーがなんともとんでもない発言をした事と内容に狼狽え、赤面するイリヤスフィール。

 

「ーーアインツベルン、でよろしいのですよね…私としては早く決着をつけてしまいたいんです…正直聖杯戦争を早期に決着させる為とは言え…この様な方と絶えず一緒にいるのは耐え難い苦痛ですので…大人しく脱落して貰えませんか?」

 

「ーー貴女、私とセイバーを舐めてる?」

 

イリヤの表情が苛立ちを含んだモノから、鋭く殺意の込められたモノに変わった。

 

「ーーセイバー、勝てるわよね?」

 

「主命とあらば、如何なるものであれ打倒して見せよう。」

 

セイバーがその手に、ライダーを引き裂いた炎剣を顕現させる。

 

「ーープライド、ですか…プライドで死んでは余りに割が合わないのではありませんか?」

 

「左様、確かにワシに勝てるとすればーーお前と…後は古代ウルクの王くらいか、だがそれとて極小の可能性に過ぎまい?」

 

髭を撫でながらさも当然だとばかりに言い放ち、ようやくの事で構えをとる男。

しかし、その手には何も無い、無手だ。

 

「ーーアーチャー、こうなっては仕方ありません、やりますよ?」

 

「承知した、褒美はそなたの胸を一晩貸し切りにしてくれればそれで良いぞ?」

 

「…いい加減に本気で怒りますよ?」

翳した彼女の手の甲には令呪。

青い、雷を模した形の刺青にも似た令呪が見えた。

いい加減にしないと令呪で命じるぞ、と言う脅しだろうか。

 

「ふぁっ、はっははは、良い良いそれでこそ落とし甲斐がある!」

 

あっさり拒否されるが、へこたれもせず豪快に笑うアーチャー。

 

「待たせたな、では旧交を温め合うとしようか、セイバーッ!!」

 

バッ、と広げた両腕から、掌にかけて青白い光が迸る。

 

「ーー雷霆よ、穿て!!」

 

それは、雷光だった。

一瞬にしてセイバーへと到達した稲妻。

それはセイバーの対魔力により半ばが弾かれるが…残り半分はそれを貫きセイバーへと届く。

 

「ぬぐっ、相変わらずの威力…分霊としての現界でコレか!」

 

「どうしたセイバー、友が打った剣が泣くぞ!」

 

更に追い討ちをかけるかの様な轟雷がセイバーに迫る。

 

「抜かせっその母のーー己が妻の蛮行を野放しにした貴方にだけは言われたくないわっ!!」

 

「ハ、アレの思考は異常であるからなっ…我が子ながらヘパイストスは哀れであったわ!」

 

「ーー己が妻の手綱を握っておれば、そもそもあちこちの女に貴方がうつつを抜かしておらねば良かっただけの話であろうが!」

 

怒気を孕んだ剣閃が雷を払う。

その刃の煌めきは一瞬にして9つの斬撃を生じさせ、雷と相殺した3つを除く6つの煌めきがアーチャーを襲う。

 

「くわははは、効かぬなあ!」

アーチャーが胸を逸らすような動作をしただけで、黒い鎧から溢れた闇が斬撃を霧散させる。

 

「ーーっ…」

 

知らず、唾を飲み込む音がした。

余りに苛烈なその一撃、それがまるで前戯に過ぎないのがアーチャーの、セイバーの表情からわかるからだ。

 

《ーーなんなんだありゃあ…おかしいだろう、あいつらどっちも!》

 

流石に声には出さず、念話でライダーに怒鳴る。

 

《だから言っただろ…ありゃ化け物だよ、できれば相討ちしてくれれば一番良いんだが…そうはいきそうにないね。》

 

何故自分達はこんな風にコソコソと覗き見をしているのか。

それは少しだけ時間を遡るーー

 

************ーー…

 

「ーーライダー…お前さあ…なんで絡みついてくるわけ?」

 

街中を歩いて、標的を探そうかとしていた慎二に、ライダーは何故か腕を絡め、ぴったりと寄り添い、歩いていた。

 

慎二の顔は少しだけ赤い。

美女に腕を絡められているのは悪くないが…今はそんな気分にはなれない。

ただ、相手を探すだけなら簡単だ。

衛宮の家へ行けばいい、そこにはあのいけ好かないバーサーカーが居るだろう。

 

しかし、今の自分の怨敵はセイバーだ。

ライダーを…メドゥーサを斬り裂き、焼き殺したあのサーヴァントを。

 

「いいじゃないか、張り詰め過ぎても良い事なんかないよ?少しはあんたも余裕を持ちなよ…と、ありゃあなんだい?」

 

ドレイクが指差したのは新都の大通りに面したフードコートにある幾つかの軽食屋台の一つだった。

 

「あ?ジャガペだろ…新ジャガーー芋を丸ごと素揚げして胡椒をまぶしただけの貧乏くさい料理じゃないか…何、食いたいわけ?」

 

「こ、胡椒っ?とんでもない贅沢じゃないか…何処が貧乏くさいものか!」

 

ーーああ、そう言えば彼女が生きていた時代には胡椒は金と同等の価値があったんだったか。

 

「はふ、はふ、ほっふ、ほふっ!」

熱そうに、しかし心底嬉しそうに揚げたての、串に刺した芋を頬張る。

大粒の黒胡椒が美味いのか目の端には涙が泛かんでいた。

 

「そんなに美味いか?」

 

差し向かいにフードコートに座り、何本もの串を頬張るライダー。

ジャガイモとジャガイモの間にはベーコンが挟まれていて、 肉汁が溢れ、艶めかしい唇に脂がツヤを出していて…彼女の顔を見るに心底美味そうである。

 

「美味いさ!新鮮な野菜、肉汁溢れるベーコン…惜しみない香辛料…ああ、楽園はここにあったのか…。」

 

「は、大げさな。」

 

いつの間にかライダー、フランシス・ドレイクのペースに巻き込まれ、いつしか慎二も笑っていた。

 

「おや、笑ったね?」

手についた胡椒と脂をペロリと舐め、視線を向けてくる。

 

「ーーな、なんだよ悪いか?」

 

「いいや、大いに結構だね、えらいえらい。」

と、いきなり慎二の頭を撫で回すライダー。

 

「ちょ、やめろ馬鹿!」

少々照れながら、悪態を吐く慎二を更に嬉しそうに撫で回し、ヘッドロックする。

 

「いいじゃないか、減るもんじゃないだろう、ウリウリ!」

いつの間にか撫で回していた手はグーになり、頭をグリグリと攻めたてている。

 

「ちょ、痛、いたたたたっ!?」

 

そうこうしていると、周りの人の視線が段々集まり始める。

野性味あふれる美女と、黙っていさえすればそこそこ顔もいい少年。

周りからはどう映るのか。

 

「ーーば、目立つからやめろ、恥ずかしい!」

 

「あはは、初心だねぇ…ん?」

 

「なんだよ?」

 

笑顔が一転、厳しい顔つきになって一点を凝視する。

 

「慎二ーーちょっと来な。」

 

と、いきなり首根っこをつかまれて引きずられる。

 

「ーーは?何を、おい!?」

 

*******************

 

ズルズルと引きずられた先で、物陰に身を潜める二人。

 

ライダーの視線の先には、一人の女性。

薄桃色の髪に、憂いを帯びた表情。

年の頃は20代半ばか、前半。

オーバルフレームのーー横長の眼鏡をかけ、手元の文庫本に視線を落としている。

赤いネクタイに白衣を羽織った格好はどこかアンバランスではあるが…なぜかそれが似合うと言うか、不思議な魅力を持っている。

 

ーー大人びてる癖にあどけない表情。

ライダーも美女と言えるが、その女の子はまた、違う。

 

「…生きて、生き延びていたとはね…此処で出会うのも因果って奴か…。」

 

「知り合いか?」

 

「ーーああ、あちらは私を覚えているか怪しいけどね…。」

少し悲しそうな顔で答えるライダー。

 

「らしくない顔しやがって…調子狂うんだよな、全く…」

 

「は、慎二の癖に生意気な。」

 

「で?どうするんだよ?」

 

「尾行、しとこうか…まずは情報だ。」

こうして僕らは、その女性を尾行する事にしたのだーーあんな化け物に出くわすとは思いも、せずに。

 

************

 

「ーーはあ、遅いですよアーチャー。」

待ちくたびれたとばかりに溜息を吐く。

 

(ふははは、まあ良かろうて…まぐわい(、、、、)はわしの力を高めてもくれるのだからな、何よりわしの子種を賜るおなご共は幸せじゃぞ、神の子を宿すのだからな!)

 

このサーヴァント、事もあろうに街中で女性をナンパした挙句ホテルへしけこんでいたのだ。

一般人と性行為に及んだ程度で大した魔力にはならないだろうに、大体サーヴァントが子種を残すとか多分不可能だと思うが…確信は無いが…できるのか?

 

(いやしかし、最近の世の中は便利じゃの、あの様な趣向を凝らしたまぐわいの場があるのだから…らぶ、ほ…とか言ったか。)

 

「ーーこのセクハラゴッド…何故でしょう、なんだか今凄くイライラします…」

 

(なんじゃ、生理か?)

 

「ーー違います…殴りますよ?…兎に角行きましょう…先方が指定してきた場所に行かなければ。」

 

こめかみを押さえてイライラしながら立ち上がり、文庫本を閉じる。

そのまま文庫本を近くの屑篭に投げ入れると、足早に歩を進める。

 

(ふん、敵なぞ待たせて苛立たせておけば良いモノを…律儀な事だな。)

 

アーチャーの呟きは、誰に聞かれる事もなく。

彼らと、尾行する慎二とライダーは新都の外れへと向かうのだった。

 

**********

 

時は更に遡る。

慎二達が女性を尾行するもう少し前。

新都外れの廃区画のスポーツセンター周辺。

 

「ランサー、追いますよ!」

 

「委細承知!」

 

隙を突き、壁際に追い詰めたバーサーカー。

しかしトドメを刺そうと近寄った所で思わぬ事態が起こる。

窓から差し込んだ夕日が偶然にも反射し、一瞬だけ視界を奪われた。

その一瞬、一瞬で十分だったのだろう。

相手はひび割れた壁を蹴り砕き、外へと逃げ出したのだ。

 

「逃がさんよ!」

 

再び水の魔針がバーサーカーに殺到するも、今度は素早く横に飛んで躱された。

 

「おのれ、ちょこまかと…!」

 

こうも距離を置かれてはランサーもバゼットも攻撃手段が乏しい。

 

夕暮れに染まり、薄暗くなり始めた人のいない廃墟の街並みの屋根を飛び回り、追走劇は続いた。

やがて再開発が遅れている廃区画から出て、新都の外れへと場が移る。

そこはかつての聖杯降臨の場ーー10年前の惨劇の中心、未だ犠牲者の怨念が色濃く漂う場所。

冬木中央公園の只中であった。

 

そこに漂う空気、マナ、全てが異常なこの場所で。

バゼットとランサーは着地と同時に顔を顰める。

 

「これはっ…前回の聖杯降臨の地と聞いていましたが…マナが濃いとかそんな話で済むレベルではーー」

 

「躱せ、マスター!!」

 

目の前のバーサーカーとは明らかに異なる方向からの遠距離攻撃。

 

「むっ、何奴!?」

 

慌ててとびのいた先には、一人の男。

その手には、銃。

肉体強化を施していなければ反応できないタイミングだっただろう。

 

「参ったね…まさか躱されるとは…」

 

黒いコートを羽織り、目深にフードを被った男は呟く。

顔はいまいち、逆光で確認できない。

薄暗くなり始めた空に、街灯の光。

 

明らかにそれら視界を覆うタイミングも計算しつくしての狙撃。

しかし男の誤算はバゼットの身体能力を見誤っていた事だろう。

 

「封印指定執行者ーーこれほどとはね。」

 

く、っと皮肉気な自嘲の声、次いで紡がれた言葉は命令だった。

 

「バーサーカー、宝具の開帳を認めるーーお前の護る国の為だ、放て。」

 

「ーー貴様がこいつのマスターか…!!」

 

「ーーアー、ローマ、ローマに…映えあれ…ローマに仇なす者、脅かす者を捕らえよーー月よ、蒼き輝きよーー!」

 

今までろくに言葉を発しなかったバーサーカーが発した言葉は。

 

「…あぁあっぎぃいぃいっ!!?」

叫び、天を仰ぐ瞳が恍惚と開かれる。

 

「女神よ……おお……女神が見える……!」

結局は意味不明な言葉。

 

だが。

その言葉とともに天が翳った。

夕闇が更に暗闇を増し、天空に星が現れる。

そして、中天に輝くのは月。

ここ数日の赤い輝きでは無い、狂おしい程に美しい蒼き輝き。

 

「ーーさせるか…っマスター、放つぞ!?」

 

「ーーやむを得ません、許可します!」

 

ランサーの周りにも魔力が渦巻き、水が踊るように流れ出る。

 

我が心を(フルクティクルス)ーー』

 

無敗の (マク・ア)ーー』

 

天から光が降り注ぎ、ランサーの槍に集まった水は形を成しーー

 

喰らえ、月の光(ディアーナ)!!』

 

紫靫草 (ルイン)ッ!!』

 

そう、水は形を成しーー、崩れた。

 

「な、何いっ!?」

 

光が溢れ、更に視界が塞がれる。

 

「ーーくっ!?」

身体から力が抜ける。

 

「ーー馬鹿な…私の切り札まで効果をなさないーー?」

 

バゼットもまた、呆然と拳に「何か」を握りしめて呟く。

 

バーサーカーと、男の気配は既に無くなっていた。

 

**************

 

慎二とライダーは先ほどから物陰に潜み、ひたすら息を殺していた。

元来魔力の無い慎二と、魔力を抑え、半霊体化したライダー。

派手な行動や物音さえ立てなければ気づかれはしない。

 

そんな中で、彼らは冒頭の状況に出くわした。

二人の少女と、二騎のサーヴァント。

睨みあう両陣営。

 

「ーー貴方達…果たし状じみた呼び出しをしておいて随分と時間にルーズな事ね?」

手にした紙切れ…今朝のうちに大鷲の足に括り付けて届けられた鳥文をヒラヒラ揺らし、苛立ちを隠そうともしない銀髪の少女…イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 

「此方のサーヴァントがどうにも我儘で…どうにかして貰えたら助かるのだけれど。」

それに対して不遜なほどの態度で、冷めた口調で返す女。

 

「何じゃ、マスターが相手をしてくれるならばあの様な真似をせんでも良いのじゃぞ?」

 

「ーー絶、対、に、い、や、で、す !」

何か凄く嫌そうだった。

主従関係が上手くいってないのだろうか。

 

「巫山戯ているなら帰るわよ?」

イリヤスフィールは更に苛立ちながら問う。

 

「ーー失礼、要件は二つ…同盟を組まないかという話と…」

 

「同盟?この文面で?やっぱり巫山戯てるの?」

 

投げ渡された文は器用にイリヤスフィールから、女の手に収まる。

何らかの魔術かもしれない。

 

「なになに…はいけい、旧交暖まる再開を期待している…ついては貴様のマスター共々軍門に降れ…何、悪いようにはしない聖杯とやらも望むならくれて、や、るーー?」

 

文を読み進めるに従い、眼鏡の女マスターの表情が怒りに染まってゆく。

 

「ーーアーチャー…貴方言ったわよね…セイバーは親交があった英霊だから、説得のために文を書く、って?」

 

「おうよ、どうだなかなかきちんとへり下る文面であろう、相手にもきちんとメリットを説明してーーー」

 

「貴方はお馬鹿さんですか!差出人の名前も無く、この内容で誰が話を聞くものですかっ、ここに来ただけ奇跡みたいなものじゃないですか!?」

 

髭面の大男の胸ぐらーーマントの端を掴みあげて怒鳴る姿は失礼だがちょっと可愛らしい。

涙目で怒るあたり結構苦労人なのかも。

 

「ーーまあ、そう怒るな駄目なら一度叩きのめしてから従わせたらよかろう?」

 

「ーー文面でなんとなく嫌な予感はしていたのだ…しかしまさか…」

セイバーが、ひたすら嫌そうな顔で返す。

 

ライダーは焦りを覚えていた。

尾行してきたは良いが、目の前の二人は明らかに自分一人の手には負えない。

聖杯の恩恵を受けた今ですらあの二騎のうちどちらか片方すら相手にするには難しいだろう。

自らの内に残った聖杯の残滓が、二騎のサーヴァント、セイバーとアーチャーの強さを肌が泡立つほどに伝えてくる。

このままでは気づかれずに離脱するのさえ難しい。

 

「ーー久しいな…一応はセイバーと呼んでおこうかのぅ?」

 

「ーー何故貴方が…貴方ほどの方がサーヴァントとして召喚に応じただと…、冗談では無い、イレギュラーにも程がある…!!」

 

そうこう考える内に、二騎の争いが始まってしまった。

 

轟雷が、斬撃が、破壊の嵐が吹き荒れて公園の枯れかけた樹々をなぎ倒していく。

まさに神話の体現の如き争いの前に、身動きが取れない。

 

だが、救いは思わぬ所からもたらされた。

ーー空だ。

 

「ーーぬっ、う!?」

 

「ぐ!?」

 

先ほどからの激しさが嘘の様に、唐突に動きを止めたニ騎。

一瞬にして空が翳りーーあたり一面に蒼い輝きが降り注ぐ。

 

「ーーなんだ、月が、蒼く…?」

 

「今だ…逃げるよ慎二!」

 

セイバーも、アーチャーも。

身体の力ーー魔力を掻き乱すこの光に晒され、動きを止めた。

ライダーにも当然不調はあったが…そこは火事場のなんとやらだ。

 

「ぐえっ!?」

 

首をつかまれ、息が詰まって妙な声を出した慎二を連れて全力で離脱する。

 

「ーーなんじゃ…月の力…だと?」

アーチャーは呟く。

 

「力を掻き乱されるーー不快な光だ。」

セイバーも顔を顰め。

 

「ふん、卿が冷めたわーー改めてまた会おうぞ。」

雷が地面を叩いたかと思えば。

其処には二頭の神牛に引かれた古風な戦車が顕現していた。

 

「ーーそれは…真逆、神威の車輪(ゴルディアスホイール)!?」

 

「ほう、なかなか博識だな?」

 

「第四次ーー前回の聖杯戦争のライダー…イスカンダルが使っていた宝具…貴方は、征服王なの?」

 

「ふ、あの様な盗人と一緒にするでないわ、本来ならばコレはわしに捧げられた供物故にな」

 

「ーーまさか、まさか?」

 

「ーーああ、イリヤ…アレはその真逆ーーギリシャの大神…雷の神、主神…ゼウスだ。」

 

稲光りが轟き、視界を覆う。

月夜も雲に覆われーー大粒の雨が地を、樹々をーー強かに打ちすえる音が、響きわたった。

 




【後書き的なもの】

はい皆様こんにちは、こんばんは、おはようございます。
貴方の心の変人、ギルスです。

朔弥「ーー変人で良いの…?」

ライダー(以下作者)「いやあ、先日ね、聖杯戦争にまきこまれったーとやらをしてみたら…オルタニキを召喚できるけど、魔術の腕はなんで生きてるのレベルで、貴方のマネーパワーで勝ち残りましょうとか言われた…課金かよ。」

作者「ーーだからもう、なんでもいいです…シクシク(T ^ T)」

朔弥「ーーとりあえずさ、私達この数回出番無しなんだけど…私の復帰後の活躍ぶりは!?」

作者「ーー天啓が降りてきた、もうとんでもない鯖出そうって降りて来た。」

朔弥「ーー某所のアンケートとかで、なんも要望がないからってもうヤケクソ気味に風呂敷広げるのよそうよ!たためなくなるから!?」

作者「はっはっはっ、もう広げちゃったもんねー!」

朔弥「だめだこいつ、なんかアンデルセン達と似た匂いがする…早くなんとかしないと…」

と、言うわけで今回はとんでもない人が降臨しちゃいました。
まあ、ネタを探しても探しても相応しい鯖が見つからなくてとうとうオリジナルに走りました、神霊は呼べないとか縛りはあるはずですが、今回は既に聖杯が複数あったりイレギュラーバリバリです。

さあ、まさかのゼウスを従える女性は一体何者か!
セイバーの真名はいい加減出して良いんじゃないか!?
バーサーカーも宝具開帳したしもろバレだよローマ!ネロも居ないのにローマ伯父!

後黒コートは一体誰ですか!?←

ますます入り乱れて参りました。
Fate/alternativeーー最後までお付き合い願えれば幸いです。

それでは、また次回更新で!!
シーユーアゲーン!!

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