Fate/alternative   作:ギルス

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螺旋。
円環矛盾の螺旋。
繰り返し、僅かづつ変わりゆく歴史の波。
世界は徐々に交差するーー…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これはFate/staynight、及びFate/GrandOrderの二次創作です。
捏造設定、独自解釈、オリキャラなどが入る可能性があります。

それでも構わないという心の広い方のみ、先へとお進み下さい。
無理!という方にはブラウザバックを推奨致します。

士郎とぐだ子を軸に物語は展開します。
現在判明している正史との相違点。

◆ マスターは衛宮士郎では無く、ぐだ子。
◇ 切嗣は死が確定しておらず、行方不明。
◆ アルトリアは召喚されず、バーサーカー。
◇ バーサーカーがクー・フーリン・オルタ。
◆ アインツベルン陣営はセイバーを召喚。
◇ ランサーが、近代中国の英霊らしい。
◆ 士郎が魔術を想定以上に扱えた。
◇ アーチャーにカルデアの記憶が…?

また、ぐだ子はカルデアでの事は覚えていませんし、そもそも並行世界の同一存在です。
しかし、同じ人間ではありますから…何かはある、かもしれません?

ぐだ男は………。

それではどうぞ、拙い作品ではありますがお楽しみ下さい。


第9話 『瞳』

 

舞い散る血が、宙に陣を敷く。

描き出された魔方陣が、其処に何かを呼ぶ。

 

「なんだ、あれ…?」

 

「ーー不味い、全員躱せぇっ!!」

アーチャーが叫ぶ。

 

閃光、次いで轟音が遅れて響き渡る。

校舎の廊下を蹂躙したそれは、進路上の全てを薙ぎ倒さんと走る。

 

「ち、朔弥ッテメェは本当に手間ぁかけさせやがるな!」

 

素早く、石にされた朔弥と、ついでとばかりに横たえられていた大河を抱え、3階の窓から飛び退くバーサーカー。

 

凛はアーチャーが、士郎は躱せない。

躱せる様な位置にはいなかった。

 

「衛宮君ーーッ!!」

 

アーチャーに抱えられたまま、凛が悲痛な叫びを上げる。

 

夕日が美しい校庭で、いつまでもいつまでも。

ひたすら愚直に、高跳びを続けていた姿。

挫ければいい、諦めたらいい。

無駄な努力なんかーー見ていてーー

見ていて、なんだっただろう。

何故、今更あんな光景を思い出すのか。

 

割れたガラス片がキラキラと乱反射しながら地面に落ちて行く。

 

「う、そよねーーあんたが、あんなに諦めの悪い奴がそんな、嘘よね?」

 

アーチャーの懐から、着地と同時に抜け出し、校舎を見上げる。

 

なぜか、鼻の奥がツンとする。

痛い。

眼に涙が、溜まる。

 

「ーーっ、痛てて、クソッ、無茶苦茶しやがってあの野郎ッ」

 

だから。

背後から聞こえた、その呑気な声が誰だ、なんて一瞬わからなかった。

 

見る間に凛の顔が、蒼白から健康的な肌色を通り越し、真っ赤になって行く。

ーー耳まで。

 

「ーーなんで生きてるのよこのスカタン!?」

 

ゴスッ!

と鈍い音を立てて、士郎の頭を殴打したのは握り込まれた凛の拳だった。

 

「は?、いや遠坂、な、なん…痛っ、痛い!」

涙目で士郎を小突き続ける凛。

 

あまりの事に呆然とするアーチャーとバーサーカー。

 

「なんだ、ありゃあ?」

 

「私に聞くな…。」

どうにも疲れた顔で答えるアーチャー。

 

どうやらライダーの気配は無い。

逃げたか。

ダメージからか結界は既に解除されていた。

じき、体力あるものから目覚めるだろう。

廊下に大河以外がいなかったのは幸いだった。

もしも居たら今頃は微塵にされていたところだ。

 

後は凛が落ち着いてから考えるか、とアーチャーは自分もまた混乱する頭を抱え、振る。

 

「本当になんなんだ、これは。」

アーチャー、心底から漏れ出た本音であった。

 

*******

 

「…なんでさ…」

 

あの後。

監督役にあたる聖堂協会の神父、言峰綺礼に凛が連絡を取り、校舎の中の魔術的な証拠の隠滅後と同時進行で、生徒や藤姉は病院へ搬送された。

表向きは民間協力、という程だが実際には消防にも聖堂協会の息がかかった人物がいるのだろう。

素早い手際だった。

 

そして、何故かこんな状況になっている。

石化した九重を運び込み、解呪には敵サーヴァントを倒すのが一番早い、と結論が出たわけだが。

その後に何故か士郎へ凛の怒りの矛先が向いていた。

 

「当たり前でしょう、私は冬木の管理者なんだから、貴方みたいな魔術師を野放しには出来ないわよ。」

 

「いや、それはわかった、わかったけど…なんでそれで、俺が遠坂の弟子にならなきゃーー」

 

「だって今貴方の師はいないんでしょう、その上知識だって中途半端。」

 

「いや、俺これでも親父が残した課題はやってるしーー自主鍛錬だって欠かして無いぞ?」

 

士郎の言い分に、凛はため息を吐きながら答える。

 

「あのねーー貴方が魔術を発動する時…わざわざしなくても良いプロセスを踏んでるのよ、わかる?」

 

「いや、そうか?」

 

「そ、う、よ!」

ずい、と顔を近づけながら凄まれ、何故か士郎は赤面しながら後退る。

 

「いや、遠坂、近い近い!」

ーー初心か。

 

「そう、ならやってみなさい簡単な魔術でいいから発動して見せて?」

顔を離した凛も、こころなしか耳が赤い。

 

「ーーなんなんだよ…」

ぶつくさ言いながらも集中する。

身体に魔力を通し、路を作る (・・・・)

「それよっ!」

と、鋭い指摘の声が聞こえた。

 

「え、あ!?」

集中が途切れ、魔力が霧散する。

 

「そんな無駄な事に命をかけてどうするのよ、貴方は。」

 

「は?」

きょとん、とまるで解らない士郎。

 

「ーーしっかりしてよね、貴方には嫌でも朔弥を元に戻すために戦力になってもらわなきゃいけないんだから。」

 

「いや、魔術ってのは、死が本質なんだろ?だから、危険で当たり前なんじゃーー」

 

「士郎、貴方ね…毎回一から魔術回路を…創ってるでしょう…?」

 

「ーーえ、駄目なのか?」

 

「はあ、当たり前よ…毎回毎回身体を作り変える様な真似して…負担が大きすぎる、制御に失敗したら死んだっておかしくないのよ?」

 

「や、だからさ…魔術ってのはーー」

同じことを繰り返そうとすると、何故か凛の顔が強張って。

 

「これ、呑んで。」

そう言って差し出された赤い何か。

 

「飴玉…?」

確かに、呑み込めと言われれば可能だろうが…

丸呑みと言われたら少しきついサイズだ。

 

「宝石よ。」

しれっと言われてしまった。

 

「はっ!?」

腹壊すだろ、それ!

 

「大丈夫よ体内で貴方の魔力と同化して吸収されるはずだから。」

 

いや、だとしてもやはり抵抗はある。

異物を呑み込めと言われたわけだし。

 

「いいから、呑みなさい!」

ガ、と頬を挟まれて口を開けられ、そのまま口に捻じ込まれた。

 

「モガッ!?」

死ぬ、宝石が喉に詰まって!

ーー本当にそうなったら、多分世界でも珍しい死に方だなあ…っていやだから!

 

「ぐ、は、っ…あ、あれ?」

意外にするりと胃に収まる宝石。

しかし、急激に視界がグラグラしだした。

 

「ーーーー!?」

 

毎日の鍛錬でたまに起こるーー制御に失敗しかけた時のような感覚。

背骨の中心に灼けた鉄を差し込むような、綱渡りの作業。

それがズレて、肉が灼け、沸騰しかねない痛みが心を焼いていく。

 

「ーー、あ、が、あーー」

 

「え、ちょっと嘘、なんで逆に魔術回路が乱れてーー」

 

士郎の身体が震え、その焦点が定まらなくなっていく。

 

「ーーち、この小僧…今まで薄氷の上を歩くようなバランスで魔術を行使してやがったなーーやっぱりこいつは俺のお仲間だなあ…もしサーヴァントになるようなことがあれば…バーサーカー適正があるんじゃあねえか?」

 

そう、冷酷なまでに批評を述べるバーサーカー。

 

「ーーこのまま制御できなきゃあ、死ぬぞ?」

 

「なん、で…魔術回路のオンとオフを切り替えられるように、って…ただそれだけのーー」

 

凛の顔が段々と焦りに囚われる。

 

「それだけデケェ爆弾抱えたままやってやがったのさ、この小僧は。」

 

「馬鹿じゃないの?勝手に首を突っ込んでおいてーーそんな、危険抱えたままになんの得にもならないのに…でも、」

 

(何より許せないのは、それに気付きもしないでこいつを戦力だなんて、駒みたいに扱った私自身だ。)

 

「アーチャー、できたらバーサーカーも、暫く…こっち見ないで。」

 

凛の手が、士郎の震える身体を抱きしめて。

頬を染めながら近づけた唇が触れた。

 

「ーーーーーーーーーー」

 

舌が絡み、二人の唾液が混じり合う。

数秒か、数十秒か。

凛にとっては長く。

士郎にとっては一瞬に過ぎた刹那。

 

凛の舌を通して注がれた魔力が、士郎の内で荒れ狂っていた魔力の激流を優しく絡め取り、その動きを正して行く。

 

やがて、士郎の視界は開け、其処には美しい一対の碧い宝石 (ブルーサファイア)の様な。

凛の瞳があった。

 

「ーーと、遠…坂?」

 

つ、っと唾液が糸を引き、どこか茫洋として意思が感じられない、凛の赤く火照った顔が離れていく。

いつしか震えは止まり、身体の痛みが和らいでいた。

 

数十秒程切ない表情のまま、肩で息をしていた凛が徐々に呼吸を戻していく。

 

「か、勘違いするんじゃないわよ…私の見立てが悪かったの、だからーーあんたが危うく死にかけた、そんなもの私のプライドが許さないの、それだけだからね?だから、助けたの!」

 

顔どころか手指の先まで桜色に染めて、凛は早口にまくしたてる。

 

(今のは、違うーー治療、治療行為なんだから)

 

「小僧、その嬢ちゃんに感謝するんだな。」

 

「え、あ…そうか…俺、魔力の制御に?」

 

「ああ、嬢ちゃんが与えた石がきっかけじゃああるがよ…今嬢ちゃんがああしてなけりゃあ、遠くない未来に今より酷い状態になってーー間違いなく死んでただろうぜ。」

 

「ーーそうか、ありがとう、遠坂。」

 

「いいわよ、あんまり危なっかしいから放っておけなかっただけだもの。」

 

凛は視線を外しながらも横目でチラチラと士郎を伺いながら、髪をクリクリと弄り回し、おちつかない。

 

「ーーそんなこと言われたらますます…男としちゃ黙ってられないじゃないか…何でも言ってくれ、遠坂。」

 

「ーーだから、気にしなくていいってば。」

 

「そうはいかない、責任ってものがあるだろう。」

 

「は!?せきっ…?」

ゆでダコみたいに赤くなり、狼狽える凛。

 

「ーーああ、遠坂に負担をかけちまった、それは俺が未熟だったから、その責任は自分が負うべきだかーー」

当たり前、とばかりに見当外れな話をしだす士郎。

 

その頭を誰かがむんずと掴んだ。

「ーーうちのマスターを自覚なくナチュラルに口説くのはやめてもらおうか。」

 

アーチャーは酷く爽やかな笑顔だが、その頬はひきつり、こめかみには青筋が浮かんでいた。

 

「え?、違っ何だお前、や、止めーー痛ダダダダダダ!?」

 

「来い!魔術が知りたいなら教えてやる!」

赤い弓兵が力づくで士郎を引きずっていく。

 

「あ、アーチャー!?何言ってるのよ貴方は、ってちょっと待ちなさい、コラ!?」

 

「ーーぶ、クアッハハハ!!」

その様子を見ながら大笑いするバーサーカー。

…石になった朔弥は、思った。

 

(私ーー忘れられてないよね?ね!?何このラブコメ展開っ!?)

 

石にはなりながらも。

意思はあったのである。

石だけに。

 

***********************

 

衛宮家から少し離れた民家の屋根。

月明かりに照らされ、長い影が伸びていた。

 

暗い雰囲気を纏うその一種異様な立ち姿。

襤褸を纏い、身体つきも判然としない。

ただ、異様に掠れた声、息が、漏れ出ていた。

 

「ーーエ”ミヤーー」

 

確かに、その影は口にした。

えみや、と。




【後書き的なもの】

皆さま今晩は、或いはこんにちわ、おはようございます。
本作品への評価、コメント本当にありがとうございます、励みになります!

さてしかし。
初投稿当時、なんだかこれだけの文量にやけに悩みながら書き上げました。
いや、本気でオリジナルばかりになってきましたし、展開が駆け足すぎるかなあ?

原作ではスイッチのオンとオフを切り替えさせるだけの凛のとった荒療治ですがーー
ことこの作品の士郎には、爆薬の導火線に火を点ける行為に他なりませんでした。

元来未熟な士郎が本当に強引に高度な魔術を使い続けると言うのはまさに自殺行為。
作中で今後、記述しますが、士郎は一部の魔術に関してだけ切嗣の魔術刻印を施されています。
全て受け継いだ訳でもないため後継者とは呼べないレベルですが。
それを使い、コントロールもまともに出来ない士郎が使用の度魔術回路を生成し、発動していたのが現状。

そこに無理やり回路を目覚めさせようと言う力が流し込まれたら、当然危険です。
今回はその暴走を凛が原作にもあった「魔力供給」の仕方を応用して、口腔内の体液、粘膜の接触を媒介に士郎の体内の魔力ーーオドを調整したわけです。

さて、セイバーさん、早く出してあげないとね…最後の影は、何者か?
まさかセイバーか!?(なわけない)

なんていいつつ、次回またお会いしましょう!
今回もお読み頂きありがとうございました!

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