東方project × ONE PIECE ~狂気の吸血鬼と鮮血の記憶~   作:すずひら

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前回のまとめ

・フラン、家出する
・海底で魔法研究



魚人の誕生と美鈴の秘密

 

 

思えばメイリンは強すぎた。

いや、強いのはいいことなんだけど。

彼女はもとから才能あふれる子だったし、クックによく鍛えられただけでなく自ら弛まぬ努力を重ねていた。

だから強いことには疑問はない。

問題はメイリンの龍になる悪魔の実だ。

 

身体能力の向上は動物(ゾオン)系の特徴だし、他の動物(ゾオン)系に比べてその強化率が高いのも、普通の動物と“龍”という幻想生物の格の違いを考えれば納得はできる。

でもでも、その強化を人間形態でも発揮できるのはどういうことだろう。

 

動物(ゾオン)系は基本的に人間形態、獣形態と、その中間である獣人形態、の三つの姿を持つ。

そして姿が獣に近づくほど身体能力は上昇する。

だというのにメイリンは人間形態時と獣(龍)形態時で身体能力に変化はないらしい。

つまり、人間形態で100%龍の力を扱えるということだ。

 

それってやばいよね。

 

だって普通、人間の体で龍の力とか使ったら体が耐えられなくない?

メイリンの全力の踏み込みなんて音速を軽く超えてるし、体が爆散してもおかしくない気がするんだけど。

少なくとも私が人間の体で吸血鬼の身体能力を発揮したら自殺にしかならない自信がある。

 

でもって、それでいて人間形態と龍形態が同じ強さってわけでもない。

中間の龍人形態だと龍闘気を使えるようになるので、まず桁違いに強くなる。

身体能力+龍闘気の足し算ではなく、それぞれが掛け算のように戦闘力が跳ね上がるからね。

しかも天候を操るという龍の伝説によるものか、風・水・雷といった自然現象をかなりのレベルで支配できる。

ついでに翼もないのに空も飛べる。

ま、これに関しては宝石のついた枝みたいな羽で飛ぶ私が言えたことではないけれど。

 

そのメイリンの強さを具体的に言えば――通常時メイリンが全盛期マロンにぎりぎり勝てないくらいの強さだとすれば、龍人形態時はマロンが束になっても相手にならない。

恐らく身体能力だけという制限を付ければ私とも互角……とまではいかなくてもかなりいい勝負ができるんじゃないだろうか。

やったことはないけれど。

 

加えて完全な龍形態にまでなると、人間としての戦闘技術こそ使えなくなりはするが、体躯が大きくなり天候への影響力が増大する。

滅多にその形態にはならないけれど、それは二段階目の龍人形態までですべて済んでしまっているという意味でもある。

 

なぜメイリンの悪魔の実はこんなに強いのだろう。

よっぽど体に合った――相性が良かったのだろうか。

不思議なこともあるものだよね。

 

 

と、まぁここまでが前置き。

動物(ゾオン)系について考えていたらふと思っただけだ。

本題は魚人の作成に当たっての、動物(ゾオン)系の利用。

 

私はこの海底で魚と人間を掛け合わせた人造生物――魚人を作るにあたって、動物(ゾオン)系を参考にした。

その過程で悪魔の実について考察し、さっきのようなメイリンのことにも思い至ったというわけだ。

 

悪魔の実は私が無意識に放出している妖力が集まって物質化したものだ。

それを食べることで疑似的な妖怪化が起こり、不思議な体質が発現する。

デメリットとしては“たまった水”が苦手になる事。

これは“流れる水”が苦手という吸血鬼由来の性質と対を為すもの。

なぜ正反対なのかと言えば、私が“妖怪”で彼らが“人間”だからだろうと思う。

検証したことはないけれど、きっと悪魔の実の能力者は暗闇よりも陽光下の方が強くなるんじゃないかな。

 

その悪魔の実は多分に私の思考が反映されている。

この世界ではいまだ発見されていない材質であるゴムになるパラミシアや、想像上の動物である不死鳥の性質を発揮するゾオンなんかがいるしね。

さて、その中でもゾオンについて特に考えてみる。

 

そもそも、ロギア、ゾオン、パラミシアの分類はラフテルの民が勝手に分類しただけなんだけど、ゾオンについては分かりやすい。

なにかしらの生物の特徴を表せばゾオンだから。

例えばチーターなら足が速くなるし、ハヤブサなら空を飛べるようになる。

 

彼らに共通する特徴としてはとにかくタフで回復力が高い。

これはたぶん私が「動物の生命力は強い」というイメージを持っていたせいだろう。

そのためかゾオンには大型の動物が多いし。

 

ここからが本題だけれど、私が魚人を作るにあたって目指したのは悪魔の実に頼らないゾオン化である。

種として強靭な生命力を持つ生物として――人間とは一線を画す生物として魚人を作るつもりだった。

なぜそんなことをするのかと言えば、これは単純に“魂の変質を観察するため”といえる。

 

悪魔の実を食べるだけでは人間は妖怪化しない。

体はあくまでも人間の範疇を逸脱せず、ほんの少しだけ特性を得るのみにとどまる。

このことは先に述べた“流水と止水”の性質が正反対なことも裏付けている。

 

だが、長期的な視点で見た場合はどうだろう。

全く影響がない、とは言えない気がする。

だから魚人という試みを通して、妖力が人体に与える影響の研究も行うつもりだ。

 

 

 

 

最初はそこらに泳いでいた何の変哲もない(深海魚じゃない)魚から遺伝子をいただいてホムンクルスにぶち込んだ。

 

まぁ当然のように拒絶反応を起こして死んだ。

 

そりゃそうだ、人間と魚では生物としての在り方があまりに違う。

呼吸ひとつとっても肺呼吸と(えら)呼吸だしね。

ここからが私の腕の見せ所。

 

互いの特性を残しつつ両者を融合して共存させる。

思い描くイメージはいわゆる半魚人、マーマンもしくはギルマンと呼ばれる空想生物。

既に完成形の想定図が頭の中にあるというのはかなりのアドバンテージだ。

 

 

最初の魚人は実験開始から一年ほどで完成した。

ほとんど想像通りの見た目と性質に加え、人間の数倍上の身体能力と生命力を得ている。

しかし、残念なことに魂が魚の側に寄り過ぎたために意思の疎通はできない。

完成はしたけど、成功とはいえないかな。

ただまぁ、一応生きてはいるから他の“失敗作”のように魚の餌にすることはやめておいた。

だから周囲に集まっている魚たちには魔力で作り出した別の餌を与えておく。

 

それにしてもここの魚たちにもこの一年で随分と懐かれてしまったものだ。

最初はDNAをもらうかわりのギブアンドテイクとしてホムンクルスの死体を餌として与えていただけだったんだけど、私が作り出したホムンクルスの死体は随分と美味しかったらしく次の実験の時には失敗する前から(むらが)られていた。

 

実のところ本当は完全に死体を処理しちゃわないで作り変えて再利用した方が魔力の消費も抑えられて肉体の変質も容易に行えるんだけどね。

魔力の消費と言っても賢者の石を使うまでもない微々たるもので自然回復する量の方がはるかに多いし、気にはしてないけどさ。

 

それからというもの、集まってくるのに期待を裏切るのも悪いので毎回失敗作を振る舞い……次第に魚の数が増えて餌の供給が追い付かなくなった。

そんなわけで今では実験をしない日でも魔力で余分にえさを作り出して与えるのが日課になってしまった。

これに関しては全面的に自業自得だしね。

私がとてもおいしい餌を提供しちゃったせいで、本来起こるはずの食物連鎖が発生せずどんどん魚の数が増えているのだから。

おかげでイブの周囲の海域は捕食者と被捕食者の種類の魚でも割と普通に共存するようになってしまった。

ある意味ではこれも生態系の破壊かな。

 

魚たちに餌をあげていると、なんか昔金魚を飼っていたころを思い出す。

まぁ私としても彼らがいることで完全な孤独を感じずに済んでいるという面もあるので、その分のお返しといったところかもしれない。

最近じゃ全長数百メートルの海王類も食べに来るから餌代は結構すごい勢いで増えてるんだけどね。

 

ちなみに初めてその海王類が来たときは周囲の魚を威圧して餌を独り占めし始めたので、ちょっとお仕置きしてあげた。

それからはすっかり素直になったので(いち)(さかな)として平等に扱っている。

その後別の海王類を連れてきた時も事前に大人しくするように伝えていたみたいで問題が起きなかったしね。

もちろん、平等と言っても体格に合わせて十分な量は食べさせてあげてるよ。

私としてものちのちは人間と海王類を掛け合わせた魚人を作ろうと目論んでいるので彼らと友好を深めるのはやぶさかではない。

 

 

 

 

そんな生活を続けて100年ほど。

ようやく人語を解する魚人が完成した。

 

なんでこんなに時間がかかったかと言えば、魚の上半身に人間の声帯を生み出すのが技術的に難しかったのと、人間的な思考回路の生成を随分と試行錯誤したからだ。

ただ、その甲斐あって十分に満足できる結果にはなった。

とりあえず彼らが自立した生活を送れるように日本語で教育を行うことにしている。

 

……なんだかこの世界に来てから教育の真似事をする機会が多い気がする。

まぁなんだかんだ私もそういうことが好きってことなんだろう。

もう800年以上も昔の話だけど、もしかしたら前世の影響も残っているのかもしれない。

 

百数十年もたつと魚人の数も三桁を超え、それぞれで交配するようになった。

自然な交配による突然変異や進化は、予想できない素晴らしい結果を生むこともあるので期待している。

惜しむらくは人間の因子が強くなった結果、子供の数がかなり少なくなってしまったことだろう。

魚の因子が強ければ一度に数十個は産んだだろうに。

 

もっとも、数世代でもすでに結果は出ている。

例えば呼吸。

初めのころ、上半身が完全に魚で鰓呼吸を行う魚人と、上半身を人間に寄せて肺呼吸にしてみた魚人の二種類を実験的に作ってみたのだけど、彼らの子供である第二世代には両者の中間のような姿形で肺呼吸も鰓呼吸も可能になった個体が産まれた。

流石に一代の世代交代では安定してその性質は発現しなかったものの、第三世代、第四世代と代を重ねるごとに徐々に両方の呼吸を行える個体が増えている。

他にも歯の形状や鱗の状態が目に見えてわかる進化を遂げている。

 

この進化の過程を間近で見られるというのはなかなかに面白い。

今まで人間の“進歩”は見てきたけれど、種の“進化”はより劇的だ。

自分が作り出した種族、というのも関係しているかもだけど。

 

実験は成功を収めつつある。

次は別の種類の魚を混ぜてみよう。

そのあとはいよいよ海王類の研究に入ってもいいかもしれない。

 

……地上から離れてもう数百年以上は経過している。

それでもまだ、研究を言い訳にして私は地上へ戻れないでいる。

私がラフテルに帰る日は、くるのだろうか……。

 

 

 

 

フラン様の居場所が分かりました。

にとりの発明品は本当に素晴らしい性能です。

フラン様の現在地はなんと、深海です。

位置的にはちょうど陽樹イブの根元の部分。

 

私はその場所を訪れたことがありません。

スカーレット海賊団としては往路と復路で二度通ったはずですが、私は残念ながらタイミングが合っていませんでした。

私がスカーレット海賊団に参加したのは往路でその海底を超えた先でのことですし、復路の時もちょうど時期的には私が船を離れてアマゾン・リリーの国づくりをやっていたころのことですから。

 

話だけはマロンさんやクックさんたち、一度訪れていた古参のクルーらに聞きましたが、それだけでもすごい場所だというのは分かりました。

船が海に沈んでいく恐怖、一寸先も見えない完全な暗闇、その先に待つ光り輝く大樹、魚が舞い踊る神秘的な光景。

私も一度は訪れてみたいと思ったものです。

 

さて、そんな深海にフラン様がいるということです。

問題はそこまでどうやって行くかでしょう。

 

人間の素潜りの限界はせいぜい数十メートル。

私も悪魔の実を食べる以前に一度挑戦してみたことがありますが、100メートルもいかないうちにギブアップしました。

今ならどうでしょうか。

悪魔の実の能力者は海に入ることはできませんが、私の場合は水流を操作して自分の周囲を常に“水が流れている状態”に保つことで弱体化を防げます。

普段はそうやってお風呂に入っていますしね。

 

そこで私は全力の覇気で身体能力を強化して、素潜りに挑戦してみました。

――しかし、500メートルが限界でした。

呼吸は五分以上止められますし、水圧にも低水温にも耐えられます。

それでも水中を高速移動する術がなければその程度が関の山でした。

 

次に、悪魔の実の力をフルに使って挑戦してみました。

ところが全身龍化まで行い挑んでみるも、2000メートルほどでだいぶ厳しくなり5000メートルほどで今度は水圧によって完全に進めなくなりました。

感覚的には指先ほどの面積にさえ500キロ以上もの力がかかっているように感じました。

人間時とは比べ物にならないほどの頑丈さを誇る龍の体、さらに鱗を最強まで強化してもそこまでが精一杯。

海の中で変化を解いたら一瞬でぺちゃんこになっていたことでしょう。

 

フラン様の今いる場所は深海1万2000メートル。

私はその半分も近づくことができなかったのです。

 

 

困ったときはにとりえもんに相談です。

フラン様がにとりに何か頼みごとをするときはこう呼んでいたそうですが、変なあだ名ですよね。

 

しかし、にとりえもんに相談しても芳しい成果はでませんでした。

海の底へ向かうのは、今の技術力では到底無理とのこと。

むしろなぜ生身で5000メートルも潜れるんだとあきれられてしまいました。

 

手詰まりです。

私はどうあってもフラン様に会うことができないのでしょうか。

……いえ、あきらめるわけにもいきませんね。

 

 

フラン様がどうやって海底へと行ったのかと言えば、サンタマリア号をシャボン玉のような空気の膜で覆って潜行したそうです。

フラン様の魔法によるものだそうですが、それを再現できないでしょうか。

 

今から魔法を覚える、というのは流石に無理でしょう。

そもそも魔法を使えるのはこの世でフラン様とその眷属であるこぁだけ。

こぁがこちらに協力できない以上、魔法に関して独力でというのは難しいでしょう。

 

……魔法ではなく、妖力ならばどうでしょう。

にとりはフラン様の捜索を行う際に、「妖力の研究は進んでおらず、魔力の方はフラン様が残した機械で何とか測定できる」と言っていましたが、実は私は逆なのです。

私は魔力を感じ取ることはできませんが、妖力は感じ取ることができるのです。

 

このことに気が付いたのは確か、悪魔の実を食べてその能力に慣れ始めてきたころのこと。

悪魔の実の能力は私によく馴染み、まるでもともと自分に備わっていた能力かのように扱うことができました。

それを使う中で、私は悪魔の実の“力の流れ”を感じ取れるようになりました。

これは私の扱う“気”に似てはいますが、非なるものです。

そしていつしかこの“力”がフラン様の扱う“妖力”とほとんど同じものだということに気が付きました。

フラン様は悪魔の実の能力者ではないのに、なぜ両者が非常に似た性質を持っているのか――長年の疑問ではありましたが、最近ようやくわかりました。

 

ええ、ええ、私の来歴を考えれば簡単なことだったのです。

私の中に流れる“悪魔の実の力”とは、そのものずばり“妖力”だったのです。

 

なぜ私が妖力を持っているのか。

それは、フラン様に与えていただいたからに他ありません。

 

私はフラン様から多くのものをいただきました。

鮮血の(スカーレット)海賊団の一員という身分、いつも身にまとっているこの衣服、生きていくために必要な知識と技術、クルーの皆という家族――私という存在はフランドール・スカーレットによって与えられたものによってそのほとんどを構成しているといっても過言ではないでしょう。

唯一私が初めから持っているものといえば、クーロンで生まれたという出自くらいなものでしょう。

それすら、今の私の存在証明(アイデンティティー)からすればとるに足らないものでありますが。

 

そして、私がフラン様から頂いたものの中でも特に大きなものが二つあります。

 

一つは、声。

それまで“私”の存在証明だった首につけられた鈴を、フラン様は私の声帯と同化させることで紅美鈴(わたし)に声を与えてくれました。

それは、かつての“私”の声とは違ってとても綺麗な音で――初めて声を出した時に「ああ、私は今生まれ変わったんだ」とひどく納得したものです。

その美しさは万人の感性に共通し、初めて話す人などは声にちょっと“気”を込めるだけで意識を奪うことすらできる声なのです。(もっともフラン様は吸血鬼の“魅了”というスキルによって同じことができるようですが)

 

もう一つは、名前。

(ホン) 美鈴(メイリン) という私の名前。

ホンはフランドール・スカーレットの苗字、スカーレットを畏れ多くもいただきました。

そのスカーレットは炎の赤を意味します。

私の燃え盛る炎のような、鮮やかな髪の赤色に似合うと言って。

そして、(くれない)を他の言葉で読んで、(ホン)

メイリンは私の鈴から。

美しい鈴と書いて、美鈴(メイリン)

色も形も音色も美しいけれど、一番美しいのはその在り方だとフラン様はおっしゃいました。

悪夢の象徴でありながら希望の輝きでもある、私の二律背反(アンビバレント)()自己証明(アイデンティティー)だと。

 

そう言って、名前を与えられた日のことはいまでも色鮮やかに思い出せます。

この世界に私が産まれたのはクーロンでのことですが、紅美鈴(わたし)が産まれたのは畢竟、あの日あの時あの場所でのことだったのです。

 

 

さて、注目すべきは声の方です。

私の声のもとになった鈴――これは、私がクーロンで“何の価値もない存在”だということを示すためにつけられたものでした。

しかしそれでも、“私”にとっては自分が自分であるために必要なたった一つの、命より大切なもので。

私がそれをとても大切にしていることを知ったフラン様は、鈴が壊れたりしないようにと()()()()()()()()()()()()、魔法で固定化してくれたのです。

その強度はマロンさんの覇気を込めた十字剣“夜”での攻撃でも傷ひとつつかないほどだったとか。

海王類の攻撃を受けても揺るぎもしない強度を誇るサンタマリア号……その全体に込められているほどの量の妖力を一つの鈴に凝縮した、といえばそのやり過ぎ感は伝わるでしょうか。

のちのちこの話を聞いたときは、フラン様は過保護すぎますね、と苦笑してしまいました。

 

そしてその鈴は私の声帯と同化して、私の体の一部になっているのです。

 

ええ、ええ、悪魔の実を食す前から私の中には妖力が備わっていたに違いありません。

未熟な私はそのことに気が付かず、悪魔の実の力と私の中の妖力が反応して初めて気が付いたのでしょう。

 

私は意図せずしてルミャさんやにとりと同じように、フラン様の妖力を与えられていたのです。

 

このことに気が付いたときは、なるほど、と色々な事柄に深く納得しました

私の悪魔の実の能力が非常に強力なのは実自体の性能だけでなく、妖力と反応しているから。

十代の半ばほどの容姿で成長が止まっているのはその時期に妖力を与えられたため。

他にもいろいろと、思い至る節がありました。

 

 

――そう、私はすでに“人間”ではありません。

かといって、フラン様と同じ“妖怪”でもありません。

 

私は覇気も使えますし、妖力も使えます。

 

人間であり、人間でない。

妖怪であり、妖怪でない。

 

それこそが、紅美鈴(わたし)

ええ、二律背反(アンビバレント)()自己証明(アイデンティティー)とはよく言ったものです。

どっちつかずの蝙蝠、というのはやはり吸血鬼であるフラン様の妖力を得ているからなのでしょうか……なんて。

 

もしかしてフラン様は、最初からこうなることを知っていたのでしょうか。

もしそうなら、今フラン様がいなくなったのは私への課題、なのかもしれません。

私の持てる力のすべてを駆使して、海底にたどり着いて見せろという。

 

 

さて、そんなわけですから、次なるアプローチは妖力による海底行きです。

まずは、フラン様のいる地点の真上に生えている陽樹イブ。

あの木を挿し木や接ぎ木で増やして、妖力で強化してみましょうか。

イブは空気を出す珍しい植物ですし、深海へアプローチするのにあれほど適したものもないでしょう。

私に残された時間がどれほどあるかはわかりませんが、死ぬまでには絶対にフラン様のもとにたどり着いて見せますとも、ええ。

 

 






流水と止水
流水の対義語って何でしょう。
留まる水、停滞する水、いろいろ思いつくけれど留水は病気の名前くらいにしか使わず(卵管留水症とか)滞水もあまりなじみのない単語かなと思い止水に。
もちろん明鏡止水から。
静水とかの方がいいのかな。

マーマンとギルマン
男性の人魚がマーマン、女性の人魚がマーメイドですが、男性の人魚はその多くがいわゆる半魚人で、英語ではどちらもマーマンです。
特に区別したい場合にギルマン(鰓人間)を使うみたいですね。

魚の卵
マンボウは一度に3億個の卵を産む。
そこから成長するのは数尾だから生存率実に1億分の1、0,00000001%という。

素潜り
呼吸のための装備を付けないで潜ることを素潜りといい、フリーダイビングなどフィンを装備して行う場合も素潜りと言います。
限界はフィンを付けての潜行で100メートルほど、より大掛かりな道具を使って世界記録だと200メートルほど。

メイリンの秘密
ようやく伏線回収。
15話「鈴の意味と見習いのコック」は去年の9月に投稿してるので、半年以上前という。
なんか感慨深いものがあります(投稿速度が遅いだけ)。


わかりにくいですが、本話のフランとメイリンではかなり時間差があります。
本話最後のメイリンの決意をしたころフランはまだぼーっとして苔むしている頃です。

次話からしばらくはフランサイドだけで話が進みます。

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