デートから始める異世界生活   作:シークレット/K

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!

.....遅いですが。


第三十九話 防衛

-士道side-

 

<鏖殺公>を顕現させた士道は、襲い来るフードの人物を相手に苦戦していた。

 

「ッ!?速い.....」

「シドウくん、伏せてください!」

 

レムの一声でしゃがむ。

真上をモーニングスターが通り抜け、数人蹴散らす。

 

「ぉぉおおッ!」

 

士道は立ち上がりながら<鏖殺公>を振り上げて斬撃を繰り出す。

数人が縦に切り裂かれ、血しぶきが舞う。

人を殺す、なんてことは初めてで嘔吐しかけるが、一生懸命に呑み込んで耐える。

 

「絶対に、子供達の方へは.....!」

 

身体がボロボロになり、治癒の焔が士道を包む。

それを無視して<鏖殺公>を薙ぐ。

 

「シドウくん、上です!」

「ッ!?<氷結傀儡>!」

 

レムの声を聞いた士道は、見るより先に盾を展開する。

それが功を奏したのか、後に視線を向けると、相手の攻撃をしっかりと防ぐことが出来ていた。

 

その相手を盾に触れている場所から凍結し、氷像となる。

士道は屋敷の方を遠目に見る。

十香達が奮闘していることがわかるが、それでも家内に侵入を許してしまっている。

 

エミリアを直接守るのは、ラムとパック、琴里、二亜の四人。

大丈夫だろう、と思うようにして、自分のことに集中する。

 

そうして、数分後。

.....絶望が、やってくる。

 

その人物は、敵の中で唯一顔を出していた。

見るからに、リーダー格だ。

 

「お前は誰だ.....!」

「ワタシはデスね.....」

 

緑髪のおかっぱ頭の顔面蒼白な男は、ケタケタと嗤って言った。

 

「ーーー魔女教、大罪司教.....『怠惰』担当。ペテルギウス・ロマネコンティ.....デス!」

 

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-スバルside-

 

スバルは狂三が操る竜車の中にいた。

 

「スバルさん。もうすぐ日も落ちますわ。.....急ぎたいですが、村で一泊していきますわよ」

 

夜の間に進まないのは理由があった。

狂三が竜車の操縦に慣れていなくて明るい内ならまだしも、夜は危険だと判断したからだ。

 

だが、狂三には<一の弾>があるではないか、とも思うが、狂三は"時間"を無駄にしたくなかった。

<一の弾>だけならまだいい。

途中で魔獣が現れた時に、夜だと暗くて周りがよく見えないため、急な時に<刻々帝>をただの銃としてでなく、"時間"を使ってしまう可能性が高かったのだ。

 

「しょうがねえ、か.....」

 

スバルは少し不安になりながら、狂三の言葉に賛同するしかなかった。

 

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-士道side-

 

「レム、あいつを倒すぞ!」

 

ペテルギウスに向かって行く士道。

リーダーを倒せばこの戦いも終わるだろうから。

 

「はい!」

 

レムは元気よく返事をし、士道の背中を追う。

そして追い抜き、ペテルギウスに向けてモーニングスターを飛ばす。

だが。

 

ペテルギウスから伸びる、無数の紫色の腕(・・・・)が、その一撃を防いだ。

 

「なんだ、あれ.....」

 

不気味な腕を見て、警戒する。

と、レムがバックで戻ってきた。

 

「シドウくん、どうしますか?見えないナニカ(・・・・・・・)が邪魔してきますが.....」

「.....え、ちょっとま....ッ!?危ないッ!!」

 

レムが言ったことが変だと思い、紫色の腕について話そうとしたが、その腕が向かって来ているのに気づき、レムを押し倒す。

 

「し、シドウくん.....?」

 

レムが混乱しているのをよそに、士道はペテルギウスを見る。

 

「なぜデスか.....。なぜ、貴方にワタシの!ワタシだけの寵愛が見えているのデスか!!」

 

ペテルギウスの言動を聞いて、さらに謎が深まる。

一つだけ言えるのは、レムが紫色の手を認識していないということだ。

であれば、ここは自分がやらなければならない。

 

士道は未だ喚きながら頭を掻き毟るペテルギウスを見て、<鏖殺公>を構える。

 

「認めない.....認められるはずがないのデス!!」

「何がだよ!」

 

さっきよりも数多くの紫色の腕が迫る。

それを<鏖殺公>の斬撃で消し飛ばす。

斬撃で消し飛ばせるということは、紫色の腕はその場に存在するものだということだ。

レムには見えないだけで、そこにある。

幻覚ではない。

 

それが分かれば、対処はできる。

だが。

 

「ぐ.....くそッ.....」

 

身体が限界を迎えていた。

暴走した時の感覚を覚えているのか、うまく天使を使えている気がしたが、だからといって斬撃を放った時に身体が傷つくことが改善された訳ではない。

レムに紫色の腕について伝えたいが、そんな時間を許してくれる訳でもない。

 

「シドウくん!!」

 

レムが闇雲に振るったモーニングスターが向かって来ていた腕を霧散させる。

.....が。

残っていた一本の腕がレムの方へと向かう。

 

「まずい.....!」

 

<氷結傀儡>で凍らせようと思ったが、ここからではレムにも影響を与えてしまう。

 

士道は痛む身体にむち打ち、<鏖殺公>をペテルギウスに向けて振るう。

士道が出した答えは、レムにたどり着く前に相手を倒すことだった。

 

が、ペテルギウスがそのままやられてくれるはずもない。

ペテルギウスは紫色の腕を自分に向けて、自分を真横に吹っ飛ばすことで斬撃を避けた。

 

そして、レムは腕に持ち上げられーーー

 

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-スバルside-

 

翌朝。

朝一番に宿を出て、竜車でロズワール邸に急ぐ。

霧が深い中限界までスピードを出し、メイザース領に入る.....その寸前で。

 

狂三は、竜車を止めた。

 

「どうしたんだ?」

「.....竜が、怯えているようですわ。不調、という訳でも無さそうですし、獣の勘、と言った所でしょう。.....良くないことが起きていることが、竜にはわかっているのですわ」

「どうすんだよ」

 

竜が動かないとなると、徒歩で行くことになる。

ここからなら比較的近いから行けないこともないが、それでも急いでいる身としては竜車で行きたいところだった。

 

「.....仕方がありませんわね」

 

スバルが思考していると、狂三の中で結論が出たらしく、分身体を一人影から出した。

 

「スバルさん、行きますわよ。地竜は"わたくし"がクルシュさんの元まで送ってくれますわ」

「お、おう.....」

 

狂三がしたことに異議はない。

考えるよりも進んだ方がいい。

そう思ったスバルだが.....狂三はスバルを持ち上げた。

 

「ちょ、何を?!」

「うるさいですわよ。口を閉じてしっかり捕まってくださいまし。.....<刻々帝>、<一の弾>」

 

歩兵銃を自分に向けて放った狂三。

スバルは狂三の能力のことを、焦燥のせいかすっかり忘れていた。

 

そして、村に到着した。

.....惨憺たる状況だった。

 

見覚えのある人達が血を流して倒れている。

既に事切れていることは見るだけで分かった。

 

「.....嘘だろ?生きてるやつは居ねえのかよ!?」

 

目の前の現実を受け入れられず、叫ぶ。

だが、スバルの問いに応える者はいなかった。

 

「.....まさか.....」

 

狂三ですら、不安な表情をしている。

スバルと狂三は頷き合い、ロズワール領へと走る。

そして、庭園に辿り着く。

 

 

ーーー絶望が、そこにはあった。

 

まず目に付いたのは倒れているレム。

階段手前でおびただしい血を出しながら、死んで、いた。

 

そして。

 

「す、ばる、か.....?」

 

声のした方を見る。

小屋の前に.....扉の前にもたれ掛かっている士道だった。

士道の身体は見るからに重傷で、治癒の焔も燻るだけで、いつかのように治っていない。

 

「ごめん、な、スバル.....。まもり、きれなかった」

「士道.....!!」

 

士道が発した言葉は、そこまでだった。

狂三が<四の弾>を撃とうとしていたが、時既に遅かった。

士道が、死んだ。

 

「な、んだよ.....ッ!!」

 

狂三が士道の前でへたり込むのを放置し、スバルは小屋の内部へと向かう。

小屋の中には、子供達がーーー

 

 

 

生きて、いた。

 


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