デートから始める異世界生活   作:シークレット/K

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遅くなって申し訳ありません.....。
戦闘ってやっぱり難しいです.....。

今回はいつもよりも多めです。

こんな更新ペースですが、失踪したりはしないので今後ともよろしくお願いします。


第三十六話 暴走の終わり

-ラインハルトside-

 

士道に近づくにつれて襲い来る風で出来た槍を避けながら、思考を加速させる。

避ける、といっても、矢避けの加護が働いているから自分で避けている訳では無いが。

 

「.....!」

 

向かって来た風の槍を、龍剣レイドで切り裂く。

切り裂いた槍の柄の辺りで、士道は右手で握っていた。

これでは飛び道具にならないから矢避けの加護は働かない。

 

次に襲いかかって来たのは、炎の渦。

その様子は、さながら登り龍のようだった。

 

飛び道具ではなく、"災害"として向かって来た炎の渦を、龍剣レイドを振って無理矢理鎮火させた。

多少なりとも怯むかと思ったが、暴走している状態の士道は動じることもない。

 

だが、それ以上に驚かされたことがあった。

 

「.....シドウの周りのマナが、僕に集まって来ない。君は、僕と同じくらいマナに....."世界"に好かれているのかもしれないな」

 

ラインハルトが本気で戦う時、周囲のマナや微精霊が集まってくる。

それが当たり前のように感じられていたラインハルトにとって、自分に集まって来ないマナを見るのは新鮮であった。

 

龍剣レイドが周囲のマナを吸収して淡く発光していくのを見届けた後、士道の方を見る。

 

(伝心の加護は試した。でも、ダメだった。そもそも、シドウが暴走した原因はなんだ?.....分からないことが多すぎる)

 

思案するも、答えは出てこない。

戦い始めて、もう一時間が経つ。

 

(シドウから、マナの糸のようなものがどこかに繋がっていることまでは分かった。だけど、それが何か分からない以上、断ち切る訳にも行かない)

 

こうしている間にも二人の戦いは激化して、王都の一部はもう吹き飛んでいる。

このまま王都全てを破壊させる訳にも行かない。

でも、シドウを見捨てることも出来ない。

矛盾じみた感情を抱きながら、切羽詰まっていた、その時だった。

 

「.....!?なんだ、いきなり?」

 

空間が、開いた。

困惑する中、そこから出てきたのは。

 

「.....無事に来ることが出来たようです、司令」

「そうね。.....想像以上の規模ね」

「だからといって、することは変わらない」

「シドー!今助けるぞ!」

 

総勢10名(+狂三の分身体)の精霊と魔術師だった。

 

 

さらに。

 

「近くで見ると、マジですげぇな!」

「これほどの霊力だとは思いませんでしたわ」

「そうだねーぇ。マナの量だけなら、私も抜かれてるだろうしねーぇ」

「もう!3人ともそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

 

 

スバル、狂三、ロズワール、エミリアの4人に、

 

「.....今まで気絶しててすいません。今更ですけれど、レムもシドウくんを助けるのに、微力ながら手伝います!」

「まあ、これにはフェリちゃんにも若干は責任があると思うしぃ?結局ここに戻ってきてからも何も出来なかったから、こうして来ちゃいましたー」

 

レムとフェリスも合流した。

 

役者は揃った。

あとは士道を取り戻すのみだ。

 

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-ラタトスクside-

 

「.....やっぱり、士道はひどい状態のようね」

 

琴里は士道の状態を一瞥したあと、ラインハルトやスバル、レム達に近づき、自己紹介を兼ねて説明し始める。

 

「.....なるほど。つまり、シドウを元に戻すには君達"精霊"がシドウとキスをして、霊力.....僕達でいう、マナが行き来する経路を広げないといけないということでいいかい?」

「ええ、その認識でいいわ」

 

ラインハルトの理解が早くて助かる。

 

どうやら暴走した士道を食い止めていたのもラインハルトだったらしく、相当な実力の持ち主であることがうかがえる。

 

「でも、それで戻らなかったらどうすんだよ?」

「.....それは」

 

スバルが核心をつく質問をして、琴里は渋面をつくる。

 

「それについては大丈夫だよ。経路が通らなければそれは、シドウのマナの暴走の規模が大きいせいだろう。だったら、そのマナの暴走の中心部の力を少しでも綻ばせるだけで、簡単に力の奔流の一部は崩壊して、大分弱まるはずだ。.....こんなふうにね」

 

ラインハルトが士道に一瞬で近づき、士道の体に触れる。

すると、暴走の規模が若干弱まった。

士道が反撃するよりも早く、ラインハルトはこちらに戻ってくる。

 

「僕にはこれくらい容易いことだよ。これで、ちゃんと経路を繋げることが出来るはずだ」

「やっぱラインハルトは規格外だろ!?」

 

ラインハルトのしたことに、スバルが驚く。

 

いや、驚いているのはスバルだけではない。

士道に近づいた時の速さや、あの状態の士道に簡単に近づける力の大きさに、あの"世界最強の魔術師"エレン・M・メイザースをも超えているのではないか、と考えてしまうほどに、精霊陣は驚愕していた。

 

「ほらほらー。ラインハルトが確実にしてくれたんだから、君たちも早く行動に移らなきゃ」

「援護くらいならするから安心して行ってねーぇ?」

「他でもないシドウくんを助けるためですから!」

「パック、私達も頑張ろう?」

「若干眠くなってきたけど、リアが言うなら仕方ないね」

「ちょっと待って!?これって俺だけ役に立たないパターンか!?」

 

これだけの人数。

士道がこの世界に来て、親睦を深めた結果。

それを感じて、少し微笑む。

 

「異世界に来ても、士道は士道ってことね。.....行くわよ、みんな!士道の暴走を止めるわ!」

『おおー!!』

 

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-三人称視点-

 

「ちょーっと、小細工させてもらうよ、少年!」

 

二亜が未来記載の能力を用いて<囁告篇帙>に綴っていく。

霊力が渦巻く士道自身に効果はないが、二亜の狙いはそうじゃない。

 

内容は、《士道の攻撃は生物に当たることはない》だ。

士道に対してではなく、士道が放った攻撃に対しての未来記載。

無論、時間稼ぎにしかならないが、短い時間でも十分だ。

 

「一番はいただきですぅ!」

 

いち早く動いていた美九が、最初に士道の前にやってきた。

振り払おうとする士道だが、限定霊装を纏った美九はしがみつく。

 

「ちゃんと、わたしが大好きなだーりんに戻って下さいねー?」

 

一言声をかけて、キスをする美九。

 

美九の限定霊装が消えていき、それが原因なのか、美九は振り落とされてしまった。

 

落ちていく美九を救ったのは、レムだ。

鬼化したレムが美九をすれ違いざまに抱き上げる。

 

「きゃー!可愛い子に助けて貰っちゃいましたぁー!」

「ちょ、どこ触ってるんですか!」

 

美九の怪しげな手つきに、抗議するレム。

 

そして、士道が攻撃に回す霊力を増やしたのか、二亜の未来記載の効果が薄れてくる。

士道が放った巨大な氷の塊が、エミリアへと向かっていく。

 

「だめだよぉー?エミリア様を傷つけちゃーぁね」

「よりにもよってリアを狙ってきたのか。.....まぁ、ランダムで狙われてるってことはわかってるけど、それは許容できないよ、シドウ」

 

対して、ロズワールの"ウルゴーア"の大炎球とパックの"ウルヒューマ"の大氷柱が放たれ、相殺される。

 

すると次は、風の奔流が士道の元に向かう精霊達に襲いかかる。

 

「援護くらい任せてくれ」

「ッ!?いつの間にいたのだ!?」

「強すぎでしょ.....。まさにラノベとかでよくあるバグキャラ的存在だわ」

 

いきなり現れたラインハルトを見て驚く十香と、冷静に分析する七罪。

風はラインハルトが龍剣レイドで切り裂き、かき消した。

 

その隙にそのまま突っ込んでいくのは、天使と化したよしのんに乗る四糸乃だ。

 

「士道さん、元に戻って、ください.....!」

 

美九と同じく一言声をかけてキスをする四糸乃。

四糸乃と一緒によしのんに乗っていた七罪もまた、凄く渋りながらも一瞬のキスをした。

 

「オォ、オオオォォォォオオオオオオッ!!!!」

『うわわ!?』

「きゃ.....!?」

「ぎゃぁーー?!」

 

理性が戻って来ているのか、叫び声をあげながら四糸乃達に向けて暴風を送り、四糸乃達は踏ん張れず、そのまま飛ばされる。

 

「はいはーい、受け止めるのはフェリちゃんに任せてー」

 

ちょうど飛ばされた先にいたフェリスが衝撃を逃がしながら受け止めた。

 

「あ、ありがとうございます!」

「助かった.....」

「無事なようで何よりだよー」

 

そして、八舞姉妹は風の速さで士道のに近づいてきていた。

 

「夕弦、縛って!!」

「応答、いきます!.....<颶風騎士>(ラファエル)<縛める者>(エル・ナハシュ)!!」

 

夕弦の天使によって体が縛られる士道。

その間に耶倶矢と夕弦が士道に近づき、キスを済ませた。

 

「これでいいんだよね?!」

「回答、そのはずです。今のうちに皆も.....」

 

まだ終えていない精霊達に声をかける夕弦だったが、士道から放たれた焔の渦が迫る。

 

「ッ!?夕弦、危ない!」

 

耶倶矢が夕弦を押し、夕弦は焔の軌道からズレるが、耶倶矢がもろに当たってしまう場所にいた。限定霊装を纏っている耶倶矢だが、士道の並外れた霊力で放たれた焔をくらって無事でいられるはずもない。

 

「耶倶矢!!」

 

夕弦が耶倶矢に向かって手を伸ばすが、届かない。

絶望の面持ちになる夕弦。

 

だったが、焔が耶倶矢に当たる寸前で。

 

「あぶ、ねぇぇぇぇえええッ!!!!」

 

耶倶矢に向かって跳ぶ、一つの影。

スバルが、耶倶矢と一緒になって夕弦がいる場所に転がってきたのだ。

さっきまで居たところを灼く焔を見て、間一髪だった、とスバルは振り返る。

 

「大丈夫だったか?士道の世界の精霊ってのがどれぐらい強いのかはわかんねえけど、あれくらって無傷ってことはないだろうし?」

「感謝、ありがとうございます」

「.....うん、助かった。ありがとね」

 

体を張って助けてくれたスバルに礼を言う二人。

士道を見る。

 

後は、琴里、折紙、十香の三人だ。

となると、未だ暴走している霊力の属性は、火、光、剣の三属性のみ。

さらに、士道の行動がだんだん単調だったのが、そうではなくなってきた。

何というか、理性的になってきたのだ。

士道の暴走が終わりに近付いている証拠だろう。

 

折紙は今、神無月に守られながら士道に近づいていた。

CR-ユニットは整備のため使えず、霊力はここまで使ってきて底をつきかけていたため、こうして近づくしかなかった。

 

「大丈夫でしょうか?」

「問題ない。そのまま近づいて」

 

あともう少しで士道の前にたどり着く。

それに気づいたのか、士道の攻撃が激しさを増す。

 

「くっ、流石士道くんですね.....。力技で私の随意領域がひしゃげそうですよ」

「当たり前。士道は強い」

 

何故か胸を張って答える折紙を見て、苦笑する神無月。

レイザーソード<ノーペイン>で士道から迫り来る光を随意領域を併用して物量で押し返す。

 

「先に行かせてもらうわよ、折紙」

「別にいい。先に済ませて」

 

限定霊装を纏った琴里が士道に飛んで近づいていく。

それに対して容赦なく攻撃を放つ士道。

その手には、<鏖殺公>が既に握られていた。

 

「あああああぁぁぁぁあああッ!!!!」

「っ!!」

 

士道が<鏖殺公>を突き出し、琴里は脇腹を穿たれる。

即座に琴里に残る霊力で治癒の焔が吹き出す。

痛みに苦悶の表情をしながら士道の目の前にたどり着く琴里。

 

「そろそろ.....戻って来なさい、おにーちゃん.....」

 

キスをして、一気に離れる。

 

琴里が士道の気を引いてくれていたおかげで、折紙も士道の目の前に容易にたどり着くことができた。

 

「.....言葉は、いらない」

 

キスをした。

 

そして。

 

残るは十香のみとなった。

 

「シドー、勝負だ!」

 

<鏖殺公>を構える十香。

同じく、<鏖殺公>を手に持つ士道。

 

一対の天使が、ぶつかった。

 

が、士道がいくら暴走しているといっても、<鏖殺公>の本当の持ち主だった十香に勝てるはずもない。

だが、なけなしの霊力を全力で使っていた十香が霊力を使い切ってしまった。

 

「ぐぅっ!?」

 

霊力が枯渇した結果、痛みが起こる。

心配したほかの精霊達だが、ラインハルトが止めた。

 

「これは彼女の戦いだ。彼女も邪魔して欲しくないだろうしね。僕達にできるのは、応援してあげることくらいだよ」

 

十香は痛みを引きずりながら、士道に近づいていく。

士道が振った<鏖殺公>をかろうじて避けて、力を振り絞って士道が<鏖殺公>を持っている右手に衝撃を与える。

士道は<鏖殺公>を取り落とし、無防備となる。

 

「シドー、ようやく会えたのだな.....」

 

十香は士道にキスをして、そして。

 

「っ?!とお、か.....?なんで、ここに.....」

「教えてやるものか、ばーかばーか」

 

士道の暴走が止まったのと同時に、十香は確かな笑みを浮かべて気を失った。




狂三が全然出てきてないじゃん、と思うかもしれませんが、大丈夫です。

ちなみに、鞠亜は琴里たちがルグニカにやってきた時点で、【開】の繋がりからラタトスクの空中艦の反応をキャッチして、士道のスマホから元の世界に戻っています。(状況を把握するため)

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