デートから始める異世界生活   作:シークレット/K

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第三十四話 信頼

-琴里side-

 

精霊が起きたと令音から報告があり、いよいよ対話することとなった。

 

精霊のいる病室に入ると、精霊はベッドの上で座っていた。

 

「ようやく起きてくれたわね。体調は大丈夫かしら?」

 

気ずかいながら話しかけたのに対して、精霊は。

 

「.....うんと、ちょっと状況把握するために時間くれない?」

 

いきなり"天使"を顕現させながら、そう言った。

 

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天使を顕現されて焦りはしたが、襲ったりしないというので了承した。

精霊.....本条二亜は、本型の天使を手に持ち、ページをめくっている。

 

「ふーん、なるほどねー。要は、あたしは君たちに助けられたわけか。んで、目的は保護と情報の提供.....」

「.....!ええ、そうよ。その天使の能力かしら?」

「うんそう。この本が、あたしの天使.....<囁告篇帙>(ラジエル)だよ。それにしても、異世界への行き方が知りたい、ねぇー。ラノベでしかありえないような、あるかも分からない世界に行く方法なんてあるのかなぁっと」

 

二亜はさらにページをめくった。

 

「.....ほぉーう」

「なにか分かったの!?」

 

頷きながら、分かったように声を出した二亜を見て、つい声を張り上げた。

対して二亜はうんうんと頷く。

だが、そう簡単に教えてくれるわけでもなかった。

 

「DEM.....だっけ?から、助けてくれたから、教えないこともないけど。ここ、精霊の霊力を封印して保護する機関なんでしょ?目的の一つにあたしの保護も入ってるし」

「.....だったら何よ?」

「で、霊力を封印するために必要な、大切な人がその異世界にいる、と。だから、異世界に行かないといけない」

「.....要領を得ないわね。ハッキリ行ったら?」

 

苛立ちを隠そうともせずに言うと、二亜は言い放った。

 

 

 

「その.....五河士道.....って少年。連れ戻すの、やめたら?」

 

 

 

「.....は?」

 

最初、二亜が何を言ってるのかよくわからなかった。

否、理解したくなくて思考が遅れていた。

言われたことを何度も反芻し、理解が追いつく。

 

そして、怒りの気持ちが湧き上がってきた。

 

「そんなこと、出来る訳.....!」

「なんで?そもそも、人は何考えてるかわかんないし。その、士道君だって心の奥では汚い事考えてるに決まってるでしょ」

「士道は.....、おにーちゃんはそんな人じゃない!!」

 

士道を貶すような言い方に、最早司令官モードとかも関係なく叫ぶ。

何も知らない、会ってすらないくせに、士道を語るな、とでも言うように、二亜を睨む。

そして、二亜はそんな琴里を見て目を丸くしていた。

 

さらに、怒気がほかのところからも来ていることに、二亜も琴里も気付いた。

病室の扉が開き、入ってきたのは精霊達と真那だ。

 

「士道に会っていないあなたが士道について悪く言うことは許さない」

「シドーはいい人だ!私に名前をくれた.....。私の最初の味方になってくれた。そんな人なのだ!」

「回想。士道は私と耶倶矢を救ってくれました。士道が居たから、私達は二人でここに存在出来ています」

「正直、二人で生きてくなんて、出来るわけないと思ってたし。.....それに、士道が必死に私達のことを考えてくれたから、私達も士道を信頼してるし」

「.....さすがに、私一人なんかのためにぎりぎりまでねばって、走って声を掛けてくれてた時はいろいろ焦った」

『うんうん、よしのん達も助けられたよねぇ』

「.....うん」

「いつまでも私のファンだって言ってくれた、私が大好きなだーりんですよぉ」

「わたくしはまだデレてはいませんけど、士道さんは信頼に値する人物だと思っていますわ」

「なんてったって、自慢の兄様でやがりますからね!」

「皆.....」

 

上から、折紙、十香、夕弦、耶倶矢、七罪、よしのん、四糸乃、美九、狂三、真那だ。

琴里は精霊達の発言に安心し、自分のペースを取り戻す。

 

「.....そんな人物、いるわけ.....。ッ!?」

 

二亜は、<囁告篇帙>を見て、愕然とする。

士道がこれまで行ってきた精霊を巡る戦争(デート)を、<囁告篇帙>を通して見たからだ。

いつの間にか、二亜は涙を流していた。

 

この人なら、信じられるのかもしれない。

 

そう、感じたから。

 

「分かったかしら?.....士道はあなたを言ったような人じゃないって」

 

同意を求める問いかけ方に、二亜は涙を拭き、

 

「みたいだねぇ。.....あたしも自分で会ってみたくなった」

 

そう答えた。

 

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「それで、異世界に行く方法は、分かったの?」

「バッチリよ」

「ほんとうか!?」

 

二亜の肯定に十香が反応する。

 

「んじゃ、いうよ。異世界に行く方法は.....」

 

二亜は、上を指さした。

 

「.....考察。上、ですか?」

「.....まさか、空?」

「惜しい!えっとね。.....宇宙にいる精霊.....要は、11人目の精霊の天使が必要だってさ」

 

「.....また、精霊.....?」

 

どうやらまだ時間はかかるようだった。

 

「取り敢えず、空中艦で宇宙に行くわよ。.....あわよくば、その精霊も保護したいところだけど、こう立て続けでは士道もいないし心許ないし、まだASTにもDEMにも発見されていない精霊だから、後回しでもいいわ。とにかく、どうにかして精霊に天使を使わせないと」

「.....その事なんだけど、ちょっと、いい?」

 

七罪が話しかけてきた。

 

「精霊の力って、少しでもいいなら使えるんだよね?」

「ええ、本当に少しだけなら、使えるわよ。それが、どうかした?」

「.....私の<贋造魔女>(ハニエル)でその精霊の天使に変化させれば.....「それよ!」.....」

 

割り込まれた七罪が下を向いてブツブツ言っているが気にしない。

こちらには七罪がいるのだ。

天使の形状、能力を記憶するために宇宙に行くことは変わらないが、士道に会うまでの道のりを着実に進んでいる事実に、素直に喜べる。

 

「じゃあ、全員空中艦に乗り込みなさい!出発するわよ!」

『おおーーっ!!』

 

全員が、空中艦に向かって駆け出した。

 

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-士道side-

 

王都、クルシュ・カルステンの別邸に到着した時、士道の高熱は収まっていた。

かわりに、性格が激変した。

 

竜車を中で、荒い息づかいがなくなったと思ったら、急にレムを口説き出したのだ。

レムは戸惑いながらも、士道のペースに呑まれて、最後には顔を真っ赤にして耳から蒸気を出して、気絶してしまった。

 

これを見て、しばらく士道の変化についていけていなかったフェリスが大慌てで士道のマナの様子を再確認。

すると、マナは安定していた。

 

だが、安心というわけでも、安全というわけでもなかった。

例えるならば、コップに水をぎりぎりまで入れた感じだ。

ちょっとでも外からの力が加わって倒れたりすると、一気に爆発する、というような状態だった。

 

「ああ、もう!ほんと、なんなのこのマナの状態!正直、お手上げなんだけど!」

 

フェリスがキャラ崩壊してまで叫び出すほど、士道の状態は深刻だった。

 

そして士道は、フェリスが目を逸らしていたうちに、その場から消えていた。

 

フェリスに気づかれずに外へ出たのだ。

外に出た士道は、ラインハルトに会っていた。

 

「どうしたんだい、シドウ」

「いや、一つ、頼みたいことがあるんだ。もうすぐ、俺の中の霊力が暴発して、それによって王都が危険にさらされる。フェリスってやつが言ってた。.....だから、もし、俺が暴走したら.....。お前が俺を殺してくれ」

「.....!?それは、避けられないのか?」

「無理だよ。解決法は思いつくけど、この世界にいたんじゃそれも出来ないしな。だから、頼む。俺はこの都の人達を、暴走の結果で死なせたくないんだ」

「.....分かった。約束するよ。ただし、僕もぎりぎりまで君を助けられないか、考えるからね」

「.....ありがとな」

 

士道の暴走まで、残りーーー

 

 

三時間程度。





性格が変わった士道も、暴走したら王都が危ないとか事前に言われたら、少し自重するようです。(独自の解釈です)

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