わたしの都合で、これからしばらく投稿できないかもしれません。
次の投稿がいつになるのかわかりませんが、絶対に続きを書きますので、それまで待っていてくれると嬉しいです。
それでは、どうぞ。
「あは、ははは」
レムから、剥き出しの残酷さから溢れる笑い声が発せられる。
と同時に、魔獣の群れに自ら突進していき、動きが止まっていた先頭の魔獣が頭を踏みつけられ、頭が潰れて絶命する。
その魔獣を踏み台にして後方の魔獣たちの方へと飛び、その顔面を蹴ってモーニングスターの追い打ちでまた一匹仕留め、背後から襲いかかった一匹は、狂三が銃で撃ち抜いた。
「正気はなくしていないようですわね」
「ええ、ありがとうございます」
そんな短い会話をしたレムと狂三。
狂三が言ったように、レムは狂気となるも、正気をなくしてはいないようだった。
だが、魔獣をどんどん殺していくと同時に狂ったように笑うレムの姿はまるで.....。
「鬼だ.....」
スバルが俺の気持ちを代弁するかのように呟く。
実際、そう見えた。
頭頂部からツノが突き出ていて、それをより連想させている。
鞠亜でさえ、無言を貫いている。
呆気にとられた俺たちは、動くことができなかった。
今、むやみに動けば、そんなことあるはずがないのに、レムの標的になってしまいそうで。
だが、無限に出てくる魔獣は止まってはくれず、レムや狂三にやられた魔獣を飛び越え、次々に殺到していく。
狂三は霊装を纏っているため、魔獣の攻撃はあまり届かないが、レムはいつものメイド服姿だ。
爪や牙によって傷つけられていくのは自明の理だった。
これでは、こちらが消耗されるだけだ。
「士道、魔力反応です」
鞠亜が言った言葉にふと我に返った。
鞠亜が言った、魔力の出どころは、あの仔犬。
レムもそれを感じたのか、対処しようと仔犬の方へ......駆け出そうとするその隙を逃さず、その背中に飛びかかる魔獣。
これにはレムも動揺し、狂気と化していたその表情が、急に悲嘆にくれた顔になる。
狂三は.....離れた場所で戦っており、銃で撃とうにも魔獣の数が多いのと森の中で木が多いのも重なって、レムを助けることは不可能だ。
今、レムを助けられるのは、俺かスバルだけだ。
俺はレムを庇おうと飛び出そうとして.....スバルがそれより早く飛び出した。
女の子は地面に寝かせている。
「な.....おい、スバル⁉︎」
「ダメです!止めてください、士道!」
鞠亜が俺に叫ぶが、もう遅かった。
スバルはレムを庇うように、両腕を広げて立つ。
だが、自分での回復手段がないスバルが複数の魔獣の牙を突き立てられ、爪で貫かれでもしたら、最悪ーーー
死、だ。
ここまで来たのに。
また、戻るかもしれない。
それに、死に戻りというイレギュラーなものが、今回も起きるのかも確証がない。
誰かが死ぬ。
それだけは、今回は一番回避したい内容だった。
スバルを、その先にいるレムを助けようと手を伸ばす。
だが、その想い虚しく。
スバルは、魔獣によって瀕死状態となった。
「「スバル(くん)!」」
俺もレムも、同時に叫ぶ。
レムがスバルに駆け寄っていく。
俺も、スバルに駆け寄ろうとした。
だが、鞠亜の指摘で女の子の事を思い出し、魔獣に近づかれる前にそちらの方に行って、背負う。
魔獣が寄ってくるが、俺の方は狂三が歩兵銃で撃ち、レムは自分でスバルを守りつつ魔獣を捌いていく。
「レム!女の子は俺が連れていく!スバルを頼む!」
そう、指示を出した。
ここまで女の子を背負って来たスバルの努力を無駄にしたくはなかった。
だが、優先すべきは瀕死であるスバルだ。
だから。
「わたくしはどうしたら?」
「狂三は、レムの方を重点的に援護してくれ」
「士道さんは大丈夫ですの?」
「.....ああ。とにかく、スバルを優先にしてくれ」
こうしている間にも、魔獣は待ってくれることはなく、戦いながら話している。
だが、そんな余裕もだんだんとなくなってくる。
「.....わかりましたわ。ですが、スバルさんを優先する、ということでしたら、今すぐにでも元通りにできますわよ?」
「.....あ」
「わかったようですわね」
そうだった。
狂三には、この状況をすぐに打破できる術を持っている。
<刻々帝>の能力の一つ、
「狂三、頼め.....」
「ーーとは言っても、レムさんはもう言ってしまったようですわね」
「そのようです」
「えぇ⁉︎」
考えてみれば当たり前だ。
スバルが瀕死状態で、ここでもたもたしてるわけにはいかない。
そんな中、味方の誰かが指示を出したら?
すぐに動くに決まっている。
.....どうしたらいい?
とりあえず、村に女の子を届けることは大前提として、レムも村に向かっているのだろうし、追いかければ村で会えるだろうが、それでも心配なわけで。
「しょうがないですわね。掴まってくださいまし、士道さん」
狂三に言われるままに、女の子を落とさないように気をつけながら掴まる。
「行きますわよ。.....<刻々帝>、<一の弾>」
狂三は、<一の弾>を自身に打つことで、時間を早くして、高速移動をし始めた。
そして、レムにすぐに追いつくことができた。
そこで<一の弾>の効力が切れたのか、狂三が消したのかはわからないが、高速移動が止まった。
「レム!」
「シドウくん.....」
レムも、レムに背負われているスバルも返り血で真っ赤だった。
そして、今までずっと戦っていたレムの表情も疲れ切ったような感じだった。
「わたくしたち、レムさんとスバルさんをそれぞれ背負って、一旦村に戻りますわよ!」
狂三の影から二人の分身体が出て来た。
それぞれレムとスバルを背負い、村へと急ぐ。
その時。
手の甲に激痛が走った。
何が、と見てみれば、あの仔犬.....魔獣が牙を突き立てていた。
いつの間に.....⁉︎
<一の弾>を使った時に距離を大幅に離したのではなかったか?
それとも、もう追いついて来たのか。
.....噛まれているのは事実だ。
考えていても仕方ない。
とりあえず<鏖殺公>を魔獣に突きつけ.....ようとして、いきなり牙を抜いて走り去った。
「あ.....」
.....今の一瞬で、呪いをかけられた.....?
調べようにも、呪いを調べられる人物がここにはいない。
今はこのまま村まで行くしかないか。
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村に戻ると、ラム、エミリア、パック.....ベアトリスまでもがいた。
「帰ってきたわ」
「シドウと.....隣の人って盗品蔵で助けてくれた女の人だよね、パック」
「うん、たぶんそれで合ってると思うよ」
そうだった。
まだ、狂三の事エミリアたちに紹介してないんだった。
レムには会った次の日に見られたけど、この世界に来てから狂三は、俺の影の中にいることが多くて、エミリアたちも指摘してこないから忘れていた。
「みんな、傷ついてる.....」
「それだけ頑張ったという事だろうね。シドウ、スバルとレムは?」
「狂三が背負ってる」
スバルとレムの容態を見て、四人は驚いた。
特に、スバルは体の所々に風穴が空いていて、危ない状況なのだ。
レムは、"鬼化"と呼ばれる状態の影響で、傷はほとんど塞がっていた。
「レムは大丈夫だけど、スバルの方は今すぐ取り掛からないとまずいね。回復魔法では間に合わないかもしれない。縫うことにしよう」
「わかったわ。バルスはわたしが運びますので、大精霊様は」
「うん。リア、針と糸を持ってこよう」
「わかったわ」
迅速な対応で、スバルは運ばれて行く。
「ベアトリス、この女の子に呪いはかかってるか?」
「.....いや、大丈夫なみたいなのよ。.....女の子より、おまえの方が深刻かしら」
「俺が.....?」
「複雑な呪いにかかっているのよ。まあ、それでも黒髪の方よりは全然マシなほうかしら」
やはり、あの小さい魔獣に噛まれた時にかかったらしい。
「解呪、できるか?」
「.....やって欲しいのかしら?」
「頼む」
ベアトリスが、魔獣に噛まれたところに触れた瞬間、暖かい光に包まれ、黒い靄が出た。
「完了なのよ」
「ありがとな」
.....スバルは無事だろうか?
そんなことを考えながら、まだ暗い中、星を見上げた。