今、テスト期間真っ最中なんですよね。
それではどうぞ。
「えーと、短い間ですが、お世話になりました」
「色々ありがとうございました」
ベアトリス以外の屋敷の住人に見守られながら、俺とスバルは頭を下げた。
いよいよ、屋敷を出る日となったのだ。
「いやぁ、シドウくんに関しては、逆にこちらが礼を言いたいくらいだーぁよ。どうだーぁい?うちの執事としてこれからも働かないかい?」
「いや、遠慮しておきます。.......マジでメイド服着せられそうなので」
「それは残念だーぁね」
そして、スバルがエミリアと話しているのをちらりと見て、俺はレムとラムの二人に声をかける。
「二人もありがとうな。仕事の仕方とか教えてくれて」
「姉様、姉様、シドウくんってば、レム達にお礼を言ってきましたわ、珍しい」
「レム、レム、ドウシったら、ラム達にお礼を言ってきたわ、珍しい」
「いや、珍しいことないだろ......」
教えてもらったその時にお礼を言っていたはずだが.....。
「シドウくんは、レム達が仕事の仕方を教えなくても分かっている様子でした」
「それでお礼を言われても、心がこもっていなかったわ」
そうだったのか。
「なんかごめん、二人とも」
最後まで謝る羽目になってしまった。
そして、次にエミリアに話しかける。
「あーー。この屋敷来てから、あまり会話もしてなかったわけだけど、ほんとにありがとな」
「ううん、シドウにだって助けられたもん。これぐらい当然だよ」
「僕としては、君のあの時の力を分析して見たかったけどね。それは次に会った時にしよう」
「ああ」
そして。
「じゃ、世話になった。また会えたら、いつか」
「お世話になりました。また会えたらいいな」
「うん、気をつけて。怪我なんてしないでね」
俺たちはロズワール邸を離れた。
街道を少し進んだところで足を止め、俺たちは草木が生い茂っている道無き道を進んだ。
そして、しばらく行くと、ロズワール邸が一望出来る場所にたどり着いた。
よし、あとは。
「「異常が起こるまで待つ」」
被った.....。
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それから六時間は経っただろう。
俺たちは、たまに話をしながら、ロズワール邸の状況を警戒していた。
たまに話をしたことが功を奏したのか、精神的にも問題はない。
さらに気持ちを引き締め、警戒をした、その時。
「「ーーーーッ‼︎」」
耳に、微かな音がよぎった。
俺たちは横へと飛んだ。
その後、崖の方へと直行し、スバルはロープを使って。
俺は何も無しで、だが影の中の狂三に全てを託し、崖を飛ぶ。
俺の影の中から狂三が出てきて、着地した。
そして、そのまま森の中を逃げ回る。
スバルももちろん一緒に。
確かに見た、相手の武器。
それは、屋敷に来て二度目の死の時の相手のあの武器。
モーニングスター。
崖上で聞こえたのは、金属の鎖が擦れたような音。
だが、それにしても。
「しかし.......こっちに来たか!」
スバルが俺の気持ちを代弁するようにそう言った。
こうなることは、話し合って予測していた。
相手が関係者全員を対象にしていたとしたら、屋敷から離れた俺たちを優先してくるだろうと思ったから。
「うぁっ⁉︎」
「っ!捕まっていてくださいまし!」
スバルが転び、俺を背負っている狂三が横に避けたその時、棘の鉄球がスバルの頭上、俺と狂三の真横を通り抜けた。
危なかった。
俺は狂三に背負われている状態だから大丈夫だが、スバルはさっき転がっていなかったら死んでいただろう。
スバルも狂三も、体制を立て直して逃げることに徹した。
だが、それも出来なくなった。
今、俺たちの前に聳えている崖によって。
狂三に降ろしてもらい、戦闘体制になる。
狂三があらかじめ<刻々帝>を展開し、スバルはジャージを脱いだ。
俺は、自分の意思に従い、<鏖殺公>を顕現させた。
バラバラに離れて、一ヶ所に固まらず、狙いが一人に行くようにする。
攻撃されたのは、スバルだった。
スバルはジャージを上手く活用し、軌道をそらして生き延びた。
そして、スバルは伸びきった相手の武器の鎖を掴んだ。
「さあ、姿を見せろクソ野郎!その面見るのに一週間かかったぞコラァ!」
イラついているのはわかるけど、落ち着けよ、スバル。
そう心の中で思ったが、俺はこの後落ち着いてなどいられなかった。
「仕方ありませんね」
その声を聞いた瞬間に、俺は、知っている人の声だと思った。
そして。
木々の間から、出て来た少女。
「何も気づかれないまま、終わっていただけるのが一番でしたのに」
その少女は。
青い髪をして、メイド服を着た、これまで仕事の先生として教えてもらった、本来ならここにはいないはずの人物。
「なんで.......。どういうことだよ、レム!」
レムが、そこにいた。
いったい、どうして?
「疑わしきは罰せよ、ですよシドウくん」
そういう......ことか。
「俺は.......いや、俺もスバルも、信用できなかったのか」
「そういうことです」
とても簡単で単純なことだった。
スバルも質問をした。
それによると、これはレムの独断らしい。
だが、少なくとも、レムの信頼は勝ち取ることができなかったということだ。
「..........シドウくん、スバルくん。..........お聞きします。あなたがたは、エミリア様に敵対する候補者の陣営の方ですか?」
「俺の心にはエミリアたんしかいねぇよ」
「他の陣営の事なんて知ってるわけないだろ」
そんな俺たちの答えに、レムの怒気が増す。
「誰に、いくらで雇われているんですか?」
「エミリアたんの笑顔に、プライスレスで」
「誰かに雇われたことなんて、一度もない」
さらに、怒気が増す。
そして、次にレムの口から出たのは、俺には何かもわからないことだった。
「........あなたがたは、魔女教の関係者ですか?」
「........魔女、教?」
全く知らない単語に、俺は思わず聞き返してしまった。
スバルも何も答えない。
「とぼけないでください。あなたがたは、『魔女に魅入られた者』でしょう?」
「魔女に.....?」
今度はスバルが聞き返した。
「とぼけないでくださいと言ったはずです!」
レムの怒りが爆発した。
こちらを鋭く睨みつけてくる。
「とぼけてなんかいない!少なくとも俺には魔女教が何かすら知らないんだ!」
俺は正直に言った。
だが、それを信じてくれるはずもなく。
「まだとぼける。........そんなに魔女の匂いを漂わせておいて無関係なわけないじゃないですか!」
魔女の、匂い?
そんな匂いが分かるはずもなく、なんで俺からそんな匂いが出ているのかもわからない。
「レムは.........あなたがたを生かしておくわけにはいきません!」
そう言い、スバルの方へと飛んだ。
「狂三!スバルを」
「分かっていますわ!」
これ以上死にたくない。
死に戻りが何回出来るのか分からないし、何回でも出来るとしても、死ぬのは怖い。
狂三がスバルの方に行き、守りを固めたが、レムは急激な方向転換をし、俺の方に向かってきた。
「<鏖殺公>!力を貸してくれ!」
俺は、<鏖殺公>を振りかぶり、縦に振る。
巨大な斬撃がレムに迫るが、レムは少し驚いただけで、簡単にそれを避けた。
そして、鉄球を俺に向かって投げてきた。
やられるわけにはいかない!
その瞬間。氷の盾が、鉄球を阻んだ。
「
そう。
美九の時のように、<氷結傀儡>が守ってくれた。
「レム。俺は、絶対にお前を納得させる.....!」
さあ、俺たちの
最後ノリで言っちゃった感が........。