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それではどうぞ!
いつもなら寝ている頃だが、今日は起きている。
今日が、死ぬか死なないかの分かれ目となる。
現在の時間は分からないが、日が昇るまで四時間といったところだろう。
スバルも今頃起きているのだろうか?
俺は一度寝転がったのだが、眠ることができなかった。
今日で死ぬかもしれないという緊張感もあるが、それよりも。
.........今日を乗り切った後にメイド服を着ることになると思うと、体が拒否反応を起こしているのだ。
「もうあんな思いするのは嫌なのに.......」
「いいではありませんの。わたくしも士織さんメイドをみてみたいですし」
「そうですね。私も士織を見たいです」
「二人とも他人事だと思って......」
狂三達にも一応起きてもらっている。
万が一って事もあり得るからな。
そして。
その時は突然やってきた。
いつまでも起きていたことが祟ったのか、急に眠気が出てきた。
眠気だけでなく、寒気も一緒に。
最初はそんなに気にするほどではなかった。
実際、狂三と鞠亜との会話も進んでいたし、朝になるにつれて寒くなるのは当たり前のようなものだ。
だが、少し時間が経って、それが間違いだと気づいた。
寒すぎる。
俺はベッドの上で、しかも背に掛け布団をかけて座っている。
なのに、それにしては寒すぎた。
室温がマイナスにまで下がっていると錯覚するほど。
急に顔色が悪くなった俺に、狂三と鞠亜が心配し始めた。
「どうかしましたの?」
「大丈夫ですか、士道?」
その問いかけに答えることができなかった。
とにかくこの場を離れたかった。
スバルと合流したほうがいいと思った。
「狂三、ついてきて、くれ」
そう言った俺に、狂三は了承した。
廊下を歩きながら、スバルを探す。
「鞠亜、俺の今の体温は、何度だ......?」
「体温.....ですか?......測定します。......⁉︎34.4度ですよ、士道!いったいどうしたんですか⁉︎」
「分からない。俺にも.....」
34.4度。
普通ならこんなに体温が下がるはずがない。
スバルは大丈夫だろうか?
そう思いながら、エミリアの部屋がある階層にくると......。
俺は、信じられない光景を見た。
「スバ、ル.....?なんで......」
スバルの死体が、転がっていた。
「士道さん!」
狂三に呼ばれるのが聞こえた。
と思ったら、俺は吹き飛ばされていた。
俺は壁にぶつかる。
胴体がぐしゃりと潰れて、ひどい痛みが突き刺さる。
「があああああぁぁぁぁ⁉︎」
「士道!大丈夫ですか!」
大丈夫なはずがない。
いったい今俺は何に吹き飛ばされたのか?
瀕死の体を、癒しの炎が包む。
俺を吹き飛ばして、今狂三と相対している相手を、遠目に見る。
相手が持っている武器は、夕弦の方の
姿は......ダメだ。
視界がぼやけているという事もあるが、暗くてよく見えない。
癒しの炎の光が届かないくらいの距離に、相手は立っている。
「貴方、自分が何をしているのか分かっていますの?」
狂三が相手に呼びかける。
その手に歩兵銃を持ち、それを相手に向けて。
狂三には姿が見えたのだろうか?
だが、狂三の問いには答えず、その手に持っている武器を鎖を鳴らして再び俺を狙って飛ばしてきた。
「士道さん!避けてくださいまし!」
狂三は銃を出してはいるが、それでは鉄球に銃弾が弾かれるだけで止められない。
相手を殺そうにも、勢いよく飛ばされた鉄球は勢いを弱めずそのまま俺を潰すだろう。
<刻々帝>を出そうにも、呼び出していると間に合わない。
だから、俺には避けてもらわないといけなかったのだ。
だが。
癒しの炎は俺の体をまだ十分に治せていなかった。
未だ、動けないほど潰された体を癒せていなかった。
「........あ.....」
俺はなすすべなく、頭を潰されて、即死した。
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「あ......れ......?」
朝。俺は目を開けた。
.......そうか。俺はまた、死んだのか。
そして、また戻ってきた。
体は潰されていないし、何もかもが元通りだ。
........とりあえず、スバルと話そう。
スバルは俺が見つけた時にはもう死んでいた。
俺と違って、何かを見たかもしれない。
そこまで考えて、扉に目を向けた。
「ぼーっとして、大丈夫ですか、お客様?」
レムが心配してくれたようだ。
「ああ。大丈夫だよ。心配してくれてありがとな」
「いえ、心配していたわけではないです。ただ、お客様がレムを無視してきたのが頭にきただけですので」
「そこは嘘でも心配したって言ってくれよ.....」
相変わらずだ、本当に。
「スバルは?」
「もう一人のお客様なら、違う部屋にいます」
「連れて行ってくれ」
「.........分かりました。その後、お客様には執事として働いてもらいますので、そのつもりでいてください」
「ああ」
俺はレムについていった。
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どうやらスバルもよく分からなかったみたいだ。
レムにスバルの所に連れてってもらった後、話したが、特に何も進展したような事はなかった。
だが、あの時の狂三の話し方を思い返してみると、少し気がかりがあった。
いや、それ以前に。
狂三が俺を潰した相手を、すぐに殺そうとしなかった。
"貴方、自分が何をしているのか分かっていますの?"
狂三はそう言った。
という事は、狂三にとって相手は知っている人物だったということ.........かもしれない。
まだ分からない。
それに、狂三が会った事があるなら、俺も会った事があるはずだ。
.......元の世界の狂三の知り合いではない限り。
そして、相手の影というか、シルエットというか......なんか見た事があるような気がしないでもない。
「シドウくん。ちゃんと腕を動かしてください」
そこで思考が止められた。
どうやら考えることに集中しすぎて腕が止まっていたらしい。
.......今は仕事に集中しよう。
「悪い、レム」
一言謝り、仕事に集中した。
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それからロズワールとの三度目の初対面をし、スバルが要求で二、三日の宿泊と少し路銀を貰うことをロズワールと約束した。
俺も同じ要求をしておいた。
スバルがやる気なんだ。
俺も頑張りたい。
一日の仕事を終えた後、スバルに呼ばれていた俺はスバルの部屋に向かった。
「どうしたんだ、スバル」
「俺たちを衰弱させてたのは、呪術ってものらしい」
「呪術?魔法とは違うのか?」
「ああ。なんか、魔法とか精霊術の亜種らしい。ベアトリスによると。そのまま殺すこともできるらしい」
「.........そうか。分かった」
「そっちはなんか分かったのか?」
「いや、特には.....」
「そうか」
それだけだったらしい。
だが、それだけでもかなりの進歩だ。
その呪術というものが俺たちを殺すために使われたのなら、術者と鉄球を持っていたあの相手は別の人物だと予測できるからだ。
あの相手が術者ならば、直接手をくだす必要はないから。
結論は、俺たちの敵は二人いるということだった。
そして余談だが、俺が最初から執事にされていた理由が分かった。
この時からロズワールが、俺にメイド服を着せたがっていた。
そう。
初日から女装させようと目をつけられていたのだった。
それを偶々聞いた時は耳を疑ったよほんとに。
.........だが、執事をいきなりやめるのは気がひけるので、最後まで続けるが、絶対にメイド服は着ないことを決めたのだった。