アルター・イゴス   作:nightrex
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いろいろと遅れて申し訳ございません!

他の作品に集中していて............

これから少しペースを上げていくつもりです!

1話でキリユキがメインで2話はハヤト。二人の主役を紹介し終えたので、3話から本格的にアルター使い達の物語が幕を開けます!

キリユキを完全に悪に見えると思いますが、自由に生きる少年です。新世界の神と名乗る人と違って、ただ人生を楽しんでいる少年です。そう、アルターという都合のイイ存在の力を借りて..........

もちろん、キリユキの場合はやりすぎです。さて、人生を楽しんでいるキリユキはどのような結末を迎えるか...........




第3話:宿命の二人

――――アルター同士の戦いは、”災い”を齎す。

2019年6月7日、金曜日。時刻は6:57分。昨日同様、今日も熱い。朝食を済ませたハヤトは、白シャツと黒ズボンに着替える。学校に行くための準備を終えたハヤトは冷蔵庫からお気に入りの麦茶を取り出し、コップに注ぐ。ゴクゴクと生き生きとした音をたてながら飲むハヤト。

「..........はぁ、うまい」

麦茶を飲んだ後、デスリードを呼び出し、挨拶した。

「おはよう」

「..............」

無言のデスリード。そりゃ当然だ。デスリードは「人」ではなく「アルター」だ。言葉の意味が分かっても犬と違って返事は出来ない。それでも主としてデスリードとコミニュケーションをとりたい。デスリードからすれば俺は絶対に逆らえない存在だ。

「デスリード様。おはようございます」

執事のヨシヒコが宙に浮いているデスリードに向けて挨拶したが・・・もちろん無反応。
外にいる連中と違って正式なアルター使いとなった俺は、デスリードと共に寳坂市を守る。

.......しかし、ここ最近アルター使いが増えていることに違和感を感じている。正式なアルター使いとは、代々アルターなどの霊的な存在と縁がある者のことを呼ぶ。魔術師、錬金術師や陰陽師などの家系の血を引く人間こそがアルター使いになる権利がある。

しかし、ここ寳坂市に住むアルター使いの大半は一般人に過ぎない。特別な家系に生まれたわけでもなく、知恵もないふつうの人間が知らない間にアルター使いとなっている。
多くの『不可能犯罪』は、そういった「アルター」という都合のいい存在を悪用する者が引き起こしている。

それに関して俺は許せないのだ。では、アルターは何のために使うのか?
病や呪いを取り除いたり、世のために使うのだ。もちろん家系にもよるが、本来は殺人や遊びで使うものではない。これだけは言わせてもらう・・・アルターはおもちゃではない。

―――俺はデスリードと共にそういったアルター使いを一人残らず斬る。

今、俺が出来ることはそれぐらいだ............

◇◆◇

時刻は8:10分。寳坂市にある進学校、「星空高校」に着いた少年、キリユキは下駄箱の前でため息をつく。あんまり睡眠が取れておらず、異常に眠い。そして遣る気が出ない。実は深夜3時過ぎに寝た。ずっとヴァ二ックを使って様々な実験をしていた。まだまだ分からない事が多いから。

「ねみぃ..........」

あくびした後、小声で呟くキリユキの前に一人の男が「おはよう!」と言って近づいてきた。ウルフカットのヘアスタイルを保つ一人の男子生徒は、テンション高くキリユキの背中を戦く。

「おいおい!目の下のくまひでぇぞ~!」

この男の名は――瀬戸真昼(せと・まひる)。友人であり同じ2年B組の生徒。休み時間や学校の帰りでよく話す仲。けっこうテンション高い。

「悪かったなァ........ 眠いんだよ.........」

「何時に寝たの?」

「3時半ぐらいかな?」

「遅っ!寝るなら遅くても1時だろう!」

こう見えて1~2時に寝ている。ただ、アルターの事を詳しく知る為に時間を潰した。気づいたらもう3時だった。そんな感じで真昼と話しながら教室に向かった。向かっている途中、廊下で一人の女子生徒とぶつかる。

「痛っ!」

「あ、ゴメン.....」

ぶつかった相手は、黒髪ロングの女子生徒。2年C組の小西真生子(こにし・まおこ)だ。水泳部に所属し、男子や女子の間では人気者。しかもオリンピック候補生らしい......
ぶつかってすぐ謝ったが、彼女は睨みながら言った。

「チッ、どこ見てるの.......」

彼女はそう言って目の前のキリユキを軽く押す。押してすぐ彼女はトイレの中へ。噂では、彼女は大の男キライだ。ちなみに俺はあの女が大嫌いだ。ちなみに彼女が今回のターゲットだ。俺に対していつもあんな感じだ。
見下ろされ、否定され、もうウンザリだ。ちょっと泳ぎがうまいからって調子に乗るなよ。

「本当、学園の人魚はお前のこと嫌いみたいだな~」

他人の事のように真昼は言った。ちなみにあの女は周りから”学園の人魚”と言われている。俺からすればアイツは人魚ではなくただの”魚”だ。

真昼の言葉を無視して、そのまま教室に入った。教室に入る前に俺はある”もの”を送り込んだ。トイレから出た小西真生子は、黄緑色のハンカチで手を拭きながらC組の教室へ向かおうとしたその時。

「あっ!?」

突然、教室の前で盛大に倒れた。すぐに起き上がった真生子は、「イテテテ」と言いながら→足首を掴む。一体何が起きたのか。不思議に思った彼女は周りを見渡す。教室に入ろうとした瞬間、突然誰かに足を掴まれた気がした。

「何が.........」

起き上がったすぐ、教室にいる女子生徒が何人か駆けつけた。

「大丈夫!?」

「血、出てない!?」

「何が起きたの?」

真生子を心配する三人の女子生徒。もちろん本人も何が起きのか分からない。しかし、彼女は気づいていない。すぐ後ろに”霊”がいるということを..........

三人に「大丈夫」と言って不思議に思いながら教室の中へ入った。一方、2年A組にいるキリユキは机に肘を置いた状態で悪そうに微笑んでいた。

(フッ、調子に乗るなよこのクソビッチが......)

心の中で嬉しそうに呟くキリユキ。たしか3時間目の授業がプールだった気がする。プールと言えばあの女が活躍する授業じゃないか。後でたっぷりと苦しめてやる。覚悟しろよ........
キリユキのそばで腕を組むヴァ二ック。霊体化しているため、誰にも見えていない。そんな時、後ろ席にいる真昼が話かけてきた。

「なぁなぁ!ニュース見たか?」

「ニュース?」

「埼玉に住む男が化け物(・・・)に襲われたって!」

キリユキの机に両手を乗せ、大きな声で彼は言った。「埼玉」と「化け物」という言葉に反応したキリユキは真顔になり、目を細くする。もちろんそのニュースは知っている。あっちこっちで話題になっている。

化け物に襲われたと言う男は、右腕は焼かれ、さらに自宅から5メートル近く飛んだらしい。右腕は完全に壊死しており、すぐに切断したと聞いている。5メートルも吹っ飛んで地面に頭をぶつけたにも関わらず生きているらしい........

男は「パソコンの中から化け物が現われ、襲われた」と連呼している。麻薬検査も行われたが反応は無し。

「あー見たそのニュース...... どう見ても『不可能犯罪』だよね.......」

「だろうね!だってふつうじゃありえないもん!俺は宇宙人の仕業だと思っている!」

笑みを浮かべながら真昼は、宇宙人だろ宣言する。事件の犯人が誰なのか、そしてどうやったか俺は知っている。何故なら俺がやったからだ。さすがに俺がやったなんて言えない。いや、言ったところで信じるわけがない。

東京の寳坂市に住む俺が埼玉にいる男をどうやって襲うか。

数日経ってばみんな忘れるでしょ..........

ちなみに俺は後悔していない。もちろん罪悪感もない。生きているだけでもありがたく思え。

~2時間後~

時刻は10:35分。三時間目の授業はプールだ。水泳用のパンツを忘れたため体操服に着替え、ベンチに座っている。わざとではない。カバンに入れるの忘れていた。まあ、正直言ってプールとか好きではない。そもそも「体育」自体が嫌いだ。

俺以外に何人かが体操服を着てベンチに座っている。忘れた者、具合が悪い者。

(あの女..........)

ベンチから真生子を見下ろすキリユキは、心の中で呟く。華麗に泳ぐその姿は、まさしく人魚を連想させる。スタート台に立つ何人かの生徒が彼女を見て言う。

「さすが真生子」

「綺麗..........」

「勝負したら間違いなく負ける!」

もちろん彼女の泳ぐ姿を目の当たりにした先生は、小声で「すげぇ」と呟く。みんなが彼女に夢中だ。しかし、見ていてムカムカする。どういう訳か、俺はあの女に嫌われている。話かけた最に何度か舌打ちされた。さらにいつも俺を睨む。一番酷かったのは..........

片思いの女子生徒に告白したことを2年の女子達にバラしたことだ。もちろんその話は男達にも伝わり、2ヵ月近く馬鹿にされる羽目になった。ちなみにその片思いの子はどこかに転校した...........

(あのクソビッチめぇ.......)

思いだす度に反吐が出る。嫌われてる理由は別として、アイツはどうしても許せない。こう見えてアイツからいろんな嫌がらせを受けてきた。もちろんそれはアルターを手に入れる前の話だ。

―――アルターを持っている今ならどうかな.....?

二ヤリと微笑むキリユキは小声で言う。

「ヴァ二ック........」

霊体化した状態のヴァ二ックはプールの中へ送り込んだ。もちろんプールの中にその”化け物”がいることも知らずに泳ぐ真生子。そして、次の瞬間――――

「うっ!?あっ......」

泳いでいる途中、突然”何か”に足を掴まれた真生子は必死に助けを求めた。足をつったわけではない。たしかに何かに引っ張られている。片足だけでバタバタと動かしても、もう片方の足が重くて動かせない。

「だ、誰かー!たすけてっ!」

「先生ッ!!」

「待ってろよー!」

何度も沈むと同時に顔を上げる小女。ざわめくなか、溺れている真生子を助けるためジャージを脱ぎ捨て、先生はプールへ飛び込む。意識を失いかけた真生子は先生に助けられ、すぐに保健室へ運ばれた。突然の出来事で唖然とする生徒達。

ベンチに座るキリユキを含む見学者は一斉に立ち上がり、目を見開く。

他の生徒と同じく驚くキリユキだが、内心では・・・・・・

(勝った.........)

心の奥で勝ち誇るキリユキはみんなの見えないところで微笑む。見えないヴァ二ックに足を掴まれ死にかけた真生子にとってはトラウマになるでしょ。場合によってもう泳げなくなる可能性もある。しかし、キリユキにとっては都合のイイ事だ。

ヴァ二ック・・・・よくやったぜ。

しかし、これじゃまだ終わらない。俺はあの女の夢やプライドを打ち壊すッ!

◇◆◇

時刻は15:36分。帰りのHRを終え、友人の真昼と一緒に帰るキリユキ。校門を抜け、今日起きた出来事について話す二人。得に3時間目のプールで溺れた真生子について盛り上がっていた。

「やばくないか?あの学園の人魚が学校のプールで溺れたんだぜ?」

「あぁ。でも足つったんじゃないのか?」

溺れた原因はこむら返りだと言うキリユキだが、先生に聞かれた際、本人は否定したらしい。溺れた本人の証言だと「誰かに足を掴まれた」。筋肉に異常があるのではないかと保健室の先生が言っているけど、どちらにせよ謎だ。

あの後、6時間目のHRまでずっと暗いムードだったなぁ。見ていて面白かった。

「下手するとプール恐怖症(・・・・・・)とかになるんじゃない~?」

「プール恐怖症?何だよそれ?ハハッ」

それを聞いて笑うキリユキ。そんな感じで様々な話題を上げながら話す二人。下校途中、コンビニに立ち寄り、メロンパンと500mlパックのミルクティーを買って帰った。ムシャムシャとメロンパン食べながら話すキリユキだが、焼きそばパンを食べる真昼があることを思い出す。

「あ!やべぇ!忘れたぜ......」

「ん?」

「あーちょっと用事事を思い出したから、先に帰らせてもらうぜ!」

「あ、そう。じゃあ、また明日.......」

焼きそばパンをくわえながら手を振る真昼は、全速力で走り去った。一人になったキリユキはスローペースで家に向かう。空は真っ黒。人気のないジャンクヤードに通り過ぎた瞬間、突然背後からヴァ二ックが現われた。ヴァ二ックの気配を感じたキリユキが後ろを振り向いた瞬間、何処からともなく歯車が飛んで来た。

「なっ!?」

キリユキが驚いた瞬間、飛んで来た歯車を掴み取ったヴァ二ックがそのまま燃やした。燃えたはぐるま塵となって消えた。突然の攻撃を受けたキリユキは、慌てながら周りを見渡す。しかし、周りには誰もいない。

しかし、不審な気配だけを感じる..........

この気配は何なのか......... どこから来ているのか.........

「さすが人型アルターですね」

「誰だ!?」

少年の声が聞え、後ろを振り向くとそこにいたのは―――

「誰だお前.............」

メガネをかけたおかっぱの少年だった。見た感じでは中学生だと思う。腕を組む少年は、クスクスと笑いながら名を唱える。

「来い!マウストラップ!」

名前を唱えた瞬間、少年のすぐ隣に2メートルもあるネズミに似たロボットが現われる。全体的にエメラルドグリーンでアイレンズは赤。手や足、歯は金色。後部から何枚も重なった歯車や機械の部品が見える。

少年が召喚したそのアルターは、一言で言うと”ロボットネズミ”だ。マウストラップと呼ばれるネズミに似たアルターを召喚した少年はキリユキに向けて言った。

「ねぇ、相手になってくれないかな~?」

「はぁ?」

「君、アルター使いでしょ?だから戦おうと言ってるんだけど........」

(まさか、俺以外にアルターを使う人間がいるとは..........)

自分以外にアルターを操る人間を知ったキリユキは、一歩後ろに下がった。家に帰ろうとしたらいきなり喧嘩を売られた。しかし、何故俺がアルター使いである事を知っている。いろいと疑問を抱くキリユキは謎の少年に尋ねる。

「なんで......... 俺がアルター使いであること知ってるんだ.......?」

「君・・・まさか、初心者だな?教えてやろう。俺のマウストラップは「追跡型」だ。遠距離型と違った動ける範囲は限られてるけど、一度送り込めばアルターおよびその操縦者を探し回る。アルター使いがいそうな高校周辺にマウストラップを送り込んだ。そして、君を見つけた!」

指差しながら少年はドヤ顔で言った。「遠距離型」以外に「追跡型」もいるのか。

「もう分かったんだから、戦おう?ちなみに俺のマウストラップは多くのアルターを倒してきた。君のアルターがどれだけ強いのか、見せてくれよ..........」

生意気な少年に喧嘩を売られたキリユキは歯を食いしばる。もし彼と戦って負けたら、俺はヴァ二ックを失う。それだけは絶対にあってはならない。生きる上でヴァ二ックは必要だ!

拳を握りしめるキリユキは何も言わず、無意識にジャンクヤードへ走った。

「高校生が中学生から逃げるなんて........... 哀れですねぇ~」

ズボンのポケットに両手を入れる少年は、ダルそうに言った。使えない車がたくさん積んであるジャンクヤードへ逃げたキリユキは、ヴァ二ックを出す。

「何なんだよあのガキ!」

積んである車のガラクタの山の後ろで隠れるキリユキ。このまま真っすぐ家に向かった場合、ヤツは間違いなく追いかけて来る。親や周辺の人間を巻き込みたくない。目をつけられた以上、戦うしかない。

少年から逃げてこのように隠れているのは、攻撃のチャンスを狙うためだ。

「ヴァ二ック。何があってもあのアルターを倒せ。あと、俺を守れ!」

ヴァ二ックに命じると、無言で頷いた。しかし、相手の気配を感じない。

――――だが次の瞬間!

後ろドーンと衝撃音が鳴り響く。ひたすらキリユキがいる瓦礫の山を突進するマウストラップ。ヤバイと感じたキリユキはヴァ二ックと共にその場から離れたが・・・・その時、マウストラップに目をつけられた。

「ヴァ二ックッ!!」

アルターの名を叫んだ瞬間、キリユキの前にヴァ二ックが瞬間移動し、目の前のマウストラップとぶつかり合う。両手でマウストラップの顎を引っ張るヴァ二ック。へし折る勢いで引っ張っていたその時、マウストラップの喉奥から金色のガトリング砲が飛び出す。

それを目の当たりしたキリユキは、目を見開く。そして、次の瞬間..............

「避けろッ!!」

キリユキの声に反応したヴァ二ックだが、ガトリング砲が回転し、ダダダダダダダと連射し始めた。近距離で何発もマウストラップの弾丸を受けたヴァ二ックはすぐに離れた。左アイレンズが砕け、体中は傷だらけ。

ヴァ二ックとの距離が離れたマウストラップは、後ろ足を折りたたみ、左右に巨大な金色のタイヤを展開する。ジョイント付きの長い金色の尻尾を真っすぐ伸ばさ、フォーミュラを思わせるフォルムになったマウストラップは、そのまま弱っているヴァ二ック目掛けて突進する。

マウストラップの突進を受けたヴァ二ックは勢いよく吹っ飛び、積んである車の山に激突する。その時、ヴァ二ックが吹っ飛んだと同時のタイミングでキリユキに激痛が走る。

「イタッ!?いてえぇえぇえぇ........」

胸を押さえるキリユキは、苦しそうに言った。さっきヴァ二ックが弾丸を受けた時も体中に違和感を感じていた。まさか・・・・ヴァ二ックとシンクロしているのか?

たしかにヴァ二ックは俺の分身だ。ネットではそう書いてあった。アルターとは、その人の代わりに動き、戦ってくれる存在。または―――分身。

「なんだよ............ お前、初心者なのか?はぁ~がっかりだわ.......... 珍しく人型のアルターと戦えると期待していたのに、その操縦者が初心者とか萎えるわ~」

ズボンのポケットに両手を入れて歩く少年は、何度もため息をつきながら言った。様々なアルターを倒してきた少年からすればつまらない戦いだ。

高速で動き回るマウストラップをどう倒すか。必死に考えるキリユキは、やけくそに命じた。

(燃やせぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえッ!!!)

キリユキと繋がっているため、思考を読み取ったヴァ二ックは両手を伸ばす。5本の指を広げ、両手のひらの発射口から高熱の炎を放射する。直線に伸ばす炎は、周りの車やガラクタの山を燃やす。ヴァ二ックの炎を高速で避けるマウストラップだが、反射神経が悪いせいか囲まれているゴミの山に激突する。

さっきまで余裕ぶっていた少年は、激突するマウストラップを見て思わずうわーっと声を上げる。

「うわーっ!おい、マウストラップ!」

「破壊しろおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおッ!!!ヴァ二ックッーーー!!!」

力強く叫んだ瞬間、それに反応したヴァ二ックの右目のアイレンズが光る。炎を避けることしか考えていないマウストラップは他の障害物に目が入らず、ぶつかっている中、両手で”火炎玉”を生成するヴァ二ックが赤く燃え上がる。

「馬鹿野郎ッ!!マウストラップ!」

操縦者の声に反応したマウストラップだが、もう遅い。止まっているマウストラップ目掛けて火炎玉を放つ。ヴァ二ックの火炎玉を受けたマウストラップは、そのまま爆発した。

「や、やったのか........?」

キリユキがその言葉を呟いた途端、少年は二ヤリと微笑む。煙が晴れると、火炎玉を受けたマウストラップがいる。装甲のほとんどが焦げているが、それでもまだ動ける。

「そ、そんなぁ....... まだ生きているのかよ............」

「ククッ、僕のマウストラップを甘く見るなァ!」

するとタイヤを回転させるマウストラップが動き出す。高速で飛び出すマウストラップは、2本の金色に煌めく鋭い歯でヴァ二ックを噛みつく。ガリガリガリと音を立てながらヴァ二ックの装甲を削る。精神的に繋がっているキリユキは、右肩を押さえながら痛みに耐える。

「くっ......... あっ!?」

「アルターの使い方がわかっても、戦い方が分からなければ意味ないねぇー!」

初めてアルターと戦うキリユキを煽る少年。噛みつくマウストラップをひたすらパンチするヴァ二ックだが、全然びくともしない。このままだったら本当に負ける。ヴァ二ックが失ってしまう。ダメだ。それだけはあってはならない..................


ヴァ二ックはどうしても必要だ!生きる上で必要なんだよぉ!


膝をつくキリユキは、歯を食いしばりながら襲われているヴァ二ックに左手を伸ばす。さらにジョイント付きの尻尾でヴァ二ックの腹部を突き刺す。受けた直後、口を覆うフェイスマスクの隙間からポタポタと、地面に赤い血を垂らすヴァ二ック。

戦いに慣れていないキリユキにとっては絶対絶命。だが、そんな時――――

「..........ん?」

気のせいか。寒気がする。痛みに耐えるキリユキだが、不思議なことに周りが冷たく感じる。さらに鳥肌まで立っている。キリユキだけじゃなく異変に気付いた少年は、周りを見渡す。

「何だこの冷気は.........?」

どう考えてもあの赤いアルターではない。なら、一体誰がやっているのか。小年が見渡している中、ヴァ二ックを襲うマウストラップに異変が起きる。ガリガリと音を立てながらヴァ二ックを噛んでいたマウストラップが突然停止した。

「おい.............. 何止めてんだよ...........」


すると、次の瞬間・・・・!

停止していたマウストラップがみるみると凍っていく。焦げたエメラルドグリーンの装甲が薄い半透明な水色に染まっていく。完全に凍ったマウストラップは死んだも同然。突然凍結したマウストラップを目の当たりにした少年は、何度も瞬きしながら焦り出した。

「ぼ、ぼ、僕のマウストラップがー!?な、な、何が起きていると言うのだ!?」

(アイツのアルターが凍った?まさか、ヴァ二ックがやったのか...........)

ヴァ二ックの仕業だと思い込んだキリユキだが、そんな時、テクテクと後ろの方から足音が聞えてくる。ゆっくりと後ろを振り向くと―――二人の前に一人の男が現われる。白い半袖のワイシャツに黒ズボン。さらに刀が収まった紺色の鞘を握っている。

驚くべきはそこではない。現われた高校生ぐらいの少年のすぐ横に、アルターらしき人物がいる。赤く煌めくアイレンズ。口を覆うピュアホワイトのフェイスマスク。「武士」と「剣土」を掛け合わせたような青いフォルムのアルター。

両手には青色に煌めく細長い刀を握っている。ヴァ二ックと似た雰囲気を持つ青色のアルターは、2本の刀を構える。

「――――斬れ」

主と思われる黒髪の男が小声で言うと、刀を構えるアルターはスパッと姿を消す。どこへ消えたのか。すると、次の瞬間、凍っていたマウストラップがバラバラに切断された。手や足、頭が地面に落ちた瞬間、カチンという音とともに粉砕。

「そ、そんなぁ!お、俺のマウストラップがー!!」

バラバラになったマウストラップを目の当たりにした少年は、頭を抱えながら叫んだ。何が起きたのか、理解出来ないキリユキは恐怖を感じていた。一瞬でマウストラップをバラバラに切断した謎のアルターは、主のすぐ横に現われた。

一切瞬きしていないのに、何なんだあの動きと速さは.....................

「次はお前だ...........」

鞘から刀を抜き、怯える少年に向けて男はドスを利かせた声で言った。専用アルターを一瞬で失った少年は、恐る恐る目の前の男に向かって言う。

「し、し............... 死神.........!?」

(死神?)

どうやら男は”死神”と呼ばれている。死神と言った少年は、死ぬ気でその場から走り去った。突然の出来事で戸惑うキリユキは立ち上がり、片手で刀を持つ男を見つめる。

(あの男........... 何者なんだ?)

「デスリード。まだ一人残ってる..........」

”デスリード”と呼ばれる青いアルターに向けて男は言った。

「な、何なんだお前.......!?」

警戒するキリユキは、左腕を抱えながら言った。突如、キリユキの前に現われた謎のアルター使い。目と目が合う二人のアルター使いは、心の奥で呟く。


―――あの赤いアルター使い(キリユキ)は、さっきの操縦者とは違う―――

―――何なんだこの胸騒ぎは?あの男から嫌な気配を感じる―――

(ヤツもその辺にいるアルター使いと同じだ)


(アイツを倒さないとこの胸騒ぎは収まらない気がする...........)


会ってはならない二人の少年。この時、運命の歯車が動き出す......................


続く。



【アルター名】:マウストラップ/カラクリネズミ

【操縦者】:不明(男子中学生)

【タイプ】:動物型

【戦闘型】:追跡型

【属性】:土

【固定武器】:/

【パワー】:A

【スピード】:A+

【耐久】:AA+

【知性】:D

【適応能力】:C

【霊力】:D

【名付け親】:不明(男子中学生)

キリユキの前に現われた男子中学生が召喚したネズミ型アルター。別名カラクリネズミだが、マウストラップとよく呼ばれている。ヴァ二ックやデスリードと違って「人型」ではなく「動物型」である。全体的にエメラルドグリーンでアイレンズは赤く、下半身には歯車が何枚か重なっており、後ろ足にはタイヤが収納されている。その姿は一言で言うと”ロボットネズミ”ってところ。後ろ足を折り畳み、タイヤを展開した時「激走形態」になって時速400キロでフィールドを駆け巡る。喉奥にガトリング砲以外に火炎放射器が収納されている。耐久性やパワーが優れている分、知性や適応能力は低いところが大きな欠点。最後はデスリードの冷気で凍結し、そのままバラバラに切断される。

――追記――

元ネタは『帰ってきたウルトラマン』第45話に登場した鼠怪獣ロボネズ。






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