アルター・イゴス   作:nightrex
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今回は第2の主人公である剣崎勇人のストーリーです!

一応W主人公なので、どっちを応援するかは任せます。第1話で登場したキリユキはいろんな意味でクレイジーな主人公だと思います。たぶん世の中にキリユキみたいな人間はいっぱいいると思います。

あくまでもキリユキはアルターという力を手に入れ、実現出来なかった事を実現する。

ある意味、危ない思考の人間ですが、実際に近くにいるかもしれません.....?

ハヤトを見れば印象などが変わると思います。

次回の3話から本格的に二人の物語となります!

会ってはならないような二人が出会った時、物語は動き出す....!


第2話:蒼き鋼の剣土

この世にはあってはならないものがたくさん存在する。


2019年の春。俺は生きるため、誰かのためになったわけではない。あくまでもこの街を守るために選んだのだ。幼い頃に母を失くし、さらに何者かの手によって父は死んだ。一人になった俺は、家系とその意思を引き継ぐため鬼となる。

―――鬼になるためには、本当の”鬼”を呼ぶ必要がある............


2019年6月5日、水曜日。時刻は21:57分。今日の天気は大雨。しかし、俺にとっては都合がイイ。自家の道場の床に赤く巨大な「魔法陣」が描かれている。円の真ん中で正座する上半身裸の黒髪の少年。

「ハヤト様..........」

瞑想する少年―――剣崎勇人(けんざき・ハヤト)を身守る黒いタキシードの園田嘉彦(そのだ・ヨシヒコ)。代々剣崎家に務めるハヤトの執事。69歳。

ハヤトがやろうとしていることは、”剣となる式神”の召喚だ。特定の「式神」を呼び出すためには、肉体と触媒が必要になる。下半身以外、何も着ていないのは、式神を体内に取り込むためだ。呼び出された際、”鎧を身に付けていない”という判断により襲いかかるからだ。さらに特定の式神を呼ぶ最大の条件は「触媒」だ。

今、目の前に古く錆びた日本刀が置かれている。俺が呼びだそうとしている式神はこの刀と縁がある。

あとは待つのみだ...........

―――瞑想から7分が経過。外からザーザーという雨の音が聞えてくる。不安で仕方がない執事のヨシヒコは、ズボンの右ポケットから白いハンカチを取り出し、頭の汗を拭きとる。

(俺の前に現われろ.........)

内心でその式神に声をかけるハヤト。さらに10分が経過した。その時だった....!

「あ、ハ、ハヤト様........」

驚いたヨシヒコが見たものとは。気配を感じたのか、片目だけ開けたハヤトの前に現われたのは、青銀色に輝くの怪人だ。ベースカラーは青・白で両目のレンズはルビーのように赤く、両肩が少し尖っている。西洋の騎士と武士を掛け合わせたような姿で漫画に出てくるメタルヒーローを連想させる。

宙に浮いており、両手には青銀色の刀を持っている。

「......来たか」

そう呟いたハヤトは、挑発するかのような視線を送った。反応した青銀色の怪人は、正座しているハヤト目掛けて飛んだ。

「ハ、ハヤト様ー!」

左腕を伸ばし、驚いたヨシヒコは”早く離れてください”という意味を込めて彼の名を叫んだ。しかし、無防備であるにも関わらずハヤトはその場から一歩も動かず、怪人との接触を待つ。

―――そして.........

「うぅうぅうぅうッ!?」

襲うつもりで飛んだ怪人がハヤトに接触した時、吸い込まれるかのように体内の中へと消えてしまった。死ぬ覚悟で待ち望んでいた式神をついに取り込んだ。しかし、取り込んだ際に胸に激痛が走る。苦しそうに片手で胸を押さえるハヤト。

苦しそうなハヤトを見た執事のヨシヒコは、焦りながら駆けつけた。

「ハヤト様!」

「あぁ........ 俺は大丈夫だ......... うぅ....... ついに「デスリード」を取り込んだ.....」

大丈夫だと言うハヤトは胸を押さえながら立ち上がった。「デスリード」と呼ばれる式神の召喚および吸収に成功した。

召喚を終えたハヤトは、白シャツを着てヨシヒコが入れてくれた麦茶を飲む。道場で麦茶を飲むハヤトは胸に手を当てながら小声で言う。

「デスリード......」

―――俺の名は剣崎勇人(けんざき・ハヤト)。剣崎家の24代目当主。平安時代まで遡る「剣崎家」は様々な将軍に仕えており、表向きでは刀職人であり裏では陰陽師の家系である。式神を使役し、戦いに参加したとも伝えられている。また式神の力を借りて妖刀「蒼銀」を生み出した。しかし、明治時代に入ってその存在を恐れた政府は、剣崎家を滅ぼす。

陰陽師の家系として滅んだ剣崎家だが、血を引く生き残りによって新たに再結成した。いろいろあって政府に認められ、こうして現在まで剣崎家という家系が続いている。異界からやって来た”魔”を退治し、世界に蔓延らないようにに何代にもわたって封じてきた。

住んでいる街、寳坂市は言わば巨大な「結界」だ。そのため異界からやって来た”魔”は、寳坂市の外から出ることは出来ない。

俺の使命は―――寳坂市に蔓延る魔物<アルター>を1体残らず除外し、元凶である”異界の門”を閉ざす事だ。

魔物や式神にあたる存在は、現在では「アルター」と呼ばれている。

「これでハヤト様もアルター使いですね」

「あぁ、この時をどれだけ待ったか.......」

胸部に手を当てながら中に眠るデスリードを考えるハヤト。アルターの相性が悪ければ戦いで敗北する可能性がある。アルターは「分身」であり「化身」でもある。だからこそ負けるわけにはいかない。

何としてもデスリードを俺だけのアルターに仕上げる....!


―――翌日。


2019年6月6日、木曜日。時刻は7:57分。通っている高校「芹沢学園」に行くため、執事のヨシヒコに「行って来る」と言って屋敷を出た。昨日は大雨だったが、今日はとても熱い。太陽に手をかざすハヤトはこれからの事を考えていた。

―――どう、デスリードと向き合うべきか..........

屋敷を出て歩くこと役7分。木で囲まれた芹沢学園の校門に着く。校門を抜け、靴を履き替え、2年A組の教室に向かう。教室に入ろうとしたその時、後ろから女子生徒の声が聞える。

「ハヤトさん!」

振り向くとそこにいたのは、青髪の女子生徒。彼女の名は天ヶ瀬莉子(あまがせ・りこ)2年B組の生徒だ。後ろ髪をダンゴ状にしており、黒いリボンの髪飾りをつけている。莉子と同じクラスの冬織とはよくつるんでいる。

非常に明るく真面目な人だ。名前を呼ばれたハヤトは、彼女に近づく。

「おはようございます」

「ふつうに”おはよう”でイイよ!」

「そうですか....... 個人的には”おはようございます”の方が言いやすい」

「本当、ハヤトさんって変わってるね~!」

クスクスと笑いながら莉子は言った。それにつられて無表情だったハヤトも少しだけ笑った。後から一人の男子生徒がやって来た。茶髪で右手首に赤いリストバンドを付けている。

「ハヤトさん~」

「冬織君~!」

手を振りながらやって来た弾施肥生徒の名は松崎冬織(まつざき・とおる)。同じ2年A組の生徒。バスケ部に所属している。どうやら俺に憧れているみたい。莉子と一緒にいることが多い。

「おはようございます」

敬語で挨拶するハヤト。教室に入らずその場で話す二人。

「昨日、酷い雨だったなぁ........ 晴れているのはいいが、今日は熱いなー」

熱そうに語る冬織。たしかに彼の言う通り、昨日は酷い雨だった。午前中は晴れていたが、午後から雨になった。傘を持たない生徒は全速力で走っていた。個人的には都合がよかった。

「うん!雨のせいでシャツとスカートびしょびしょになった.......」

(びしょびしょッ!?)

莉子が昨日の状況を言った途端、冬織は「びしょびしょ」という言葉に反応する。冬織の驚く表情を見たハヤトは、”何でそんな驚いた顔をしているんだ”と疑問に思った。ともあれ二人を後にして教室に入る。

―――教室に入って”お馬鹿トリオ”に「よう!ハヤトさん!」と言われる。2年に上がってから周りに「さん」付けされている。変わった髪型のトリオに挨拶されたハヤトは、笑みを浮かべながら返事する。

「おはようございます」

「いや~今日は熱いですね!あ、カバンは俺が持ちます!」

「お、おう........ ありがとうございます」

赤く染めたポニーテールのリーダー”キリト”はニヤニヤしながらハヤトのカバンを手に取り、机まで運ぶ。

「喉渇いていませんか!?水をどうぞー!」

今度は、太った体系のロングヘアの”ダイ”がカバンからペットボトルの水を取り出し、ハヤトに渡す。もちろん”喉が渇いている”なんて一言も言っていない。

「渇いているわけではないが...... ありがたくもらう」

「家まで遠いみたいですから肩などお疲れでは~?オレのマッサージならスッキリしますよー!」

ダイの後に紫色に染まった髪の”コウ”は、近くにある椅子に座らせ、彼の言う”神のテクニック”でハヤトの両肩を揉む。もちろん”やってくれ”なんて言っていない。しかし、意外と気持ちいい。”神”と言っていいぐらいだろうか。

「ど、どうですか!?」

「あぁ、肩凝ってるから丁度イイ.......」

その言葉を受け止めたコウは嬉しそうにマッサージを続けた。どういう訳か俺はこの三人に好かれている。1年の時は、三人に嫌われていたが、去年の冬に不良に囲まれた三人を救ったところ俺を”聖人”か”英雄”として見ている。

はぁ、やれやれだ..........


◇◆◇


時刻は8:57分。朝のホームルームを終え、1時間目の授業中、ハヤトはデスリードを召喚する。霊体化しているため周りに見えていない。ペンを握りながら横に浮くデスリードにアイコンタクトを送る。頷いたデスリードはそのまま教室出た。

召喚した目的は・・・・周辺にアルターおよびその操縦者がいないか調べるためだ。しかし、残念ながらデスリードは遠隔操作型ではない。そのため遠くへ送り出すことは出来ない。少なくともデスリードが動ける距離は約10メートルが限界。

遠隔操作型は、距離とかあんまり関係なくどんな遠い場所でも送りだす事が出来る。「出入り口」となるスポットがあれば別だが........

(頼むぞ......)

廊下および他のクラスに顔を出すデスリード。しかし、アルターおよび操縦者の気配はない。ハヤトがいるクラスに戻ったデスリードは、首を左右に振りながらいない事を知らせる。

「......分かった」

授業中に小声で呟くハヤト。どうやらアルター使いは自分だけかもしれない。しかし、気配を完全に消すことが出来るアルターも存在するらしい。

父を亡くした後、厳しかった伯父に剣崎家の知識や思想を教え込まれた。アルターの存在や使い方だけじゃなく剣術も教わった。伯父の話だとどんなに遠くてもアルターと操縦者の距離が離れている場合、霊力が弱まる。

つまり、操縦者が近くにいない限り力を発揮しない。もし遠隔操作型のアルターが学校の周辺にいるとしたら見つかるはずだ。操縦者が近くにいなければ霊力が弱まり、たとえ存在を消せても感知される恐れるがある。

(遠隔操作型.........)

今朝のニュースで埼玉県に住む青年が”何か”に襲われ右腕を焼かれ、さらに住宅街の道で頭から血を流しながら発見された。意識を取り戻した青年は”怪物に襲われた”と言っていた。もちろん『不可能犯罪』として調査している。

ここ寳坂市だけじゃなく全国でアルターによる事件が相次いでいる。ふつうの人間じゃ起こせないため『不可能犯罪』と呼ばれている。結局、分からないまま終わってしまう事が多い。

―――そう、知らないところで必ず事件が起きる.........


◇◆◇


時刻は15:06分。6時間目および帰りのホームルームを終え、冬織と一緒に教室を出た。校門を抜け、冬織と話しながら下校する。今日の体育やいろんな出来事について話していたら、突然黙り込んだ冬織は空を見上げながらある事を言い出す。

「なぁ...... 莉子だけど.....」

「ん?」

「莉子って彼氏とか思いを寄せている人とかいるのかな....?なぁ、どう思う?」

首の裏を触りながら一切目を合わさず話す冬織。その質問に対して、ハヤトは疑問に思った。

「分からない.....」

「だ、だよね!分かるわけないよねぇ.....」

しかし、ハヤトは別の意味で言った。

「いや、分からないのは、何故君がそのような事を気にしているのか?莉子さんに恋人がいると何かまずいのですか?」

そんな真面目な質問に対して冬織は、顔を赤くしながら必死に否定しようとする。

「い、いや!別に困るとか..... 俺が困るって....!いや、いるのかなと思って.....」

(変わったヤツだ)

内心で呟くハヤト。何故、そのような事を気にしているのか理解が出来ない。しかし、二人は子供の頃から遊んでいると聞いたことがある。だとしても意味が分からない。直接、彼女に聞くばいいだけの話だ。

いや―――まさか........

頭の中でいろいろと考察していた中、背後から霊体化したデスリードが現われる。ハヤトと目がった瞬間、突然現われた意味を知る。真顔になったハヤトは冬織に言う。

「悪い。用事を思い出してしまった...... 寄り道はまた明日」

「あぁ....... そう........ じゃ、また明日」

「すまない」

最後に頭を下げ、全速力で屋敷に向かって走った。一人だけになった冬織は、キョトンと鳩のような顔つきになる。


◇◆◇


時刻は15:24分。屋敷に着いたハヤトは真剣な表情で道場に向かった。すぐにデスリードを召喚し、確認する。

「見つけたのか?」

ハヤトの質問に対してデスリードは頷く。話せないため具体的にどのようなアルターを見つけたのか分からない。デスリードと向き合っている中、執事のヨシヒコが麦茶入りのグラスを持ったままやって来た。

「おかえりなさいませ。麦茶はいかがでしょうか?」

「後でもらう。それよりヨシヒコ!」

「あぁ、はい!」

「すぐに刀を持ってきてくれ......」

腕を組みながらハヤトは言った。「刀」という言葉に反応したヨシヒコは内心で「ついに来ましたか」と言って道場を去る。しばらくすると鞘に納めた刀を持ってきた。包んでいる鞘袋を外し、刀を手に取ったハヤトは小声で言う。

「蒼銀.........」

紺色の鞘を抜くと銀色に煌めく刀が光る。剣崎家に伝わる妖刀「蒼銀」だ。しかしこれはオリジナルではない。デスリードを呼ぶ際に使った刀がオリジナルだ。しかし古く錆びているため戦いには使えない。ヨシヒコが持ってきた「蒼銀」はいわゆる2代目だ。

通常兵器が効かないアルターを切り裂くための刀だ。

「ついにハヤト様も蒼銀を使う時が........」

蒼銀を見つめるハヤトを見たヨシヒコは、ハンカチを取り出し目から涙流しながら言った。剣崎家では、アルター使いになった者は蒼銀を持つ事を許される。アルターという名の分身の力を借りるのだけではなく、直接操縦者を斬るための刀でもある。

「―――深夜の1時過ぎに屋敷を出る」

そう宣言したハヤトだが、それを聞いたヨシヒコを持っていたハンカチを落とす。

「そ、そのような時間帯でよろしいのですか!?」

「アルターおよび操縦者にとって”深夜”は好き放題出来る時間帯だ......」

夜だと野生のアルターおよび使用アルターが活発になる。多くの『不可能犯罪』は夜で起きている。得に人気のないところで.........

間違いなくデスリードがマークしたアルターおよび操縦者は深夜に現われる。追跡能力を持つデスリードは嘘をつかない。

霊体化せず表に出しているため、目が合ったヨシヒコはデスリードに麦茶入りのグラスを向ける。

「あーデスリード様もいかがでしょうか?」

笑みを浮かべながらそう尋ねるとデスリードは、首を一切動かず無視した。デスリードの反応に対してヨシヒコは残念そうに俯く。さっきまで真剣な表情だったハヤトがそのやり取りを見てクスッと笑った。

「フッ...... さすがに飲まないでしょ」

「そ、そうでしょうか....?アルターにも意思はあると聞いたので飲むかなと思って......」

ヨシヒコの言う通りアルターに「意思」はある。しかしファンタジーに出てくる妖精や精霊と違ってアルターはその人の手や足となる存在に過ぎない。自分に出来ない事や考えている事を読み取り、実行するいわゆる『分身』だ。

―――屋敷を出る前に少しだけウォーミングアップする必要がある。


◇◆◇


時刻は2;09分。黒く染まった空と人の気配を感じない街。車がたまに走るぐらい静かだ。そんな人がまったくいないこの時間帯はアルター使い達のたまり場である。深夜に出入りする人のほとんどは”幽霊”を目撃する。当然ながらその”幽霊”はアルターだ。

そんな人気のない街を堂々と歩く者がいた。黒いズボンと夏用の白シャツを着た黒髪の少年。左手には紫色の刀袋を持ちながら歩いている。戦う覚悟を決めたハヤトの表情と瞳から「殺意」が籠っている。

デスリードが捉えたアルターがいる場所に向かって歩くハヤト..........


―――その頃。人気のない路地裏で一人の若い女性が三人の男に囲まれていた。仕事帰りの女性は、見知らぬガラの悪い男達に掴まれ、路地裏で強く求められる。

「痛い...... 離してッ!」

左手首を強く掴まれている女性は、強めに言った。しかし、掴んでいるサングラスの男はニヤニヤと微笑みながら女性の耳元で囁く。

「離してあげるよ。俺達と朝まで付き合ってくれればねぇ......」

耳元で囁かれた女性は、歯を強く食いしばった。下っ端と思われる二人の男は「そうだそうだ」、「ボスの言う通り」などと言っている。

「ふざけるな!早く帰らせろぉ...!」

「だ・か・ら~俺達と朝まで付き合ってくれたら帰してあげるよ~丁度イイホテルを知っているから.....;..」

「ふざけるなぁ......」

男達から逃げるのは不可能だ。立ち向かう力もない。変なことすれば何をされるか。もはや諦めるしかない。そのまま引っ張られ、男の言う「ホテル」に向かおうとしたその時.........


『見つけたぞ』


「あん~?」

突然、見知らぬ声が聞えた。後ろを振り向くと刀袋を持った高校生だと思われる少年が立っている。獲物を前にした猛獣みたいな目つきで少年は言う。

「その女性を今すぐ解放しろ」

「はぁ?なんなんだお前........ コイツの彼氏か何かか?」

(この少年........ 一体........)

男に掴まれた女性はハヤトを見て心の中で呟く。リーダーと思われるサングラスの男は、言われた通りに女性を解放したが・・・・下っ端の二人に預けた。

「おいおい...... 学生がこんな時間で何をしているのかな?」

両手をズボンのポケットに入れて煽るような発言をする男。そんな低レベルな発言に関してハヤトは表情を変えず、刀袋から太刀を取り出し、紺色の鞘から銀色に煌めく刀を抜く。妖刀「蒼銀」を構えるハヤト。

しかし、そんな刀を構えるハヤトを見て男は盛大に笑う。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッーーー!!!何~?厨二病か何か?そんなプラスチック製の刀で俺を斬るつもり~?」

(ムッ........)

蒼銀を貶されたハヤトは、無言で力のある眼差しを目の前の男に向ける。

「フッ、たとえ本物の刀だとしても........ 俺を斬るのは無理だなー!」

「―――あぁ、だろうね。何故ならお前は”アルター”を所有しているから......」

「ん?」

少年から聞き捨てならない言葉が耳に飛び込んだ。その言葉がきっかけで男の表情と口調が一変する。

「おい........ テメェ......... 俺の何をしてるんだ?」

「残念ながら貴方の名前から性癖まで知りません。ただ分かっているのは、お前はアルター使いである事。いや―――正確にはアルターを持った哀れな人、かなぁ?」

「んだとぉ........」

ハヤトの発言にイラッときた男は歯を食いしばり、そのままサングラスを投げ捨てる。煽られて怒った男はその”アルター”の名を唱える。

「前に出ろッ!!ブルーベリージャムッ!!!」

アルターの名を唱えた瞬間、男の目の前から7メートルもある紫色のスライム状の”何か”が現われた。足はなく代わりに発達していない両手を持つ。オオサンショウウオを連想させるスライムの怪物は大きく口を開け、奇声を上げる。

その姿を一言で言うと”巨大なジャム”だ。

「ムオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッーーーー!!!!」

ジンベイザメ並の口を持つアルターの名は―――ブルーベリージャム。全身がスライムのようにドロドロとしており、他のアルターを上回る巨体だ。見た感じではスピードは遅い。パワーと霊力および知性は未知数。

謎のスライムの怪物を目の当たりにした女性は驚愕する。

(な、な、なんなんだよあれ!?)

「ブルーベリージャムに勝てる者はいないッー!特別に逃げるチャンスを与えてあげる!」

しかし、そんな事を言われても逃げるわけがない。男のアルターを見たハヤトは一切反応せず「それがお前のアルター」って感じの表情をしている。ハヤトが驚かないことにイラッときた男は大声で言う。

「どうした!?逃げないのかー!?食われたいのか!?」

「―――なるほど。それがお前のアルターか....... 蒼銀を使うまでもない」

「あぁん!?」

そう宣言したハヤトは目を瞑りながら小声でアルターの名を唱える。

「.......デスリード」

名前を唱えた直後、瞑っていた目を開ける。目を開けたタイミングにハヤトの背後にメラリックブルーに煌めく騎土と武士を掛け合わせたようなフォルムの人型アルターが現われた。赤く煌めく両目のアイレンズ。両手にはメタリックブルーの刀を持っている。

「な、なんだとぉ...... テメェもアルター使いなのか!?」

ハヤトのデスリードを見て驚く男。

「こう見えて昨日アルター使いになったばっかだ......」

その言葉を聞いた男は、余裕の表情で言う。

「昨日?はぁ、ド素人じゃん!俺なんか1ヶ月前に手に入れたんだよぉおぉおぉ!」

「1ヵ月の貴方から見ればド素人ですね。―――しかし、アルター使いとしての知識は頭の空っぽの貴方よりはあります......」

そう言われた男は左拳を握りながら所有アルターのブルーベリージャムに向かって言った。

「.....あのクソガキを潰せッー!!」

「ヌオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

命令を受けたブルーベリージャムは口を大きく開けながら周辺の物を飲み込みながら両手を使って全速力で進む。戦車のように進むブルーベリージャムを前にしてハヤトは、後ろにいるデスリードに向かって言う。

「デスリードよ。俺の剣となれ.......」

その言葉を受け止めたデスリードは頷き、両手に持っている刀<蒼穹ノ太刀>を構える。距離が近くなった瞬間、一歩も動かないデスリードを飲み込んだ。

「ブルーベリージャムはどんな物も飲み込む!飲み込まれたアンタのアルターはそのままドロドロに溶けて消滅だぜぇ!」

丁寧に自分のアルターの性質を教える男。しかし、デスリードが飲み込まれたにも関わらず一切動じないハヤト。

(なんだコイツ...... アルターが飲み込まれたにも関わらずなんだあの表情は.....)

ハヤトを見て男は不審に思った。すると真顔のハヤトが最後に宣言する。

「―――勝ったな」

「ん?」

その時、デスリードを飲み込んだブルーベリージャムの様子がおかしい事に気づく。ウゥウゥウと唸り声を上げるブルーベリ―ジャムの色が青く変色していく。いや、それだけではない。みるみると凍っていく。

「ブ、ブルーベリージャムが....!」

凍るブルーベリージャムを目の当たりにした下っ端の二人は無意識に女性を離してしまった。今起きている状況を理解出来ないおろか、怯える女性はその場から逃げ去った。


―――そして、次の瞬間....!


「グ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッーーー!!!」

全身氷漬けになったブルーベリージャムは断末魔の叫びを上げながらバラバラに粉砕した。氷の破片となって壁などに激突し、さらに砕け散る。ブルーベリージャムがいた位置に無傷のデスリードが立っている。

「う、嘘だろう....... 嘘だ....... 俺のブルーベリージャムがぁ.,....」

アルターを失って絶望した男。その怯んだ隙に腰を下ろし、刀を抜く。抜いた瞬間、男目掛けて真空波を放った。スッーと謎の風が男を通り抜けると、左手の指が三本ほどポロッと落ちた。自分の手を見た瞬間―――

「あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ぁ”あ”ッーーー!!お、お、俺の指ガァーー!!」

残っている指は、親指と小指だけだ。顔の前に手をかざしていたため、指に当たったと思われる。見下ろすと切れた指が転がっている。その光景を目の当たりにした下っ端の二人は、怯えながら大きく一歩ずつ下がった。

「本当は腕を狙うつもりでやった。言っておくがこれは警告だ。死にたくなければ寳坂から消えることだ」

「ヒィ......... ヒヒィ........」

「―――まだここで残るつもりなら、今度は「首」を狙う.......」

咎めるような厳しい目つきでハヤトがそう告げると、下っ端の二人はリーダーの男よりも先に大声を上げながら逃げ去った。

「ま、待ってくれえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえッー!!」

出血している左手を押さえながら先に逃げた下っ端を追った。見た限りでは、あの下っ端は「操縦者」ではない。もしそうだとしたらヤツのアルターと会わせて俺を襲うはずだ。言われた通りに街の外から出ればいいのだが........

アルターを断ち切っても寳坂市にいる限り、何らかのきっかけで新たなアルターを手に入れる恐れがある。寳坂市から消えればアルターに関わることはない。寳坂市の外にアルターはいないからだ。ただしアルター使いは別だ。

「ふぅ、大した相手じゃなかった........」

抜いた刀を鞘に収めたハヤトは、「ふぅ」と息を吐いた。一方デスリードは両手に持っているメタリックブルーの刀を消した。

「――よくやったデスリード」

笑顔でそう告げると宙に浮くデスリードは頷いた。

「俺は前の主と違うかもしれない。しかし、達成しなければならない悲願は同じだ...!かつての主に出来なかった事を俺がやってみせる......」

左拳を握りしめたハヤトは、デスリードに向けて誓った。

「デスリードよ。俺のアルターとして共に戦ってくれ」

真顔でハヤトは言った。その言葉を聞いたデスリードはそのまま頷き、青白い光に包まれながら姿を消す。


表向きでは単なる優等生。しかし、夜では”鬼”の面を被る。寳坂市に蔓延るアルターと所有者達を一人残らず倒す。そして―――元凶である”異界の門”を閉ざす。あるいは二度と現われないために破壊する―――

―――幼い頃に両親を亡くし、伯父に剣崎の人間として育てられた俺は、最後の血族者として戦う。

デスリードの主として俺は全てのアルターを斬る.........

続く。



【名前】:剣崎勇人

【性別】:男

【生年月日】:2003年2月25日(魚座)

【身長】:177cm

【体重】:64kg

【血液型】:A型

【好きなもの】:麦茶、読書、 庭での昼寝

【嫌いなもの】:悪質なアルター使い、偽善者、梅干し

【使用アルター】:デスリード

寳坂市で生まれた剣崎家の24代目当主。謎の病により命を落とした母と何者かに暗殺された父。両親を亡くし一人ぼっちになったハヤトは、海外から帰って来た伯父に剣崎家の思想や知恵を叩きこまれた。伯父が亡くなれた後、代々剣崎家に務める執事、園田嘉彦は親代わりとしてハヤトを支えてきた。成長したハヤトは、アルターおよび異界の存在を理解し、正式なアルター使いになる事を決め、デスリードの召喚に成功する。通っている芹沢学園では有名人として扱われている。スポーツ万能で相談にも乗るハヤトは欠かせない存在だ。学校や外では敬語で話すハヤトだが、屋敷の中ではタメ口。梅干しなどの酸っぱい食べ物を嫌う。アルター使いとして寳坂市に蔓延るアルターと戦うことを決意する。

【アルター名】:デスリード

【操縦者】:剣崎勇人

【タイプ】:人型

【戦闘型】:追跡型

【属性】:水

【固定武器】:蒼穹ノ太刀

【パワー】:B

【スピード】:A+

【耐久】:B

【知性】:A

【適応能力】:A

【霊力】:AA

【名付け親】:不明

西洋風の屋敷に住むハヤトにより召喚されたアルター。メタリックブルー・白ををベースカラーとしており、騎土と武士を合わせたようなフォルムとメタリックなボディが特徴。両手にはメタリックブルーが目立つ刀・蒼穹ノ太刀で戦う。水属性であるため両手のひらから水を放射する以外に自ら液体となり敵の攻撃を防ぐことも可能。さらに触れたものを瞬時に凍らせる事ができる。内部から表面まで凍結した者は最終的に砕け散る。またスピードに優れており、パワーが低くても操縦者の剣術とその素早い動きでダメージを稼げることが出来る。さらに水溜りや川の中に潜って身を潜めることも可能。ハヤトに呼びだされる以前に専用アルターとして戦っていた。