アルター・イゴス   作:nightrex
<< 前の話 次の話 >>

2 / 4
どうも。前からジョジョに出てくるスタンドやペルソナみたいに”何か”を召喚して戦うというストーリーを考えていました。

スクライドに出てくる「アルター」という名前と被っていますが無関係です。

一応、設定紹介があります。1話を読んだ後に設定紹介を見る事をおすすめします。

主人公は二人います。今回の1話はその一人の主人公がメインです。次回の2話は、そのもう一人の主人公のストーリーになります。

3話以降からその二人の主役が出会い、物語が本格的に動く形となります.....

またこのストーリーに「テーマ」があります。もしアルター使いになってしまったらどうするか?

アルターは何に使うか?誰のために使うか?貴方ならどう使うか?

主人公および様々な登場人物が「アルター」と呼ばれる制御不可能の怪物を使役し、戦う―――それがアルター・イゴス。

いろいろと長くなりましたが、そんな感じです。


第1章―寳坂編―
第1話:炎の魔人


この世には説明の出来ないものがたくさん存在する。


2019年の春。俺の人生は大きく変わった。元々はふつうの高校生だった。そんな”ふつう”だった俺が、今じゃ危ない性活を送っている。いつ死んでもおかしくないような人生だ。もしかしたら俺は進むべき道を間違えたかもしれない。いや、俺を嫌う神様の仕業なのか........

―――俺は何処で道を間違えたのか.....?


2019年5月24日、金曜日。時刻は17:36分。学校から帰って来た俺は部屋でパソコンを立ち上げる。ほぼ毎日、俺は「カルマ」と呼ばれる小説投稿サイトで小説を書いている。・・・と言ってもあんまり評価は高くない。読んでいる人も少ない気がする。

俺の名は八神桐之(やがみ・きりゆき)。星空高校に通う1年生。趣味は小説を書くこと。今、書いている小説は『見えない炎』と言ってジャンルはサスペンス。主人公が放火魔を追うシンプルなストーリー。7話まで書いた。しかし、感想や評価がほとんどなく、少しがっかり......

しかし、一人だけ読んでくれる人物がいた。

「また..... アイツからだ」

感想欄をチェックしていたらいつもの人から感想がきた。そう、一人だけ読んでくれる人がいる。カルマでは「デュナミス」と名乗るその人は、周りに知られるほど有名人である。書いている小説もどれも評価されており、よくランキング上位に入ってる。このまま小説家、あるいはラノベ作家デビュー出来ると言われるほどの人物だ...........

あんまり他人の作品に感想や評価せず、お気に入りに登録するぐらいの人だが、たまに俺の作品を見て感想を書く。

「,,,,,チッ。またダメ出しかよ」

イライラしながら書かれている感想を内心で読む。そう、ヤツの書く感想はどれも上から目線だ。悪い部分や間違ったところだけ拾って、それ以外は無視。

つまり、悪いところしか評価しない。指摘するのは悪いことではないが、コイツの場合は俺を見下ろすように指摘する。残念ながらこのサイトにブロック機能は存在しない。

(本当イライラする.....)

酷い時は、アイツの信者が俺の作品を読んで悪意のこもった指摘を残したりする。そう、アイツは俺の作品をいろんな人達に教えた結果、周りから馬鹿にされている..........

俺はアイツとは違って別にプロでも人気者でもなんでもない。ヤツは完全に俺を見下ろしている。

「あー!マジむかつくー!」

感想を読み終わったキリユキはイライラしながら部屋を出た。アイツがきっかけでいろんな作家から悪口と見せかけた指摘メールが届いてばっか。もう、書くのやめようかな........

「あぁ、キリユキ。父さんと母さんは出掛けて来るから作ったシチューを温めて食べてね!」

台所でパックの牛乳を飲んでいたら、玄関に立つ父さんが大きな声で言った。振り向くと母さんと父さんはいつも以上におしゃれしていた。ちなみに父さんは有名なバンド『赤狼』のギターを担当している。母さんと一緒にどこへ行くのかあんまり興味なかった。なみに自分はそういうの目指していない。

「うん...... 分かった。いってらっしゃい!」

「遅くなるかけど..... 何かあったら電話してね!」

母さんがそう言うと、キリユキは「うん」と言って頷く。二人が家を出た後、一人になったキリユキはリビングのソファに座り、テレビを付ける。

「―――つまんねぇ........」

チャンネルを全て変えてもつまんないバラエティ番組やドラマしかやっていない。未だにアイツの書く感想や送ったメッセージの内容を思い出す。そのせいかすごいイライラしている。

―――誤記が多すぎて酷い。あとキャラがどれも地味すぎる。何が書きたいのか理解出来ない。

正直言って・・・・君、小説書くの向いてないな。出直してこい―――

「あ、あの糞野郎.....!」

拳を握りながら歯を食いしばるキリユキは、震えながら言う。思いだしたくもない事を思い出してしまった。過去にメッセージのやり取りで感想について揉めたことがある。その時は、今までの感想について思っている事を言った。

しかしヤツに”可笑しい人”や”小説書くのやめた別のことすれば?”とかムカツク返事を送られた。

「デュナミスト...... あの野郎..... 絶対に思い知らせてやる....!」

それを言われた俺はムキッになり、いろいろと言い返した。その結果、ヤツは俺達のやり取りをサイト内の作家達に見せた。俺の存在が知られる、バッシングを受けるようになった。

その後、デュナミストもしくはヤツの信者の一人が運営に報告した結果、俺は小説おろかアカウントを失った...........

今、書いているのは第2のアカウントだ。

「あー!もう、ふざけじゃんねぇよー!」

ソファにあるクッションを掴み、床目掛けて投げた。どうせ帰り遅いから、コンビニでも行くか。イライラが収まらないキリユキは、財布を手に取り、家を出てコンビニへ向かう。


◇◆◇


時刻は18:10分。コンビニでジュースやお菓子を買ったキリユキは5分近く置かれている雑誌を読んだ後、店を後にする。既に外は暗く、不審者が潜んでいてもおかしくない雰囲気だ。駐車場には無数のハエが飛んでおり、見ていてうっとおしい。

「帰るか.......」

ボソっと呟いたキリユキは俯きながら自宅へ向かう。歩いている最中、変に気配を感じる。気のせいだろうか。何かが後ろにいるような..........

もちろん振り向いても誰もいない。不審者とかそんなことを考えていたからそう思ってしまうんだ。早歩きで前へ進むキリユキ。しかし、それでも気配を感じる。足音とかは聞えないけど、何故か”気配”を感じる..........

(チッ、なんなんだよ.....)

急にそわそわしてきた。片手で自分の胸元を掴むキリユキは歯を食いしばりながら走った。走ればコンビニから家まで2分ぐらいで着く。いや、本気出せば30秒ぐらい!

そんな事を考えながら走っていたら、さっきまで感じていた気配が大きくなった気がする。何もいないと分かっているのに後ろを振り向いたその時......!

「――――ハッ!?」



『ヌ”ワ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッーー!!!』



振り向いた途端、黒い人影のような”何か”が口を大きく開けながら襲うつもりでこちらに向かって来た。


◇◆◇


目を覚ますと俺は、小学校の頃によく遊んでいた”恐竜公園”の前で倒れていた。何故こんなところで倒れているのかまったく分からない。ちなみに部活帰りと思われる体操服を着た中学男子二人が「コイツ何してんの?」という目でこちらを見ている。

しばらくすると変な目で見ていた男子二人は駆け足でその場から去った。起き上がったキリユキは、買った物の袋を手に取り、盗まれていないかと確認する。得に盗まれた形跡はない。ちゃんと買った物が残っている。

「な、なにが起きた.....?」

何故こんなところで倒れていたのか。たしか変な気配(・・)を感じて走ったのは覚えている。しかし、その後が分からない。とにかく家に戻るため走った。


時刻は18:30分。家に戻った俺は自分の部屋で買ったお菓子を食べながらヤツ(・・)の感想を見た。さっき1時間前にも見たが、別作品に新しい感想が来ている。恐る恐る見て見ると.......

―――文章力なさすぎ。頑張って書いているつもりだと思いますが、正直言って人々の前で見せるような内容とは思えません。むしろ休み時間にノートに書くレベルです。アカウント消えて、復活して前回より変わったと期待していましたが、結局いつものVanicでした。いろいろとアドバイスや指摘しましたが、以前よりも上達していない。こんなのじゃ誰も読まない。何度も言いますが、貴方はこのサイトに向いていません。本当にやめたら?―――

この時、怒りが火山のように噴火する。震えた手でマウスを掴むキリユキの表情が一変する。

アドバイス?指摘?お前のアドバイスはどれも否定的で納得出来ない内容ばっかだよー!

アカウントが消えたのは、お前の仕業だろう!

しかも消える前に俺の小説およびアカウントに関する情報などのやり取りを周りにバラ撒いたのもおめぇの仕業だろうがァー!!

怒りが収まらない。俺は見下ろされるのが一番、嫌いなんだよぉ....!

―――こんなヤツ今すぐでも燃やしたい.....!

心の底から湧き上がるこの気持ちは何だ。他人にはこの気持ちが分からないだろう。自分は周りから愛され評価されている。自分は誰よりも上。自分より下で目立つ存在を貶す。多くの人なら指摘されて喜ぶだろうけど、俺は違う。

指摘するのは悪いことではない。しかし、アイツの場合は悪意と侮辱をまとめて指摘している。

俺のアカウントやプライドまで潰したコイツに未来はない....!

「殺してやる.....!殺してやりたい.....!」

殺意込めてその言葉を口にした瞬間、キリユキの影が別の”何か”に変わる。形が変わった瞬間、キリユキ周辺から真っ赤な炎が出現する。何か焦げ臭いと思って振り向くと部屋は炎に包まれていた。

「な、な、な、なんだよこれー!?」

あまりの驚きに回転椅子から落ちたキリユキは、慌てながら逃げようとしたが.......

「ど、ど、どうしょう!?どうすればいいんだよ!あー!」

パニックの中、燃え上がる炎がみるみると形を変えていく。そんな時、炎の中から”何か”が現われる。

「な、なんだよ......... あれ.......」

キリユキの前に現われたのは、2メートルもある装甲を纏った怪人だ。ベースカラーは赤・オレンジ・金で両目のレンズがエメラルドのような色をしている。両肩に金色に光るイバラらしきオブジェがある。口はフェイスマスクで覆われており、その姿は漫画かアニメに出てくるようなメタルヒーローを連想させる。

さらに目立つ事に右胸部に「火」と書かれた漢字のエンブレムがある。謎の怪人が現われた途端、周辺の炎が何もなかったかのように消えた。足元の影から宙に浮く怪人は何もせずただキリユキを見ている。

(な、なんだよこの怪物!?攻撃しないのか....?)

とりあえず声を出さないで心の中で呟く。突如現われた謎の怪人を前にするキリユキは石像のように固まっていた。下手に行動を起こせば襲われるかもしれない。そう考えたキリユキは怪物が消えるまで固まることにした。

(お願いだ...... 何もしないでくれぇ......)

心の中で怯えながら呟くと、すっーと目の前から姿を消した。思いが通じたのか、怪人は何もせず消えた。この時、心臓が止まりそうになった。

「ハァ........... アァ........ ゆ、夢じゃいよねぇ.....?」

いいえ、紛れもなく現実だ。今でも部屋が熱く感じる。さっきから心臓がバクバクして辛い。俺の前に現われたアレは何なのか。そしてどこへ行ったのか...........

そんな時、ある事を思い出す。怪人が現われる前に心の中で”燃やしたい”と言った。その後、突然周りに謎の炎とあの怪物が現われた。まさかだが、俺が呼び寄せたのか?

考察するキリユキは、恐る恐ると気持ちを込めてさっきの言葉を言う。

「.......こんなヤツ今すぐでも燃やしたい!」

その時、さっき消えたあの怪人が再び現われた。驚いたキリユキは立ち上がり、びっくりした表情で呟く。

「まさか..............」

それでも怪人はずっとこちらを見ている。もし本当に俺の言葉に反応するなら........

「う、腕を上げろッ!!」

強めに言うと怪人はそのまま両腕を上げた。この時、心の中で「マジかよ」と言ってしまった。その後、様々な事を言って怪人を動かした。”右脚を伸ばせ”と言うと、言葉の通りに右脚を伸ばした。

この怪物は、犬や猫とは違う。俺が思っている事や口にした事を全て聞いて実行する。その時、俺は考えてはならない事を考えてしまった..............



――――人を殺せと言えば、本当に殺すのか?



この怪物は一体何なのか。どこから来たのか。そして何故、俺の言う事を聞くのか。いろいろと気になってネットで「悪魔」や「悪霊」また「精霊」について調べた。調べるのに3時間も掛ったが、変わった情報を目にする。

ここ―――寳坂市に謎の霊体の目撃が相次いでいる。寳坂市で撮られた写真に黒い煙の物体がいくつか写っている。どうやらその黒い霊は「アルター」と呼ぶらしい。その黒い霊は本来見えないが、気配を感じた者、またそれを見た者は”霊”を体内に取り込む素質がある。取り込まれた霊はその人専用の「アルター」となり右腕として戦う。

つまり・・・・主と僕みたいな関係か。

知らない内に俺は、その(アルター)を取り込んだみたい。まさか、あの時.....?

公園の前で倒れていた時の光景を思い出す。倒れる前に変な気配を感じて後ろを振り向いたその時、記憶が飛んでしまった。まさか、あの時にアルターと遭遇したのか?

もちろんそのサイトの書き込みでは、「妄想乙」や「何その厨二病過ぎる設定」などの否定的なコメントが多かった。たしかに何も知らずに見たら信じるのは無理がある。

―――それから1週間。俺は取り込んだアルターを使いこなした。分かった事はいくつかある。属性は「火」で両手のひらの銃口みたいなところから炎を出す。さらに両肩にあるイバラみたいな物体を使ってパソコンのデータを改ざんしたりハッキングが可能。見た目的に炎を出すイメージはあったが、まさかパソコンや機械を狂わせるような能力を持っているとは.........

さらに機械の中身をいじくるのだけではなく、入り込むことも可能だ。どうやらテレビやパソコンの画面を”出入り口”として使う。仕組みやよく分からないけど、例えば俺の部屋のパソコンの画面を「入口」として使う。行き先次第で知らない人の家のパソコン画面が「出口」となり姿を現す。

つまり、あのクズを直接攻撃出来るッ!

アルターのおかげでヤツの名前や住所、そして住んでいる街も全て特定した。


6月2日の午後3時半。回転椅子に座るキリユキはパソコンの前でポテトチップスを食べていた。真顔で画面を見るキリユキだが、実は電源はついていない。そう、画面は真っ黒のまま。肝心のアルターもいない。彼は一体何を見ているのか.........


◇◆◇


「.....続きでも書くか~」

シャワーを浴び終えた黒髪の男は、タオルで髪を拭きながら部屋の回転椅子に座る。パソコンの電源を付けて小説の続きを書こうとしたその時―――

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッーー!?」

突然、男は悲鳴を上げながらパソコンから離れた。電源を付けたその時、画面から”赤い両手”が現われ、男を襲うとした。手の後に顔が出現し、画面から出てきたその”何か”は男の部屋に上がり込む。緑色に光る両目を持つメタリックな怪人は首をゴネゴネと鳴らしながら、座り込んだ男の首を掴む。

「だ、誰かーーー!!」

(見つけたぞ....... このゴミカスがァ!!)

首を掴まれ、そのまま天井まで上げられた男は必死に助けを呼んだ。異常の握力を持つ怪人の手からは逃れない。謎の怪人に首を掴まれ必死に足をバタバタする男。怪人の正体は――キリユキが送り込んだアルター。

遠隔操作が可能であり、アルターの視界を借りてその光景を見ている。そう、遠く離れたところでキリユキはポテトチップスを食べながらその場にいるつもりで男を見ている。

(このまま殺すか......)

そう命じると謎の怪人ことアルターは、持ち上げている男を壁目掛けて思いっきり投げる。部屋の壁に激突した男は、肩と腿を傷める。

「あっ!?だ、誰か........」

倒れ込んだ男をもう一度掴み、握力を上げる。苦しそうに口から泡を出す男。アルターの視界を借りて見ているためはっきりとその苦しみが伝わってくる。殺すつもりで首を絞めるアルターだが、その時、キリユキはある事を考えた。

(いや、コイツを殺しても俺の怒りが収まる訳がない...... いや、あっさりすぎて意味がない)

一度、中断の命令を与えたキリユキはチップスを食べるのやめ、深く考えた。デュナミスをどうするか。殺すじゃあんまり意味がない。

小説....... 作家...... ペン、またはキーボード....... 書くためには「手」が必要.......


(ッ!?)


顎を触りながら深く考えていたキリユキはある事を思いつく。殺すのではなく、ヤツの「手」を破壊する。二ヤリと微笑むキリユキは、アルターに言う。

(ヤツの両手を粉砕しろ........ 片手を燃やせぇ!)

キリユキの言葉を受け取ったアルターは、片手で男の右腕を掴む。何が起きているのか理解が出来ない男は半泣きで必死に助けを呼ぶ。右腕を掴んだ瞬間、そのままアルターの熱で溶かした。

「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッ!!!!」

男の右腕はアルターの熱で赤く染まり、手首当たりがだんだん黒く変色していく。喉が潰れるぐらいの叫びを上げる男の顔はピンク色に変色。右腕を終え、さらに左手首を掴み、そのままへし折る。バキバキという骨が砕かれる音が部屋中に響き渡る。

こんな残虐な事をアルターにやらしているにも関わらずキリユキは、腹を抱えながら笑っていた。男の悲鳴と苦しむ姿が見れて大喜びのキリユキは最後の命令を与える―――


―――そのまま投げ飛ばせぇ........


頷いたキリユキのアルターは、両腕の機能を失った男を外目掛けて勢いよく投げ飛ばす。リビングのガラスを突き破って男は、5メートル近く飛んだ。

男を投げ飛ばして10分後。近所の道路の右側で犬の散歩する女性は、中央に倒れている片手だけが黒焦げの男性を発見する。

「き、きゅ、救急車をー!!」

『ワンワンッ!!ワーンー!』

慌てながらバッグからスマホを取り出す女性。必死に鳴くペットの犬。頭から血を流す男は、そのまま女性が呼んだ救急車に運ばれた...................


◇◆◇


「カンパーイ~!!」

6月3日。リアルでユーザー名「デュナミス」を叩きつぶしたキリユキは、部屋で2リットルもあるペットボトルのコーラーをグラスに注ぎ、盛大に飲み干す。テーブルにはのり塩味のポテトチップスやフライドチキンなどがある。

心の中のストレスや怒りが消えてスッキリした。両脚を伸ばすキリユキは、お皿に並べられている野菜スティックの一つを手に取り、横にいるアルターに向けて言う。

「アンタのおかげで俺の人生は最高だよ!ほら、お前も食うか?」

「........................」

にんじんスティックを向けても無反応。まさか食べられないのか。よく見ると口の部分はフェイスマスクか何かで覆われている。そりゃ食べるのは無理か。

あのクズを投げ飛ばした後、アカウントおよび書き途中の小説および全てのデータを削除。ついでにパソコンも破壊。アイツの家のテレビを使って戻って来た。

わざわざそのクズのところに行かずアルトにやらせる遠隔操作は便利だ。いろいろ使い道がある。

そういえば呼ぶ際に名前が必要だ...........

「―――そうだ。お前の名は今日からヴァ二ックだ!」

笑みを浮かべながらキリユキは大きな声で言った。名前の”ヴァ二ック”は、小説投稿サイトの「カルマ」のユーザー名だ。そう俺のユーザー名。さらに書いている小説のタイトルが『見えない炎』という意味でヴァ二ックという名前と火属性がマッチしている。

気に入ったのか、ヴァ二ックはそのまま左拳を握りながら頷いた。

ちなみに今朝のテレビニュースによると―――どうやらあのクズの本名は前林智紀(まえばやし・ともき)と言うらしい。病院に運ばれてすぐに救命手術を受け、なんとか一命を取り留めたみたい。しかし、右腕は溶岩のように固まり、切断することになった。ちなみに左腕から手首までは複雑骨折らしい。あの距離で投げ飛ばして生きているとは............

まあ、永遠に右腕を失ったから小説書くのは無理だね。そういえば右だけじゃなく左腕も使えないのだ。あとは、そのまま絶望して自殺するか...........

もし周りこんなこと話したらみんなこう思うだろう。


――――そんな小さな理由で怪我させるか?


こう見えて俺は今まで我慢してきた。中学なんかでは、女子達やクズ達の奴隷として働かされた。もちろんその場でぶっ飛ばそうと思えば出来たが、俺はどうしてもトラブルを起こしたくない。親や周りに迷惑をかけたくない。だから今まで我慢したきたのだ........

こう見えて俺は根に持つ(・・・・)タイプだ―――

仮に超能力か魔法でヤツの作品やデータを永遠に消しても俺の怒りは収まらない。だからアルターを使って物理的にぶっ潰す。その結果、今じゃ何も苦しみやストレスも感じない。平和的な気分だ。

『夕飯出来たよー!』

リビングの方から母の声が耳に入った。お菓子食べるのをやめ、「分かった!」と大声で返事したキリユキは駆け足でリビングに向かう。


◇◆◇


「まだ残りあるから、明日の弁当に入れようか?」

母がそう尋ねると、キリユキは「うん」と言って頷く。

「明日の弁当にする~」

今日の夕食は母手作りラザニア。俺が生まれる前、父と一緒にいろんな国へ旅していたらしい。それが理由か、和食を食べる事が少ない。ラザニアやパエリア、キッシュなどのヨッローパ系の料理を食べる事が多い。

もちろんうまいけどね。

「あ、そういえばさっきニュースで見たけど。埼玉県のどこかで若い男が”怪物に襲われた!”と叫んでいたなぁー」

運ばれたクズは、必死に”怪物に襲われた”と叫んでいたが、麻薬を使った可能性があるため調査している。そりゃそうだ。誰も信じるわけがない。もちろん吹っ飛ばされた流れから溶岩と化した右腕については説明が出来ない。

父がニュースについて話していたら、キリユキはラザニアを食べながら台所でメラメラと両手から炎を出す霊体化のヴァ二ックにウィンクを送る。もちろん母おろか父でさえその存在に気づいてない。

「アルター最高........」

「ん?何か言った?」

ボソッと呟いたキリユキの声に反応した母は瞬きしながら尋ねる。それに対して何事もなかったかのように笑みを浮かべながらキリユキは言った。

「え?母さんの”ラザニア最高”って言ったけど?」

「そんなの今更じゃないか!ママのラザニアは世界一に決まってるじゃないかー!」

金髪に染めた父が笑いながら大きな声で言った。あぁ、否定はしない。母さんの料理はたしかにうまい。しかし一番美味しいのは”アルター”という存在だ..........

こう見えてまだまだ粛清すべきクズはいる。得に通っている高校なんて山のようにいっぱいいる。そうだ。決めた。

―――次のターゲットはあのクソビッチだ。

待ってろよ。お前の夢と希望を俺が打ち壊してやるよ..............

続く。



【名前】:八神桐之

【性別】:男

【生年月日】:2002年4月29日(牡牛座)

【身長】:175cm

【体重】:62kg

【血液型】:AB型

【好きなもの】:お散歩、海外ドラマ鑑賞

【嫌いなもの】:クレーマー、偽善者、変な団体、不良など

【使用アルター】:ヴァ二ック

子供の頃から酷いいじめを受け、我慢してきたせいで根に持つようになり、ずっとストレスを抱えてきた。コンビニ帰りに野生のアルターに襲われたその時、体内に取り込み、アルター使いとなった。「ヴァ二ック」と名付けた火属性の人型アルターを使って気に食わないあるいは今まで恨んでいた人間を病院送りにさせたり、彼の恨みと怒りは絶える事はない。またお金がない時は、不良やチンピラを襲い、金を巻き上げる。そんな感じの彼だが、家では真面目で両親の言う事は絶対に聞く。友人関係も崩さない様に明るく振舞っている。

【アルター名】:ヴァ二ック

【操縦者】:八神桐之

【タイプ】:人型

【戦闘型】:遠隔操作型

【属性】:火

【パワー】:A+

【スピード】:B

【耐久】:B+

【知性】:A

【適応能力】:A+

【霊力】:B

【名付け親】:八神桐之

八神桐之を襲うとして取り込まれ、「人型」として誕生したアルター。赤・オレンジ・金をベースカラーとしており、特撮番組かあるいはアニメかゲームに出てくるようなメタリックヒーローを想起させる。また全身が鉄のようにメタリックなため”斧を持たないブリキ”も現している。両手のひらの銃口から1700度以上の炎を放射する。発火能力(パイロキネシス)を持ち合わせており、周辺の炎をコントロールしたり人体自然発火現象も引き起こす。
第2の能力としては、両肩にある「イバラ」を使ってパソコンなどのデータを改ざんおよびハッキング。またテレビやケータイなどの画面を「出入り口」として使って入り込む。テレビゲームで言う「ワープゾーン」に近い。パソコンやテレビが存在する限り国内どこでも移動が可能。もちろん操縦者は、電車やバスを使わずに遠隔操作でアルター(ヴァ二ック)を自由に送り込んで召喚が可能。人型であり、高性能の上位アルターである。名前の”ヴァ二ック”は、桐之が使っている小説サイトのアカウント名から取った。