1
八月二十九日、正午を回った頃。
皐月が一方通行を倒してから一週間以上経った。あれから皐月はカエル顔の医者の元へすぐさま運ばれ、数時間にも渡る大手術の末なんとか生き長らえた。倒された一方通行も皐月か皐月以上の損傷を受けていたが、こちらも死には至らなかったようだ。
だが、『一方通行が倒された』という紛れも無い事実は学園都市中に広まり、絶対能力進化計画も中止へと追い込まれた。
「……、」
病院の屋上で一人、手すりに体を預けながら黄昏れる少年がいた。雲一つない晴天の下、風で病衣をなびかせながら彼は考える。
「まだ、終わってない」
一方通行を撃破したことにより、一万人以上の『妹達』を救うことが出来た。皐月叶人の大いなる目的は達成した。しかし、
絶対能力進化計画が中止になったことにより、一つの『事実』が自然と消え去ってしまったのだ。
皐月叶人が『妹達』を殺したという事実が。
学園都市の『闇』の部分でさえも、そんな『事実』があった事を知る者は少ない。それ故に消えてしまった。消されてしまった。
歴史の闇に葬られたのだ。
でもそれは、世間であって、その光景を目の当たりにした人間の中からは決して消えない。
当の本人と、御坂美琴の記憶の中からは。
消えないのである。消したくても、いくら消したくても、絶対に消えない。消えない。消えないのだ。
「あいつに本当の事を全部伝えた時が、この戦いの終わりだ」
今度は絶対に逃げない。何があろうとも。絶対に。例え、人一人を殺すレベルの電撃を放ってきたとしても、右手を構えることなく受け入れる。それが、皐月叶人の出した答え。
「本当にそれでいいのか?」
気付けばすぐ隣にいる、真っ白な少女。彼女はいつだって少年の近くに存在していた。物理的にも、思想的にも。
ここでまた、「なんでお前はいつもすぐ側に現れるんだ」と質問しても、「お前は私の半分だから」と言って返されるオチは見えている。だからもうそこに関してツッコミを入れる気はサラサラ起きない。
「いいんだよ。これが僕のけじめなんだから」
「死にたがりかよ」
「まだ死ぬなんて決まってないだろ」
「相手が手を出してきても、抵抗する気はないんだろ」
「……お見通しか」
クス、っと。少しだけ笑みを零す皐月。
「逃げないで、全部正直に話せばあいつも分かってくれると思うんだ。なんてったって幼馴染みだし。信用してるし」
「……そうかそうか。お前が信用しているなら仕方が無いか。そういえば、前にも似たようなことがあったな」
「あぁー。確か、君と初めて会った時だよ。美琴に謝りに行くつもりだったんだけど、結局会えなくて終わったやつ」
「あの時の私も会いに行く事自体賛成ではなかったからな。まぁ半身がそこまで言うのならば仕方が無い」
「なんだかんだ言って優しいよな、エトロス」
「私は結構甘いのだ」
普段は表情を崩さないエトロスだが、こういう時に限っては子供のような優しい笑みを見せる。そんなにこやかな顔を見せられては思春期の少年が何も思わない訳もなく。
「……(ドキっとさせやがって)」
「ん?何か言ったか?」
「なんでもないよ」
二人で一つの少年少女は見つめる。
屋上から見える学園都市の景色を。
清々しい空の下で。
2
時は移り変わり。
?月?日、?時。
夜の学園都市内、監視カメラ映像。
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『ちょっと、何なのよアンタ』
『そんなツンツンすんなって。ちょっと今からお兄さんとお茶でもどう?』
『はぁ?ナンパなら結構です』
『そう言わずにさぁ、いいじゃん』
『あんまりシツコくすると痛い目見るわよ?』
『おーおー。あんまり電気バチバチしなさんな、
『……(私を知っている?ただの茶髪ホステス野郎じゃない)!?』
『少しでいいからさ、お兄さんに捕まってよ』
『……なっ!!??いやぁぁぁぁ!!!!』
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