「クリスマスパーティ?」
予想外の案に改めて聞き返すと、マイは笑顔で答える。
「ええ、サンタさんがいつか教えてくれたじゃないですか。楽しそうだと思ってっ!」
「いや、まあ、楽しいものだけど」
「んじゃあ決まりだな!サンタ、とりあえずどんなものか説明よろしく」
流れで決められてしまい、クリスマスパーティの説明を要求される。
「ノリノリだな…。んーと、みんなで豪華な料理とクリスマスケーキっていうケーキ食ったり、ちょっとした遊びをしたり、お互いに持ってきたプレゼントを交換しあったり、後は、サンタクロースが子どもにプレゼント配ったりとか…そんなだな」
宗教的なことはあるのかもしれないが僕にはわからないので、小学校で体験したことをそのまま説明する。
「なるほど。料理は俺がすげーものを作る。遊びはまあなんか適当に考えて、サンタクロースのプレゼント配るってのはサンタの仕事だからいいな。問題はプレゼント交換とやらだが」
ラストが難しそうな顔で腕を組む。
黙っていたリィナがプレゼント交換について質問してきた。
「サンタ、プレゼント交換って、何が楽しいの?」
「そうだな。自分のプレゼントが誰のところに届くか、誰のプレゼントが自分に届くか、考えただけでワクワクするだろ?後、誰のが届いたっていうのをみんなで報告しあったり、自分のがそのまま自分のところに戻ってきたりとか、そういう醍醐味がある。例えば、好きな子のプレゼントが届いたら、もうそれだけで一日ハッピーになれるよな」
「そうなんだ。プレゼントの質の格差で一喜一憂を引き起こしそうだね」
ぐ、わかってるじゃねえか…!
経験上、セミの抜け殻みたいなごみをもらった女子とかは、激しく落ち込んでたしなあ。
「でも、そういうのは事前に知らせとかないとできないだろ?そうなると、何をやるかってのを教えないといけないからなあ…」
何も考えていないようなラストだが、割と考えているようで首をひねっている。
丸投げされると思っていたので、少し意外だ。
「まあ、明日にでも僕がユウリッドさんのところにいって準備物として伝えてくるよ。何をやるかはわからない程度に」
「おお、助かるぜ!」
「私はサンタさんが皆に配るプレゼントを作りますねっ!小物とか、アクセサリーとか、かわいいものを作っておきます!」
うん、マイならきっと素晴らしいものを作ってくれるだろう。
いいぞ、話が進みだしてきた。
「え、えっと、私は…」
自分のすることがないリィナが不安そうな顔で僕を見る。
まあ、今回は持ち味を生かせそうにないしな。
「リィナはパーティの進行役でもやったらいいんじゃないか?ラストもマイも、孤児院の子に囲まれてそれどころじゃないだろうし」
「そ、そうだね。頑張って盛り上げるよ!」
「おう、よろしくな!」
「うん!」
全員の役割が決まったところで、ラストがぱん、と勢いよく手を合わせる。
「よし、決まったな。後、俺の計画では結構でっけーケーキを作るから、結構な出費になるが、大丈夫か?」
「あ、私も良い材料を使いたいので、結構高くつきそうです」
「それなら気にすんな。予算はある」
どさっと、持っていた普通の袋をカウンターに置く。
袋からあふれるようにして、金貨が姿を見せる。
「お、おお!すげえ!」
「クエストの報酬だ。少なくとも500万以上ある。はっきりいって真面目に働くのが馬鹿らしくなるほどの大金だよな」
「冒険者って、すごい儲かるんですね…」
「いやいや、サンタだけだから」
驚く二人を前に、リィナはあきれたようにつぶやく。
「よし、それじゃ明日から準備だな。食材とか材料とかあったら、僕が買いに行くから、なんでも言ってくれ。売り子は雪だるまにやらせるから、よろしく」
「私も、何かあったら手伝うから、なんでも言ってね!」
「おう!それじゃあ景気づけに、飲みに行こうぜ!」
「いいですね!行きましょうっ!」
こいつら、昨日散々飲み食いしたのにまた行くのかよ。
ま、別にいいか。
こうして孤児院でやることは決まり、クリスマスパーティという、季節外れのイベントが開催されることになった。
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