「さて、森についたわけだが」
「もういいでしょ。おろしてよ」
「ああ、ごめん」
「・・・」
見たことない植物と聞いたことのない鳴き声が支配する森ではあるが、やはりどこの世界でも森は森だ。
初めて来たが違和感はあまり感じない。
「んで、お目当てのモンスターはどこにいるんだ」
「もう、勝手なんだから」
ところどころ明かりが差し込む森の中を不機嫌そうなリィナと歩く。
「そういえば、ギルドカードで色とかあったけど、レベルみたいなもんでもあるの?」
ギルドのシステムはよくわからないが、これからお世話になるかもしれないからな。
聞いておきたい。
「うん、強さで色が変わるよ。冒険者じゃないのに、レベルのことは知ってるんだね」
「あ、レベルあるんすか」
そういう概念、あったのね。
スキルはないのに。
「それで、赤の冒険者とか言ってたけど、レベルで決まってるのか?後、数字って出てるのか?」
「そりゃレベルなんだから、あるにきまってるじゃない。私は今56レベル。これでも結構強い方なんだよ」
カードを見せて、ふん、とドヤ顔を決めている。
「へえ、そうなのか」
「サンタはレベルのこと知ってるってことは、自分のレベルも知ってるんじゃないの?」
「ん、まあ一応ね」
「いくつなの?」
身を乗り出して聞いてくる。
一応冒険者だからか、一度負けた相手だからか、興味を持っているようだ。
「えーっと。いくつだったかな」
スマホを取り出して、久しぶりに自分のステータスを確認する。
ユーエン街に出発するときからずっと見てなかったな。
スマホを見て、久しぶりに見たレベルの数字に思わず目を疑う。
「サンタ?それにレベルが書いてあるの?いくつ?」
「んーと…」
始めのころの3週間で50なんてレベルはとっくに超えていたが、まさかここまでとは。
「じれったいなあ。一体いくつなの!?」
「…68かな」
適当に少し上のレベルを言ってごまかす。
「やっぱり私より上なんだ。流石だね。サンタ」
「ま、まあね」
リィナは詰め寄るのをやめて、再び歩き出す。
僕は画面に書かれた本当の数字を、隠すようにして、画面を消す。
「3桁越えとか、オンラインゲームかよ…」
「どうしたの、サンタ?」
「いや、なんでも」
この世界って、何レベあれば魔王と対等にやりあえるんだろう。
もしかしたら本当に、魔王討伐も…
いつの間に上がった数字を思い浮かべながら、リィナの後を追った。
数分歩くと、森の中に開けた広場のような空間があって、真ん中に切り株があって、オカリナを吹く少年が座ったら動物でも寄ってきそうな雰囲気だ。
「おー、すげえ。いいなここ」
「ちょっと休憩しようか」
「いや、あんま休んでる暇もないかもね」
「え?」
奥の見えない茂みの方から、がさがさと何かが蠢く音がする。
「ゲヘヘ…」
「ゲヘ、ヘヘエ」
緑色の体の腰に布を巻いただけの、背を丸めて頭を突き出した姿勢のゴブリンが、茂みから現れて僕らを囲う。
「っ!出たわね…」
「ああ、そして、目的のあの方もご登場だ」
「グヘヘ…」
最後に、なん回りも大きなゴブリンが茂みから頭を出してやってきて、汚い声で笑い声を漏らしている。
「そういえば、僕スライムとしか戦ったことねえな」
「なんで今そんな大事なこと、今言うの…!」
「ゲヘエア!」
一度に5匹のゴブリンが飛びかかってくる。
標的は僕。
殴られたら痛そうな棍棒が、上半身、主に肩から上に容赦なくぶち込まれる。
「サンタ!」
「ゲヘヘ!」
「・・・流石、スライムよりは格が違う
「ゲ!?」
右手でゴブリンの首を掴んで、力を籠める。
一瞬やばい、という顔をしたゴブリンは、暴れる余裕もなく灰となって崩れ去る。
「サンタクロースは絵本の世界の住人だ。そんな絵本の主人公が、こんなとこで死ぬわけないだろ」
一匹がやられ、焦ったゴブリンは一斉に距離をとる。
「うわあ、えぐい…」
「さて、リィナ。一応パーティだから、連携というものをとらないといけないわけだけど。雪をだすと、炎で溶けちゃうし、僕は小細工なしでやるから、リィナは遠慮なくぶっ放してくれ」
ゴブリンが距離を置いたので、僕はリィナに背を合わせ、作戦を企てる。
「わ、わかった!」
「それじゃあ、そろそろラストたちも話が終わってそうだし、さっさと片付けようか」
「グヘエアア!」
大きなゴブリンの咆哮とともに、ゴブリンが飛びかかってきた。
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