翌日。
「さて、今日も行きますか」
今日は僕の第3回戦が行われる。
僕の対戦は2回目で、今、ラストと共に闘技場の前、今日もおっさんの前で情報収集だ。
マイとルドルフはすでに席をとっている。
「おう、あんたか」
「こんにちはおっさん。今日の対戦カードは?」
「赤いトナカイ使い、サンタクロースと、喧嘩屋モーブスだ。今日の倍率は帽子のあんちゃんが1.4倍で、モーブスが1.2倍だな」
「お、なんか僕の評価高くなってる」
赤い帽子とか言われて完全に浮いていた僕の二つ名がついに変わって、少しだけ様になったように見える。
「ここで残ってるやつらはベスト8だからな。運で何とかなるレベルじゃない。実力があるということは認めざるを得ないだろう」
「良かったな、サンタ」
「はいはい。んじゃラスト、いつもの賭けの時間だ。お好きに賭けてくれ」
僕の金なんだが。
しかし、僕自身が自分に賭けることは流石に気が引けるので、賭けるのはラストに任せる。
「おう!おっさん!サンタクロースに100万ユイン!」
「いいぜ、今回はあんちゃんの勝ちはないだろうがな」
金を受け取ったおっさんはとても余裕そうな顔をしている。
今日はラストに勝つ自信があるんだな。
「ま、それは聞いてみないとわかんねえよ。さあ、相手はどんなやつなんだ?」
「喧嘩屋モーブス。大会初参加だが、ルーキーにしては破天荒な戦いぶりと、何も考えず相手に突っこむさまは、もはやモンスターだ。そしてなんといっても、やつは武器を持たないんだ」
「なるほどなー」
「へえー」
「・・・どうした?なんでそんなに反応が薄いんだ?」
僕たちのそっけない反応で、少しだけ納得がいかないといった表情のおっさん。
それに対して、ラストがおっさんに尋ねる。
「いや、まあ素手で戦うってのはわかったけどさ。それだけ?」
「まだあるぞ、そいつは魔法も使えて、手が氷で覆われるんだ。それで相手を殴って仕留める」
「うーん、氷ならいいかな。属性で言ったら、僕と同じだし」
「・・・そんなに自信があるのか?」
おっさんは喧嘩屋というやつによほど賭けていたのだろう。
その証拠として、僕たちの反応の薄さに、拍子抜けしている。
「ああ、武器を使わないって言うのはこの世界じゃ相当なレアケースらしいけど、僕だって素手だし、相手が近距離だけなのに対して、僕は仲間だっている。この環境、どうやったら僕が負ける気がするんだ」
「・・・」
はい、論破。と言わんばかりの僕の意見に、おっさんは返す言葉もない。
「じゃあ、俺たちもう行くぜー。ちゃんと金、用意しとけよー」
僕たちは絶句するおっさんに背を向けて闘技場の中に入る。
取り残されたおっさんは、僕たちに対して、何も語り掛けてこなかった。
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