ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第19話:暇つぶし

カラアレオンのコメットが家族に加わり、一段落したころ。

早速本題に入る。

 

「それじゃあ早速そりを作ろうか」

「ところで赤帽子、なぜ初めからできたそりを頼まなかったんだ。俺なら、最高級のそりを用意できたというのに」

 

ルウシェルが当然の疑問を抱く。

 

「まあ、そうなんだけどさ。お前は知らないだろうが、うちにはそこらへんの職人なんて比にならないくらいの腕のいいやつがいるんだぜ?」

「何、本当か?」

「ああ、目の前に、な、マイ」

 

マイに視線を投げると、恥ずかしそうに微笑む。

 

「えへへ、照れますね。ということは私がそりを作るんですか?」

「嫌だったか?」

「いいえ、全然!むしろ、ぜひやらせてくださいっ!」

 

是非やらせてくださいだって。

自分の仕事もあるのに。

 

「頼んでおいてなんだけど、お前、本当にすごいよな。まあ、頼んだよ」

「はいっ!」

 

本当に面倒くさがらない。こいつは社会人だったらすごい社蓄になるな。

 

「ところで、イメージはどんな感じですか?」

「ああ、そうだな。全体的に赤で、縁の部分は白にしてくれれば後はなんでもいいよ。ルドルフの体に合わせて、4人乗れそうな形状にしてくれ」

「了解です♪」

 

そういって店の中に走っていくマイ。

一度だけ振り返って、僕たちに言う。

 

「設計に入るので、後は任せてくださいっ!遊んできてもいいですよ?」

「お、じゃあちょっと出かけてくる。夜には帰ってくるかも」

「はーい、いってらっしゃい!」

 

袋を担いで歩き出すと、ラストに後ろから肩をつかまれる。

 

「なあ、どこいくんだよサンタ―。俺も連れてけよー」

「スライムのとこに遊びに行くんだけど、来るの?」

「お!面白そうじゃねえか!俺、サンタが戦うとこ見たいぜ!」

 

ルウシェルの片手で立ち上がれなくなるような非力のラストが外についてくると言ってきた。

 

「んじゃあいくかー。今回はルドルフがいないから、ガンガンいくからな。ルドルフ、今日も店番頼んだよ」

 

売り切れの看板をルドルフの首にかけて、コメットの頭に乗せた。

 

「よっしゃ、いってみよー!」

 

 

 

マイは店の中、ラストと僕は街の外へ。

取り残された緑髪の男は、一人残される。

 

「俺は、、帰るか」

「グッグエエアアアァァ」

 

コメットがルウシェルの後ろ姿を見て、嘲笑うかのように鳴いた。

 

 

 

街の外へ出て早10分。

 

「はっはっはっはっはあ!!」

「にゅいいいぃぃぃ!」

 

僕はラストに見守られながら、スライムと戦う。

戦闘スタイルなどは特になく、視界に入るスライムをとことん殴りまくる。

この世界の僕のストレス解消法であり、一つの趣味でもある。

最も、ストレスなんてここじゃあまり感じることは無いが。

 

「サンタ…」

 

ふと名前を呼ばれたので振り返るとラストがひきつった笑いをしている。

 

「なんだ?トイレか?」

「いや、お前、本当に楽しそうにスライム倒すのな…」

「結構楽しいぜ。おっと、ほら、こうやって」

 

仲間の敵討ちとばかりに突進してくるスライムを右手でつかみ、力の限り握り潰す。

スライムは何も鳴かずに、黒い灰になって塵と化す。

 

「な?」

「な?じゃねえわ!怖いわ!お前の方がモンスターかと思うわ!」

「どうせ倒すんだから関係ないだろ。剣の方がよっぽど痛いと思うぜ」

「そんなことねえわ!頭握りつぶされるとか、まじで考えたくないわ!」

 

一応魔王の手下なんじゃねえの?

そいつにまで情けかけてたら、冒険者なんて敵の葬式代だけで生活費消えちゃうよ。

 

「えー、じゃあどうやって倒せばいいんだよ。ラストが手本見せてくれよ」

「仕方がねえな。見てろよ」

 

そういって行くときに持ってきていたダガーを構えて緑色のスライムに対峙する。

スライムはラストに気づくと思いっきり踏ん張って突進の姿勢をとる。

さて、目の前の男はどう戦うのか。

 

ラストは一切動かず、ダガーを構えて腰を低くしている。

このままじゃスライムに突進されて攻撃食らっちまうぞ。

なんで動かないんだ?

 

まさか―――

 

「カウンター?」

 

ラストがニヤリと笑う。

 

「そういうことよ。よくわかったなぐるあああぁぁぁ!!」

 

ドヤ顔でこちらを見た瞬間、スライムの体が顔面に直撃し後方3メートルほどに吹き飛ぶ。

何こいつ、カッコ悪。いやイケメンだけど。

 

「ラスト…」

「くっそ、今のはよそ見してただけだ!見てろ!」

 

姿勢を正して、今度はよそ見をすることなくスライムの突進を目でとらえた。しかし先ほどと同じくして、顔面にスライムがめり込む。

 

「ぐわああ!」

「ラスト…お前、弱くね…?」

 

マイに初めて会ったとき、店には戦力になるものが一人もいないと言っていたような気がしたが、ラストは戦闘力が低レベルの塵レベルらしい。

まあ、自分より背の低いルウシェルに、抵抗もむなしく引っ張られていたし、片手で押さえつけられてたもんな。

 

「くそ!やっぱりだめか。目では追えるんだけどな、体がついていかねえ」

 

お前はジジイか。

 

「どうせ倒すんだからさ、もう気にしなくていいだろ」

「そうだな…もういいわ。今度あのオールバックにでも教えてもらえよ」

 

あいつとはあまり戦いたくないんだが。

後もうオールバックじゃないよ。

 

「まあ、機会があったらね。戦闘はもう無理するな。スライムは僕がいじめるから、お前はいつものようにその死骸でいい薬作ってくれよ」

「言い方がもうすごく汚いな…まあいいか。こいつらにかける情はないしな」

「それじゃあ、もうちょっと遊んでくるから、この袋に落ちたゼリー入れてってくれよ」

 

袋をラストに預けて両手を自由にする。

 

「おう。あんま無理すんなよ?」

「そのセリフはスライムに言ってやってくれ」

 

そうして、それぞれの役割を決めた僕たちは、再び数多のスライムとの激戦を繰り広げた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

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