「すいませーん!遅れましたー!」
「待ちくたびれたぞ!今何時だと思っている!15時だぞ!?もう約束の時間から1時間も過ぎているぞ!」
文字通り地団駄を踏んで怒りをあらわにしているオールバック。
ガチャガチャと鎧が音を立ててうるさいことこの上ない。
「ま、これも作戦のうちよ。昔々、決闘を前にして、わざと遅刻をして相手を油断させた剣の名手がいてな。そいつの真似をしてみたが、効果は抜群だなあ!」
「ええ、そうだったんですか!?すごいです!」
「さすがはサンタ、家を出たときからもう戦いは始まってたんだな!」
「なんだと…?俺は貴様の策にまんまとはまっていたということなのか?くっ、不覚!」
嘘だが。確かに歴史上ではそんな逸話は存在するが、今思いついたから言ってみただけだ。
しかし横にいる2人も、目の前の騎士も信じたように面食らっている。
嘘も騙し通せば真実になるってことか。
「まあ、待たせたことは謝るよ。それより、そろそろ始めようか」
「・・・そうだな。それではこれより決闘を行う!おいお前、俺の前に立て」
「了解っと」
オールバックの正面に立って準備ができると、周りの人々が好奇の目で見てくる。
「お、なんだ。決闘か?」
「あ、あいつあの時ポーション売ってた赤い帽子だ!」
「あいつ戦えたんだな。ちょっと見ていこうぜ!」
僕たちを取り囲むようにしてギャラリーが集まる。
どうやら僕は先日の客寄せでちょっとばかり有名になっていたらしい。ルウシェルの方はわからないが、この赤い帽子が目立つのか、誰も彼の名を口にしない。
「ああ、そういえば僕、決闘とか初めてなんだけど、ルールとかあるの?」
「初めてなのか?良いだろう。教えてやる。開始の合図で決闘開始、終了はどちらかが負けを認めるか、気絶などによって戦えない状態になるまでだ」
「武器とか制限あるの?」
「どんなものでも構わないが、原則として、武器は身に着けられる規模のものなら何でもいい。身に着けられるなら、いくらでも使っていいということになる」
持てる限りなら使い放題ってことね。
それなら、このサンタクロースの袋が役に立ちそうだ。
「回復はいいの?」
「禁止ではない。いくら使っても大丈夫だ。ただし、使うことができるほど余裕があればの話だがな。それだけか?」
「ありがとう、後はいいよ。それじゃあ始めようか」
大体のルールはわかった。袋を左手にもって、構える。
「それじゃあ、合図は…おい、そこの小娘、お前がやれ」
「私、ですか?」
「マイ、よろしく」
オールバックに指をさされて嫌な顔をしたマイだが、それでもすぐに取り繕って僕とオールバックの前まで歩いてきた。
「わかりましたよ…それじゃあ、準備はいいですね?」
「おっけー!」
「いつでもいいぞ」
「それじゃあ、決闘、開始です!!」
「「「おおおおおおおおおお!!!」
いつの間にかできあがった血気盛んなギャラリーは、開始の合図とともに、一気に騒ぎ出した。
ご覧いただきありがとうございます。
1話ごとの字数が短いですが、もし長いほうがいいという方がいましたら、教えていただければ伸ばします。