転生したけど、海賊でも海軍でもなく賞金稼ぎになります   作:ミカヅキ

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と、取り敢えず第1話更新です…。
何か月越しだ、これ…(汗)
今後、もう1つの連載とどうにか折り合いを持たせつつ更新出来ればと思います…。


第1話 ルフィはいつの間にか原作に突入していたようです。

 ━新世界、とある島━

「よっ、と……!」

 ザパァッン………!

 浅瀬(あさせ)に乗り上げた後で一旦船を下り、バシャバシャと波をかき分けながら自身の船を浜辺(はまべ)にゴロゴロと転がっている岩の1つに縄で(くく)り付ける。

「ガルゥ?」

「良し!もう良いよ、ドゥーイ。下りておいで。」

「ガゥ!」

 船の中からこちらを(うかが)っていた相棒の小虎(ことら)、ドゥーイに合図(あいず)を出せば、嬉しそうに船から跳躍(ちょうやく)して来る。

「ふぁ…。やっと着いたね――――。前の島出てから3日か……。」

「ガルゥ…。」

 3日間、ほぼ不眠不休(ふみんふきゅう)で船を操っていた主人を、ドゥーイが心配そうに見上げた。

「だいじょぶ、だいじょぶ。ちょっと眠いだけ…。あぅふ……。」

 ドゥーイを安心させるように片膝を付き、その(つや)やかな毛並みを()でてやりながらも、欠伸(あくび)が止まらない。

 クー、クー

「ん?」

 不意に上空から響いた鳴き声に目を向けてみれば、ニュース・クーが何羽か固まって飛び、島に新聞を運んでいるところだった。

 すっ、と手を上げると彼らも心得(こころえ)たもので、すぐに旋回(せんかい)しながら下降してくる。

「1部ちょうだい。」

 ベリーと引き換えに新聞を受け取る。

「ありがと。」

 クー!

 一鳴きして飛び立っていくニュース・クーを見送り、新聞を開く。

 バササ・・・。

「ヤバッ。」

 新聞に()り込んであったチラシやら何やらが落ちたのを慌てて拾う。

「ん?」

 その中に混ざっていた1枚の手配書にふと目が奪われた。

「へぇ~。ついに来たんだ、ルフィ。」

 手に取った手配書には、麦わら帽子を被った満面の笑みの少年が写っている。懸賞金は3千万ベリー。

 どうやら、いつの間にか兄は旅立ち、海賊となっていたらしい。

「ガルゥ……?」

 ドゥーイが足元から不思議そうな顔で見上げてくる。

「ああ。ドゥーイは知らなかったんだっけ?ほら。あたしのお兄ちゃん。ルフィっていうんだよ。」

 膝を付いて(かが)んでやり、ドゥーイに手配書を見せてやる。

「ガウッ!」

「割と似てるでしょ?双子だから年は変わらないんだけどね。」

(元気そうで何より…。)

 驚いたように小さく()えるドゥーイに笑いながら、久しぶりに目にした兄の笑顔に安心しつつ、モンキー・D・ターニャはその手配書を丁寧に(たた)んでしまい込んだ。

「さて、まずは腹ごしらえっと♪この島は何がおいしいかな?ドゥーイ?」

「ガウガウッ♪」

 機嫌良く食事の出来る場所を探し始めた主人(ターニャ)に、ドゥーイもまた()ねるような足取りでついていく。

 その時だった。

「!」

「ガルゥッ!!」

 ターニャとドゥーイがその場を飛び退()いた直後、

 ドォンッ!!!!

 (すさ)まじい()()が、直前まで彼女たちがいた場所を通り過ぎる。

 バキバキバキ……!!!

 ドォンッ……!!

 その()()により浜辺の防風林(ぼうふうりん)の一部が()ぎ倒され、更地(さらち)となった。

「…港じゃなくて島の反対側に上陸しておいて良かった。ったく、毎回毎回挨拶(あいさつ)代わりに斬撃(ざんげき)ぶっ放すの止めてもらえませんか?先生。」

「グルルルルゥ……!!」

 主人(ターニャ)を守るように前に出、威嚇(いかく)するドゥーイを(なだ)めながら、ターニャが沖合(おきあい)に目を向ける。

「ふむ。(にぶ)ってはいないようだ。(ひさ)しいな、ターニャ。」

「お久しぶりです。ミホーク先生。」

 彼愛用の小型ボート“棺船”に乗った世界一の大剣豪(けんごう)、通称を“鷹の目”。ジュラキュール・ミホークがそこにいた。

「2年ぶりですね。っと、ダメだよドゥーイ!この人はあたしの先生!敵じゃないって!!」

「ガルルァッ!!」

 今にもミホークに飛びかかりそうなドゥーイをターニャが抱き上げる。

(ねこ)、ではないな。(とら)の子か?」

 “棺船”から降り立ち、(きし)に付けながらミホークがドゥーイに目を向けた。

「これでも個体としてはもう大人だそうですよ。ミニマム・タイガーって種類なんだそうです。」

 ガルガルとターニャの腕の中で威嚇(いかく)してくるドゥーイだったが、主人(ターニャ)外敵(ミホーク)が親し()に話をするのを見て徐々(じょじょ)に落ち着いてきたようだった。

「グルル……。」

 まだミホークを胡散(うさん)(くさ)()に見ながらも、最後に低く(うな)った後は静かになったドゥーイに、不思議そうなミホークが(付き合いの長いターニャだからこそ分かる程度の変化しか無かったが)ターニャに尋ねる。

「それはそうと、何故(なぜ)この(とら)はおれを威嚇(いかく)して来るのだ?」

「………先生が、最初に何の挨拶(あいさつ)も無くいきなり斬撃(ざんげき)ぶっ放してきたからだと思いますけど。」

(やっぱり、この人ちょっと天然入ってる…。)

 何とも言えない表情のターニャが返答しつつ、以前から思っていた事を内心で再確認する。

「そうか。」

 一方のミホークは弟子(ターニャ)の微妙な表情を全く気にする事無く、納得した様子を見せた。

「ところで先生、何でこの島に?この海域に強い剣士でもいたんですか?」

 抱き上げたままだったドゥーイを足元に下ろしながら、ターニャがミホークに問う。

 基本的に自由気儘(きまま)に海を流離(さすら)っている人だが、この海域周辺の島は(いた)って平穏であり、ミホークの興味を()くようなものは何も無かった(はず)だ。

「ここから少し離れた場所に、“赤髪”が縄張(なわば)りの1つにしている無人島がある。」

「!シャンクスが?」

 その名を聞いたのも、随分(ずいぶん)と久しぶりである。ルフィ以外の口からその名を聞くのは、およそ10年ぶりだろうか。祖父(ガープ)は、ルフィに悪影響を与えた、としてシャンクスを毛嫌いしていたから、周りの者たちでそれを口にしようとする者はいなかった。

 しかし、それを口にしたのが他ならぬ“鷹の目”ミホークであるならばそれも納得だ。“鷹の目”と“赤髪”の決闘については有名であるし、シャンクス自身も1度ミホークの事を話していたのを昔聞いた事があった。

「そうか、そう言えばお前は()()()()とは兄妹だったな。」

()()()()ってまさか…!」

 思い出したように(つぶや)くミホークの言葉に、ターニャが(かす)かに目を(みは)る。

「“モンキー・D・ルフィ”。あの“赤髪”から例の“麦わら帽子”を(たく)された男だろう。」

 ミホークが(ふところ)から出して見せたのは、先程ターニャ自身も手に入れた、実兄・ルフィの手配書だった。

 そこで思い出す。“原作”では、“鷹の目”ミホークが東の海(イーストブルー)でルフィと接触し、その後で“赤髪”のシャンクスと酒盛りしていた事に。

「…まさか、それをシャンクスに見せる為にわざわざ?」

「………近くまで来たからな。そのついでだ。」

(絶対(うそ)だ……。)

 分かりやすく顔をフイッと(そむ)けて見せたミホークに、ターニャが内心で突っ込む。

 そして確信する。以前から思っていたが、やっぱりこの人クーデレだ、と。

「お前も行くか?」

 何か言いたげな弟子(ターニャ)の視線を振り切るように、ミホークが話題を変えた。

「行くってどこに?」

無論(むろん)、“赤髪”の所へだ。お前も(なつ)かしかろう。」

 その言葉にターニャの心が()れる。

 行きたい、久しぶりにシャンクスたちにも会いたいが……。

久々(ひさびさ)にシャンクスたちに会いたいのは山々(やまやま)なんですけど、今のあたしは賞金稼ぎですから……。」

 そう。“四皇(よんこう)”の配下(はいか)に手を出した事こそ無いが、今の自分は海賊を捕えて海軍に引き渡し、金を得ている。

 もう何も知らない子どもでは無いのだ。

 同業となったルフィならともかく、海軍程では無いにしろ敵対する関係となった自分に会っても困らせるだけだろう。

「……その程度、気にするような男でもあるまい。」

「シャンクスや副船長たちはそうでしょうけど、今の“赤髪海賊団”は大所帯(おおじょたい)ですから。あたしの事を知らない船員(クルー)も多いでしょうし……。中にはあたしを(うら)んでいる人もいるかもしれませんしね。止めときます。」

 賞金稼ぎとして旅立っておよそ2年。ターニャが壊滅(かいめつ)させた海賊団は100近い。中には逃げ()びた後、新たな海賊団に入った者もいると聞く。新世界の海賊は、ルーキーを(のぞ)きいずれかの“四皇(よんこう)”の配下(はいか)になった者がほとんどであるから、ターニャに(うら)みを持つ者がいないとも限らない。

 シャンクス程の海賊がターニャ1人と関わりを持っていたところで()らぐとも思えないが、余計(よけい)摩擦(まさつ)は無いに()した事は無いだろう。

「……そうか。」

 ターニャの意志が固いのを見て取り、ミホークもそれ以上は何も言わなかった。

「先生、今日はこの島に泊まるんでしょう?良かったら食事をご一緒しませんか?」

「…そうだな。久々(ひさびさ)にそれも良かろう。」

 代わりに、とばかりに出されたターニャの提案にミホークも(うなず)く。

 2人と1(ぴき)は肩を並べ、町へと向かった。

 

 


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