転生したけど、海賊でも海軍でもなく賞金稼ぎになります 作:ミカヅキ
ガンッ!
思いっきり頭を打ち付け、痛みと衝撃で一瞬意識が飛ぶ。
「っ・・・・・・・!!!」
あまりの痛みにうずくまって悶絶していると、
「ターニャ、だいじょうぶか!?」
兄の焦った声が聞こえてくる。さっきまで1人で怒って人を置いて行こうとした癖に、根が単純で素直なので心配になったらしい。
取りあえず、気持ちは嬉しいが兄よ・・・・。したたかに打ち付けた患部を思いっきり押すのは止めてほしい。
「うぎっ!」
痛みのあまり目から星が飛び、一瞬息が詰まった。
「お、おれマキノ呼んでくる!」
止める間も無く走って言ってしまった兄を見送り、誰もいなくなった部屋の中で1人で呟く。
「おもいだじだ・・・・。」
声を出すと涙声で酷くつぶれたようになったが、自分としてはそれどころでは無かった。
「ターニャ?!大丈夫?」
兄に状況を聞いたのだろう。駆け寄ってきた女性-マキノが声も無くボロボロ泣いているターニャに尋ねた。
「あだまうっだ・・・・・。」
相変わらず涙声だが、どうやらそれで何となくの事態を悟ってくれたらしい。
「氷持ってきてあげるわ。ちょっと待ってて。」
そう言って自分の店に入っていく女性―マキノを見送り、ひたすらオロオロしているだけの双子の兄―モンキー・D・ルフィに目をやった。
「いてぇのか?だいじょうぶか?」
自分がボロボロ泣いているからだろう、ルフィもちょっと泣きそうになっている。
「いだいげど、だいじょうぶ・・・。」
そう、今の自分には痛みよりもよっぽど重要なことで頭が一杯だったので。
それからマキノが持ってきてくれた氷のうで頭を冷やしつつ(でっかいコブができていた)、状況を整理する。
因みにルフィは、泣き止んだ自分に安心したのか、マキノに諭された為か現在は1人で遊びに出かけている。マキノも忙しいらしく、後で様子を見に来るからそれまでゆっくり休んでいるように、と言い置いて再び店に行ってしまった。
状況整理にはもってこいの状況である。
さて、自分の名前はモンキー・D・ターニャ。現在5歳と3ヵ月。
そこまで考えて確信する。ONE PIECEの世界に転生してしまったのだ、と。
そして思う。どうせなら
さて、痛みが徐々に引いてくると頭の中もすっきりとして前世の自分のこともはっきりと思い出してきた。
前世では大学3年の就活生だった。特に美人と言える程でもないがブスと言われる程でもなく、すぐに集団に埋没してしまうタイプで、小学生の頃から名前と顔を覚えられるのは最後の方、というある意味損な役回りではあった。
まあ、同じようなタイプは他にもいた為、特に浮くようなことも無く、似たようなタイプでグループを作り、学生時代を過ごしてきたような人間である。
昔からアニメや漫画が大好きで、特にそれを隠すことも無くオープンにしてきた。おかげで、似たような趣味の友人にも恵まれた為、そこそこ充実した人生だったと言える。
まあ、最期は就活途中に玉突き事故に巻き込まれて死んだので、そういう意味では不幸だったのかもしれないが・・・・。そこそこ大きな事故だったし、他にも恐らく死者はいたと思うので、自分だけが不幸という訳でも無いだろう。
そこまで考えて、もしかして他にも転生者がいるかもしれない、とちらっと考えたがすぐに確かめる
これからどうするか、について考えたいと思う。
ONE PIECEは特に好きな漫画の1つであり、単行本は全て集め、毎週ジャンプも欠かさず読んでいた。
まず、ルフィの実の妹、という立場になってしまった以上、平穏な人生という選択肢は消えている。祖父がガープなのはまだしも、実の父親が革命家ドラゴンという時点で、海軍に目をつけられることは必至。
もし何もしないまま頂上戦争を迎えた場合、①悪の血を引く不穏分子として海軍(可能性としてはサカズキ)に殺される、②ルフィもしくは
少なくとも自分の身を守れる程度の実力は必要だった。もしかして実力をつけ過ぎてルート①が高くなるかもしれないが、まだ鍛え始めてもいないうちからそんなことを心配しても仕方が無い。やった後悔より、やらなかった後悔の方が強いと言うし。
差し当たって、祖父からの海軍勧誘、ルフィからの海賊勧誘フラグを折りつつ、実力をつけていかなくてはいけない。
取りあえず、修行は祖父につけてもらいながら、いかにして海軍フラグを折っていくかが重要である。
取りあえずプロローグを上げました。詳しい主人公設定は、後々上げたいと思います。気長にお待ちください。