押し付けた者と受け入れた者   作:テフロン

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世界に二人の生き物が生まれた。


プロローグ

 そう、私が生まれたこのリーゼ・マクシア。そして、私がこの世界で生まれるべきではなかったことは言うまでも無かった。

 この自然にあふれた世界に私のような存在―――私のような生き者はいてはいけなかったのだ。ここで説明するなら、この世界リーゼ・マクシアが自然に溢れていようが、溢れていなくても私は生まれるべきではなかったと、そう自分で思う。

 こと、人間の世界において――普通であることは何よりの幸せである。普通に生きて、普通に生活できる。それが何よりも大切である事はきっと間違いではない。普通とは尊ばれるべき個性なのである。

 

 そんなことを言っている普通ではない私。

 結論から述べると、私のせいでこの村は、部族は消し飛んだ。そういっていい。思い出そうとすると記憶の混濁が見られるが、うっすらと思い出せる。

 やはり、異端は一カ所に留まるべきではないのである。それは災いを呼びよせる。類は友を呼ぶとはこの事かと感心せざるをおえないような状況が作り出される。

 私は、どうやら異端を呼びよせる体質を持っているらしい。異常の周りは異状を作り出すのだ。

 

 思えば、産まれてからすでにその兆候は出ていたように思う。私が産まれてから部族には争いが絶えず、天災まで起こる始末だった。

 それを私のせいと思うみんなの気持ちも分からなくはなかった。

 その思う気持ちは――私も一緒だった。

 私が色々と普通とかけ離れていたから。私が普通ではなかったから。そう、こんな子供が普通なわけはないのだ。

 

 だからこそ標的になってしまったのだろう。仇、敵、悪。そういったものととらえられても仕方ないと思った。

 この妥協をするという思考の流れそのものも、もはや普通とはかけ離れている。そう思える、自分の心が普通じゃない事も承知ずみである。この時の私ははっきり理解していた。そして、そんな考えを止める必要を感じなかった事も事実だった。

 

 

 そして、私は村を捨てて出てきた。

 いいや、村を滅ぼして出てきた。

 正確に言えば、何もしたつもりもなかったけど何も無くなった。

 子供一人が存在するだけで滅ぶような村だったのかと言われればそれまでだが、子供一人がいたから滅ぶ村などそこら辺にあるだろう。そう思っていなくもない。

 

 そんなことより早くこの村を出よう。そうしよう。

 

 この世界はもう終わった。次だ、次。このような考えが後に自分を滅ぼすとそう思う事すらないほど、無知だった。

 とりあえず、村からでよう。思考が無限ループに陥ってしまいそうになる頭を緊急停止し、足を踏み出そうとした。

 

 

「だから、足を前に出そうとしているわけだけど……」

 

 

 動きだそうとした。文字通りに前に進もうとした。

 だが、足が動かなかった。体が何かに取りつかれたかのように動かなかった。

 こんな現象は生まれて初めてだった。何が起こったのか、私の体の機能が壊れたのだろうか? いいや、私の体は別に外傷を負っている訳でも病気になっているわけでもないはずだ。私は病気になどなったことが無いのだから。

 おかしい――体が動かないのだから原因は体にあるはずだと、目を配る。

 

 すると、そこには体に付着しているものがあった。

 

 なんだこいつは? こんなやついたか? 脳の中にある記憶を総動員して探しまわる。しかし、どうやっても見つからない。

 ここで一応伝えておくが、私は別に記憶力が悪い方ではないと言っておく。

 確かに私は何かを学ぼうと、覚えようとした事は1つだけしかないため、自信をもって言えるわけではないが、見たことがあるかないかぐらいの判断はついた。

 じゃあいったいこの少女は何者なのだろうか。

 右手で私の服を掴んでいる民族衣装少女を知っている奴いませんかー?なんて声を上げそうになるが、答えてくれる相手が一切いない事を私は知っていた。

 

 ここで叫んでも、一人で独り言をつぶやいているのと変わらない。ここには誰もいない。ここには誰もいなかったのだ。正確には腐敗してみんな消えていなくなった。

 

 

「……連れてけ」

 

 

 未だかつてこのような状況になったことが無い私は、無いような頭を必死にフル回転させて答えを導き出す努力をしようとする。

 でも、そんなことを思った瞬間には答えは出てしまっていた。

 

 少女を見て私は自覚した。

 この子は――私が作り出した。

 ああ、そういうことか……きっとこいつは、そういうことなのだろう。私と同じ。これは私の責任か、捨てて行ってもいいような気はするが、回り回って自分の所に戻ってくる。因果とはそういうものである。

 

 

「ここからどこに向かうかなぁ」

 

 

 独り言のように呟いた声に対して誰も答えはしない。

 そんな跡形もなくなった場所から、一つ産まれて2つの足音が響きだした。

 2つの生き者がいなくなったこの地には、もはや何一つ取り残されたものはなかった。

 




この作品は作者が初めて書いた小説になります。そのままパソコンに置いておくのもあれなので、投稿いたしました。不定期更新になるとはお思いますがよろしくお願いいたします。

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