ZERO 現実ってのは意外性の塊のである。   作:グレル 速蒼

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零は、叶伊 亜希菜 (かない あきな)という人に出会って以降、普通の日常を送れずに、夢かと思う程の出来事に遭遇していた。頭の混乱が治らない零。そんな中、原因である亜希菜から、また会えないかと誘われる。状況整理の為にその誘いをうける事にする。


第2話

2話 叶伊 亜希菜

 

7月30日 早朝

 

んむ?今日はもっと早めに起きてしまったな。5時か…珍しい。さて、準備でもすませるかね。

………。

動けない………。

気づけば阿嘉梨が俺のベットで寝ていた。

なにこれ?というか、いつも寝てるのか?俺が気づかなかっただけなのか?

と、とりあえず起こすか。このままいてもらっても困るし。

零「おい、おきろ。」

そう言って肩を揺らす。

阿嘉梨「もう、……お兄ちゃんの……イジワル……。」

どんな夢見てんだよ。

零「おい、おきろよ。」

阿嘉梨「う、う〜ん。ん?あ、おはよう。」

零「おはようじゃなくて、なんで僕のベットにいるの?」

阿嘉梨「へ?……あ、………。」

阿嘉梨はこの非常事態にようやく気づいたようで顔を真っ赤に染まっている。

零「お、おい。なんか言えよ気まづいだろ。」

阿嘉梨「…あ。」

零「え?」

阿嘉梨はそれ以上は口にせず、無言で出て行ってしまった。結局なんだったんだろう…。

それからしばらくして、俺はこうして朝食をとっているのだが…。

阿嘉梨「………。」

阿嘉梨は頬を膨らましたまま無言の一点張りである。

零「なんで、俺のベットにいたの?」

阿嘉梨「……。」

零「怒ってるのか?」

阿嘉梨「……。」

零「なんか言ってくれよ…。」

阿嘉梨「……なんで。」

零「へ?」

阿嘉梨「なんであんな早くに起きたのよ!あれじゃまるでカップルじゃない!」

零「ツッコむところそこ!?てか、毎日俺のベッドで寝てたの?」

阿嘉梨「う…。」

零「マジかよ。ぜんぜん気づかなかった。」

阿嘉梨「も、もういいでしょこの話は!それより、お兄ちゃんはこの後用事があるんでしょ!」

零「あっ!そうだった。急がねぇと。」

数十分後

零「じゃあ行ってくるな。家頼む。」

阿嘉梨「行ってらっしゃい…。」

ガチャン…。

阿嘉梨「……言えるわけないじゃない。お兄ちゃんと一緒に寝たいなんて。」

零「結局はぐらかされちまったな。後でまた問い詰めるとするか。」

 

午前9時、吾田神駅

 

亜希菜「あら、来てくれたのね。」

零「そりゃあ、行くって言ったからな。」

亜希菜「約束を平気で破る奴だっているじゃない……あと忘れちゃう人も。」

零「それ絶対に俺のことだよな?まだ根に持ってんのか。」

亜希菜「なによ!事実でしょ!」

零「う………ぐうの音も出ない。」

亜希菜「ふんだ!」

零「んで、今日はなにされんの?」

亜希菜「そんな言い方しないでよ。それで、えっと、今日は、その……。」

零「?」

いや、半ば強制的に…おっと、これは勘違いだったな。

亜希菜「でっ、でで、デ、デートをしてもらいます。」

零「う〜ん……は?」

アナタ、なに言ってるの?デートのイミをワカッテらっしゃいマスカ?

零「でっでででデートは知らないな〜。何それ?」

阿嘉梨「デートよ!デート。」

零「なんでまたそんな飛躍したことをしなきゃなんないんだよ……それに、まだ完璧に信じた訳じゃねぇぞ。」

亜希菜「う……だ、だからこそよ!

あなたは私達の事も、これからあなたがやってもらう事も知らない。だから少しでもこちらの事情を知ってもらいたいし、それであなたの記憶が戻ってくれたら、もっと信じてもらえるし……。」

確かに、ここら辺で一度聞きたいことを全て聞いておきたい。

零「なるほど、それなら喜んで付き合うよ。俺もいろいろと知りたいし。」

これはチャンスだ。ここでしっかりと見定めよう。

亜希菜「そう言ってくれると思ったわ。…えっと、どこか、行きたいところある?」

零「え?」

まさかのノープランですか〜。ん〜これは想定外ですね〜。えっと、相手の話をしっかりと、聞ける場所は…。

零「そうだな…喫茶店にでも行くか?一旦落ち着ける場所に行きたい。」

亜希菜「それいいわね。じゃあそれで。」

亜希菜は二つ返事でそう答えた。

テキトーすぎじゃですかね…。

 

喫茶店

 

店員「ご注文は?」

零「僕はカフェオレのアイスで。」

亜希菜「じゃあ私もそれで。」

店員「かしこまりました。」

零「とりあえず、亜希菜についてもっと知りたいかな。」

亜希菜「えっ!そ、そんなこと…こんな場所で言うなんて。あなた変態なの?」

零「そういうこと言いたいんじゃねぇんだよ…亜希菜は、どんな生活してきたの?」

亜希菜「さ、最初からそう言いなさいよ!紛らわしいのよ!」

零「静かにー。喫茶店ですよー。(棒)」

亜希菜「原因はあなたでしょ……もう……えっとね。わたしは昨日言った通り、お金持ちの家庭に育ったお嬢様なの。あなたに出会ったのは旅行していた時よ。

私が欲しいと思ってたグッズが、売り切れちゃってて、どうしようもなくて泣いてた時に、あなたが、そのグッズをくれたの。そのときはとても嬉しかった。それから、旅行中は一緒にいろいろなことをしたわ。そして最後に、約束をしたのよ。」

零「そんなことがあったのか。くそっ、せめて思い出せれば。」

亜希菜「そんなに焦らなくてもいいのよ。これからまだ時間があるから。私も出来るだけ協力するから。」

零「すまん。それでもし本当に待っててくれたのなら、本当にすまん。」

亜希菜「…ねぇ。」

零「ん?なん…。」

亜希菜は俺の肩に手を乗せた。

亜希菜「そんなに自分を責めないで。たとえ記憶がないとしても、私はあなたのことが好きだから。この気持ちは変わらない。」

俺はその言葉にとても安心感を覚えた。そして、その言葉がとても恥ずかしくて、亜希菜を直視出来なくなった。

零「……。」

亜希菜「な、何か返事が欲しいんだけど?」

零「そ、それはまだ出せねぇよ。もっといろいろと知ってから、勢いではなく、ちゃんと返事を返す。」

亜希菜「そう。じゃあ、それまで待ってるわ、ちゃんと返事出してね?」

零「あぁ。」

俺は、少し疑問に思った。こんなにも俺を思ってくれる人がいるのなら、きっとその人との約束を忘れることはないと思う。なのに、俺にはその記憶がない。それどころか、幼少期の記憶が全て曖昧だ。これには何らかの原因があるはず。一体何が、幼少期の俺にあったのだろう。

亜希菜「他に聞きたい事はあるかしら?」

とても楽しそうだな。嘘をつく人間とは思えない。ちょっと揺さぶってみるか。

零「何で俺は言われた通り名前で呼んでるのに、亜希菜は名前で呼ばないの?」

亜希菜「え?そ、それは、その恥ずかしいと言いますか…その。」

零「俺だって充分恥ずかしいんですけど。それに、こんなにも…。」

亜希菜「こんなにも?」

零「いや、何でもない。」

亜希菜「なによ!言いなさいよ!」

こんなにも可愛いなんて言えるわけないだろ!

亜希菜「わ、分かったわよ、じゃあ、その、……零。」

亜希菜はすごく恥ずかしそうにモジモジしながら、上目遣いで俺の名前を呼んだ

零(か、可愛い。マジ惚れそう。いやいや、まずい、これはまずいぞ。このままでは相手の魅力に惹かれてしまう。しかも上目遣いとか、わざとなのか?とにかく持ち堪えろ!俺。)

 

- 亜希菜「私はあなたのことが好きだから。この気持ちは変わらない。」

 

零(くそっ、さっきの言葉もあって余計に意識しちまう。)

今までの冷静さは遠くへ消え、とにかく恥ずかしさで下を向いたまま、頬を赤くしてなにも言えない。

亜希菜「ど、どうしたの、急に黙り込んじゃって。」

零「あっ、いゃ、その。」

亜希菜「もしかして、緊張してる?」

零「ビクッ」

亜希菜「図星だー。可愛い。」

零「う、うるせぇ……。そんな可愛いかったら緊張もするっつの。」ボソッ

亜希菜「え?何かいった?」

零「なんでもねぇよ…。」

亜希菜「ねぇ、あなry……零。」

零「なに?」

亜希菜「零ってさ、結構イケメンよね。」

零「はぁ?」

この俺が?この年になるまで誰にも、お世辞にもそんなこと言われたことがないこの俺が?そんな馬鹿な。

零「なに言ってんだよ。そんなわけねぇだろ。」

亜希菜「そんなことない。もしイケメンじゃなかったら、そのまま関わってなかったから。」

零「それはお世辞か?」

亜希菜「自覚がないのね。そんなにかっこよかったら誰かに告られてもおかしくないのに。」

零「お前は俺の従兄弟か!」

全く、冗談もほどほどにしてくれよ……。

亜希菜「さて、難しい話はこれくらいにしておいて、次はどこに行く?」

零「えっまだ行くの?」

亜希菜「デートって言ったでしょう。」

亜希菜はそう言いつつ目をキラキラさせてこちらを見ている。今は純粋に楽しむとするか。何年に一回あるかないかのイベントだ。

零「じゃあ、そこのショッピングモールに行くか。」

亜希菜「えぇ。行きましょう。ふふ。」

その後、ショッピングモールで行き、適当にぶらぶらした後、あたりはすっかり夕景色に変わっていた。

零「じゃあ、またな…って、今度はいつ呼び出されるんだ?」

亜希菜「その時になったら呼ぶから、心配しなくていいわよ。本当にせっかちね。」

零「いや、その、なんていうか、不安で。」

亜希菜「まぁ、これから何が起こるかわからないんだからしょうがないわ。

詳しく説明してあげたいけれど、永峰さんに当日まで言うなって言われてるから。」

零「すまない。」

亜希菜「ううん。気にしないで。それじゃまたね。」

零「あぁ、またな。」

そう言って彼女は待ち合わせてたリムジンに乗り、帰って行った。とりあえず、悪い人ではないという確信はできた。

俺にかなりの好意を寄せていて、とても無邪気で、それでいて天然で。可愛いかったな…って何考えてんだ。さっさと帰ろう。妹も待ってる。……結局俺が揺さぶられてんじゃん。

 

零 宅

 

零「ただいまー。」

阿嘉梨「おかえりなさい。ご飯出来てるわよ。」

零「おっ、マジか。ありがとな。」

阿嘉梨「今日は、どこに行ってたの?学校じゃないわよね。」

零「ダチと遊びに行ってた。」

阿嘉梨「お兄ちゃんに友達っていたの?」

零「いるわ!コミュ障じゃないんだよ。もう…。」

阿嘉梨「本当に?」

零「本当に。」

阿嘉梨「それは良かった。お兄ちゃん、友達が出来なすぎだから、頼れるのが私だけになってしまうって心配してたから。」

零「いらん心配だ!」

阿嘉梨「そう?」

零「んで、なんで俺のベッドに…。」

阿嘉梨「風呂沸いてるから、入ってきたら?」

零「いや、そのま「入ってきたら?」

零「は、はい。」

結局、俺が風呂から出た後、阿嘉梨はもう寝てしまっていて、俺のベッドに入っていた理由は聞けなかった。なぜそんなにひた隠しにするのだろう?

零「今日はこの辺で寝るか。」

叶伊 亜希菜。…まだ分からない事が多いな。ん?ショッピングモールでの事?聞くのは野暮ってもんだぜ。っなんつって。…誰と会話してんだか。

 

そして、それから彼女からの呼び出しはなく、たまにメールが来る程度に収まっていた。

 

from亜希菜

話題 零君って

零君って、普段どういう生活してるの?ちょっと気になるんだよね。良かったら教えて。

END

 

LINEじゃなくてメールだから、新手の詐欺か犯罪なのか?ってたまに怖くなるんだよなぁ。

 

from零

話題 特にこれといった特徴はない。

そうだな、普段はゲームとか、本とか、あとたまに自転車で少し遠くへ行ったりするくらいかな。

END

 

亜希菜の部屋

亜希菜「いい加減話題に本文書くのやめなさいよ。気づいてないのかしら?」

 

まぁ、そんなこんなのやり取りが続いていた。だが、それから5日ほど経ったある日。また呼び出しがあった。

 

8月4日 朝 車内

 

零「ようやく説明してくれるのか。」

亜希菜「えぇ、これで頭のモヤモヤもなくなると思うわ。」

零「なんか、発明品でも見せられる前のような台詞だな。」

亜希菜「うるさいわね。口塞いじゃうわよ。」

零「それ、酷いところまでいくと犯罪だからね。」

亜希菜「私の口で塞ぐのだから、犯罪にはならないわよ?」

零「えっ?ちょっと、いや、その、こ、心の準備というものが…」

亜希菜「冗談よ、とにかく、気を引き締めてね。」

心臓に悪いよ!冗談でもやめて!

零「あ、あぁ、分かった。」

運転手(前と比べて随分と違くね?そんな数日でこんなになるもんなの?)

零「それにしてもさ。」

亜希菜「ん?何?」

零「体の耐性が極めて強いものってひどくね?それじゃただ単にその空間の中に行けるだけみたいでさ、やっぱりひどくね?」

亜希菜「しょ、しょうがないでしょ…こればっかしは私にもどうにも出来ない事だから。」

くそっ、なんか仲間にあんた邪魔って扱いされそうなポジションだな。神様、どうかもっとなんか付け加えて。

何かを……。

作者神ゴッと松生「えー、どうしよっかな〜。」

いや誰だよ!そんな神様いねぇよ!

ってか、読み方わかんねぇよ!

 

亜希菜家 要塞みたいなところ

俺はこの後の何が起こるのかを、まだ知らない。ひょっとしたら、もうちょっと気を引き締めた方が良かったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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