ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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独自解釈・考察が出てきます。
更に短いです。

その点に注意。


dai roku wa hana wo sagasu ikkou

 かつて、猛威を振るった海賊団がいた。 四海を制したとまで言われたその海賊団は、しかしたったの数日で全滅することになる。

 壊賊病。 一味に蔓延した病の名前だ。

 発症すると高熱を出し、最後には砂となって崩れて死ぬ奇病。

 原因は不明。 だが、海の上で且つ人間しかかからない事。 そして病状が黒水晶病に酷似している事から、恐らく霊応力と器が関係しているのだろう。

 海は地上よりもはるかに地脈の露出部分が多い。 当たり前だ、陸より海の方が広いのだから。 そして、海は陸と違って地脈の力を妨げるモノが少ない。 史実ではアイゼンが地脈とはそういう物理的な物ではない、と言っていたが、それは少し違う。

 

 イボルク遺跡やタイタニア、パラミデスに鎮めの祠。 ワァーグ樹林にローグレス離宮、ベイルド沼野。 地図を見ればわかる事なのだが、その全てが海に面している。

 それこそが、人為的に地脈に近づくために必要な条件。

 キララウス火山はそのまま地脈流に乗っかっているので別枠なのだが。

 

 そして地脈点とは、その地脈の露出部を結んだ円の中心に出来るもののことを言う。

 

 例えばカノヌシが封印されていた鎮めの祠は、聖殿パラミデス、ローグレス離宮、ベイルド沼野、キララウス火山を結んだ円の中心にある。

 例えば聖主の御座は、監獄島タイタニア、ローグレス離宮、聖殿パラミデス、鎮めの祠、キララウス火山、フォルディス遺跡を結んだ円の中心にある。

 ちなみに第四種管理区域とイボルク遺跡を結んだ円の中心はワァーグ樹林だ。

 

 地脈はこの円を経由するように流れ、走っている。

 

 今回私達が進んでいた航路は丁度聖主の御座を中心とした円上そのものだった。

 

 そしてもう一つ。 

 地脈の中に浮かぶ蒼黒い物塊。 

 あれこそが、黒水晶なのだ。

 地脈を流れる力が飽和した時に、その力が凝固する事で形作られる、いわば霊力の塊。

 

 

 さて、元の話に戻ろう。

 壊賊病。 そして、黒水晶病の話だ。

 

 ・海は陸より地脈の露出部が多い。

 ・壊賊病は何故か人間にしか罹らない。 

 ・霊力が飽和すると黒水晶となる。

 ・人間には器がある。

 

 さて、後は簡単だ。

 器が或る人間が海の地脈流の真上に居続ける事でその身に霊力が溜まる。 高熱は急激に上がった霊力によるものだろう。

 そしてその人間の器の霊力許容量が限界に達すると、飽和が始まる。 黒水晶化が始まるのだ。

 もっとも、黒水晶となるにはそれなりの霊力量が必要なのだろう。 こう言ってはなんだが、器の許容量が低い者は水晶へと形を為せずに砂となって崩れ去る。

 

 それが壊賊病と黒水晶病の正体だ。

 

 そして、それを治すサレトーマは恐らく霊力を吸収する花。

 あの毒々しい見た目は真実悪い効果しかないというわけだ。

 

 エレノアやマギルゥ、ベンウィックが一切かかった素振りを見せなかったのは、本来の霊力許容量の高さ故だろう。

 勿論このような原理なので、感染などするはずもない。 1人が発症してすぐに港に向かえば地脈上から外れ、飽和が収まる。 更にサレトーマの搾り汁を飲むことで、霊力が吸収される。 まるで陸に来たから感染しなくなったかのように見えるだろう。

 あぁ、サレトーマがワァーグ樹林に咲いていたのは地脈点だからか。

 餌があるのだ、そこに群生しても不思議ではないだろう。

 

 

 

 

 さて。

 現在ベルベットらはそのサレトーマを探しにワァーグ樹林に向かっている。

 現在倒れているの船員は4人。 感知してみれば、明らかにほかの船員より霊力が高い。

 ここは地脈の露出部から少しだけズレているから大丈夫だろうが、地脈は常に脈動している。

 何かの弾みでソレがズレれば、彼らは(たちま)ち黒水晶と化すだろう。 現在発症していない他の船員も危なくなる可能性がある。

 

 速い所サレトーマを持ってきてもらいたいものだ。

 

 ――ベンウィック。 ちょっと出かけてくるよ。

「へぁ? あ、え? ちょ、なんで今!?」

 ――大丈夫。 すぐに戻るから。

「っていうかどうやって……え? サムサラ姐さんが……歩いた……!?」

 

 些か失敬すぎやしませんかねベンウィック。

 まぁ確かに、長距離を自ら移動するなんて20年ぶりくらいだけども。

 

 ――すぐに戻ってくる。 勝手に出て行ったりしちゃだめだよ?

「いやそれアンタだから! ……はぁ。 いってらっしゃい」

 ――うん。

 

 本当にちょっとした用事だ。

 

 ちょっと行ってくるだけだ。

 ――対魔士の塔、ロウライネに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノーグ湿原を超え、ブルナーク台地を抜ける。

 道中獣や業魔がいたが、その程度にやられるほど私は弱くない。 それ以前に獣は寄ってこないのだけれど。

 そして辿り着くのは、天高く聳え立つ塔、ロウライネ。

 

 この地は遥か昔、聖隷と霊応力のある人間が集う聖地だったらしい。

 それが今は、霊応力のある人間(たいまし)聖隷(どうぐ)を訓練するだけの場所になっている。 もしアルトリウスやメルキオルがこれを知っていて訓練の場にしたとしたのならば、それは彼らなりの決意なのかもしれない。

 

 沢山の聖隷は対魔士がうろつくその合間を縫って塔を登る。 ムルジムのような特異性を持つ聖隷でもない限り、私を感知する事は適わない。 

 人間はまぁ……バンエルティア号を隠した聖隷術のミニver.だ。

 ゆったりゆったり塔を登り、塔の中央部へ到着した。

 

 吹き抜け。 差す陽光が眩しい。

 

 一応警備はあるが、メルキオル・メーヴィンの気配は無かった。 都合がいい。

 

 中央部から少しずれたところまで歩き、地面を触る。

 霊力ぽん。

 

 うん。 仕込み終わり。

 帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――定時連絡。 サレトーマあった?

 

 ――聖寮の結界と強力な蟲の業魔という障害があったが、なんとかなった。 サレトーマも発見したぞ。

 

 ――そう。 じゃ、早く帰って来てね。

 

 ――あぁ。 サムサラ、お前はカブトとクワガタどちらが好きだ?

 

 ――ゲンゴロウかな。 お酒に合うんだ。

 

 ――……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、サムサラ姐さんお帰りなさい」

 ――うん。 誰も死んでない?

「怖い事いいますね!? 大丈夫ですよー」

 ――アイゼン達はサレトーマを手に入れたみたい。 もう少し気を抜かないで。

「マジですか!? よっし、気張れよお前ら!」

「んじゃベンウィックの隠してる心水飲んでいいか―?」

「何の関係があるんだよ! ダメだ!」

「うわーしにそうだー」

「死ね!」

 

 ま、この調子なら大丈夫だろう。

 ん、ザビーダが近くにいるな。 そして――メルキオルも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルベット達が帰ってきた。 そして、サレトーマを渡してくれる。

 彼女たちは2、3ベンウィックと言葉を交わし、すぐにまた出発した。

 アイゼンを、追いかけて。

 




サレトーマってサレとトーマ→リバースって話なんですけど、それよりも背筋の凍る事に気付いてちょっと鳥肌立ちました。


saletomaって綴りにしてみて、リバース(反対)にするとですね。


maotelasになるんですよね。



霊力を吸収、もしくは無効化するサレトーマ。
無属性の聖主。

まさかね……?

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