ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題) 作:飯妃旅立
※独自設定も大盤振る舞いです。お気を付け下さい。
《!》サブイベント 『受け継がれる二刀小太刀8』
カムランがあるイズチ近郊へ向かう途中、補給と休憩の意味を込めてマーリンドへ寄った一行。
その入口で、こちらを目視するやすっとんで寄ってきたのが武器屋の親父。
他の兄弟からの文で、今か今かと待ち構えていたらしい彼は、ロゼを見るなり眼を輝かせて自身の家の中に一行を招待した。
「よく来てくれたな! 俺はサウザンドーンから防具造りの技術を学んだ五男フォーリンド! さぁ親父の造った武器の声がするっていう小太刀を見せてくれ!」
「いいけどテンション高いし声デカいっての! っていうか、他にする事あるの? これが最高の出来上がりだって私でもわかるんだけど」
「フォーリンドさんは防具造りを受け継いだ……って言ってたけど、武器の事もわかるの?」
「いや、兄弟がここまで仕上げた武器となると、俺にできる事は何もない!」
そしてロゼには重々しい防具はいらない。
身軽さこそがロゼの武器であり、防具だ。 避ける事こそが本懐であるロゼは、そもそも当たらない戦闘を行う。
「ならなんで呼び込んだの……?」
「そりゃあ……まぁ、うん。 見たかったからだ!」
「スレイ、行こ? 無駄な時間食っちゃった」
「そうだね……」
「まぁ待てまぁ待て! 呼び込んだのは、お前達に一つ情報をやるためだ!」
ゴホン、と咳払いをするフォーリンド。
そして指を立てながら、こう言った。
「これはとある吟遊詩人に聞いた話なんだがな?」
吟遊詩人と聞いて、ロゼとスレイが止まる。
少し前、メーヴィンの前代のメーヴィンが眠るトリスイゾル遺跡を訪れたばかりだったのだ。
もしやその吟遊詩人もメーヴィンに繋がりの或る物ではないかと、期待に胸を膨らませた。
「なんでもこの世界には天族という存在がいて」
「それは知ってる」
「だから待てって! その天族って存在は、最大まで強化した武器を祝福し、人間じゃ辿り着けない領域まで昇華してくれるらしいんだ。 あんた、導師なんだろ? 心当たり、あるんじゃねぇの?」
「なるほど……確かにコレを祝福すれば、素晴らしい武器になりそうですわね!」
「うん、あるよ」
「本当にあるのか……じゃ、なくてだ。 コイツを祝福して、それで初めて俺達の……サウザンドーンの技を継ぐ兄弟の仕事は終わる気がするんだ。 頼む、ソイツの最後の姿を見せてくれ……!」
頭を下げるフォーリンド。
いわゆる土下座。 DOGEZAの文化。
――スレイ、ムルジムなら祝福できるよ。 他の装備と違って、ソレはね。
「え、ムルジムって、ペンドラゴにいた天族……だったよね」
――うん。フトマユネコ。
「……ロゼ。 心当たりがあるんだけど……やってみる気、ある?」
「そりゃ勿論! スレイの足りないトコ、補うのが私の役目だし。 それじゃ、その心当たりとやらに行ってみますか!」
「おぉ、おおお……! そんで、頼みがあるんだが……」
「無事に昇華で来たら一目で良いから見せてくれ、でしょ?」
「このとおりだ!」
「だから声がデカいって……わかってるわかってる。そんじゃ、また来るよ」
――スレイ。流石にここからペンドラゴは遠いから、地脈間移動を使うといいよ。
「いや、それだとサムサラが……」
――私はこのレディレイクに用があるから。気にしないで。
「……わかった。また、言えない事なんだね」
――え。 ……あー。 うん、そうそう。 言えない事。 あぁ、あとこれ持って行って。
うん。
言えない事だよ。
うん。
「これ……お酒? だいぶ色が薄いけど……。 これも、必要な事なんだね? ……わかった。 それじゃ、行ってくる」
――行ってらっしゃい。
「サムサラ」
「ノル」
――アイゼンに手を出すつもりはない。 安心して?
「……」
「もし勝手に、お兄ちゃんに何かしたら……許さないから」
――はーい。
「ザビーダー? エドナー? 行くよー?」
――信用してよ。 そも、自らの意志によるドラゴン化は管轄外なんだってば。
「……そうかよ」
――エドナも。 そんなに怖い顔しないで、さ?
「……」
――じゃあ、私はもう行くから。
振りかえらずにトラクタービームで浮かび上がる。
うーん、本音だけで生きていくにも、アイゼンやベルベットのようにはいかないものだ。
やっぱり私はのらりくらりと誤魔化しながら生きていた方がいいのかな。
「いらっしゃいませニャーっておお! お久しぶりですニャ!」
――あれ、ちゃんと覚えていてくれたんだ。
「勿論、お客様の事は誰1人として忘れませんニャ! あのお酒も、1100年間保存して置きましたニャ!」
――素晴らしい。 パーフェクトだねこにん。
忘れている、もしくは消費してしまったのならクレームの1つでも入れて見ようかと思っていた腹に、コレ。
私の中のねこにんの評価は鰻登り……いや、ねこまっしぐらである。
――前回と同じく『四つ腕の青鬼』『
「まいどありがとうございますニャー!」
さぁ……久しぶりの酒盛りだ。
これが最後になる事は無い。 けれど……お別れの意味は、込めてある。
戻ってきたら、一緒にお酒を飲もうね。
サムサラがPTから外れたスレイ達一行は、久方ぶりの地脈間ワープを使用し、皇都ペンドラゴに来ていた。 アリーシャに一緒に行かないと断った手前、鉢合わせる可能性も考えなくは無かったのだが、今回の戦い……あのドラゴンとの戦いで危機に陥ったロゼの戦力強化の為にも、ロゼ本人含めて天族達が推奨した事で踏ん切りがついたようだ。
「この匂いは……スレイ、お酒を持っているのかい?」
「え? あぁ、地脈に入る前に、サムサラが持って行けってさ。 ……そういえば、このお酒……前に、サムサラが儀式に使ってたような」
「儀式?」
儀式、という単語に反応するミクリオ。
例え旅が終われども、遺跡好きという根幹の部分は変わっていない。
「追悼と祝杯……だったっけな。 確か、フォートン枢機卿と対決する前くらいに」
「フォートン枢機卿……そういえば、グレブガンド盆地にはフォートン姉妹に由来する村があるんじゃなかったか? ペンドラゴの蔵書に、そう記されていたと思ったんだが……」
「……多分、それだ。 ミクリオ、ロゼの武器の祝福が終わったら……帰り道は歩いて行こう。 グレイブガント盆地にあるっていう、その村に行く必要があるはずだ」
「……なぁ、スレイ。 ずっと気になっていたんだが……君は、その……サムサラの不可解な行動について、何か思う所はないのか? 僕達の行動だけじゃない。 ヘルダルフやサイモン、憑魔たちの動きまで先読みしたかのように結界を張ったり、身を隠したり……まるで、未来を知っているかのようなあの行動に」
それは、同じく何かを知っていて話さない――話せないライラとは違う、不信感。
そもそもがエドナが連れてきた程度しか関わりの無いあのノルミンが、何故かスレイ達の動きを知り尽くしている。 非力だの弱いだのと本人……本ノルは言うが、彼女の扱う術はスレイたちの神依時の天響術にさえ匹敵する威力だ。
今まで40近いノルミンに会ってきたが、誰もが一点特化な存在で、自分から戦うような者は1ノルだっていなかった。 強いていえば憑魔化していたノルミン・アタックがそうと言えるかもしれないが、本人の意志ではない。
サムサラ、という名前も気になる。
他のノルミンは皆、ノルミン・~~という名前であるのだから、サムサラにもそういう名前があるのではないか。 例えば……ノルミン・スロウスみたいな。
何故それを明かさないのか。
なぜサムサラと名乗っているのか。
「ハハ……正直な事言えば、思う。 サムサラは俺達に全く心を開いてないから、誰よりも距離を感じる。 けど……ちょっとコレ、失礼になっちゃうんだけど……」
「今、僕以外誰も聞いてないよ」
「……サムサラはさ。 なんていうか……無害だから」
それは、導師の顔だった。
人々を救う導師。 導く者の顔。
大局を見据えたうえで、『サムサラ』という個人は人間に害が無いのだと、導師スレイは断定していた。
「無害で……それで、生き物の味方だよな。 いや、サムサラ風に言うなら魂の味方……かな? 俺の仕事が生かす事なら、サムサラの仕事は多分……」
「多分?」
「俺が生かせなかった魂を、もう一度生まれられるようにしてあげる事なんだと思うんだ」
この、導師一行という一つのパーティを預かる、謂わばリーダーという立ち位置にいるスレイは、何もサムサラという存在の全てを頭ごなしに受け入れていたわけではなかった。
彼なりの目で、彼なりの考えでサムサラという一個存在を観察し、その上で提示される『試練の様な物』を受けていた。
各地に会った試練の塔。 サムサラは、それそのものの様な存在なのだと。
ならば、やることはただ一つ。
試練に合格できるよう、やりきるだけだ。
「……君は本当に……馬鹿なのか、頭が良いのかわからないな」
「ミクリオこそ人の事言えないだろ? ずっとサムサラ、肩に乗せてたんだし」
「あれはっ! あれは勝手に乗ってくるから……」
「普通、全く信頼してない奴を頭の横になんか置かないよ」
「……それはそうだが……」
スレイこそ、ミクリオこそと言い合う2人。
その2人を見て、普段はどこかの誰かの傘にぶら下がっている男が、腕を組みながら云々と頷いていたり、しなかったり。
《!》サブイベント 『受け継がれる二刀小太刀9』
「それで、あの子に言われて私の所に来た、ってワケね……はぁ、全く。 いつも唐突なんだから……」
「えっと……ごめんなさい?」
「いいのよ。 それがあの子の良い所でもあるのだし……。それで、武器の祝福だったわね。 見せてもらえるかしら?」
「あ、うん。 これなんだけど……」
ロゼはソレを取り出す。 導師一行であるとはいえ、曲がりなりにも神聖な教会の中で、ソレを出す。
ソレ――二刀小太刀クロガネ+10は、禍々しいオーラを放ちながらも、穢れを一切放出していない。 それでも、ムルジムは一瞬だけたじろいだ。
否、威嚇したと言う方が正しいか。
だってそれは、自身の主であるシグレ・ランゲツを殺した太刀と――余りに似ていたから。
「なるほど……だから私の所に持ってこさせた、ってワケね。 わかったわ。 祝福……してあげる」
思う所は多々あった。
何故ならば、コレは怨敵の獲物に他ならない。 ましてやあの大太刀が、二刀となっている。 いや……大太刀の残りが、この二刀だった。
それがわかってしまう。 ムルジムにとって、大切な思い出を斬った者を思い出させる。
これは、シグレに対する裏切りではないのかと。
だが、同時にこうも思う。
シグレは強い者と闘いたかった。 そのために自身に枷をつけさせてまで、戦いを楽しんでいた。
そのシグレを殺すことが出来た大太刀と同等のコレに、枷の逆である祝福を授ける。
それはある種――彼が追い求めた最強を、彼が戦いたかった最強を創り出すに等しいはずだ。 最硬でも、最優でもない――最強を。
――シグレ・ランゲツは、もういるよ。
「!」
「ムルジム?」
声が聞こえた。
渦を巻く泥沼の中に鈴を入れたような、そんな声。 唐突な声。
不死と同じ願いから生まれた、輪廻のノルミンの声が。
「いいえ……なんでもないわ。 さぁ……やりましょう」
もういる。
もう、いる。
そうか。
もう、いるのか。
「……終わったわ」
「え? 嘘、はやっ!」
「祝福なんてそんなものよ……けど、銘は与えたわ」
――どこにいるかは、聞いたら教えてくれるのかしら?
――あれ? 交信のやり方教えたっけ? ……ま、いいや。 どこにいるかっていうと……ペンドラゴにいるよ。
――……あなたは。
「真刀・黒鋼……なにこれ、さっきと全然違う……」
「それが祝福銘というものよ。 ……じゃ、私は用事があるから……この辺りで失礼するわね」
「え? さっき暇だって」
「今出来たのよ。 急用がね」
――言っておくけど、性格はそのまんまじゃないし、強さもそこそこだよ?
――別に、いいわよ。 そんなこと気にしないわ。
――……そっか。 じゃ、ヒント。 彼は――光を意味する名前を持っていて、
――……それは、あなたの差し金かしら?
――まさか。 そこまでの権限は私には無いわよ。 買被り過ぎないでほしいわね、誰もかれも。
――あら。 初めまして。
――ええ、初めまして。
ムルジムは見つける。
残念ながらその
そして彼の属する
「こだち、ね……。 これはどっちのセンスなのかしらね」
――私じゃない。
――私じゃないわ。
地の主として、彼らの旅に同行する事はできないけれど。
せめて彼がこの地に居る間は、共に居ようと思うムルジム。
その彼と会話を交わせるようになるのは、存外近い未来の事だったりもする。
真刀・黒鋼を入手した。
所で真刀ってマガタナかな、シントウかな。