ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題) 作:飯妃旅立
1.捏造・独自設定
2.オリ要素・オリ主要素強め
3.回りくどい。
大の字に、仰向けになったザビーダの横に座る。
スレイ達はもう行った。 ジークフリートは彼らの手に渡った。
私はデゼルを相手取る事が出来ない。 本来はスレイもそうだけど、この場に限って言えば……ザビーダを加勢するという名目があれば、それが出来たのだ。
歴史は史実通りに進む。
もう止められないし、止める気もない。
ない、が。
「……アンタはいかねェのか? サムサラサンよ」
――行っても……何もできないから。
「……そうかよ」
アイゼンにも、フォートン枢機卿にも、そしてデゼルにも……。
私は干渉できない。
「自分の流儀を貫く……流儀同士がぶつかりゃ喧嘩になる……」
――何か思い出した?
「……さぁな」
そう言う意味では、今のデゼルは流儀を持っていない。
自らの流れを自ら決める意思こそを流儀というのなら……その身の感情で事実へ蓋をかけてしまった今のデゼルに、それはないのだろう。
同じくメルキオルに使役されていた彼女もまた……流儀と呼べる物は無い。
「……あんたは、情とか無ぇのか?」
――あるよ。 けど、人間ほど激しい物じゃない。 天族達にも劣る、小さな感情。 フェニックスが激情の天族だとすれば、私は鎮静。 カノヌシに鎮静化されるまでもなく……私はやるべき事のみに向かって生きている。
「……仲間を、見殺しにする事が……やるべき事かよ」
――そうだよ。 最終的には……あなた達を看取り、戻し……巡らせる事が私の使命。 それが早いか遅いか、明日が何万年後か……それだけの違い。
それが、異物としての使命。
本来『サムサラ』というノルミンは、地下深くに眠っているはずだったけれど……。
誓約の代償と、ノルミンとしての使命は奇しくも重なっていて。
結果私はフェニックスと共に膨大な年月を生きて、その営みを観測してきたのだ。
フェニックスはそんなつもりないんだろうけど。
「そりゃあ……生きてんのか?」
――死んでるんじゃない? サムサラは生きているのかもしれないけど……
「俺に生きているかどうかを聞いて於いて、あんたが死んでたんじゃ……世話無ぇな」
――自身が自身で無くなる事を、死と呼ぶ。 その命尽きる時は戻るという。
「けど?」
――……一番最初はフェニックスが。 その次は、ジークフリートが。 その次はアイフリードが。 私を殺してくれた。 死んでいた私を殺して、巡らせて……私は再びこっちへ来れた。
彼女に付けられた、そして私が思いだした真名。
「殺す……」
――宛先不明の復讐を否定する気も無いし、止める気も無い。 デゼルの命もサイモンの命も、なんならヘルダルフの命だって……等しく、同価値だから。
「……まぁ、そこは俺も同じだな。 だからジークフリートを惜しまなかった……」
ザビーダがアイゼンのためとジークフリートの弾丸を温存しなかった理由。
簡単だ。
憑魔となった奴のプライドを守る為に殺す。 そこに仲間だったとか知らない奴だとかいう貴賤は無く、例えほかに手段があるのだとしても、それは関係の無い事なのだ。
プライドを守った結果なんて、見ていないのだから。
「あぁ……アンタ、戻すためなら過程がどうであれ関係ないんだな」
――そう。 だからこそ、本人以外の意思によるドラゴン化が許せない。 無理矢理にこの世界に引き留める行為は……唾棄すべきもの。 テオドラも、シルバもね。
逆に言えば、ビエンフーやアイゼンは違う。
それを呪いとしていたかは分からないけれど、穢れの蓄積を容認していたのなら……それは私でどうこうすべきことではない。
濁り無き瞳のデゼル。
史実では自ら死を選ぶ彼が……この世界で、それを選ばない可能性は限りなく低い。
中途半端に流され続けた彼が、ようやく手にできた流儀を手放すはずがないのだから。
「!」
――ジークフリートは、役目を果たせたみたいだね。
「……馬鹿が……」
こぽこぽと、泡が昇って行く。
下から上へ。
穢れた泡が、穢れを落として登って行く。
「……ここは」
暗い暗い、海のような場所。
全てが流れ込む、戻ってくるための場所。
「……」
「あなたは、巡る」
「!」
この場所に魂がある私は普段喋ることが出来ない。
耳も聞こえないし、目も見えていない。
味覚と触覚はあるから十分だけれど。
「でも、感情は許容限界に達していない。 故に
「……アンタは」
「ラファーガはとっくの昔に戻っている。 あなたも戻った。 そして全てを置いて、またあちらへ行くのよ」
デゼルが私を見る。
その開いた瞳で……睨みつける。
「なるほどな……オレの事情も、ロゼの事も……いいや、スレイの事でさえ知ってたって事か。 オレと会う前から、全て知っていて……何もしなかったな、てめぇ」
「そうね。 風の傭兵団が風の骨へと転ずる事件も、ロゼが戦争孤児となる事件も……全部知っていたわ。 これからスレイがどういう道を辿るのかも、知っているわ」
ベルベットの事もライフィセットの事もロクロウの事もエレノアの事もマギルゥの事もアイゼンの事も……全部全部知っていて、何もしなかった。
気付いたらノルミンに宿っていた
「……オレはもう行く。 てめぇの言う通り、全てを忘れて……また巡るんだろう。 けどな」
この場所に戻ってきた魂は皆、諦めたような口で私を諌めるか、怒気を露わに私を罵倒するかの2択だ。 そして、過去幾人かの例外があった。
「けど、なにかしら」
「お前もいつか来い。 来ねぇんなら……あいつらごと、俺が鎖で引きあげてやる」
ニヤりと、獰猛な笑みを浮かべるデゼル。
どうやら彼も例外のようだ。
即ち――私を殺そうとする者。 残念ながら彼自身にその力は残っていないが……これは、ロゼ辺りに殺されてしまいそうだなぁ。
「楽しみにしているわ。 おやすみなさい、デゼル」
「じゃあな」
「サムサラ」
――何、スレイ。
「サムサラはザビーダと一緒に旅をしてたんでしょ? その……サムサラもやっぱりデゼルの事、知ってたの?」
――うん。 知ってたよ。
「……そっか」
――怒らないの? なんでもっと早く教えなかったんだ、って。
「……フォートン枢機卿の時もそうだったけど……言えない理由があったんでしょ? それがどんな理由なのかは俺にはわかんないけど……サムサラにとって大切な事なら、」
――残念だけど、そんな大層な理由じゃないよ。 本当ならもっといいやり方があったかもしれないのに、私は近道を選んだだけなんだから。 近道を選んだ結果、あなた達に真実を教える事が出来なくなったの。
「……サムサラ?」
――ごめん、なんでもない。
エレノアには後悔が無いと言ったけれど……。
サムサラはそうだけど、ただの人間でしかなかった
皮肉な話だね。
「よくわかんないけど……もし、サムサラが真実をデゼルやオレ達に教えていて……今日の事を、オレは防げたのかな……」
――それはわからない。 私自身がifの存在だからこそ、他のifを観測する事ができない。 けれど、それが出来たとして……デゼルは何をしたと思う?
「今日の事を、防いでいたら……」
――今日にいたる前か、後か。 どちらにしろデゼルは自死を選んだんじゃないかな。 自らのせいで大切な物を失ったとか、利用したとか、貶めたとか、自責して……自死する前に穢れていたかもしれないね。
「憑魔に……なっていたかもしれない……」
――そう。 『かもしれない』。 満足できずに、自らの意思を無くしてスレイ達に襲い掛かって、スレイ達を傷つけて……体にも心にも傷を負わせて、浄化されて。 それで満足できると思う?
「……ううん。 思わない」
――満足した、って言ったんでしょう? ならいいんだよ。 その生で、満足できたのなら……それが幸せ。 私達に介入できる余地は無いよ。
「……そう、なのかな」
――私とあなたとでは死生観も世界観も違うのよ。 あなたはあなたの答えを得ればいいわ、スレイ。 年齢は関係なく、答えが出るまで大いに悩みなさい。 そして、答えが出た後は更なる事を悩みなさい。 悩みを無くした時、人間は死ぬのだから。
「……なんかサムサラ、今お姉さんっぽかったよ」
――それは普段が子供っぽいと言いたいわけだね?
「う……うん」
――まさか素直に認められるとは。 やっぱそういう所もベルベットに似てるね。
「ベルベット?」
――1100年前の災禍の顕主の名前。
「え!? オレ災禍の顕主に似てるの!?」
――身長はスレイの方が5cm高いけど。 よかったね。
「何が!?」
名の意味を、混沌と濃紺の温もり。
騒ぎ奉る導師。
なるほど、賑やかという点ではよく似ている。
ならばやはり、どちらもが――。
ザクロスは描きません。 考慮もしません。
あくまで原作準拠です。 といっても公式設定集にすら反する部分がありますが。
アニメとゲームは違う世界線だと考えているので、よろしくお願いします。