ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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最近更新頻度落ちてますね……頑張ります。
また刻んでます。 あと、いつも通り捏造設定独自解釈多々です。

あとセリフも多目です。


dai san jur hachi wa akai mizu wo ten ni sasagu

 

 私が居るので地脈間ワープを使うことが出来ず、カンブリア地底洞をまた戻っていく一行。 疲れるのなら置いて行ってくれていいといったけれど、やはり許してはくれなかった。

 

「サムサラ、君は何故海賊帽を被っているんだ? 1000年前に大暴れしたという大海賊アイフリードと何か関係があるのか?」

 ――昔、アイフリードの船にいたのは事実だよ。 途中で降りたけど。

「そうだったのか。 なら、その帽子はアイフリード海賊団の……?」

 ――ううん。 この帽子自体はもっと昔から使ってる。 諸島を出た頃だから……ディスティニー・ドーン……5万年くらい前かな? もっとかも。

「ディスティニー・ドーンは2000年前だろう? ……いや、その時代を生きてきた天族の言葉の方が正しい、か」

 ――ゼンライには聴かなかったの?

「ジイジは、余り昔の事を話したがらなかったんだ。 だからイズチのみんなに知っている事を聞いたり、天遺見聞録から考察したりしていたのさ。 スレイと一緒にね」

 ――ゼンライは永遠に変わらない幸福を求めていたから……過去の事は話したくなかった……ううん、外界の事も本当は話したくなかったんだろうね。

「……うん。 そんな感じだった。 でも、僕とスレイがイズチを出るときは……しっかり、背中を押してくれたんだ」

 ――子供の門出を祝わない親はいないんじゃない? 

「……そうだね。 イズチのみんなは、家族だから……」

 

 私も戻ってきた子供達を祝福して送り出すものだ。

 もしそれを祝えない親だとしたら……それは、己が欲に苛まれた憑魔という存在だろう。

 

「そろそろペンドラゴだ。 雑談はこの辺りにしておこう」

 ――そうだね。 

 

 火の試練神殿を越えたスレイは、一層強くなっていた。

 身体も、心も。

 けれど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨の降りやまぬ皇都ペンドラゴ・騎士団の詰所にて、スレイとセルゲイが話し合っている。

 私は詰所を出て、1人で雨に打たれて空を見上げていた。

 こういうどんよりとした天気は嫌いじゃない。 降り注ぐ雨もまた、あの船で感じた水飛沫を思い出すようで心地が良い。

 例え領域による雨だとしても、だ。

 

 海賊帽から、ぬぅっと赤い瓶を取り出す。 猪口も一緒に。

 残り少なくなった、懐かしきイリアーニュの赤葡萄心水。

 

 これから死にゆく彼女を、私は救うことが出来ない。

 誓約の縛りは彼女を重要だと断じたらしい。

 だから、彼女の領域に――これを捧げよう。

 

 誰かさん(わたし)の世界では、しばしば赤葡萄心水は『血』に例えられた。

 なら、彼女を愛した2人の姉の想いの涯に――これを注ごう。 

 

 きゅぽん、と栓を抜いて、とくりと猪口に注ぐ。

 領域によって降る雨には穢れは含まれていない。 ただ、悲しみと苦しみと、そして2人の姉を愛した彼女の心が沁みわたっている。

 

 猪口に注がれた赤葡萄心水へ、雨が落ちる。

 栓を抜かれた赤葡萄心水の瓶へ、雨が落ちる。

 

 ――乾杯。

 

 瓶に栓をしなおしてから、猪口を一気に煽る。

 薄まった赤葡萄心水はお世辞にも美味しいとは言えない。

 この世界の雨は不純物がほとんどなく、そのまま飲んでも差し当たっての障害はない。

 つまるところ、ただの水に近いのだ。

 

 水で薄めた心水が美味しいわけがない。

 

 でも、これをあの2人の姉に贈るのは……せめてもの反抗に、成り得るかな。

 

 赤葡萄心水の瓶を海賊帽にしまう。 勿論猪口も。

 私の海賊帽の中という、ある種の聖域に1100年貯えられ続けた酒気が、周囲の穢れを一時だけ排除しているのを感じた。

 

「あ、サムサラ外にいたのか。 風邪ひくよ?」

 ――スレイ。 話は終わった?

「うん。 ……? サムサラ、何かやってた? なんかここだけ凄く空気が美味しいっていうか……すぅ……はぁ……。 うん。 穢れが少ない……のかな?」

 ――驚いた。 そこまで感じ取れるようになったんだ。 まぁ、一種の儀式みたいなものだよ。

「儀式? それって、天族に伝わる~みたいな奴?」

 ――追悼と、祝杯。 人間もやっている事だよ。

「お葬式……みたいなもの?」

 ――そんな感じ。 

 

「スレイー? いくぞー?」

「スレイ! って、サムサラ。 そこにいたのか……ほら、乗って。 行くよ」

「今いくー!」

 ――あとスレイ。 私は風邪、引かないよ。

「何故僕に言うんだ……」

 ――あ、間違えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見張りもいないとか、罠っぽすぎるんだけど……」

「けど、これなら思いっきり暴れられる」

「ふふっ、言うねぇ~」

 

 神依状態で思いっきり暴れたら地下神殿なんて簡単に壊れそうだけど……。

 よく史実では崩れなかったなぁ。

 

 ――来た。

「来たぞ!」

 

 領域が展開される。

 だが、スレイは秘力と――己を見定める事で、それを破った。

 まやかしは心の弱い者、隙のある者に付け込む術だ。

 サイモンのものとは違う、領域によってのみ天族と導師の繋がりを断ったように見せるソレでは、己を固めたスレイの目は晦ませられない。

 

「酷い穢れだ……。 枢機卿についているのは……まさか、マオテラス?」

「すぐ近くにいるネコの真似をしまーす! Near(ニア)~!」

 ――凄く遠い所で鳴った音の音階は?

far(ファー)! ですね!」

「サムサラ、甘やかさない。 っていうか僕達に聞こえないと何も意味ないよ?」

 

 じゃあ何故私が交信したとわかったんだ……。

 

「ライラがサムサラの方を見たんだから、誰でもわかるさ。 それより、行くよ」

「ちっ、ノルと同じ思考回路だったなんて……」

「あれ? デゼル……笑ってない?」

「……何の事だ」

「二度ネタだけど、遠くにいるネコの鳴き声は……ふぁぁ~」

「ブフッ」

「やっぱり!」

 

「なるほど、論理的だね。 めずらしく」

 

 後ろの3人何も聞いてなかったけど大丈夫なのかな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤い石版……? これがこの神殿の鍵になるのか?」

 ――スレイ。 任せて。

「へ?」

 

 先日憶えた霊力の波長を扉に込める。

 この行為は誓約に触れない。 だから、彼らが彼女へ辿り着くまでは存分に支援できる。

 

「開いた!? 俺、何もしてないのに……」

 ――交信術の応用。 いうなれば、あの扉と会話して開いてもらった。 そんな感じ。

「そんな事が出来るの!? 遺跡と会話するって……なんかカッコイイな!」

「遺跡と会話する、だって? どういう事だ?」

「サムサラがいつも俺達と喋ってる術を、あの扉に向けた……って事でいいんだよな?」

 ――あってる。

「それで、扉に開いてもらったんだって!」

「うわぁ……それ、一生懸命機構を作った人大号泣じゃん……。 つまりサムサラにはこういう仕掛けとか、意味ないって事?」

 ――霊力が絡んでなければ無理だよ。 ヴィヴィア水道遺跡とか、完全に霊力無しで作られている遺跡は私じゃ無理。 非力すぎてレバーも動かせないし。

「力弱すぎでしょ……。 つまり、サムサラ対策をするなら物理的な仕掛けを用意しろ、って事か」

「……わざわざサムサラ1人の為だけに仕掛けを用意する奇特な奴がいるとも思えんが」

「そうだった!」

 

 昔、1人だけいたような……。

 

 赤、青、緑、黄と問題なく開き、途中バーニングや宝箱を回収しつつ、最奥部までほぼ一直線で向かうことが出来た。

 久しぶりに役に立った気がする。 アイゼン達と一緒に居た時含めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――それじゃ、私はここで待ってるね。

「え?」

 ――私は誓約で、この先には行けない。 たとえどんな結果になったとしても……私はこの先に進む事は出来ない。

「誓約……サムサラも?」

 ――遥か昔に行った誓約。 一度も覆すことなく、一度も覆そうとは思わなかった誓約。 だから、私はこの先に行かない。

「……そっか。 じゃ、行ってくるよ」

 ――うん。 

 

 霊力で扉を開ける。

 

「……」

 ――デゼル?

「……前々から思っちゃいたが……お前、なぜ瞬きをしない?」

 ――デゼルと一緒だよ。

「!」

 ――まばたきの風さえも感じ取れるとは思ってなかったけどね。

「……そうか」

 ――さ、早く行って。 あなたがいないと、彼らが石になっちゃう。

「……そうだな」

 

 まばたきの風って……デゼルはいつもそんなものまで感じ取っているのかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一刻程……いや、それ以下かもしれない。

 悲痛な慟哭と、狂い笑いが響いて……彼女の領域は消えた。

 

 従士であるロゼによって、カノヌシの流れ――鎮静によって、その命が絶えた。

 浄化されることなく、戻ったのだ。

 

 そして、彼らが少しばかり沈んだ顔で出てきた。

 

「サムサラ……」

 ――おかえり。

 

 悔いはある。

 けれど、同時に決意も秘めた瞳。

 

 もっと俺に力があれば、か……。

 

 スレイにどのような力があっても、あの手の人間は『救う』事では変えられない。

 かつてのメディサがそうであったように。

 あるいは、モアナと同質の純粋さを持つスレイと共に在る事が出来たのならば……『救われる』事は、出来たのかもしれない。

 無意味なIFだ。

 

 私がこの先に進めなかった時点で、彼女の心は決まっていたはずなのだから。

 

「サムサラは……石になった人を元に戻す事は、出来ない?」

 ――聞きたいことはそれ?

「いや……違う。 サムサラは全部知ってた……フォートン枢機卿の事も、セルゲイの弟たちの事も。 知っている上で……教えなかった」

 ――そう。 この先に進まなかったのは誓約だけれど、教えなかったのは私の都合。 流儀にも満たない、ただの選択。

「――そっか。 なら、俺が今サムサラに聴く事は……何もないよ」

 

 スレイが顔を上げる。

 なんて強い子供なのだろうか。

 ロゼよりも、もしかしたらベルベットよりも……強くて、脆い。

 

 どちらも自らを犠牲にする、なんて考えは持っていない。

 でも、周りから見れば……どれほど恐ろしい存在に見えるのか、どちらも気付いていない。

 

 ――スレイ。 フォートン枢機卿……彼女の本名は、神聖なる断罪の光(リュネット・フォートン)。 そして、正しく見る物(リュネット)でもある。

「……」

 ――彼女には2人、姉がいた。 

「……今はよくわからないけど……言いたいことは、伝わったかな。 多分、だけど……」

 ――それでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨の止んだペンドラゴ。

 快晴は好きじゃないけれど、雨上がりはまだ好きの部類に入る。

 

 宿で一旦の小休止……一休みをした一行。

 騎士団のこれからを聞き、再度宿に戻って食事をするらしい。

 ドラゴ鍋……嫌な料理名だ。 天族を食べるつもりだったのだろうか。

 

 宿に入る前に、懐かしい気配を感じた。

 

「ドラゴ鍋……70点てとこだな」

「メーヴィン!」

 

 失敬な。 まぁ本当にドラゴンを使っているわけじゃないから別に怒る事も無いのだが、70点は低いだろう。

 

 メーヴィン。

 あぁ、懐かしい名だ。

 彼は直接マギルゥに会った事はないだろうが……その飄々とした態度は、やはりマギルゥを彷彿とさせる。

 メルキオルには無かった遊びだ。

 

「それで? わざわざ隠蔽の術式まで使って付いてくるなんざ、俺に何の用だ?」

 ――刻遺の語り部。 あなたと話したかった。

「……場所を移そうぜ。 こんな街中じゃ、ゆっくりできないだろ」

 ――誘惑の罠張り巡らせ、我が懐中に。 トラクタービーム。

 

 なんだか久しぶりに使う気がするトラクタービームで、自身とメーヴィンを浮かせる。

 

「うぉっ!? こりゃ……無属性の天響術、って奴か?」

 ――どちらかといえば聖隷術だけど、そんな風に捉えてくれて構わないよ。

 

 向う先は、ペンドラゴ教会神殿の頂上付近の屋根だ。

 ここなら誰にも邪魔されまい。

 

「よ、っと……。 こりゃ、良い眺めだなぁ! 少なくともここに登った奴は、ここを造った奴以外じゃ俺達が初めてだろうなぁ」

 ――ムルジム辺りは昇ったりしてそうだけど。

「ムルジム……あの猫天族の事か」

 ――面識が?

「一回だけなぁ。 ここへ初めて訪れた時に、呼びとめられたぜ?」

 ――刻遺の語り部として?

「いや、話し相手がいなくて退屈だったのだとよ!」

 

 ムルジムらしい。

 

「それで? お前さんもそのクチかい?」

 ――改めて自己紹介を。 私はサムサラ。 初めまして、メーヴィン。

 

 目を見開くメーヴィン。

 

「そうか……お前さんが……」

 ――私の事、やっぱり伝わってた?

「……あぁ。 その天族の名をサムサラ。 かつてこの世を征した大海賊アイフリード海賊団の食材庫を器にした世界一食い意地の張った天族……ってのが、表向きに流していた噂だな」

 ――どこまで、受け継がれた言葉?

「一言一句、一切改変されちゃいねぇぜ」

 

 ……マギルゥめ……。

 

「もう一つのメッセージの方は……」

 ――そっちは、刻が来たら聴くよ。 もう、決めてるんでしょ?

「……まぁな。 けど、だからって手を抜くつもりはないぞ。 見合わなければ――」

 ――その時は、私があなたに本当の名前を教えてあげる。 それが、賭けだから。

「……ふ」

 

 にやっと笑うメーヴィン。

 ? 何か含みがあるな。

 

「さて、そろそろ導師一行がお前さんを探してる頃だろ。 そろそろ行った方がいいぜ」

 ――独りで降りられる?

「問題ないぜ。 そんじゃあな!」

 ――うん。 じゃあ、またね。

 

 メーヴィンはかるーいジャンプでこの凄まじく高い教会神殿から降りて行った。

 身軽ってレベルじゃない……。 まさか、同族……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《!》サブイベント 『受け継がれる二刀小太刀4』

 

「あ、いたいた! サムサラ! ちょっと、この前の金属出してくれない? このおじさんがうるさくてさ……」

 ――もうないよ。 マロリーにいかないと。

「ええ!? そんな……」

「お嬢ちゃん! 何か勘違いしてるみてぇだが……俺の鍛冶に、素材はいらねぇぜ」

「へ?」

「俺は研ぎの技術を受け継いだラゴッツー! 俺がやるのは、武器を研ぐこと……それだけだ。 その小太刀を……渡してほしい」

「ん。 なら、お願いしよっかな。 どうせ今日は宿に泊まるし……」

「あぁ! 任された!!」

 

 二刀小太刀クロガネ+4を取得しました。

 













途中のダジャレの奴は原作にあった奴ですから!!
スレイが真面目に考察してる後ろでガヤってた奴ですから!!

決して私のボケじゃありませんからぁ!!

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