ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題) 作:飯妃旅立
特に特別な短編を入れるわけでもありませんが、今年のベルゼス転生の更新はこの話で終わりになります。
それでは皆様、良い御年を~!
目を覚ましたら、導師一行は去っていた。
うん。 眠ってたね。
伸びをするほど長くない手足で、それでも伸びの真似をすれば、心無しかスッキリしたように感じる。
周囲一帯は緑一色。 ザビーダに会えるかなーと思ってやってきたヴァーグラン樹林の樹木たちの天辺。 結局ザビーダはいなくて、風が心地よかったから眠ってしまった次第だ。
北東の方にヘルダルフの領域を感じる。 生前に姿を確認してないから繋げられないなぁ。 繋げる意味もないのだけれど。
ロゼ・デゼル・スレイ・ミクリオ・ライラ・エドナと、私のいる場所の右下あたりに6人とも集まっているのがわかっている。 あそこはテオドラの……。
まぁ、私が気にする事でもない。
それよりも……ラストンベルに行こう。 あそこにはかめにん天族が幾人かいるから、心水も貰えるだろうし。
トラクタービームを発動させて、浮かび上がる。
……アルヨネ?
「はい、1050年モノの
――1100年モノはないの?
「あー、1100年モノは1050年前と1071年前に全部飲まれちゃったんスよ。 えーっと……購入者は、ロクロウ・ランゲツさんとアイゼンさんッスね。 どっちも人間じゃなかったッスから、もしかしたらまだ所持している可能性もあるッスけど……探してみるッスか?」
――……ううん。 多分、その場ですぐに飲んじゃったと思うよ。 じゃ、1050年モノ買うね。 いくら?
「1億ガルドになるッス! ……と、言いたいところなんスけど……、これを800年ほど前に委託してきた酒業者さんから、「もし飲みたいと言ってくれる人がいるならば飲ませてやってほしい」と言われてるッスから……。 信用第一のかめにんとして、
――いいの? お金くらい、払うけど。
「いやー、それは受け取れないッス! これでも商人。 かめにんとしての矜持があるッスから! じゃ、コレがラストンベルの純心水になるッス」
そう言ってかめにんが甲羅から出したのは、空のワインボトル。
ラベルには『
……いや、空じゃない。
恐ろしい程の透明度が、まるで何も入っていないかのように感じさせているだけだ。
光の屈折が大気と同等の、究極の心水。
知らず知らずに唾を飲み込み、かめにんの手からソレを受け取る。
想像以上に重い。 いや、空のワインボトルを想定していたからか。
「あ、それと……この辺で、真っ黒な甲羅をしたかめにんを見かけなかったッスか? もし見かけたら連絡してほしいんスけど……」
――消し去ればいい?
「い、いや! こっちで粛清するッスから……。 じゃ、これからもかめ屋を宜しくお願いするッス!」
――うん。 ありがとう。
早い所飲みたい。
……けど、まだだ。
ワインボトルを帽子の中にスーッと入れる。 大分ゴチャゴチャしてきたな……。
これを飲むのは、もう少し後。
純心水をしまい、私は足元に置いたアンバーの輝きを持つ琥珀心水の栓を抜く。 きゅぽん、という良い音がして、からい匂いが漂ってくる。
ゴーンゴーンとラストンベルの大鐘楼が鐘を鳴らす。
その音を
あーっ……美味しい……。
久しぶりの心水は、身体の奥底まで染みわたった。
「そこのノルミン。 昼間から酒盛り? 良い御身分ね」
なん……だと……!?
いやいや、ここラストンベルの大鐘楼の真上なんですけど。
何故youがそこにイルンデースか。
「無視? ていうか、あなた見た事あるんだけど……。 具体的には、軽薄チャラチャラ半裸男の腰あたりで」
……どうしよう。
ここで同行するとなると、どこぞのロハンに止まってもらった意味がなくなるというか。
あと傘に着いてるフェニックスが私の酒盛り姿をみて溜息ついてるのが非常に――というか。
「そう、あくまで無視するのね。 凡霊の分際で……」
――お……琥珀心水、飲む?
ほら、見た目は幼くてもこの子確か1300歳とか1400歳とかだったはずだから。
わー、つめたい目。
「今の声、そこのノルミン?」
――うん。 この方法でしか喋れない。
「そう。 で、アンタの名前は?」
――サムサラ。
「ノルミンとしての名前の方を聞いてるの」
――教えられない。
「……へぇ。 で? あの軽薄チャラチャラ半裸変態男との関係は?」
あ、増えた。
――天族同士。
「それは知ってる。 なんであの男の腰に付いていたのかを聞いてるのよ」
――自分の足で歩くのが面倒だから。
「……自堕落極まりないわね。 ノルミン・スロウスね」
――前も言われたなぁ、ソレ。
懐かしい。
「……はい、コレ」
――?
そう言って差し出されたるは結い紐のようなモノ。
「歩くのが面倒なんでしょ? だったら傘に吊るして運んであげるわ」
Oh…それはフェニックスと同じになれという事ですか。
出来ない事は無いけれども。
うん。 ヤだ。
――誘惑の罠張り巡らせ、我が懐中へ! トラクタービーム!
「なっ……!」
――またね、エドナ。 その心水は置いて行ってあげるから……。
重ねがけで退避する事に成功した。
《!》サブイベント 空飛ぶノルミンを追って
「あれ、エドナ。 どこ行ってたの?」
「逃げられたわ。 ノルのくせに……」
「……おい。 お前、その手に持っているのは……」
「これ? ノルが置いて行ったものよ。 琥珀心水とか言ってたかしら」
「こ、これは……! 最高級酒の『
「だからノルが置いて行ったって言ったでしょ。 話聞いてる?」
「……? ミクリオ、心水ってなんだ?」
「お酒の事。 スレイはまだ飲めないよ」
「
「デ、デゼル……詳しいんだね」
「しかも! この
「……ライラもテンション高いね」
「デゼル、君はお酒はいけるのか?」
「あぁ。 お前も水の天族なんだ、酒くらいどうということはないだろう」
「無理じゃない? ミボはおこちゃまだし」
「確かに苦手だが、君に言われたくはない! 君だってお子様だろう!」
「は? ……私はこれでもライラより年上なんだけど」
「え?」
「え」
「……そろそろ1400歳になるかしらね。 で? 私がお子様なら……ミボは赤ちゃんかしら。 その辺の水の霊力かもしれないわね」
「……おい、ライラ。 あいつの言っている事は……」
「本当ですわ。 デゼルさんはおいくつでしたっけ?」
「……600くらい……な、はずだ。 昔の事は……あまり覚えていない」
「あら、ではスレイさんとロゼさんとミクリオさんの次に若いという事ですわね!」
「へぇ、デゼルってそんな若かったんだ。 あ、でも人間からしたら600歳って……うん、やっぱりデゼルはおじいちゃんだよ!」
「……なら、ライラやエドナはバ……」
「デゼルさん?」
「いや、なんでもない。 ペンドラゴへ行くんだろう。 とっとと行くぞ」
「あ、デゼルさん! ……行ってしまいました……。 では、この
「いいんじゃない? 私もお酒は飲まないし」
「僕もスレイも飲まない。 ロゼも飲まないだろう?」
「飲めるけど……ま、好き好んで飲むモンじゃないね」
「じゃあライラ。 いつも頑張ってるから、ご褒美って事で!」
「……ありがとうございます」
「飲みかけだけれどね」
ハッピーニューイヤーの瞬間に飛ぶよね!!!!!(幼稚