ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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空白編最終話です。
何時にもまして刻みまくってます。 原作知らないと多分付いていけません。

独自解釈・捏造設定がかなり大きいです。
とくに捏造設定に関しては原作との乖離を引き起こす可能性があります。


全部今更ですね。
以上の点に注意してお読みください。


dai san jur wa sekai ga hajimaru mae no toki

 

「よ、エドナちゃん。 お茶しない?」

「ばかなの? そう何度も来られてもうざいだけなんだけど」

「いいじゃねーの。 ほら、こんな穢れだらけの場所にいないでさァ!」

 ――それは失言。 天響術来るよ。

「ッ! いいから帰りなさい。 さもなきゃ……」

「うおっと、落ち着けよ。 クールダウンだ。 わぁーった、わぁーったから詠唱はじめんなって!」

「赤土目覚める、ロックラ」

「んじゃまた来るぜ!」

 ――7連敗、だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄想いだよなぁ……っとに」

 ――まぁ、上が上だし。 同じ性質(たち)なんじゃない?

「アイツよりはよっぽど素直……いや、どっちもどっちか」

 ――うん。 どっちもどっち。

「……で?」

 ――で、って?

「俺はアイツの領域だよ……解除されたんか?」

 ――領域はね。 でも、決して穢れに侵されない器でもないと……あそこへは近づけないよ。 仮に近づけたとしても、ザビーダ1人に倒せるとは思えないかな。

「言うじゃねェの……。 アンタの領域と、アンタが手助けすりゃあいけるんじゃねぇの?」

 ――私の流儀にドラゴンを倒す、っていうのは含まれてないかな。 それに、私は手を出せないから。 誓約上、私はアイゼンを戻すことは出来ない。

「誓約、ねェ……。 ノルミンが何を誓ったンだか……」

 ――原初の誓約。 私が生まれて、すぐに誓った誓約。 内容は内緒。

「……昔の仲間を救えねェ誓約なんざ、聞きたくもねェ」

 ――うん。 あなたはそれでいい。 あなたはそっちでいい。

「……そうかい」

 

 自らのためだけに建てた誓約なんて、知らなくていい。

 世界を救うためだったクローディン。 世界の存続を願ったメルキオル。 世界に未来を託したマギラニカ。 

 誓った想いと、失った代償。 さてはて、私は何を失ったのやら……。

 

 ザビーダの言葉が刺さる程、私はキレイじゃなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん? あれ、ライラちゃんじゃねェ?」

 ――うん。 ライラだね。 となりにいるのは、今代の導師か。

「なンだ……随分と若い奴だな。 ライラちゃんはあいいうのが趣味なのか?」

 ――さぁ? 惚れ込んでるのかもしれないし、入れ込んだ想いがあるのかもしれないし。

「ンな事はわぁーってるよ。 だが……なンだろうな。 若い……じゃなくて、」

 ――青い?

「そうソレ! ……見ててハラハラする感じだ。 同じ導師でも、アルトリウスの野郎とは大違いだぜ……」

 ――そうかなぁ。 本質的には全く同一だと思うけど。 導師はみんな行動力があって、意思が弱くて……強く見せようとしてる。 だから簡単に、人の悪い面を見て立ち止まっちゃう。 この悪循環を抜け出せるとしたら、それは――。

「それは?」

 ――天族も、憑魔も、人間も……全部受け入れて、救おうとするような……大馬鹿野郎が導師になることだろうね。

「ンな奴がいたら苦労しねェさ……。 だから人間って言うンだろ?」

 ――うん。 

 

 だから、あの少年を導師って言うんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……マオ坊を動かす……か。 確かに戦火に巻き込まれるよりは良いとは思うが……よりによってカノヌシの聖殿かよ」

 ――ライラ的には一番安心できる場所なんじゃない? 

「成程ねェ……。 しかも一からの村づくりと来た。 人間は一々行動が早い早い」

 ――もっとほちゃほちゃしててもいいのに。

「いやノルミン基準だとちぃと遅すぎだろォ? んな事してたら300年くらい経っちまう」

 ――そういうザビーダだって、この間4か月くらい昼寝してたでしょ。

「……マジで?」

 ――嘘だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こぽこぽと泡立つ暗い暗い水の中。

 1つの泡が上へと昇って行く。

 

 ――いってらっしゃい、神の槍。

 

 女神に生まれた子供はだぁれ?

 それはリオネル島の因子を継ぐ者。 神の如き獅子。

 

 こぽこぽと泡が昇って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……ヤな雰囲気だ。 あっちコッチで戦争だのなんだの、もっと気楽に生きられねェもんかね……」

 ――国同士の喧嘩だもん。 どっちかが折れるまで終わらないよ。

「ケンカ、ね……。 だったらこう……もっとはっきりやりゃいいのに」

 ――喧嘩屋の矜持?

「ンなもんは無ェよ。 けどな……何も知らねえ子供(ガキ)まで巻き込んでする事じゃねーって言いたいワケ」

 ――そうだね。 子供と言えばザビーダ。 ほら、左斜め前方。

「あン? ……んん?」

 ――あれ、デゼルじゃない? 果てしなく似合わない白スーツ着てるけど。

「……」

 ――隣にいる天族は……ザビーダと一緒の格好だね。 風の天族でアウトローだとそういう格好になるの?

「……」

 ――アイゼンも鎖ジャラジャラしてたけど……あ、アイゼンは地の天族だった。

「……ったく……」

 ――ザビーダ?

 

 

 ザビーダがデゼルの方へ近づいていく。

 腰に括り付けられた私も勿論近づく事になる。

 

 近付いて、気付いた。 彼等の視線の先に、何十人かの集団が居る事に。

 

 その中に、見知った霊力の人間が居る事に。

 

 

 

「ん……?」

「よ、デゼル! 久しぶりじゃねぇの!」

 

 赤い髪の少女。 間違いない。 バスカヴィルの血筋だ。

 恐らく17代目の子供。 ……戦争孤児か。

 なら、長きにわたって続いたバスカヴィルの名は……ここで途切れるのか。

 

「知り合いか?」

「あ、あぁ……昔世話になった奴だ」

「かてェ事言うなよ……俺とお前の仲だろ?」

 

 確かバスカヴィルは少しの間だけ、ロクロウと共にいたはず。 ロクロウが業魔として討伐対象になったのは、彼らの報によるものだから。

 嵐月流。 既に息絶えたランゲツの名が遺した、人を斬るための流派。 人を守るための流派。

 もし、バスカヴィルがそれを受け継いでいたとしたのなら……この幼子の名は。

 

「……何の用だ」

「んー、一つ、俺がオトナの天族としての嗜みを教えてやろうと思ってな。 なぁ、アンタ。 こいつの白スーツ……似合わねェと思うだろ?」

「……正直に言うとね」

 

 この幼子が、ロゼか。 史実に於いて彼女の名前はわからなかったが……ロゼ・バスカヴィルだというのなら、彼女の扱っていた嵐月流はそういう事なのだろう。

 穢れとは不信。 ならば――。

 

「つーことで、俺直々に上着をやろうってワケ。 そろそろ生まれてから500年だろ? 良い記念って事で」

「……くれると言うのなら貰う。 だが、ザビーダはどうするんだ……?」

「いぃーっていいーって! 子供……じゃ、ねぇな。 ま、俺のことは気にすんなって。 アイツが怖気づいて出来なかった半裸を俺がやってやるって!」

「アイツ……?」

 

 なるほど。 探しても探してもロクロウの魂が見つからないわけだ。

 まさか穢れていなかったとは、思いもしなかった。 クロガネ共々、不思議な人間だ。

 

「ってなワケで。 ――デゼル、今……楽しいか?」

「あ、あぁ……唐突だな」

 

 ザビーダはニカっと笑う。

 ライフィセットやシルバに見せた、あの笑顔。

 まだ子ども扱いしてるな。

 

「んじゃ良いさ。 アンタ、こいつの事頼んだぜ」

「何故親目線なんだ……助けられた事は恩に感じているが、育てられた覚えはない……」

「任せてくれ。 デゼルは親友(ダチ)だからな」

「あぁ……任せたぜ」

 

 風を纏うザビーダ。

 デゼルと目が合う。 手を振る。

 

 驚いた顔をしていたデゼルだったが、優しい目で手を小さく振りかえしてくれた。

 

 ……。

 濁りなき瞳、か……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 ――マオ坊……。

「マオ坊……1000年耐えたってのに……」

 ――もしかしたら……同情しちゃったのかもね。 災禍の顕主に。

「ベルベットと同じだから、なんて言わねェよな?」

 ――優しいから、だよ。 どの時代も、完全悪の災禍の顕主なんていなかった。 でも、導師は……。

「その辺は当人達にしかわからねーだろうよ。 だが……救ってやる奴が1人増えたな」

 ――そうだね。 そして……生まれたみたいよ。 輪を断ち切る子供が。

「……?」

 ――騒ぎ祀る導師。 過去最高の逸材。

 

 

 今は亡きマヒナ。 モアナという純粋な少女を育んだ、自らの最期まで子を想い続けた聖女。 月の名を冠する女性。

 その生まれ変わりが、純粋たる導師を生む。

 

 やはり皮肉だらけの世界だ。

 

 ベルベットに言わせれば前世など関係ないのだろうが……それでも、私は皮肉にしか感じられない。

 どうか安らかに眠ってほしい。 Selene(セレン)

 

 あなたはもう、戻るしかないのだから。

 


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