ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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ゼスティリアの公式資料集と大きく離反する(らしい)捏造設定があります。
独自解釈も多いです。


公式設定資料集持ってないんで確かな事言えなくてすみません。





dai ni jur roku wa hajimete no hanra

 

 史実に於いて、あの天族は1000年を生きた天族とされていた。

 同時にアイフリードの狩り場に関する説明も、1000年前に大海で暴れたアイフリードと記されていた。

 だが、アイフリードが死んだ年にいたはずのあの天族を私達は知らなかった。

 

 アイフリードが死んだからといって、アイフリード海賊団が無くなるわけではないのはベンウィック達を見てわかっていた事。 そしてベンウィックが死んでしまった事で……アイフリードが死んでから凡そ100年後、漸くアイフリード海賊団はその旗を降ろす事になる。 

 つまり、アイフリードの狩り場と名付けられるに至ったダーナ街道の説明は1100年前のもので、1000年前に大海で暴れたアイフリードというのはベンウィック・アイフリードの事になるわけだ。

 

 さらに言えば、この時代を生きた聖隷ならカノヌシへと良感情を持つ者は限りなく少ない。 当然だ。 自身らを使役し、その命を利用しようとしていた聖寮に味方をしていた聖主なのだから。 鎮静化1つ取っても、同じ聖主という立場やムルジムのような特殊な立ち位置でなければ嫌悪の対象となるだろう。

 だというのに、あの天族はカノヌシの事を『カノヌシ様』と呼んでいた。

 

 空白の1000年と、カノヌシへの敬意。

 

 そしてもう1つ。

 本来、ベルベットの特殊能力たる『相手の力を喰らって撃ち出す』という能力は、喰魔に備わっているモノ、というわけではない。 『相手の力を喰らう』までは喰魔の力と言えるだろうが、『撃ち出す』部分は彼女が喰らった聖隷シアリーズの力だ。

 そしてシアリーズは彼女の姉、セリカ・クラウの転生した姿。 だが、セリカ・クラウが『撃ち出す』という力を持っていたわけではない。

 あの力は、同時に転生を果たしたライフィセット……つまりカノヌシの力なのだ。

 

 証拠になるのかはわからないが、カノヌシもライフィセットも、そしてシアリーズも武器を紙葉としていた。 カノヌシは紙葉を紙剣にしているようだったが。

 これは彼ら彼女らが同一の力を使っていたということだろう。

 

 つまり、ベルベットの『喰らって撃ち出す』という特異能力も、ライフィセットの『白銀の炎』も元をたどればカノヌシの力になるのだ。

 

 1000年を生き、そして『浄化の炎』と『紙葉』を扱う天族。 

 

 

 天族ライラは、カノヌシの残滓として……ビエンフーが死んだ事によって生まれ出でた聖隷である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んおっと……また地震か」

 ――これからもっと多くなるよ。 今回のカノヌシの地脈円は大きかったから……多分、それに沿うようにして、ぐるりと周るように近くが動いていくと思う。

「俺もそれなりに生きてきたが……目に見えて地形が変わってくってなァ、変な感じだ」

 ――そう? 私もそれなりに生きて来たけど……今回はちょっと周期が早いだけで、いつも目に見えて変わってるよ。

「アンタと同列に扱われたくねェな……。 つか、ノルミンと同じ目線ってのが……」

 ――まぁ、そうだね。 聖隷の中でもノルミンはのんびりしてるから……。 常に目標に向かっているのなんて、フェニックスくらいじゃない? ヒーローもクリムゾンもエターナルも、今はゆったり暮らしているし。

「そもそも……おおっと、ノルミンってな何なンだ? 結構な数のノルミンを見てきたが……そういや詳しい事は知らねェなと思ってよ」

 ――ザビーダになら話してもいいかな……。 ノルミンはね、全員まとめて聖主なの。 1人1人が聖主なんじゃなくて、ノルミン総体が聖主。 でもまぁ、他の四聖主やカノヌシとは役割が違う。 もう少し正確に言うと、私達ノルミンは天族じゃなく、地上で発生した聖主なんだよ。

「あー……なンだ、前知識が色々と足りてねェ。 まぁ続けてくれ」

 

 あぁ、そういえばザビーダはズイフウの元へは行ってないんだったか。

 

 ――ザビーダも知ってると思うけど、ノルミンは他者の力を引き出す事に長ける凡百の霊、凡霊。 その力はそもそも、人間や聖隷の願いによって生み出されたものなの。 前も言ったように、アタックなら倒したい、ディフェンスなら守りたいといった具合に。 人間が意思を持ち始めたと同時に地上で生まれたのが、私達ノルミンだよ。

聖隷(おれたち)とは随分違う生まれ方なンだな」

 ――うん。 あなた達は元天族かこの地上の清浄な霊力と正常な力場が組み合わさって生まれた存在。 私達は人の意思によって生まれた存在。 地上の聖主。

「ん? じゃあサムサラも人間の意思によって生まれたのかよ」

 ――私とフェニックスは特別。 私達の次に生まれたミヤビとエターナルは人の意思だね。

「それは教えてくんねーの?」

 ――私はダメ。 生きているあなたに教える事じゃないから。 だけど、フェニックスならいいよ。 フェニックスはね、『死にたくない』っていう意思。 生物が持ってる原初の意思だよ。

「だからフェニックス、か……。 そいつは、本当に死んだ奴を生きかえらせれんの?」

 ――フェニックスが近くにいれば、ね。 正確に言えば、命が停止する直前に健康な状態まで回帰する、みたいな力だから。 完全に停止した後なら、どうしようもないよ。

「なるほどねェ……」

 

 ノルミンという種の中で見ても、破格の力を持つ私とフェニックス。

 どちらもが同じ意思の裏表を体現した存在であると言えるだろう。

 勿論、私が裏。

 

「んで、だ。 まぁノルミンの話は置いとくとして……カノヌシの残滓ってのがいるのは……本当にココかい?」

 ――うん。 ザビーダって泳げるの?

「や、まぁ風の聖隷としちゃ別に水には苦手って事もねェンだけどよ……。 もしかしなくても、湖の底か?」

 ――うん。 ブルハナ湖の湖底にある、試しの神殿。 クリムゾンが外に出たから水没しちゃったけど、ここにはジークフリートの持ってたカリバーンがあるの。 あぁ、その銃の元の持ち主ね。 ここは鎮めの森にも地脈円にも近いし、辿りやすかったんだと思うよ。

「……仕方ねェ、ここはいっちょ風のザビーダ様が一肌脱ぎますかァ!」

 ――私の呼吸に関しては心配いらないよ。 

 

 そもそも呼吸しなくても私は生きていけるし。

 

「……一応聞いとくが、どんだけ深いンだ?」

 ――そんなに深くないよ。 広いだけで。

「湖底でホライゾンストームでも撃ちゃ空気は確保できるか……」

 

 試しの神殿を壊す事だけはやめて頂けると嬉しいです。

 




感想で忠告を受けましたが、
ザビーダの真名は捏造設定によりフィルクー=ザデヤとウィルクム=ザビエを混ぜて使用しています。

そのあたりは次話か次々話で触れると思います。
なお、空白の1000年編はあと3話から4話続くと思います。
多分。

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