ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題) 作:飯妃旅立
さらに言うと、捏造設定です。
以下注意点です。
※完全な捏造設定です。
※気分を害す可能性が有ります。
※サブタイトルから予想できると思いますが、そういう事です。
――ザビーダ。 ダヴァール森林へ行ってくれる?
「ん? 珍しいじゃねえの。 サムサラが行先を指定してくるなんて」
――うん。 ……あまり、来てほしくは無い時だったかな。
「……そういう事かよ」
あれから、30年ほど経っただろうか。
人の営みに、人間たちの輪に入らなければ、私達聖隷の時間の感覚は薄れていく。
私達にとっては一瞬で過ぎ去った30年。 だが、人間たちにとってはそうではないだろう。
四聖主を無理矢理に叩き起こした影響で地殻変動がとても速い頻度で起き、既にロウライネなんかは半壊状態だ。
勿論そんな中でも変わらずに……どころか、更にやる気を出す人間たちもいれば、折角『やり直すチャンス』を与えられたというのに変わりきる事が出来ず、その身を業魔へと再度落とした人間もいる。
そして。
「……ザビーダと……サムサラですか。 随分とお久しぶりですね」
「あン? ……おぉ、エレノアか! 随分とまぁ……キレイになったじゃねェの」
――エレノア、大人になったね。
「ふふ、よしてください。 私はもう、’あの時’のお母さんの年齢を越してしまったんですから」
そう言ってにっこりと笑う、40か50程の女性。 エレノア・ヒューム。
青と白の制服を見に纏い、手には槍を持っている。
その姿から発せられるは、歴戦の猛者のような風格。 覇気。
「お二人は何故、ここに?」
「サムサラがな……。 ここにいるって、教えてくれたんよ」
「……分かっていて、来たんですね」
――うん。 あまり来てほしい『時』ではなかった。 エレノアも同じ目的でしょ?
「はい……。 約束、しましたから。
「……加勢してもいいか?」
「はい。 よろしくお願いします」
ダヴァール森林を見つめる。
既に地殻変動のせいで、地割れが起きているこの森。
「んじゃ、行こうぜ。 業魔――ロクロウを、倒しにな」
「……はい」
殺気。 言葉に、文字にするのは簡単だ。
文字通りに見れば、殺す気。 殺したいと言う意思の顕れを殺気というのだろう。
だが、この場合は……『殺したい』ではなく『斬りたい』が正しいのかもしれない。
その男は、空気の死滅した空間に佇んで……
周りには、死骸。 どれもコレも、斬撃によって息絶えている。
「……ロクロウ」
エレノアが男に声をかける。 すると、男はゆっくりとこちらを向いた。
「……おお! エレノアにザビーダじゃないか。 どうした? こんな場所まで」
まるで何も変わっていないかのような朗らかさで。
彼は無邪気に……凄惨に笑う。
漸く斬り甲斐のある相手が来た、とばかりに。
「……。 ……あなたを、
「……おお! そいつは丁度良かった。 丁度……俺も、斬り応えのある奴がいなくて困ってたんだ。 お前たちが相手をしてくれるんだな」
「……っ! ……はい。 約束、ですから」
それを聞いて、ロクロウは安心したような顔を一瞬だけする。
まるで、それのためだけに理性を保っていたかのように。
直後、凄まじい穢れが彼の体から溢れだした。
その様は……かつてキララウス火山の洞窟で見た、シグレ・ランゲツの解放された霊力と
彼は――背中から、大太刀・征嵐を引き抜く。 裏芸たる二刀ではなく、シグレ・ランゲツを追い抜くと宣言した、大太刀が一刀で。
「いざ、尋常に勝負!」
ロクロウは、あらん限りの声を出して、斬りかかってきた。
「
「虚空!」
カウンター。 だが。
「させないよォ!
「チィッ!」
――焔、其は魂を看取る幽玄の炎。 葬炎、ファントムフレア。
「ザビーダ、助かりました!
「震天!」
シグレ・ランゲツを彷彿とさせる動き。 しかし、その太刀筋はどこか禍々しい。
シグレ・ランゲツのような、斬撃に特化したモノではない。 正確に言えば……『斬る事』ではなく、『斬り殺す事』に特化しているのだ。
「瞬迅、旋風、業ら――」
「無音!」
――大地、魂に無上なる祝福を与えたまえ。 ソウルオブアース。
「
「サムサラもいるのか! こりゃあ、増々斬り甲斐がある!」
今更気付いたんですか。
ストラップじゃ分かり辛いですか、そーですか。
――腐食。 其は希望の終焉。 サイフォンダングル。
「ぐぅッ!?」
「今です! 響け! 集ええええ! 全てを滅する刃と化せ! ロストフォン・ドライブ!!」
サイフォンダングルに足を取られたロクロウを、エレノアの超振動の槍が襲う。
「ビート上げるぜ……ルードネスウィップ!」
「因果応報・滅! 瞬撃必倒! 儚く散り逝け……絶命の太刀! 九の型! 絶刑!」
――無垢な魂よ。 癒しの庭に集え。 煌け、イノセント・ガーデン。
回復。 まさか秘奥義にカウンターを乗せてくるとは思わなかった。
だが、あと一手。
足りない。 ピースが足りない。
「ザビーダ! 竜巻起こせますか!」
「グ……何する気か知らねェが、ほらよ!」
ザビーダがエレノアを中心とした竜巻を起こす。
その勢いに乗じるようにして、エレノアの槍がロクロウを天へと打ち上げる。
「最後まで気を抜くなよ、エレノアァ!」
「
本当に楽しそうな顔でロクロウが笑う。
あぁ。 やっと良い悪い顔になった。
竜巻によって打ち上げられたロクロウが最頂点に達する。
同時、エレノアの槍に込められた風の霊力も最高点に達したのを感じた。
「参ります! 信念を込めた閃空……天をも貫け! 狙いは一点! グングニル・ツイスター!!」
「零の型ァ! 破空!!」
二刀小太刀を抜き放ったロクロウの空中で行う変則的な破空と、エレノアのグングニル・ツイスターが激突する。
単純な威力で言えばエレノアが上。 だが、落下による威力上昇がロクロウの破空を
そして、この光景は。
縦横が違うものの、あの時のシグレ・ランゲツとロクロウ・ランゲツの拮抗そのもので。
今、エレノアの槍が二刀小太刀に弾かれて――
「終わりだ、エレノア!」
「――この一瞬に、全てをかけます!!」
弾かれてなお、掴んだ手を滑らせて槍の柄の先端を掴むエレノア。
横薙ぎ、打ち上げ。
そして、
「
「……楽し――かった――ぞ」
業魔ロクロウは、エレノア・ヒュームによって討伐された。
――じゃあね、ロクロウ。
「……これで良かったのか。 カノヌシとベルベットを見送った直後の私なら……そうやって悩んでいたと思います」
「ンでも今は違うんだろ?」
アルディナ草原。 少し風に当たりたいとの事で、地殻変動により更に高くなったねじまき岩の上にエレノアを連れてきた。
「……半分、ですかね。 私の中に、記憶の中に……ベルベット達と共に過ごした記憶は大きく残っていて……。 ロクロウの事も、強く覚えているんです」
「そりゃなァ。 あんな濃い奴ら忘れろって方が無理だろォ?」
「それと同時に、彼が誰かを無条件に害すようになれば、彼の為に彼を倒さなきゃいけないという理屈……そして理念も納得できているんです」
「その2つが鬩ぎ合って、なんとも言えない状態だと」
「アルトリウス様に立ち向かった時、私は自分の信じた道を進んでみると言い放ちました。 でも……今回は、どちらの道も、自分の信じた道なんです」
「ロクロウがずっと理性を保ち続ける、もしくは理性を取り戻す事と……業魔ロクロウとして、もう戻らないだろうって事か」
「……はい。 私は彼の全てを理解したわけではありません。 だから、もしかしたら……と考えてしまうんです」
――それでいいんだよ。 エレノアは人間なんだから。 多面性がなかったら、業魔に成っちゃう。
「サムサラ……」
――だから、ノルミンとして1つだけ教えてあげる。 ロクロウはしっかりと『戻った』よ。
「戻った……?」
「お、ちゃんと戻ったのか。 ならアイツも救われてたって事だな」
「ザビーダはわかっているのですか? 戻った、というのがどういう意味なのか……」
「ちゃんとは分かってねぇ。 けど……アイツは救われた。 エレノアも聞いただろ? ロクロウの最後の言葉」
「……! 楽しかったぞ、でした」
「斬る事を楽しむ業魔が、楽しかったって言ったんだ。 それでいいじゃねェか」
――それに……エレノアはロクロウの戦法も打ち破ったからね。
「あ……。 はい。 彼の3刀に抗うために……新しく編み出した技でした」
――自分を破る戦士が現れたんだもん。 満足だと思うよ。
「……はい。 ありがとうございます、サムサラ。 あと……ザビーダも」
「ついでかよ! ま、いいけどな。 それじゃ、俺達はそろそろ行くぜ。 またな、エレノアちゃん」
「ちゃん付けはやめてください。 さようなら……ザビーダ、サムサラ」
――さようなら。
さようなら、エレノア。
そして……ロクロウ。
さようなら、ロクロウ・ランゲツ。
ロゼとの繋がりも考察済みです。