三匹目の猫   作:AstrAl 4π

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五話

結局その日はお開きになり、オカルト研究部員になったウタは、軽く他の部員と改めて自己紹介したあと、帰ることにした。

 

「はぁ、結果的になにもわかんなかったな、この人。私もこんなに美人で大きかったらいいのに…」

 

帰ってきて鞄から人相書きを出し、ぼんやりと眺めるウタ。

 

「やっぱり体操とかしたら良いのかな?…すぐに飽きちゃうからなー、明日リアスさんとか朱乃さんとかに聞いてみようっと。」

 

そう言って机の上に置くと、夜ご飯を作るべく、台所へと向かうのであった。

 

 

 

いつもより早く部活が終わったので帰宅途中の小猫は星空の下、、今日突然現れた人の事を考えていた。

 

ーーーあの緑野とかいう先輩は何者何でしょうか…副部長が言うには、気配も魔法陣もなく部室に現れたらしいし、会話の途中でも全くと言っていいほど隙がなかった。それに、あの爆弾発言…正直信用は出来ないけれど、なにかが引っかかって先輩のことが気になる。どこが引っかかるんだろう?

 

そんなことを考えながら歩いていると、ふと頭上から声をかけられた。

 

「あれ、小猫ちゃん?もしかして帰ってる途中?よかったらあがってよ。いま晩御飯作るところだから。」

 

声のする方向を見ると、ウタが屋上から手を振っていた。

 

「え!?あ、あの」

 

「さあさあ、遠慮しないで。これでもバイトとか一人暮らしのお陰で料理は得意なんだ〜」

 

今まさに考えていた相手であるウタが声をかけてきたことにビックリした小猫は、気がついたら晩ご飯をご馳走になることになっていた。

 

 

 

ーーーヤバッ、調子にのって作り過ぎた…

 

数年ぶりに人と一緒に晩御飯を食べることになったウタは、嬉しさのあまり二人では食べきれないほど沢山作ってしまった。

 

「ごめん、小猫ちゃん、ご飯出来たけどちょっと運ぶのに時間がかかるから先に屋上で待ってて。」

 

ソファに座って、ずっと(どうしてこんな状況になったんだろう、でもこれは先輩を調べるチャンスかも。でも実は私を嵌める罠で…)などと考えていた小猫は、何故屋上なのか首を傾げつつも、言われた通り行動するのであった。

 

 

 

「ふぅ、やっと準備できた…ってあれ、小猫ちゃんどこだろう?」

 

ようやく料理を並べ終えたウタは、小猫がいない事に気がつき、キョロキョロ見渡していると丁度そこで屋上の扉が開いた。

 

「はぁ、はぁ、…緑野先輩、この家ちょっと外観より大き過ぎませんか?危うく迷子になりかけました…」

 

「あー、ごめんごめん。うち空き巣対策で家の空間を拡張したんだよね〜。地図あげるの忘れちゃった。」

 

そう言ってウタは、どこからともなく取り出した家の地図を子猫に渡す。

 

「…どうも。それより、なんで屋上なんですか?」

 

「あー、晴れた夜は偶にこうやって星空を眺めながらご飯食べるんだ〜」

 

しかし小猫は不思議な思った。確かに星は見えるがこんな都会では空気が汚く、周りの光などもあって、大して見れないのではと。空を見上げても悪魔の視力をもってしてやっと見えるぐらい。と、ウタの方から魔力の波動を感じ、直後に強い風が吹き抜ける。思わぬ突風に目を瞑る小猫だが、風が収まり目を開けるとそこには満天の星空があった。心なしか周りの光も弱まってる気がする。

 

「…凄い、綺麗です…」

 

「気に入ってもらえたならよかった。さ、冷めちゃう前に食べよっか。」

 

少し呆気に取られていた小猫を向かいの席に座らせて食事を始めた。

 

 

 

「えっと、小猫ちゃん?別に無理して食べなくてもいいんだよ?」

 

「いえいえハムッ、そんな事パクッ、全然無いですよモグモグ。こんな美味しいご飯アムアム、むしろもっといけますよゴクゴク。」

 

普段食べる分の十倍くらい作っていた筈なのに、既に半分ほど無くなっている事に少し懐の心配をしながら聞いてみたが、小猫の返答に少し肩を落とすのであった。

 

「…そういえばさっきの緑野先輩の技…一体どんな能力なんですか?」

 

ふと食べる手を止めて聞く小猫。するとウタは自分の能力について喋るか考えた後、決心したように顔をあげる。

 

「いいよ、小猫ちゃんには教えてあげる。さっきのはね、空間に干渉する術なんだ。私が目の前のご飯を運んだり、腕の無い人って呼ばれたりしてるのもこの術なんだよ。例えば、空間の切れ目を作って遠くの物体を持ってきたりとか。」

 

そう言ってウタはハンカチを取り出し、「ほら、汚れてるよ」と微笑みながら小猫に手渡す。

 

「あとは、空間をちょっと捻じ曲げて光を屈折させて、物を見えなくさせたりとか、さっきの空気の浄化とかかな。」

 

そう言って両腕を消して見せたりもする。

 

「…てことは、周りが暗くなったりしてるのも…」

 

「うん、この力だよ。まあ空間をいじる位じゃ全然魔力減らないし、発動と解除にしか魔力使わないから維持費もタダだし、全然大したことじゃないよ。」

 

「…さりげなく凄いこと言ってますね。魔力が枯れたこととかないんですか?」

 

「……まぁ初めてやった頃とかは結構消費も多かったけど、実は私ってほぼ魔力枯れないんだよね。この力はまだナイショだけど。もっと仲良くなったら教えてあげるよ。さてと、そろそろ遅くなったし、帰る?泊まってってもいいけど、なんちゃって。」

 

そろそろ眠くなる時間になるので、ウタは残ったご飯を冷蔵庫にしまい、そう問いかける。

 

「まぁ呼び止めたのは私だし、家まで送ってく「じゃあ泊まります」…え、マジ?冗談で言ってみただけなんだけど…」

 

「先輩がイヤなら帰りますけど…」

 

少しシュンとした表情でそう返すと、「ぜ、全然イヤじゃないよ!!」とあっさり許可をだした。

 

「でも、どうして急に?自分で言うのもなんだけど、さっきとんでもないことを小猫ちゃんに言っちゃったんだけど…」

 

「そうですね、確かに信頼はあまりできませんが、どうも気になると言いますか、近くに居たいと思うんですよ。」

 

「そ、そんな、わた、私は女だよ!?」

 

「違います!!ふざけてないで、はやく部屋に案内してください!」

 

小猫は確かに言ったことも思ってはいるのだが、これらの言動はもっとウタの力を知るためのことでそんな不純な理由ではなく(因みにご飯は食べたいと思っている)そんな勘違いをされては困ると怒って先に家の中に入ってしまった。

 

 

 

その後、お風呂に入って(もちろん別々)女子らしくお喋りでもするのかと思っていた小猫だったが、ウタはお風呂から出たあと、すぐにベットに行き、眠ってしまった。

 

ーーー構ってくるかと思いましたが、意外ですね。まぁその方が好都合ですが。

 

ウタの部屋に聞き耳をたて、寝たのを確認した小猫は、地図とライトを持って(『夜トイレに行きたくなったら使ってね』と言われ持たされた)家の中を探検することにしたのだ。

 

ーーーなにかこのモヤモヤのヒントがあるかもしれない。っと、それにしてもこんなに広いのにちゃんと掃除されていますね。どの部屋も埃が積もっていたりグチャグチャになっていたりしませんし。……次はこっちの方に行ってみましょうか

 

 

 

その後も探し続けた小猫だったが特にこれと言った収穫もなく朝を迎えてしまった。

 

ーーーふぅ、これだけ広いと全て見てまわるのもひと苦労ですね。そろそろお腹も空いてきたので、緑野先輩のところへ行きますか。

 

ウタの部屋の前に来た小猫は、ノックをしてみるが返事はこず、こっそりとウタの部屋の中へ入った。

 

ーーーここも整頓されてますね。部屋の装飾もほとんどないのは意外ですね。強いて言うなら姉様を描かれた紙が置いてあるってところ………姉様?な、なんで先輩が姉様のことを知って…!!

 

机に置かれた姉ーー黒歌の絵を見て忌々しそうに睨みつける小猫であった。




子猫ちゃんの口調に自信がないです…

補足させていただきますと、子猫がこんなにも饒舌なのはウタが気になり、無意識のうちに警戒心よりも好奇心が上回っているのでこんなに喋ります。

なんかグダグダしてて全然進んでいません、ごめんなさい…

色々書きたいこととかが多くてどうしても進行が遅くなってしまうのは目をつぶって、温かい目で見ていてくれると嬉しいです。

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