翌日、学校に行くのが非常に億劫だったウタだったが、行かないと家に押しかけられそうだったし、イッセーの状態も気になったので、仕方なく行くことに決めたのだ。
ーーーはぁ〜、にしてもまた間違えられたな…誰なんだろ。その黒歌って。
以前、襲って来た悪魔を返り討ちにした時に拾った人相書きを手に持って家を出る。
ーーー誰かが間違えて書いたんだろうか。大体これなんで白黒の手書き?まったくいつの時代なのよ。しかも猫耳の時に限って襲ってくるし。そりゃあ、隠してる時は妖怪だってわからないようにしてるし、この耳は私のチャームポイントだけど、そこで判別して欲しくないんだよね。挙句、胸の部分はやたらと強調されてるし…やっぱり私への当てつけか!あー、ムカツく!!もしこの私のそっくりさんに出会ったらぶん殴ってやろ!
「おっはよー、ウタ。」
そんな事を考えながら歩いてると、後ろから桐生が飛びついてきた。
「あれ、その紙は何?…わー、自分のデッサン?上手く書けてるじゃない。猫耳可愛いわね。」
「そ、そう?ありがと。」
まさか自分を可愛いと言われるとは思って無かったウタは若干顔をあからめている。が、その後に桐生はウタの無い胸に手をあてながら、
「……でも、いくら胸が欲しいからって其処は捏造しちゃダメでしょ。」
そう言われた途端、ウタは切れた。
「う、うるさい!これは私が書いたんじゃない!!てか胸を背中に押し付けるな!!当てつけか!…はぁ、藍華ちゃんだけは信じてたのに…所詮持ってる奴は敵、か。グスッ」
「ちょ、ちょっと!別にそんな悪気があった訳じゃ無いんだから、こんな大勢の前で泣かないでよ!?悪かったって。今度ジュースかなにか奢るからさ、機嫌直してよ〜」
結局その日はずっと口を聞いてもらえなかった藍華なのだった。
学校についたウタは、席に着くと、イッセーがなにやら焦った様子で話しかけてきた。
「なぁ、ウタ。俺って彼女いたよな?」
「(予想はしてたけど、イッセーはやっぱり悪魔になってるんだ。)なに突然。ついにイッセーは記憶力もセクハラに使い始めたの?」
「ち、ちげーよ。相変わらず失礼だな。そうじゃなくって、みんな覚えて無いんだよ。メアドとかも消されてるし…」
そう言うイッセーは、何やらヘコんでいるようだ。
「昨日は変な夢を見たし…もしかしたら全部夢だったのか…?」
「(みんなが覚えてないなら私も忘れたってことにしとくかな。)セクハラ魔のイッセーはとうとう脳内彼女を幻視するようになったのね。可哀想に…」
「だから違うって!!…いや、覚えてないならいいんだ。悪かった、これは忘れてくれ。」
かなり落ち込んでいるいっせーに悪い事をしたかなと思いつつ、まぁでもいつものセクハラのお返しって事にして何時ものように授業を受けていたウタであった。
放課後、
(なんだなんだ?火事かなんかか?)
見当違いな事を考えていたウタだが、入ってきた男子の顔を見ると、嫌そうに顔を顰めた。
(よりにもよって
「緑野さんって此処にいるかな?」
「えぇ、何で木場くんがウタちゃんと!?」「まさか付き合ってるとか?」「木場くん×ウタちゃんか…それはそれで行けるかも!!」
案の定騒ぎ出した女子達にうんざりしながら、ウタはこれ以上ややこしくならない為に、気配を消して隠れた。
「なにー、ウタ。あんたいつの間にあんなイケメン彼氏作ったの?…っていつの間にかいなくなってるし。ん?置き手紙があるわね。どれどれ…『イケメン君には帰ったって伝えといて。あとあんな弱そうな男に興味はないから』ってなんじゃそりゃ。まぁ今朝の事もあるし、伝えといてやるか。おーい!イケメン!」
教室を抜け出したあと、ウタは悪魔の気配がする旧校舎へ足を運んでいた。
「約束しちゃったから来たけど…あー、もう!絶対に面倒な事が起きるよこれ!!はぁ、静かにひっそりと暮らしていきたかったな…ん?何この結界。どうせ人払いとか侵入感知とかその辺だろうけど、そんな小細工私に通用しないんだよな〜。」
と、地面に空間の切れ目を作り、其処へ跳び下りる。旧校舎のオカルト研究部にワープしたウタは、内装をみて驚く。
「(うわ…なんだか気味が悪い場所だな。魔法陣みたいなのとか見たことない変な模様とかがいっぱい書かれてるけど、こんな所で生活したくはないな…っとそれよりも、誰かいるっぽいし、挨拶しなきゃ!!やっぱり第一印象は大事だもんね!)どうも!リアスさんに呼ばれたんで来ました!!二年の緑野 詩です!!よろしく!」
突然天井から人が降ってきて、着地と同時に自己紹介をするという、不審者極まりない存在に警戒する朱乃。すぐに手に雷を迸らせるが、隣にいたリアスはそれを手で制止し、若干引きつった顔でウタを迎えた。
「…あら、そちらから来てくれるなんてね。祐斗には会わなかったの?使いとして送ったんだけど…あと、入ってくるときは入り口から普通に入ってちょうだい。さすがになんの前兆もなく天井から降ってこられるとこっちも驚くから。」
「うん、わかった。あとイケメン君は教室を面倒な事にしたから置いてきたよ。」
と丁度そこに教室から帰ってきた木場と、来る途中で出会った子猫が入ってきた。
「部長、ただいま戻りました…ってあれ、緑野さん帰ったんじゃ?」
「……どうも。」
帰ってきた木場に、ウタは一瞬気まずいな〜と考えたが、その後入って来た人物をみて、ウタは固まった。
「な、なな、なんで……なんでこんなに可愛い子がこの学校に!?」
ウタは小猫から、自分に近い何かを感じとった。そしてこの子をなんとしても守らなければならないと本能のような物が訴える。
「リアスさん!!この子をください!!!!」
「……へ?ねぇ、朱乃。この子はいったい何を言っているのかしら?」
「あらあら部長、この子は小猫さんのことが随分と気に入ったようですわ。」
「…アハハ、僕は無視かな…」
「………」
ウタの突然の発言により、室内は静まりかえった。しかし、一番驚いているのはウタ自身である?
ーーーあれ…?なんか私、とんでもなく誤解を招くような事を言っちゃったような…どうしよう!私ってそりゃ男よりも女のが好きだけどってそんな事じゃない!えっとえっと、こんな時にはどうすればいいんだっけ!?そ、そうだ!!人を三回食べる…もっと違うって!
「えーっと、ウタ?なにをやってるのかしら…」
完全に負の連鎖にはまったウタはパニックになり、皆から冷たい視線を浴びることになるのだった。
「ふぅ、さっきは取り乱してごめんなさい。自分でもなにがなんだか…」
十分程たって、ようやく落ち着いたウタは謝っていた。
「まあ過ぎたことはどうでもいいわ。でも小猫はあげないけどね。それで、今日呼んだのは、貴女の事について話して欲しいの。いいかしら?」
「はい。その代わりこっちも後で聞きたいことがあるんで聞いてもいい?」
「ええ、いいわよ。」
「えっとじゃあ…まず、私は最近噂になってる腕の無い人です。」
そう切り出したウタは、自分が産まれてから大体の事を話した。といっても、生後半年程で自分ははぐれて、その後魔法使いに拾われ魔術や気などの技術や悪魔や堕天使など裏の知識を学んだこと、育ててくれた師匠はウタが中学に入ってすぐに病で死んで今は一人暮らししている、程度の軽い身の上話をしただけだが。
「そう、事情は大体解ったわ。貴女が良ければだけど、私の眷属にならないかしら?まあこのオカルト研究部には入って貰うけどね。」
「うーん、面倒くさそうなんだよな…イッセーのなった悪魔にはなりたくないし、部活してたら散歩する時間なくなっちゃうし…」
「入ってくれれば小猫と一緒にいることができるけど?」
「はい!!私オカ研に入る!!ぜひ入部させて!!」
「……私の意思はないんですか」
最初は断ろうとしていたウタだったが、小猫を引き合いに出された途端に手のひらを返すように承認するのであった。小猫は半ば諦めた様子でお菓子を食べていたが、ふと何か思い立ったのか、手を止めてウタに聞く。
「……そういえば緑野先輩は、結局何でコートを着て散歩しているんですか?」
「あら、確かにそこはまだ話してくれてないわね。聞かせてくれるかしら?」
「あ、さっき言った聞きたい事ってのが、その事に関係あるんだけど。」
そう言って鞄を漁ろうと手を伸ばすが、リアスは急に、
「あら、これは…不味いわね。皆今日は解散よ。ウタ、ごめんなさいね。悪いんだけど続きは明日にして貰えるかしら。」
そう言ってリアスは、魔法陣を出して、どこかへ行ってしまった。
今回は前回の二倍近い文字数になってしまいました…
それに頑張ってはいるのですが、文章がどうもワンパターンになりがちになっていると思います。
もっと文章力が欲しいです…
誤字や脱字、誤変換など極力ないよう心掛けてはいますが、見つけられましたら、ご報告をよろしくお願いします。
あと、感想とかもくれると非常に嬉しいです。