三匹目の猫   作:AstrAl 4π

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三話

空間の裂け目をくぐった先は、公園の森の中であった。ウタはすぐに腕を消し、堕天使の気を探す。すると、すぐ近くにイッセーといることがわかった。

 

ーーー変態だけど、同じクラスで根はいい奴なんだから殺させたりしない!…変態だけど。

 

自身の気配を消しつつ、木の陰から覗いてみると、堕天使が光の槍をまさに投げようとしている瞬間だった。その光景に驚いたウタは一瞬の怯みがあった後、すぐさま()()()()()()()

 

ーーーくっ、最近あまり激しくは使ってないせいかしくじった…

 

自分の失態に若干顔を歪ませながら、ウタは飛び出していった。

 

 

 

相手の堕天使は、イッセーの腹めがけて投擲し、当のイッセーは理解出来ず反応出来ていない。当たると確信した堕天使だったが、何故か投げた槍はイッセーの右脇腹を抉っただけだった。

 

ーーー手元が狂ったのかしら。まぁその傷じゃどのみち動けないだろうからいいわ。さっさとこのゴミを処分しましょう。

 

もう一度光を集めた堕天使は、イッセーの前に立っている、ロングコートを着てフードをかぶった人を見つけた。

 

「…へぇ、最近この辺で噂になってるっていう間抜けな幽霊さんじゃない。私の邪魔をすると言うのなら、死に損ないのあんたも一緒に殺してあげるけど?」

 

突然の登場に若干驚いたものの、平然を装いながら問いかける。相手は何も答えないので堕天使は作り上げた槍を投げつける。ところが、今度はしっかり狙ったはずなのに、槍は相手の隣に刺さっていた。

 

「あなた何者!?…さてはさっき外したのもあなたの所為ね!よくも私の邪魔を!!」

 

ムキになった堕天使は沢山の槍を作り出し、同時に投げるものの、途中まで真っ直ぐ相手に向かっていた槍の悉くが左右に逸れて、一本も当てることができなかった。

 

ーーーなんで…なんで当たらないのよ!!まさか、本当に幽霊なの!?

 

 

 

ウタは堕天使と対峙していた。とは言ってもこちらから攻撃する事はせず、相手の攻撃を逸らしているだけだ。

 

ーーーだいぶ相手の気が乱れてきてる…相当動揺しているっぽいし、こっちからも仕掛けるか。

 

そう考えたウタは堕天使に何かを()()()

 

「フフフ。唯の堕天使じゃ私には勝てないよ。ほら、そのほっぺに傷をつけたのも気付かなかったでしょ。」

 

そう堕天使に指摘すると、かなり動揺していたのか、慌てて頬に触る。其処には今まで無かったはずの、猫か何かに引っ掻かれた様な傷が付いていた。

 

「おのれ幽霊ごときが…この至高の堕天使になるこの私に傷をつけたなんて、絶対に許さない!!!」

 

激昂した堕天使の相手に油断しているウタはしかし、背後に来ていた他の堕天使に気付かず槍を投げつけられる。投げたときに発せられた殺気を感じたウタは、頭目掛けて飛んでくる槍をギリギリで避けたが、フードが破れて顔を出してしまった。

 

「なっ…猫耳…SS級はぐれ悪魔の黒歌か!?顔をよく見たら人相書きとも一致しているし…」

 

「今日は撤退だレイナーレ。本来の目標も達成したしな。それに其奴はよく見たら胸がない。別人だろう。」

 

「…どいつもこいつも、私の事を貧乳ってバカにしやがって!!」

 

思わぬ強敵が登場したと思い狼狽えるレイナーレ。ウタは仲間の堕天使に飛びかかったが一歩届かず逃げられた。振り返ってみると、「さよなら、貧相な物の持ち主さん。」などと言って、ニヤニヤしながら飛び去っていった。

 

ーーー行ったか…あー、もうヤダ。皆が皆ひとをバカにして…今度会ったら絶対に八つ裂きにしてやる!!……にしてもしてやられたわね。耳はしまっとくか。誰かに見られると不味いし。

 

腕を出したウタは耳を隠し、仙術を使いイッセーに応急手当をしていると、イッセーのポケットから赤い光が発せられるのがみえた。

 

ーーー魔法陣ね…この感じだとグレモリーさんかな?事情を説明しようか、それとも隠れるか…まあ隠すのも面倒になってきたし、バラすか。

 

そう結論づけたウタは、現れたリアス・グレモリーに声をかける。

 

「ねえ、私の先輩の悪魔さん。イッセーを助けてあげてくれない?一応応急手当はしたけどもう持ちそうにないし。一応同じクラスだからさ、流石に同級生に死なれたくはないんだ。変態だけど。」

 

一応歳上なので普段よりも敬意を示したつもりのウタだが、全くなってない上に人が死んでもあまり気にしてない素振りをしていて、更に自分の正体がバレているリアスは、最大限の警戒をしていた。

 

「…貴女は誰?何故私の正体を知っているの?口ぶりからしてウチの生徒なんだろうけど、まずは貴女自身の紹介をしてくれないかしら?」

 

「えー、面倒だな〜。また明日にしてくれない?どうせ学校で会うんだし。今日はもう疲れたから帰るね。」

 

「………わかったわ、じゃあ明日、使いの者を出すからその時に話して貰うわよ。えっと…」

 

「うーん。ま、名前くらいならいっか。緑野 詩だよ。んじゃ、イッセーをよろしく〜。」

 

結局自分に敬語は合わないと決めたウタは(そもそも敬語ではないが)いつも通りの喋り方で会話して、手をヒラヒラさせながら帰って行った。

 

ーーーあー、面倒くさくなったから死体(イッセー)を押し付けちゃったけど、怒られないといいなぁ。あ、そろそろまた修行もしなきゃな……面倒だなぁ。


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