三匹目の猫   作:AstrAl 4π

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あけましておめでとうございます。

十五話にしてまだ一巻終わってないぐらいグダグダしていますが、今年もこの様な調子でいくと思いますのでよろしくお願いします。


十五話

「んで、ここはどこで俺はなんでここにいるんだ?」

 

不機嫌そうに床に胡座をかくフリードは、目の前のソファに座っている今日出会った少女ーーーウタに尋ねる。

 

「んー、フリードがピンチっぽそうだったから?まあ今のフリードの力じゃ有利な状況だったとして部長と互角ぐらいだろうし。あ、あと話もしたかったんだ。」

 

これといって悪びれもせず、魔導書を書き進めるウタ。

 

「…ケッ。だったら何で俺は頭を殴打されなきゃいけないんすかねー。」

 

「それはフリードが悪いよ。もっと不測の事態にも対応できるようにならなきゃ。」

 

「いや、誰だって足を踏み出したら別の空間に繋がってたらびっくりするわ!あ〜あ、せっかくのイケメンフェイスにコブができちまった…」

 

そう、フリードがつい先程閃光弾を使い怯ませて逃げようとしたときに、その様子を見ていたウタがフリードの踏みだした先の空間を繋げておいたのだ。

 

「はぁ、仕方ないなぁ。治癒魔法は…っと。はい。全く、男ならそれぐらいで弱音はかないでよ。」

 

手早く魔法を探したウタはフリードの頭に手を翳して治療を開始する。

 

「ついでにストレス軽減みたいな魔法もくれね?僕ちんさっきからイライラしててさ〜。あー、今にも襲いかかりたいキブン!(性的に)」

 

「はいはい、そんな軽口叩ける余裕があるならいらないよね。そもそも精神を直接癒す魔法は作ってないから無理だよ。それに襲われたって(物理)返り討ちに遭うことぐらいわかってるでしょ?」

 

「お、おう…?(まじかよこいつの胸とかこんなんなのにそんなに経験豊富なのか…)」

 

話の食い違いによりそんな事を考えていたフリードだったが、急に髪を強く引っ張られる。

 

「いたたた!!痛いって!!」

 

「あーごめーん、手が滑ったー。」

 

ウタが棒読みで謝罪をするが今度は手を握ってフリードの頭をグリグリし始める。

 

「あだだだだだ!そんな手の滑り方があるわけないだろ!」

 

「いやー、私って誰かに胸のことを馬鹿にされるとつい物に当たっちゃうからさー。うん、仕方ないよね〜。」

 

「わ、悪かったって!ああああああ!!頭が割れる!!」

 

「はぁ、しょうがないなぁ。じゃあこれで許してあげるから、失礼なこと考えないでよね?」

 

と、トドメのチョップをお見舞いしてフリードを解放する。

 

「うおっ!………なんかさっきよりもダメージが悪化してるんですけど〜。まあいいや、俺様帰るから出口教えてくんね?」

 

「相変わらずのキャラのブレっぷりだよね…ってちょっと待ってよ。なんで帰るの?今から明日の作戦会議するんだけど。」

 

出て行こうと背を向けたフリードの襟首を掴み引き止めると「グエェ」と変な声をあげて振り返る。

 

「ゲホッ。なんだよ作戦って。」

 

「何ってアーシアを如何に自然に助け出すかって話だけど。」

 

「はぁ?アーシアを助けるってお前、あの悪魔達はお前の仲間じゃねぇのか?」

 

そんな必要ないだろ、と言いたそうにフリードは怪訝な視線を送るが、ウタは顎に手をあてて考えこむ。

 

「それはそうなんだけど…多分教会(あそこ)に帰すか連れ戻されるかになると思うんだよね。根拠はないけど…だから決行は明日の儀式の最中にするよ。あとお前って出来ればやめて欲しいな。あんまそう呼ばれるの好きじゃないし。」

 

「そんな事をおま…ウタが許すのか?アーシアが危険に晒されるんだぞ?」

 

電話のときとは真逆の発言をするウタに困惑するフリード。その質問にウタは頷くが、「でも」と続ける。

 

「でも、今の部長の雰囲気、と言うか感情…欲望みたいなのを凄く感じるんだ。まあ確かに回復する力は誰だって欲しいから…ああ、堕天使達の狙いはアーシアの神器か。」

 

納得したように頷くウタは「フッ」と不敵な笑みを浮かべてフリードを見据える。

 

「……おい、一人で納得してんじゃねえよ。クソ堕天使達の狙いとアーシアの命と何が関係あるんだ。ちゃんと助かるんだろうな?」

 

「おー、怖い怖い。大丈夫だって。神器を抜くっていうのはつまり、その人の魂の一部だけを摘出するわけだから、それ相応の時間と魔力が必要なわけだし、高度な魔法になればなるほど魔法の詠唱なり魔法陣なりどんどん繊細になるから邪魔もしやすいの。その隙を突けば奪還も殲滅も余裕なんだよね。フリードの口ぶりからしてその堕天使達ってフリードより弱いんでしょ?目を瞑ってても余裕だよ。」

 

「…俺が力を見誤ってるかもしれないぜ?それにあいつらは一人じゃねえし、明日はクソ神父どももわんさか集まってくるらしいぞ。」

 

ウタの言動が驕っているように映ったフリードは声を低くして注意するが、そんなものどこ吹く風と言わんばかりに手をヒラヒラさせて受け流す。

 

「あーご忠告ありがとー。まあさっきの戦闘を見せてもらった側からすれば、あんなスレスレで後ろに跳んで攻撃を受け流したり、攻撃を何度も掠らせたりする様な加減のできる人が力を見誤るとは思ってないから。」

 

「チッ、気付いてやがったか。」

 

「まーね。手の抜き方はかなり凄かったけど、手を抜く演技の方はあんまりだったと思うよ。まあ流石にイッセーが素人過ぎて逆に大変だったろうけど。」

 

「また説教かよ。あー、だるいだるい。結局どうすればいいのかさっさと教えろ。そしてさっさと帰らせろ。」

 

話が長引くとめんどうだったフリードはウタを鋭く睨みつけて催促すると、ウタはイライラを感じ取ったのか少し崩れていた姿勢を正す。

 

「まったく、せっかちだなー。ま、演技指導する気はなかったから安心してよ。それで本題の作戦なんだけど、その儀式って教会でやるんでしょ?」

 

「ああ、あそこの地下でやるらしい。俺は一人で一階で邪魔しにきた奴の足止め、ほかの雑魚は下でうじゃうじゃしてんじゃね?クソ堕天使どもは主犯が儀式して残り三人が周りの警戒だってよ。」

 

「ふむふむ、まあ大体そんな布陣がセオリーだね。ただなー、こっちの布陣がわからないからなんとも言えないんだよね。纏めて向かうか別行動するか…あとはイッセーの単騎突攻か…」

 

可能性をテキトーに呟いていたウタだが、三つ目の可能性を聞いたフリードは途端に怪訝な顔をする。

 

「んあ…?おい、イッセーってさっきの雑魚だよな。いくらなんでも無茶すぎんだろ。」

 

「うん、だからその可能性はほぼないとは思うんだけど…もしそうなったら私がサポート役で行くけど、誰かと一緒なら今日みたいにフリードの撤退支援するまでは外で待ってるかな。あ、フリードはちょっと遊んだらすぐに吹っ飛ばされてね。壁にでも当たってくれたら私が爆破して飛距離稼ぐから。あ、これは決定事項だから。まあ作戦としてはこんな感じであとはアドリブってことで。」

 

「んな無茶な…ケッ、乗りかかった船だ、しゃーねぇ。こっちも腹ァくくってやるから絶対にしくじんなよ?」

 

「もう、信じてないでしょ…大丈夫、その気になればあの程度の堕天使なんて一捻りだから。まあその気になればだけど。あ、教会に行くなら空間繋げておくからここから帰るといいよ。」

 

ウタは立ち上がると手を軽く振り下ろして教会の前に空間を繋げる。フリードは物珍しそうに裂け目を眺め、一歩踏み出したところで振り返る。

 

「…そういやおま…ウタとしては最終的にどんな形で助けるつもりなんだ?」

 

「ん?まあ出来れば人のまま助けたいけど…アーシアが悪魔になる事を望んだなら諦めるかな。人でも悪魔でも友達だから。」

 

「そうか……アーシアを頼んだぞ。」

 

そう告げて前に向き直り帰ろうとするが、今度はウタが呼び止める。

 

「あ、予備とかあったらさっきの銃と閃光弾、私にくれない?」

 

「ああ、別にそれぐらいなら構わねえが、何する気だ?」

 

「ふふ、ちょっとね。面白いものを作ろうと。そういえば結局その口調で安定したの?」

 

「ああ、別に今誰かを殺すわけでもねぇし、ウタには本性バレちまってるからな。ほらよ。」

 

フリードは閃光弾と破魔銃を手渡すと「じゃあな」と、今度こそ背を向けて教会に帰っていった。

 

「ふぅ、これで明日は大丈夫かな。なんか最後の別れみたいなこと言われたけど、電話できるの忘れたのかな?………まあいっか。とりあえずさっさとこの魔法を完成させて、銃もいじって…ふあぁ。眠くなってきたし、それに明日に響くと悪いからやっぱり今日は寝よっと。」

 

そう呟いたウタは寝室へ向かって行った。


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