「にゃーお!!」
ウタは町を一周した後、家に帰って来た。本来ならば町の外れで
二、三分経つと、町の殆どの野良猫達が家の前に集まっており、「ほんとどこにこんなに隠れているの?」と思いながらも中に招き入れる。
「それじゃ、皆のご飯を作るから、その辺でくつろいでね。」
と声をかけると、猫達は自由にする。広い家を使って追いかけ合う猫、他愛のない会話をする猫、今か今かと料理を待ちわびる猫、屋上で日光浴する猫などいるが、ウタの料理する様子を眺めていた猫が、ふと思った疑問を訪ねる。
「にゃー?」
「ん?あー、猫耳?まー、他人に見られるとマズイからさ〜。 まあ隠密魔法使っとけばバレることはないけど。皆と話せないからそれはしないよ。まーでも、皆しかいないから出しとくか。」
「にゃ〜。」
「猫としての生活は楽だしいいけどねー。人とつきあうのもいい事あるし。今の世の中人の姿をしてた方が都合がいいんだよね〜。」
そんなやりとりをしているうちに、料理が完成したので全員集め、ウタも一緒に昼食を食べる。
「皆、食べながらでいいから聞いてね。今日集まって貰ったのは、また監視を頼みたいの。」
そう前置きをして皆を見回すと、食べるのをやめしっかりと耳を傾けていた。
「別に食べながらでいいのに…それで、今回の対象はアーシアっていう教会にいる金髪の可愛い子。なんか危険そうな事があったら教えてね。あ、因みに白髪の男は多分その子の仲間だから注意してね。」
「にゃ〜?」
「うん。頼みたい事はそれだけだよ。」
そう区切ると、皆食事を再開した。
数分後、ウタは食事を終えたので「んじゃ、私は調べ物があるから。ここに穴を開けておくから帰るときにはここを使ってね。」と書庫に向かう。昨日と同じく隠し書斎に入ると、机の上に一メートル近く積み上げられた本があった。
「…多過ぎじゃない?そもそもうちにこんな本あったっけ?まあ師匠だし背表紙に細工でもしてたのかな?」
と、一番上にある本を取ってみる。『悪魔のすべて』と書かれていた。
「うわ、分厚いな。…へぇ、悪魔にもたくさんいるんだ…色々特徴もあるらしいし、今度気が向いたら読んでみよう。」
軽く目次と前書きに目を通し隣に置く。次は本と言うよりも紙束と言う方が近いもの。表題は『天使とは』とある。
「何このレポート…って師匠がまとめてるし。天使なんかと接触する機会なんてあったのかな?まあ今回はまだ天使とか出てきてないから今度でいいや。お、次はちょっと薄いから期待しようっと。」
レポートも隣に置いて次を読もうと表紙を見ると、漆黒の翼を生やしたチョイ悪っぽい男がキメ顔をしていた。
「………写真集?背表紙に『A★ZA★ZE★L』って書いてあるし…」
中を見ることなく次に移ると、今度は別の堕天使の表紙だった。
「もしかしてこの辺の薄い奴全部堕天使の写真集!?…やっぱりそうか。写真を見てる暇はないし、そもそも興味ないし。さっさと次に行っちゃお。」
その後も次々と本を見ていくが、
「『これを読めば君も使い魔マスターだぜ!!』…
「「妖怪百科事典』ねー。いや私、全くと言っていいほど妖怪に出会ったことないし、いらないよね。」
「『秘境ガイド〜〜〜人類未踏の地へ〜〜〜』って未踏の地なのにどうやってこれ書いたのさ。明らかに嘘でしょコレ。」
「お、『
ようやく読みたくなる本を見つけ、ホッとしつつページをめくる。
「『しかしながら彼等は愚かにも対立しあった。悪魔と堕天使は冥界の覇権を握るため、天使は穢れし者達を一掃するため三つ巴の戦いが始まった。』…そんな事があったんだ。でも天使達って馬鹿だよね。漁夫の利を狙えば良かったのに。」
そんな事を考えながらさらにページをめくる。
「『最初は三陣営で戦っていたが、やがて戦争が進み各々の陣営が疲弊してくると、力を得る為に人を引き込もうとした。天使達は人に神の祝福を与えて兵として戦わせ、悪魔達は人の欲望を叶えてその対価として力を手にし、堕天使達は人を惑わして天使や悪魔の力を削いでいった。』どこの陣営も頑張ってるねー。てかこの堕天使に誘惑されてる人の顔…鼻の下伸ばしすぎでしょ。おのれ巨乳め!」
胸に手を当て、溜め息をつくが、気を取り直して次へ進める。
「『それでも戦力差は拮抗し、最早残された戦意は意地と
ドラゴンが話に出てこないことに腹を立てたウタは本を閉じて放り投げる。結局どの本もちゃんと読むことなく、最後の本になってしまった。
「やっと最後…ってどうせ興味ない本だろうけど。」
半ば呆れつつも本を開くとそこには、乱雑な記号の羅列が描かれている。
「これは…!師匠のメモに書いてあった挑戦状!?…解いてやろーじゃんか!」
テンションの上がったウタはそう意気込んで取り掛かる。忍び寄る足音に気がつかないままーーー
遅れてしまいました…
テストあるので次週はもっと厳しいです…