三匹目の猫   作:AstrAl 4π

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今回ちょっと短いです。


十話

とくに教会(あちら)側からの干渉もなく、教会の近くへとたどり着いたウタ達。

 

「あそこに見えるのが教会だよ。ここまで来れば大丈夫?」

 

「はい、ありがとうございます!是非教会でお礼をしたいのですが…」

 

「うーん、アーシアからの誘いなんて、断っちゃ悪いよね〜。うん、じゃあお邪魔しちゃおうかな。(これでアーシアのこと調べるのが楽になるかな。それにしても、いつの間にあそこ使うようになったんだろ?)」

 

アーシアと一緒に教会に入ると、白髪の神父が長椅子に座って本を読んでいた。

 

「あの…今日からここに来ました、アーシア・アルジェントです。よろしくお願いします!」

 

「おんやぁ〜?君がアーシアちゃんか。話には聞いていたよ。俺っちはフリード・セルゼン、よろしく〜。で、そっちの緑色のあんたは何モンだ?」

 

フリードは立ち上がるとウタを若干睨みつつ訪ねる。

 

「えーっと、アーシアの道案内でお礼にと呼んでもらった緑野 詩だよ。(この人は…何を考えてるか、感情がごちゃごちゃ混ざりあっててよくわかんないな…)」

 

フリードはウタが敵でないことがわかると「あっそ」と興味無さげに返事をしてまた読書に戻る。と、アーシアがペコリとお辞儀をした後、部屋の奥へと歩いていくのでウタもそれに続く。

 

「こっちです。簡単なお茶ぐらいしか出せませんが、ゆっくりしていってくださいね。」

 

「うん、ありがと。でも初めてなのによくわかったね。」

 

「まあ、前にいた教会と構造が似ていたので…」

 

そこでフッと目を伏せ、悲しそうにするアーシア。そのことを気になったウタは聞くか迷ったが、思い切って聞いてみることにした。

 

「ねえ、アーシア。よかったらでいいから、アーシアが過去に何があったのか教えてほしいな。そんな悲しそうな顔してちゃ可愛い顔が台無しだよ?」

 

「えっ!?そんな顔に出てましたか?ご、ごめんなさい!…はい、優しいウタさんに聴いてもらいたいことがあります。よろしければ聴いてもらえますか?」

 

「うん、いいよ。」

 

ちゃんと信用してもらえて嬉しいのか、若干頬を緩ませつつも、誰かに聞かれないよう防音の魔法を使って、アーシアの話に耳を傾ける。

 

 

 

そこでアーシアによって語られたものは、とても理不尽で残酷で、アーシアのような若者には辛すぎる経験だった。

 

「アーシア…私はそんな経験をした事がないから、あんまり言えないけど、よく頑張ってきたね。アーシアは世界一強くて優しい子だよ。」

 

「い、いえ!そんなことないですよ!きっと私がまだまだだから、神様が試練をお与えになっているんです。」

 

「ううん、そういった苦しい事や辛い事に当たっても前に進めるってのは誰でも出来るわけじゃないよ。それに、傷ついた人には誰にでも癒しを与えることが出来るのも並大抵の人じゃできないことなんだよ。アーシアはそれを誇っていいよ!もしアーシアを悪く言う人がいたら、優しいアーシアの代わりに私がやっつけるから!」

 

ウタは少し食い気味に言い放ったが、その言葉にアーシアは俯いてしまう。膝に置かれていた手には涙が落とされていた。

 

「どうして…そんなにまでしてくださるんですか?私はウタさんに迷惑ばかりかけているのに…」

 

「うーん、なんとなくってのもあるけど…私はアーシアが頑張っているのを応援したいな〜って思ったからかな?それに…それに、友達が苦しんでいるんだったら助けるのが普通でしょ?」

 

「友…達、ですか?」

 

「うん、あんまし会えないだろうけど私はアーシアと仲良くしたいと思ってるよ。嫌だった?」

 

顔を上げ、涙を浮かべつつもとびっきりの笑顔を作るアーシア。

 

「いいえ、とっても嬉しいです!!そんなこと言われたの初めてで…ありがとうございます!」

 

「うん、これからよろしくね!」

 

と、改めて挨拶を交わし、ウタは立ち上がる。

 

「んじゃあ、私はそろそろ散歩に戻るけど、アーシアはどうする?なんならこの町を案内するけど。」

 

「えーっと、誘ってくれるのは嬉しいのですが、こちらの皆さんに挨拶したいので…すみません。」

 

「そっか、いいよ全然!また遊びにくるね!」

 

軽く手を振って部屋を出るウタ。聖堂ではまだフリードが本を読んでいたが、チラッとこっちを睨んだ後また本に視線を落とした。

 

「(なんか恨まれるようなことしたかな?相変わらず何考えてるかわかんないし、ちょっと試してみよう。とりあえず謝っとけばいいや)えっと、長居しちゃってごめんね!」

 

顔色を伺いながら軽く謝ったが、特に変化は生まれない。それならと、次の話題に移る。

 

「…アーシアの事をよろしくね?」

 

「っ!……言われなくてもわかってますよ〜。」

 

アーシアと聞いた瞬間、一瞬だけだが流れてくる感情。それはまず同情・憐み・懺悔、次いで憎悪・絶望・無力感と変わり、最後には最初に会った時の様に、沢山の感情が入り混じって解らなくなってしまった。

その事に気付いてしまったウタは友人のアーシアに害が及ぶと考え、ズンズンと近付いて問い詰める。

 

「…はぁ、かなり面倒けど、何か企んでるなら吐いて。アーシアのために。」

 

「はぁ?あんた急に何言い出すんだよ。」

 

「アーシアは私の友達だよ。私がアーシアって言ったとき、フリードはアーシアの境遇を嘆くと同時に後ろめたさを感じたの。」

 

考えていた事を読まれてかなり動揺するフリードは、思わず声を荒げる。

 

「あんた…一体何モンなんだよ!人の考えをホイホイ読みやがって!」

 

「んー、まあ人じゃないけど悪魔でもないとだけ言っておくよ。別に私はアーシアの害にならないならフリードの邪魔をしないし、むしろ手伝ってあげてもいいかな〜って思ってんだけど?アーシアと一緒に働いてるんだし、友達の友達は大体友達でしょ?」

 

「はぁ。取り敢えずあんたには関係ねーっしょ。」

 

「ふーん。……だったら消すよ?」

 

声のトーンを落とし、フリードへ殺気をぶつけてやると、あまりの力の差に、冷や汗を浮かべ固まってしまった。

 

「あれ?ウタさん、まだいらしたんですね。忘れ物ですか?」

 

「あ、ううん。話をしてただけだよ?」

 

と、丁度そこにやってきたアーシアのちょっと場違いな声で動けるようになったフリードはウタを睨みつける。

 

「さっきの事は、真剣(マジ)か?」

 

「別に嘘つくメリットないし?さっきの段階で殺ってなかったことが事実を物語っていると思うけど。」

 

それを聞いたフリードは手帳を取り出し何かを書いていく。そして書き終わったのかメモを破りウタに差し出した。

 

「…今夜話す。11時以降に掛けてくれ。」

 

「うん、どーも。意外とまともに喋れるんだね。」

 

「ふん、うっせ。」

 

イライラしてなのか、はたまた照れ臭くなったのか、フリードはそのまま外へと出かけてしまい、取り残された二人。

 

「はうう…私もお喋りしたかったです。」

 

「あー、なんかごめんね?じゃー今度こそまたね、アーシア。」

 

「はい!また来てくださいね!」

 

次の目的地に向かうべく、ウタは別の場所へのんびりと歩いて行った。




そろそろ不定期更新タグを回収していくと思います。

あと、タグもぼちぼち追加していこうと思いますが、これはつけておいた方がいいと思うものがあったら教えてください。

質問や感想なども待ってます。多分解りにくい感じになってると思うので…

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