三匹目の猫   作:AstrAl 4π

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プロローグ

『駒王学園二年生』それが自分、緑野 (ウタ)の肩書きである。性格は自覚があるぐらい飽きっぽくて面倒くさがり。顔も良いと思っていないし、背も女子の中では平均より少し高いぐらいで、自分はモテない部類に入っているだろう。そして何よりも気にしているのが…

 

「おい、イッセー。急に立ち止まらないでくれよ。」

 

「いや松田に元浜、扉を開けたのにあったのが壁だったんで立ち止まらざるを得ないんだよ。ブフッ」

 

「本当だ……プッ…しゃーないから前の扉から行くか〜w」

 

そう、圧倒的な胸のなさだ。成長期に入っていると言うのに、胸だけ育たず、中学時代からの同級生にして変態三人組に毎日バカにされている。

 

「っ!……このセクハラ魔が!!」

 

そしていつものようにブチ切れた私は拳を握りしめ思いっきり振りかぶる。

 

「ヤベッ、逃げるぞ元浜!」

 

持ち前の運動神経を発揮し、元浜の腕を引っ張り逃げる松田。しかし、扉に近いイッセーは放置されたことで、一瞬判断が遅れ…

 

「おい松田!!俺を置いて逃げブハッ!!!」

 

渾身の右ストレートがイッセーの頬に当たる。そしてよろめいたところに襟首を掴み松田達の方へ背負い投げをする。

 

「悪いなイッセー!生きてまた会おグハッ!!」

 

5メートル先まで投げるというちょっと常識はずれな力技で今日も変態達を掃除(せんめつ)したウタは、新年度早々面倒だとため息をつくのであった。

 

 

 

ーーーあー、ダルい。また無駄にチカラを使っちゃったよ。

 

新年度になり、先生達の長ったらしいお話をぼんやりと聞きながらウタはぼんやりと考えていた。

 

ーーーイッセー(変態)達も根は悪くないんだけど…やっぱり好きにはなれない。特にイッセーは…

 

そう、ウタにとってのイッセーの第一印象は最悪(セクハラ魔)だった。初めて会った中学一年生の時、学校生活を楽しみに門を通ったウタの後ろから、猛スピードで走ってくるイッセー。

 

「よっしゃあ!!俺の新しい学校生活の始まりだ!!次こそ彼女を作ってリア充に仲間入りしてやるぜ!!」

 

後ろが騒がしいな〜と思い、振り返ってみると目の前まで迫ってきたイッセーが何かに躓いて飛びかかってきた。

そのまま押し倒される…といった事にはならず、彼女は持っていたチカラを使い、目にも留まらぬ速さでイッセーを背負い投げしたのだ。結果怪我こそしなかったものの、あの日以来ウタにはちょっとしたトラウマになっている。

 

因みに、その時は背負い投げされてキレたイッセーが、ウタに「この貧乳!!!」と言った途端にマウントをとられボコボコにされ、ウタよりも酷いトラウマが出来てしまったのである。

 

 

 

始業式も終わり、ウタはする事もないので帰って散歩にでも行こうかな〜、などと考えていたら、唯一の親友である桐生が話しかけてきた。

 

「ねえねえウタ。腕の無い人って知ってる?最近になってこの近くで偶に見つかるらしいんだけど。」

 

「あー……うん、聞いた事ぐらいはあるかな。」

 

「よかったら今日探しにいかない?大体どの辺で出るのか目星はつけてんだけど。」

 

「えー、面倒くさそうだからパスー。」

 

そう返すといつもの事なのか、桐生は気にした様子もなく、「そっか、じゃあまた明日ね」と言って先に帰っていった。

 

ーーー探しに行くって言われても…それ自分の事だろうし。

 

そう心の中で呟きながら、ウタも鞄をもって帰ることにした。


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