カルデア男子たちの日常   作:3103

2 / 10

 


第2話

 

「あー……。邪ンヌのおっぱい揉みたかったなぁ……」

 

 マイルーム。

 一人天井を呆然と見上げる俺。

 思うことはただ一つ。オルレアンの最終決戦で邪ンヌのおっぱいを揉めなかった後悔。

 次いつ来るかも解らぬピックアップ。回しても回しても出逢えぬ無間地獄を思うと、あの時決死の覚悟で揉みに行けば良かったなぁ。と己が選択を後悔する。

 

「……マリーにマルタさんにアタランテさん。可愛い子多かったなぁ。明日貰える呼符で誰か来てくれないかなぁ。どさくさに紛れてジャンヌのおっぱいも揉んどきゃ良かったなぁ……」

 

 思い返しているとムラムラしてきたので俺はズボンを下ろす。

 さぁ、オ◯ニーの時間(ショウタイム)だ。オカズの数を数えよう。

 聖処女の揺れる弾むおっぱいを頭に思い浮かべ、いきり勃つ息子に右手を添える俺。今こそ欲望を解放する時だ。

 深く息を吸う。覚悟は出来た。後は発射するだけだ。

 

「喜べ少年。君の願いはようやく叶うーー」

 

「おうマスター。ちょっといいか? 明日の戦闘なんだがーー」

 

 右手が動き出すのと、部屋に全身青タイツが入って来るのは同時だった。

 入口の方を見る俺。全力で目を逸らすランサー。

 俊敏Aは伊達じゃない。

 ウチのカルデア一の生存率を誇るランサー、クーフーリンは苦虫を噛み潰したような顔を、俺から全力で逸らしていた。

 

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 

 

「……なぁ。そろそろ機嫌治せってマスター。ノックしないで入った俺が悪かったからよ」

 

「もぅマジ無理。。マリカしょ。。」

 

 枕元に置いてあったDSを起動する。

 しかしソフトは入っていなかった。家に置いてきてしまったらしい。これではチャットをするだけの機械だ。しかもこのカルデアにはDS持ってる奴は俺以外いない。

 流石の俺も一人でひたすら下画面にアンパン◯ンを書き込む作業はしたくなかった。

 俺は静かにDSの電源を切る。

 

「……それで。なんの用っすかランサーさん。俺こう見えても自家発電に忙しいんですよ。おっぱいタイツ師匠との惚気話ならまた今度にして欲しいんですが」

 

「んなのした事ねぇだろうが。する気もねぇけど。……つーかお前、どこで知ったが知らないけどよ。毎度毎度、師匠に突っかかるの止めた方がいいぞ。ありゃお前が思ってるほどいい女じゃねぇからな。変な幻想を抱くのはほどほどにしとけよ」

 

「あんなおっぱい大きいのに? あんな美人なのに?」

 

「確かに見たくれと身体つきはいい。絶世の美女とはあんな奴の事を言うんだろうよ。……だが中身はとびっきりの厄い女だぞ。人刺し殺した血塗れのナイフをプレゼントしてくる女だぞ。隙見つけりゃ殺し合いしようとする女だぞ。お前に受け止められんのか?」

 

「……ヤ、ヤンデレとか好物だし。殺し愛とかむしろ大好きだし。イケるし」

 

「はっ。シールダーの大人しそうな嬢ちゃんにすらビビって手を出せないお前にゃ荷が重ぇよ。無理すんな。もっと楽に口説けそうな奴からチャレンジしな」

 

「……あんたら特有の『え? 女口説くくらい楽勝だろ?』みたいなスタンス本当腹立つんですけど……! この色男共が! そのハードルが俺らにとってどれほど高い事か知らないんでしょうね! ……世の中にはねぇ、女の子に近づきたくても近づけない野郎もいるんですよ!!」

 

「近づくのも無理なのかよ。我がマスターながら情けねぇ奴だなぁ……。そんな気負うこたないって。もっと気楽に行けよ。気楽によ」

 

 肩を竦めながら言うランサー。

 どうやら俺の思いは伝わっていないらしい。

 ちくしょうこれだからモテ男は。

 呪ってやる。今度の冬コミでアチャ槍本が大量に出回る呪いをかけてやる。その様子がツイッターで回って来て絶望するがいい。ふはははは。

 

「つーかそんなにヤりたいならヤりゃいいじゃねぇか。清姫だっけ? あの竜の嬢ちゃんなら簡単にイケるんじゃねぇの? お前にデレデレじゃん。特異点からこっちに着いてくるくらいには」

 

「い、いや……。清姫ちゃんはちょっと……。……手を出したら後戻り出来なくなるといいますか。デッドオアマリッジといいますか。第二の安珍確定といいますか。丸焦げ決定といいますか」

 

「まあ確かにあの嬢ちゃんも師匠と同方向のアレだよな。周り見えてないっつーか。一度見定めたらそれに一直線つーか」

 

「手を出したら確実に最初で最後の女になりますよね、物理的にも。それがいいって人もいるでしょうけど、俺は嫌なんです。もうちょっと色々遊びたいんです。だから初めての相手はもっとこう……、後腐れの無い人がいいんです。身体だけの関係、みたいな。一夜の過ちで全てを許してくれる人がいいんです。母性を感じられれば尚良し。……あ、本番まで行かなくても、普通におっぱいだけでもいいです。舐めてくれなんて言いません。手だけでも可です」

 

「俺が言うのもアレだけど、割と最低だなお前。下半身に素直すぎんだろ。叔父貴か」

 

「なんとでも言えばいい。誰になんて言われようと、俺は自分と性欲に素直に生きますから。……ただ流石にフェルグスさんと同列に扱うのは止めてくれません? 俺には荷が重すぎます」

 

「そうだなお前童貞だもんな(笑)」

 

「ちょっと屋上こいおらぁぁぁぁぁっ!! 久々にキレちまったぞこんちくしょぉぉぉぉぉぉォっ!!」

 

 ランサーの発言に思わず近くにあったテーブルを叩く。

 力加減を間違えた。滅茶苦茶痛い。軽く涙が出てきた。

 

「お前いつもガチャ回してる時そんな感じじゃねぇか。……ただまぁ、身体動かしたいってんなら付き合うぜ。今日は一日待機してたから鈍ってるしよ。やるなら死ぬ気でこいや」

 

「上等ォ!! アイルランドの光の御子だかなんだか知らないがやってやんよ!! 俺が勝ったらマナプリズムにしてやるからな!! 覚悟しとけよ!!」

 

 ついに本気を出すときが来てしまった。

 俺は軽快に口笛を吹くランサーを伴って部屋を出る。

 ここらで一度、主人(マスター)使い魔(サーヴァント)の関係をしっかりと教え込まねば。

 ククク。滾ってきた。滾ってきたぞ!

 今宵のぐだ男は血に飢えているっ!!

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 

「お前クソ弱いな」

 

「すいません調子乗ってました」

 

 ダメでした。

 三十分後。ランサーに弄ばれボロ雑巾になった俺が、マイルームの床に無様に転がっていた。

 サーヴァントはくそちゅよかった。人外の化け物達と戦う為にわざわざ呼び出した英霊と、童貞の魔術師見習い。冷静に考えれば勝てる筈は無い。勝てる筈無いのに高まったテンションに流されて随分と阿呆な事をした。

 痛む身体を押さえながら起き上がり、ベッドに身を投げる。

 

「少しは身体も鍛えた方が良いんじゃねぇの、お前。この前のオルレアンで知ってるとは思うが、人理の修復なんざ嫌でも危険な目に遭うんだからよ。俺らが護ってやるっても限度があるし、剣持って戦えとは言わねぇけど、ヤバくなったら逃げ切れるくらいの体力はあった方がいいと思うぞ。最悪俺らは死んでも代わりを呼べるがよ、お前は替えが効かないんだから」

 

「ウィっす。心掛けます」

 

 ため息まじりに言ってくるランサー。

 ボコボコにされて挙句、やんわりとお説教まで受けたでござる。くやしいのぅくやしいのぅ。

 

「……ま、煽るような事言って悪かったよ。代わりと言っちゃなんだが、特別に俺流の口説き方を教えてやる。心して聞けよ?」

 

「えー……。そんなんやり方知ってても実行できなきゃ意味無いじゃないですかやだー。話かけんのも厳しいのに関係を発展させんのなんてハードル高いっすよ」

 

「先ずそういうとこを治す必要があるな。ハナから出来ないと決めつけんなよ。ナンパで大事なのは自信を持つ事だ。オドオド話し掛けたって女は振り向かねぇ。最初に自分を騙せ。嘘でもいいからどしっと構えて頼りになる男を演出しろ。これが肝心だ」

 

「……なんか思いの外マトモな意見が出てきて軽くビビってんすけど。ぶっちゃけ話半分で聞いてましたよ。ケルトなんでもっとカッとんだ意見が出てくると思ってましたし。人妻無理やり寝取れとか。命は助けてやるから種付けさせろとか。現代社会でやったら即お縄になる脳筋丸出しの奴が」

 

「否定したいけど出来ねぇなそれ。若気の至りとはいえ、俺も若い頃は色々やらかしたし、身内もそんな連中ばっかだし。……ただこれだけは言わせてくれ。……人妻はギリシャだしあの時代、ヤバいのはケルト(ウチ)だけじゃない」

 

 なんだかとても迫真の表情だった。

 ランサーは咳払いをすると、人差し指を立て指南の続きを話始める。

 

「最初から女といい仲になろうと気負う必要はねぇよ。お前みたいな初心者が無駄に意識したらガチガチに固まっちまうからな。先ずは気楽に、話し掛けるのを目的とする事から始めろ。んで、慣れてきたら食事に誘うなり飲みに誘うなり次のステップに進めばいい。何事も数こなすのが大事だ。一回二回失敗したからって腐らず、ドンドンチャレンジしてけ」

 

「ガチっすね。ガチアドバイスっすね。ホロウで満喫した現代の経験が生きてますね。実に参考になります。……で、俺が一番聞きたいのはそっから先に進める方法なんですが」

 

「落ち着けよマスター。そうやってがっつくと女は逃げてくぜ? アイツらすぐ男の下心を見抜きやがるからな。色気を出すと上手くいかない。回りくどくても我慢してそういう雰囲気になるまで待つのが大事だ。事を急ぐと仕損じる。これは戦いも女も同じだな」

 

「えー……。もっとこう、出会って二秒で即合体って感じの女の子は居ないんですか? ヤりたくてヤりたくてたまらないって感じの、彼女にはしたくないビッチでエロエロな感じの子は?」

 

「メイヴ」

 

「すいませんあの人は勘弁して下さい。ヤった後が怖すぎます」

 

 思わず土下座していた。

 身体の震えが止まらない。こんな気持ち初めて。もう何もかもが怖い。これも全部コナハタの女王ってヤツがいけないんだ。

 

「……まあ、そういうこった。上手い話にゃ裏がある。どんなもんでも簡単に手に入るに越した事は無いけどよ。ほいほい手を出して痛い目見るのは自分だからな。気をつけろよマスター」

 

「……そっすね。ご忠告ありがとうございます。でもご安心を。このぐだ男、幾らムラムラしてるとはいっても見えてる地雷は踏み抜きませんので。見抜きはしますけど」

 

「上手いこと言ったつもりのドヤ顔止めろ。それただ思春期なだけだろうが」

 

「なんかメイヴさんの話してたらムラムラしてきました。ちょっとレイシフトして人理救ってきましょう。ブーディカさんのおっぱいが俺を待ってます。早く行きますよ、ランサーさん。ばしばしゲイボルクで即死出して下さいよ」

 

「いや確かに早く修復した方がいいんだろうけどよ。流石に動機が不純過ぎてそんなんで進めていいのか不安になるんだが……」

 

「大丈夫です。表向きにはちゃんと人類を救おうと使命に燃えてる感を出しときますから。バレなきゃ救世主ですよ。はは、チョロいもんすねぇ、英雄って」

 

「お前今すぐ全世界の英雄に謝れ。ぶっ殺されても知らんぞ」

 

 不承不承、といった感じのランサーを引き連れ再び部屋を出る俺。

 待ってろよローマ。待ってろよネロちゃま。

 湧き上がる情熱を胸に、俺は人類史を守る為、戦いに赴くのであった。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。