メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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さて、1章に登場したタロウに続いて、今回登場するのは……?


第68話 やらなきゃならないこと

時は少しばかり遡る。

 

かつてエンペラ星人の手によって引き起こされた、闇の勢力と光の国との壮絶な戦い。

 

ウルトラ大戦争(ウルティメイトウォーズ)と呼ばれるそれは、ウルトラマン誕生以来の大事件だった。

 

「戦える者は私に続け!それ以外は銀十字のところへ!!」

 

宇宙警備隊隊長であるゾフィーが声を張り上げる。

 

突如として現れた敵の軍勢は既に光の国へ侵入し、暴虐の限りを尽くしていた。

 

もはや警備隊の力だけでは手が足りないほど、奴らは数と実力の両方を振るってウルトラの星に攻めてきたのだ。

 

「エンペラ星人……!何者だ奴は……!?」

 

複数の幹部と共に怪獣軍団を従えて侵攻してきた、リーダー格である一人の宇宙人。

 

自らを暗黒の支配者と名乗った者は、歴戦のウルトラ戦士であるゾフィーですら寒気を感じるほどの絶大な力を有していた。

 

立ち向かった者を残らず蹴散らし、今は大隊長————ウルトラの父と交戦中。

 

「大隊長と互角にやり合うとは……!」

 

「ゾフィー隊長!第三波、来ます!!」

 

「私が片付ける!全員射線上から離脱しろッ!!」

 

上空から迫ってきた大量の怪獣達に右腕の照準を定め、手の先にエネルギーを集中させる。

 

見たところ敵の数は五十を超える。ならば一掃するには少々リミッターを緩める必要があるだろう。

 

「シュアッッ!!」

 

「◾︎◾︎◾︎◾︎ーーーーーーッッ!!」

 

爆発的な勢いで解放された光が前方へ一直線に伸び、波のように押し寄せてきた怪獣の群れを蒸発させる。

 

ウルトラ兄弟のなかでもトップクラスの威力を誇るゾフィーの必殺技、M87光線だ。

 

「……よし……!引き続き怪獣達を押し留めるぞ!!大隊長の戦いを邪魔させるな!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……?」

 

ウルトラの星から遠く離れた辺境の惑星、K76星。

 

前触れもなく送られてきたウルトラサインに、ウルトラマンレオは首を傾けた。

 

「……!“応援を求む”……!?」

 

予想外の内容に狼狽を隠せないレオに、拘束着で身を固められた一人の青年が尋ねる。

 

「……?おい、どうしたんだ?こないなら俺から————」

 

「修行は中断だ。俺が戻るまでここを離れるなよ」

 

「なに……!?おい待て!!」

 

引き留めようとする青年には見向きもせず、レオは地を蹴って飛翔する。

 

一心不乱に速度を上げ、サインの発信源である光の国へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今度は、この星が狙われるのか」

 

初老の男性が海岸沿いを歩きながら、かつての記憶を思い出す。

 

法衣姿に笠。太陽の光が指にはめたリングに反射して輝いていた。

 

 

◉◉◉

 

 

「ええぇえぇえええええええ!?!?」

 

新しい曲が完成し、意気込みも出来たところで鞠莉が突然驚愕の声を上げた。

 

全員が何事か、といった顔で彼女を見やる。

 

曇った表情で携帯を耳から離した鞠莉に果南が尋ねる。

 

「今度はなに?」

 

「良い知らせではなさそうですわね」

 

「実は……学校説明会が一週間延期になるって……」

 

一週間後……つまり翌週の日曜日。

 

その日に何があるのかすぐに察した皆が深刻そうな顔を浮かべる。……千歌を除いて。

 

「でも、どうしてそんな急に?」

 

「……雨の影響で道路の復旧に時間がかかるので、一週間後にしたほうがいいと……」

 

「確かに、その考えはわかるけど……」

 

「でも……よりによって……」

 

会話を聞いた千歌が呑気な様子で瓦を踏みながら屋根を移動し、こちらを見下ろす。

 

「どうしたのみんな?その分もっといいパフォーマンスになるよう、頑張ればいいじゃん!」

 

「またこの子は……」

 

呆れ顔のステラに続いてダイヤが悩ましい表情で口にする。

 

「どうやら状況がわかってないようですわね」

 

「問題です!」

 

「ん?」

 

旅館の窓から顔を出している曜が千歌に向けて問う。

 

「ラブライブの予備予選が行われるのは?」

 

「学校説明会の次の日曜でしょ?」

 

「……ですが」

 

未だ気づく様子のない千歌に瞳を細めた梨子の質問が飛んだ。

 

「そんな時、その説明会が一週伸びるという知らせが届きました。ラブライブ予備予選の開催日は変わりません」

 

「「二つが開かれるのはさて、いつでしょう!?」」

 

これでもかといった語気で千歌に問いかける。

 

自信ありげに腕を組んで見せた千歌の表情は、一瞬にして崩れることとなった。

 

「そんなの簡単だよ!…………んっ!?」

 

答えに気づき、驚いたところで足を踏み外したのか、千歌は吸い込まれるように地上へと落下する。

 

「ちょっ……!?」

 

「未来、GO!」

 

「GO!じゃねーよ!!」

 

瞬時にステラに蹴り飛ばされた未来は千歌が落ちようとしている真下に滑り込むようにして倒れこんだ。

 

「うっ!!」

 

「ぐおあぁあ!?」

 

見事に未来の背中へ千歌が尻餅をついた。

 

重い、と叫ぶことは全力で我慢した。後で千歌に文句を言われるのはごめんだ。

 

「同じ日曜だ!」

 

 

◉◉◉

 

 

「ここが、ラブライブ予備予選が行われる会場」

 

「ここ?」

 

体育館で周辺の地図を広げ、皆でそれを囲みながら打開策を模索する相談が始まった。

 

「山ん中じゃない」

 

「今回はここに特設ステージを作って、行われることになったのですわ」

 

「それで学校は?」

 

果南が人差し指で示しながら説明を加えていく。

 

「こっちの方角だけど……バスも電車も通ってないから……」

 

「じゃあそっちに向けて、電車を乗り継いで……」

 

「あああぁぁ……!ごちゃごちゃごちゃごちゃしてきましたわぁ!」

 

「……到底、間に合いマセーン」

 

会場から浦の星学院までかなりの距離がある。予備予選が終わった後で向かっても間に合うビジョンが見えてこないのだ。

 

「空でも飛ばなきゃ無理ずらね……」

 

「……未来くん、ステラちゃん……ここらで一つ……」

 

助けを求めるような千歌の視線を見て、彼女が何を考えているのかすぐわかった。

 

「……変身して手のひらにでも乗せてけってか?」

 

「おバカ、できるわけないでしょう」

 

「だよねー……」

 

『あはは、目立っちゃうもんね……』

 

ウルトラマンに乗って会場へ移動してきたスクールアイドル、としてメディアに取り上げられることになるであろうが、そんなことをすれば未来達とメビウスやヒカリとの関係性が世界中に露見してしまう。

 

「……ん!だけどほら、鞠莉さんに頼めばヘリぐらい楽々チャーターしてくれるんじゃないか!?」

 

「おお!その手があった!……というわけで鞠莉ちゃん!」

 

「……言えると思う?」

 

「「はえ??」」

 

間の抜けた顔の未来と千歌が並ぶ。

 

秀逸な案が浮かんだ、と思いきや鞠莉の反応は芳しくないものだった。

 

「……ダメなの?」

 

「オフコース!パパには自力で入学希望者を百人集めると言ったのよ!?今更“力貸して”なんて言えマセーン!」

 

「……ちょっと、地図踏んでるよ」

 

「……ウップス。と・に・か・く!オールオワナッシング!だとお考えください!」

 

きっぱりと断られた未来達は深く項垂れては溜め息を吐いた。

 

「……現実的に考えて、説明会とラブライブ予選、二つのステージを間に合わせる方法は……一つだけ」

 

きゅ、とターンした後でダイヤは表情を引き締めた。

 

「一つ……」

 

「あるの?」

 

「ええ。予備予選出場番号一番で歌った後、すぐであればバスがありますわ。それに乗れれば、ギリギリですが説明会には間に合います」

 

トップバッターでライブを披露した後ですぐに会場を抜け出して、バスを拾って学校へ向かう。

 

彼女の言う通りこのルートならば遅れることはないだろう。

 

「……ただし、そのバスに乗れないと次は三時間後。つまり、予備予選で歌うのは一番でなければいけません」

 

「それって、どうやって決めるの?」

 

「それは————」

 

 

◉◉◉

 

 

「抽選……か」

 

微妙に引きつった顔をした未来が靴を履き替えた後で玄関から出る。

 

これから会場で歌う順番を決める抽選会が開かれるのだ。

 

一番を引いてやる、と強気な千歌達の後ろを追い、未来とステラはバス停へ向かった。

 

「大丈夫かな……俺、さっきから嫌な予感がしてならないんだけど……」

 

「なるようにしかならないんだから、そんなに深刻に捉える必要もないでしょ」

 

「あっさりしてるなあ、お前」

 

ステラにとって運任せの状況は当たる時は当たる、外れる時は外れる。といった単純な考えなのだろう。

 

だが今回ばかりは一番を引かないと、ラブライブと説明会の両方でライブを行うことは絶望的になるわけだ。

 

「……千歌達の運に賭けるしかないか」

 

『……ん?』

 

メビウスとヒカリが何かに気づく気配を感じ、未来とステラは咄嗟に足を止めた。

 

「どうかしたのか?」

 

『……空を見て』

 

「空……?」

 

言われるままに頭上を見上げると、光で描かれた文字が宙に浮いているのが見えた。

 

「これって……!」

 

「ウルトラサイン……!?」

 

『“今すぐ指定された場所に来い”……。これは僕と未来くんに宛てられたものだね』

 

誰からのメッセージなのかはわからないが、ウルトラサインが送られてきたということは、差出人はメビウスやヒカリと同じウルトラマン。

 

「……ステラ、ちょっとみんなを頼む!」

 

「……わかった、気をつけて」

 

「みんな!ちょっと急用思い出した!抽選頑張れよ!」

 

「えっ……?未来くん!?」

 

ほとんど逃げ出すようにその場を離れた未来は、送られてきた住所を確認しながら地を駆けた。

 

『……!この場所……』

 

「どこだ?」

 

『それが……未来くん、君の家だ』

 

「は……?」

 

自分の家が指定された場所と聞いて思わず言葉を失った。

 

……誰だか知らないが何をするつもりだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いで駆けつけた自宅には特に変わった様子はなく、何ら怪しい人物も確認できず、未来はほんの少し安堵した。

 

「……ほんとにここで合ってるか?」

 

『うん。確かにこの近くから発信されたものだ』

 

気配は感じない。音もしない。

 

念のため玄関の周辺をチェックし、誰もいないことを確認してから眉をひそめた。

 

「なんだったんだ……?」

 

腑に落ちない気分になりつつも、踵を返して千歌達のもとへ戻ろうとするが————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この程度も見破れないとはな」

 

「……!?」

 

声がした方へ反射的に振り返る。

 

いつの間にか背後に立っていた人影に気づき、未来は距離をとりつつ身構えた。

 

『……!』

 

「誰だ!?」

 

なぜか萎縮してしまったメビウスに疑問を抱きつつ、目の前に立つ法衣姿の男を視界に捉える。

 

笠を深く被っていて顔はよく見えない。

 

「エンペラ星人の手先か!?」

 

『未来くん待つんだ……!この人は……!』

 

「メビウス……?」

 

「……ふ」

 

不敵に笑う男性から漂う威圧感に圧倒され、一歩引きそうになるもなんとか堪える。

 

「知ってるのか……!?」

 

『……うん。この人は……』

 

被っていた笠を放り投げ、男は拳を突き出し————

 

『この人の名は————!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レオォォォォオオオオオッッ!!」

 

眩い閃光が周囲の景色を埋め尽くし、突然の出来事に未来は目を瞑った。

 

再び見えた光景を受け入れるのに、数秒の時間を要した。

 

「……え……?」

 

赤い身体の中心に宿るカラータイマー。

 

鬣のような頭部と、腹部には銀色の文字らしき模様が刻まれている。

 

一人の巨人が、未来の前に立っていた。

 

「ウルトラマン……なのか……!?」

 

唐突に現れた光の巨人を見上げ、未来は驚愕の表情を浮かべる。

 

「ついて来い。()()()には、足りないものを克服してもらう」

 

 

 

 

 




まずはウルトラマンレオの登場。
今作でもメビウスの活躍について物申すことがあるようですが……?

今回の解説も1章で出てきた設定のおさらいです。

以前語った通りウルトラ大戦争が起きた時期、ウルトラマン(今作ではベリアル)が初めて地球に降り立った日、ゼロの修行していた時期等、元設定から大幅に変更している部分が多々あります。
ややこしくならないようにするため、歴代ウルトラ戦士達の実力等はそのままですが。
また、ベリアルについては少々特殊なポジションであるため解説はまた次回辺りに……。

次回、メビウスvsレオ!?

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