メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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新曲MIRACLE WAVEを聴いた時はすぐに思いました。
「あ、これ僕の好きなやつじゃん」と。
ダンスに関してはセンターもさることながら、運動量が凄いですよね。


第67話 雨の奏で

「「「「仲良くなる??」」」」

 

すっかり険悪ムードになってしまった果南と鞠莉、そして花丸と善子が声を揃えた。

 

「そうですわ、まずはそこからです」

 

「曲作りは信頼関係が大事だし」

 

場を収めようとするダイヤとルビィの言葉に、四人は首を傾げて聞く。

 

「でも、どうすればいいずら?」

 

具体的な事が決まっていなかったことに気がつき、ステラは顎に手を当てて思考を巡らした。

 

思えばこのメンバーのことを詳しく知っているわけでもない。

 

仲良くなる方法と言われてもパッと浮かぶものではなかった。

 

「ふっ……任せて」

 

「何かあるの?」

 

急に自信ありげに立ち上がった果南に皆の視線が集まる。

 

「うん!小さい頃から知らない子と仲良くなるには————」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「————一緒に遊ぶこと!」

 

果南の手から放たれた豪速球が善子と花丸の間を通って後方へ突き抜ける。

 

「ナイスボール!」

 

それを難なく受け止めた鞠莉は上機嫌に親指を立てて見せた。

 

「これは……いったい……」

 

『ドッジボール……というらしい。この星のスポーツだ』

 

グラウンドへ移動したステラ達は、果南の案で親睦を深めるための遊戯をすることになったのだが……。

 

コートの外側で皆を眺めていたステラは不安そうに肩をすくめた。

 

「さあ、いくよー!マリ・シャイニング〜……!」

 

「ずらっ!?」

 

「任せて!」

 

花丸を庇うようにして前に立った善子が瞼を閉じ、早口で何かの詠唱を始めた。

 

「力を吸収するのが闇。光を消し、無力化して、深淵の後方に引きずり込む……それこそ!」

 

「……トルネェード!!」

 

黒時(こくじ)……喰炎(くうえん)!」

 

両手を上げてポーズを決めた善子の顔面にマリ・シャイニングトルネードなる一撃がクリーンヒットし、「のおぉーーーー!?」と間の抜けた悲鳴が轟く。

 

「ずらっ!?」

 

「ピギィ!?」

 

跳ね上がったボールが花丸、ルビィと二人の頭部へ綺麗に直撃。見事なトリプルヒットだ。

 

「ルビィ!?大丈夫ですか!?しっかりなさい!!」

 

「……あり?」

 

「…………別の方法を探しましょうか」

 

呆れ顔で眉根を揉んだステラが小さく呟いた。

 

 

◉◉◉

 

 

「はぁ〜……。やっぱりここが一番落ち着くずら」

 

「そうだよね」

 

図書室に移動した花丸達はそれぞれ椅子に腰を下ろし、適当な本を開いていた。

 

運動が得意ではないらしい一年生達は先程よりも落ち着いた表情だ。

 

「ふふっ……光で汚された心が……闇に浄化されていきます!」

 

安定したテンションで語る善子の顔には先のドッジボールで受けたボールの跡が痛々しく残っている。

 

「「あはははは!その顔〜!!」」

 

「なによ!聖痕よ!スティグマよ!!」

 

一方向かい側の机で脱力気味に本を開いている者が二人ほど。

 

果南と鞠莉は花丸達とは正反対にすっかり気力が失せてしまっていた。

 

「んー退屈〜……」

 

「そうだよー……海行こう海〜……」

 

「読書というのは、一人でももちろん楽しいずら。でも……みんなで読めば、本の感想が聞けて————」

 

花丸の言葉は二人の耳に入ることはなく、机に突っ伏した果南と鞠莉は一瞬にして夢の中だ。

 

「……ん?」

 

棚から読む本を選ぼうとしていたステラが一冊の書物に目を留めた。

 

少々厚めで、表紙には“彼らが降りた日”と書かれてある。

 

(これは…………)

 

手に取って開いてみると、まず最初に飛び込んできたのは半壊した建物の写真。

 

何かで切り裂かれたような直線的な破壊跡が印象的だった。

 

「それは初めて怪獣騒ぎが起こった時の記録ですわ」

 

呆然と写真を眺めていたステラに説明するような口調でダイヤが歩み寄ってきた。

 

「これが……」

 

パラパラと流し目でページを進めていくと、ぼやけた人影が写った写真が視界に入る。

 

『……!ベリアルか……』

 

「……地球に初めて降り立ったウルトラマン」

 

赤と銀の体色が辛うじて確認できるその資料は、まだエンペラ星人の手に堕ちる前のベリアルの姿だった。

 

「……あの時、私達を助けてくれたウルトラマン。今はどこで何をしているのですかね」

 

『……きっと今もどこかで、平和のために戦っているさ』

 

濁った言葉がヒカリの口からこぼれる。

 

今はこう言うしかない。メビウスが言うにはベリアルは既に皇帝の配下となっている可能性が高いと聞くが、彼女達にそれを教えるのはあまりに酷だ。

 

「……さ、二名ほどこの場所がお気に召さない人達もいるみたいだし、次の案を考えましょうか」

 

本を閉じて後ろで寝ている果南と鞠莉に冷たい視線を注ぐステラ。

 

……このままで本当に曲なんか作れるのだろうか、と不安が拭えない。

 

 

◉◉◉

 

 

またも場所は変わって、一行はとある温泉にやってきていた。

 

ダイヤの分析によればアウトドアな三年生とインドアな一年生に分かれていることが今までの失敗の原因、とのことだった。

 

ドッジボールにしろ読書にしろ、結果としてそれは現れている。

 

「それはそうとして……どうして温泉なの?」

 

「裸の付き合いですわ」

 

肩までお湯に浸かったダイヤがほっと息をついてそう言う。

 

彼女曰く、お互いに自分の姿をさらけ出すことで強い信頼関係に繋がる……らしい。

 

(カノンの大浴場とはまた違った雰囲気ね……。これが“和”というものなのかしら)

 

周囲に広がる露天空間を興味深そうに眺めるステラ。

 

ちなみに一糸まとわぬ姿になるにあたってヒカリは外で待機だ。上手いこと一般人には見つからないように身を潜めてもらっている。

 

「くくく……身体に……身体に染み渡る……!このパトスが!」

 

「暗黒ミルク風呂ねえ……。これも“和”……?」

 

「違うと思うずら」

 

「ああ〜……極楽ぅ〜……!」

 

怪しげなオブジェから流れるミルク色のお湯に浸かる善子とルビィを見て、ステラはまたも唸る。

 

裸の付き合い……。暗黒ミルク風呂……。地球の文化はまだまだ奥が深い。

 

(……む。なんだかんだ言って、わたしも楽しんじゃってるわね)

 

未来のことも悪く言えないな、とちょっぴり反省するステラであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかくお風呂入ったのに、雨なんてね……」

 

突然降ってきた雨をしのぐために、とあるバス停前で雨宿りをすることになった一同。

 

「結局何だったんですの……?」

 

「確かに何しに行ったんだか」

 

「マルはご満悦ずら」

 

「ルビィも」

 

楽しかったといえばそうなのだろうが、本来の目的である曲作りについては何も進展がなかった。

 

「あちらを立てればこちらが立たず……まったく」

 

「より違いがはっきりしただけかも」

 

数秒の沈黙のなかを雨音が満たす。

 

「どうしよう、傘持ってきてない」

 

「どうするのよ?さっきのとこに戻る?」

 

「それはちょっとなあ……」

 

「……くしっ!結局、何も進んでないかも……」

 

どんよりとした空気が漂うなか、一滴の水を垂らすような一言が花丸の口からこぼれた。

 

「近くに、知り合いのお寺があるにはあるずらが…………」

 

 

◉◉◉

 

 

「入っていいずら」

 

「え……こ、ここですの……?」

 

「いいの?」

 

「連絡したら、自由に使っていいって」

 

頭上では灰色の雲が空を覆い尽くしている。

 

小雨が降り続ける外を歩き、ステラ達は門の前で固まって中の様子をうかがった。

 

「お寺の人はどこにいるの?」

 

「ここに住んでるわけじゃないから…………いないずらぁ〜……」

 

「怖かないわよ」

 

懐中電灯を下から自らの顔に当てて怯えさせようとする花丸を尻目に、ステラは奥に視線を移した。

 

本堂だろうか。全体的に黒っぽい建物が視界に入った。

 

「雨宿りはここで決定ね」

 

「「ひいっ……!?」」

 

やけに怯えているように見える果南とルビィ。こういった場所は苦手なのだろうか。

 

対して善子はいたって通常運行だった。

 

「ふっふっふ……暗黒の力を……リトルデーモンの力を……感じ————」

 

「……仏教ずら」

 

「……知ってるわよ!」

 

 

 

 

蝋燭に灯る火だけが揺らめく畳敷きの空間に足を踏み入れる。

 

「で、電気は?」

 

「ないずら」

 

「リアリィ……!?」

 

ぎし、と歩く度に床が軋む音が微かに聞こえる。

 

しばらく何も言わずにぼうっとしていると、耐えかねた果南が沈黙を破ってきた。

 

「どどど、どうする?私は、平気だけど————ハグゥ!」

 

「むぎゅ」

 

言葉の間で轟いた雷鳴に飛び上がり、反射的に近くにいたステラに抱きついてしまう。

 

ボリュームのある何かに窒息させられそうになるも、何とか顔面を這い出して言う。

 

「ぷはっ……、やることならあるでしょ。まだ曲作りに関しては何も進んでないんだから」

 

「でも、またケンカになっちゃったりしない……?」

 

「きょ、曲が必要なのは確かなんだし、とにかくやれるだけやってみようよ」

 

「そうですわね」

 

ダイヤがそう言った直後、今度はミシりと物音が響き、ステラを放っぽり出した果南はダイヤのもとへ駆け寄った。

 

「ハグゥ!」

 

怖がりな一面を見せる彼女に細めた瞳を注いだ後、ステラは鞠莉の方を向く。

 

「意外とパーっとできるかも!」

 

「ところで歌詞は進んでるの?」

 

ここまで時間をかけて全く進んでいない、となれば千歌達のことも馬鹿にできない。

 

ステラも少しばかりだが、未来に対抗心がないわけではないのだ。

 

「善子ちゃんがちょっと書いてるの……この前見たずら」

 

「なに勝手に見てんのよ!」

 

意外な人物の名前が挙がった。

 

「へえ、やるじゃん!」

 

「すご〜い!」

 

「グレイト!」

 

「ふふふ……よかろう、リトルデーモン達よ。だがお前達に見つけられるかな!?このヨハネ様のアークを!」

 

「あったずら!」

 

「コラー!!」

 

花丸がどこからか取り出した善子のノートを皆で覗き込む。

 

それはもう当て字のオンパレードだ。継ぎ接ぎの言葉が並べられているのを見てステラ達の表情が曇る。

 

「こ、これは……」

 

「う、うらはなれせいきし……?」

 

裏離聖騎士団(りゅうせいきしだん)!」

 

「この黒く塗りつぶされているところは何ですの?」

 

「“ブラック・ブランク”!!」

 

「……読めない」

 

「ふん!お前にはそう見えているのだろうな、お前には!」

 

「誰にでも読めなきゃ意味ないずら」

 

悪いがこれは使えそうにない。

 

結局一から作り上げるしか手はないらしい。

 

「そういえばこのブラックブランク……?動きますわ……?」

 

「お姉ちゃん、それ……!虫!!」

 

「「ピギャアアアアア!?!?」」

 

黒澤姉妹が同時に飛び上がり、起きた風圧で蝋燭の小さな炎が小さくなり————

 

「……ずら?」

 

完全に消えてしまった。

 

暗闇に包まれた瞬間、ステラを除くその場の全員が突然の事に悲鳴を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったい私達……どうなっちゃうの?」

 

やっとの思いで灯りをつけ、蝋燭の光を背にした善子がぽつりと呟く。

 

皆疲れ切ったような様子で柱に背を預ける等して脱力気味だ。

 

「全然噛み合わないずら……」

 

「このままだと、曲なんかできっこないね……」

 

ステラもまた煮詰まっているのを察したのか、それを誤魔化すようにヒカリへと意識を向けた。

 

「…………どうしよう」

 

『俺に聞かれてもなあ』

 

「わたしの責任だわ。もっと上手くやっていればこんなことには……」

 

『なに、まだ時間はある。そう気を落すことはないさ』

 

「でも————ひゃうっ!?」

 

言いかけたところで背中に冷たい感触を感じ、咄嗟にナイトブレードを取り出して身構える。

 

「な、なに?」

 

「雨漏りずら」

 

さっきまで座っていた場所を見下ろしてみれば、天井から漏れ出した雨水がポツポツとその地面を濡らしていた。

 

「どうするの?」

 

「こっちにお皿あった」

 

そばにあった棚から二つほど容器を取り出しては早足で雨漏りが起こっている真下へと急ぐ果南。

 

「今度はこっち!ええっと……」

 

「鞠莉さん!こちらにお茶碗がありましたわ!」

 

「こっちにもお皿ちょうだい!」

 

「オーケー!」

 

「こっちも欲しいずら!」

 

「お姉ちゃん、桶!桶!」

 

六人の見事な連携に唖然としつつ、ステラはゆっくりとブレードを懐にしまう。

 

さっきまでバラバラだったのが、急に綺麗にまとまりだした。

 

 

 

皿が水を受ける度にリン、チリン、と鈴のような音が鳴り、ステラ達はその音色に耳をすませた。

 

……“和”のイメージがステラのなかで段々と定まっていく感覚。

 

一粒一粒の大きさや音は違う。だが聴いている内にそれは、確かなメロディーとして形作られていった。

 

「……テンポも音色も大きさも」

 

「一つ一つ、全部違ってバラバラだけど!」

 

「……一つ一つが重なって」

 

「一つ一つが調和して!」

 

「一つの曲になっていく」

 

「マル達もずら!」

 

おもむろに肩を組んで円陣を作り、お互いに顔を見合わせる。

 

やっとヒントを得た彼女達はこれまでの経緯を思い出し、今の出来事に重ねながら笑顔を浮かべた。

 

「よーっし!今夜はここで合宿ずらーーーー!!」

 

「「「ええっ!?」」」

 

結局は鞠莉の宣言に従い、一晩中曲作りをすることとなった。

 

 

◉◉◉

 

 

「ん〜……!」

 

『お疲れ様』

 

「いんや、俺は何もやってない。……千歌達はすごいよ、本当に」

 

未来は外に出て大きく身体を伸ばし、屋根の上で腰を下ろしている千歌の後ろ姿を見上げた。

 

曲を作っている最中の彼女達は、まるで別人のような雰囲気をまとい出す。

 

千歌も曜も梨子も、スクールアイドルが好きなんだと伝わってくるようだった。

 

「俺達も頑張らなきゃな!」

 

『うん!』

 

浮遊するオレンジ色の光に笑顔を向け、未来は旅館に戻ろうと踵を返す————振りをして腕を構えた。

 

「なんてな……!バレてんだよさっきから!」

 

横から飛んできた蹴りの勢いをいなし、衝撃を殺す。

 

続けて繰り出された打撃を素手で受け止め、距離をとってから一声かけた。

 

「おはようステラ。どうよ、少しは見切れるようになってきただろ?」

 

「おはよう未来。まあ四十点といったところかしら」

 

「朝から物騒なことはやめていただけます……?」

 

「あ、みんなも」

 

ステラの後ろから現れた一年生と三年生達に会釈し、未来は軽く声を張り上げる。

 

「三人ともーーーー!!みんな帰ってきたぞ!!」

 

「あ、みんな!」

 

屋根にいた千歌と窓から顔を出していた曜、梨子がこちらに視線を移す。

 

「曲はできたー!?」

 

「バッチリですわ!」

 

「「「じゃーん!!」」」

 

得意げにノートを見せつけてきた果南達に、千歌はキラキラとした眼差しを注いだ。

 

さあ、ラブライブと学校説明会。どちらも手を抜けない正念場だ。

 

あとは練習あるのみ————!

 

 

◉◉◉

 

 

『……えるか。繰り返す、応答せよ。聞こえているのか。至急応答されたし』

 

近くに地球が見える漆黒の空間に、通信機と思しき物体が一つ。

 

赤い巨人が複数、力尽きたように宇宙空間を彷徨っていた。

 

「……雑魚共が」

 

浮遊していた通信機を握り潰し、鎧をまとった巨人が青い星を見下ろす。

 

「露払いなんてくだらねえ役割を任されるとはな。……どこへ行っても雑用ばっかだ、俺は」

 

胸に疼く闘争心をなんとか抑えこみ、黒いウルトラマンは飛翔する。

 

「…………まだだ。まだ狂うわけにはいかねえ……!」

 

自らが始末した若き戦士達を視界に入らないよう意識しながら、ベリアルは槍を持ち直した。

 

 




みんなが過去に見たベリアル……そして今現在のベリアル。
本当の彼は"どちら側"なのか?

今回の解説は最後の主要オリキャラ、ノワールについて。

かつてはエンペラ星人と同じ惑星に住んでいた青年。
宇宙を彷徨い光を求めるも、不本意ながら闇の力に染まってしまった悲しき男。
エンペラ星人とは違い望んで闇の力を手に入れたわけではないため、その力は皇帝のそれよりも遥かに劣る。が、性質は同じもの。つまりは完全な下位互換。
よく笑い、たまに怒る。三人のオリキャラの内一番動かしやすいキャラです。
せっかく奪ったメビウスの力もヤプールに横取りされ……と、最近の彼はちょっと可哀想が過ぎる。
傍観者になると言った彼は今後どのように物語に関わってくるのか。
そしていつか光を手にすることができるのか……。

次回は3話の話も進めつつ、"彼"と未来達の話も絡ませていく予定です。

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