メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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ついにヒカリーーもといツルギさんの登場です!
ヒカリサーガでの設定とか色々弄っちゃっていますが、そこは何卒ご理解を……


第6話 蒼雷の剣

惑星アーブ。

 

それは争いや不幸など存在しない、澄み切った空と美麗な結晶が地を覆う美しい星。

 

 

ーーそんな一つの惑星に、一人のウルトラマンが降り立った。

 

彼の名はヒカリ。M78星雲ウルトラの星、光の国からやってきた宇宙科学技術局長官だ。

 

彼は、かの惑星アーブを調査するために、その星へと足を運んだのだ。

 

ヒカリを待っていたものは、想像を遥かに超える美しい光景だった。

 

そして、この星と共に生きていきたい、と思うようになった。

 

 

 

 

 

しかし、ある日惑星アーブは、恐ろしい怪獣の手によって壊滅の危機に晒されたのだ。

 

高次元捕食体、ボガールーーそして、その”王”アークボガールが現れたことによって、アーブは滅びてしまう。

 

自分の力ではアーブを救うことができない。だがどうしても諦めきれなかったヒカリは、キング星に住まうと言われる伝説の超人、ウルトラマンキングに助けを求めることにした。

 

キングに、戦うための力、”ナイトブレス”を授かったヒカリは、決死の思いで惑星アーブへと戻る。

 

だが、ヒカリは宇宙警備隊の隊員ではない。ましてや彼は、戦闘が不向きな”ブルー族”だ。アークボガールを相手に、勝利を収めることなど不可能だった。

 

なす術なく敗北に陥ったヒカリは、自分の無力さとボガール達への憎悪により、”復讐の戦士”と化してしまう。

 

 

ーーそれが、”ハンターナイトツルギ”の誕生だった。

 

 

「ボガールは……」

 

『見失ったみたいだ』

 

ステラは頭に乗っている黒いキャスケット帽を強く握り、隠しきれない怒りを露わにする。

 

「絶対、殺す」

 

『……初めて会った時とは、見違えるよ。最初はもっとーー』

 

「ツルギ」

 

青い球体の言葉を遮ったステラは眉をひそめ、さらに続けた。

 

「その話はやめて」

 

小柄な少女の見た目では考えられないほどの威圧感と殺気に満ちた声音だった。

 

 

 

ツルギがステラという少女と会ったのは、アークボガールを追ってとある星にやってきた時だ。

 

ノイド星。地球によく似た文明が築かれているその星の住人もまた、外見は地球人とそっくりだった。違う点は、多少身体能力が高いというくらいだ。

 

アークボガールがアーブの次に餌場として選んだ場所が、ノイド星だった。

 

 

◉◉◉

 

 

「クソッ!間に合わなかったか‼︎」

 

焼け野原の中逃げ惑う人々と、彼らを蹂躙するボガール達。

 

ツルギは拳を強く握り締め、ありったけの”殺意”をナイトブレスに込めた。

 

「デュアッッ!!」

 

青く輝く光線、ナイトシュートが一直線に伸び、街を破壊するボガールの内一体にそれが直撃する。

 

「■■■■ーーーーッッ!!」

 

甲高い断末魔を上げて爆発四散する灰色の怪物。その爆音に気づいたボガール達が、地に着地したツルギへと群がっていく。

 

ツルギはナイトブレスから光剣ーーーーナイトビームブレードを伸ばし、復讐の意のままにその刃を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーそこでも、戦いの先にあるのは絶望だけだった。

 

アークボガールとその手下のボガール達に数で圧倒されたツルギは、実体を保てなくなるほどのダメージを受けてしまったのだ。

 

ボガール達が去った、何もない荒野と化したノイド星の土を頭部に感じながら、ツルギはまたもボガール達への怨念を募らせる。

 

光の玉となったツルギは、ほとんど無心の状態でノイド星を彷徨いていた。すると、遠くの方で小さな泣き声が聞こえてくる。

 

ーーその声の主は、一人の少女だった。

 

(この子の身体を借りれば、俺はまだ戦えるかもしれない……)

 

復讐のことしか頭の中に存在しないツルギは、ノイド星の者までをもボガールとの戦いに巻き込むつもりだったのだ。

 

少女の体内に入り込み、主人格を奪うツルギ。

 

 

「……まだ慣れないな」

 

『だ、だれ……?』

 

少女のか細い声音が、自分の中で木霊するのがわかった。

 

「……⁉︎まさか、喋れるのか……⁉︎精神は完全に食い潰したはずだが……」

 

少女は、ツルギが予想もしていなかった精神力の強さを持っていたのだ。

 

意識を完全に奪うことは不可能と判断したツルギは、彼女に一つの提案をした。

 

(君、名前は?)

 

『す、ステラ……』

 

(ステラか。君はあの怪物達が憎いか?)

 

『え……?』

 

(俺と共に、あの怪物と戦う気はないか?)

 

ツルギが尋ねると、数秒間きょとん、とする少女。やがて意味を理解したのか、少女はかすれかけている声で言った。

 

『む、むりだよ……わたし、あんなのと戦うことなんて……』

 

(俺の力を使え。君と俺が組めば、きっとあいつらを倒すことができる)

 

確証のない言葉を並べて、なんとかして少女を説得するツルギだったが、なかなかステラは了承してはくれなかった。

 

『パパぁ……ママぁ……』

 

(……!ご両親の仇を討ちたくはないのか?)

 

『そ、それは……』

 

(このままでは奴らは、別の星々でも同じことを繰り返す、それでもいいのか?)

 

『でも、でも……!でもぉ……!うぅう〜……!』

 

(自ら動かなければ失うだけだ。……だから俺はやる……!)

 

ツルギの言葉を聞くと、泣いていた様子のステラの態度が一変した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………わかった。わたしも、行く』

 

何かを決意したような声。

 

次の瞬間には、ツルギは強制的に身体の主導権を奪われていた。

 

「必ずあいつらをーーーー」

 

 

◉◉◉

 

 

目を覚ますと、そこに広がっていたのは”白”だった。真っ白い天井、そこに取り付けられている蛍光灯の光が目に飛び込んできて、思わずまた目を瞑った。

 

ベッドに寝かされていると気づいたのは、再び瞼を開けて周りを確認した時。どうやら自分は、病院にいるようなのだ。

 

「いっつ……!」

 

身体のあちこちを強く打ったのか、全身が筋肉痛のように酷く痛い。

 

『あ、未来くん。目が覚めたみたいだね』

 

(メビウス……。そうか、俺はボガールに……)

 

ーー左手が何か、柔らかく暖かい何かに包み込まれている。未来はふと視線を落とした。

 

「千歌……?」

千歌は未来の左手を両方の手でしっかりと握り、机に突っ伏すような形で眠りこけていた。

 

横の壁に掛けてあるカレンダーを見ると、ボガールと戦った日から既に2日が経過していた。

 

(ずっと付いててくれたのか……?)

 

 

 

「あれっ?起きてる」

 

病室の扉が開き、二つの見知った顔が中へと入ってくる。

 

一人は渡辺曜。もう一人はーーーー

 

「曜と……果南さん?」

 

「あちゃー、やっぱこうなってたか……」

 

曜は持ってきた毛布を千歌に優しく被せると、近くに設置してあった椅子に腰を下ろした。

 

果南はビニール袋に何本かのスポーツドリンクを持ってきてくれたようだ。

 

「びっくりしてすっ飛んできたよ。怪獣のせいで怪我したー、なんて聞いたから」

 

「千歌ちゃんなんか、付きっきりだったんだよ」

 

「……心配かけてごめん。他のみんなに怪我はなかった?」

 

「病院送りなのは未来くんだけ。もうっ、無事で何よりだよ。昔っからケガばっかしてたもんね」

 

「……ん?そうだったか?」

 

「まさか自覚がないとは……」

 

確かに小さい頃の未来は遊びから帰ってくる毎に身体に軽い傷をつけて帰宅していた。その度に父と母からは怒られていたのだ。……でも、そんなに騒ぐことだろうか?

 

(……父さんと母さんが()()()()()、今の俺を見てなんて言うかな……)

 

ーーーーウルトラマンになって、千歌を……みんなを守っていると知ったら。

 

「あれ……?」

 

「……?どうかしたの未来くん?」

 

(違う……、俺は…………)

 

 

 

 

守れてない。

 

 

 

 

今回の戦いで未来とメビウスがボガールに与えたダメージは皆無だ。

 

あの誰かが放った青い光線がなければ、今頃二人仲良くボガールに捕食されていたかもしれない。

 

何も守れてない。何もできていない。何もやれていない。

 

 

未来の右手が自然と拳を形作り、布団に醜いシワが出来る。

 

「ど、どうしたのいきなり、怖い顔して……」

 

果南が顔を覗き込んできて、やっと未来は我に帰った。

 

「えっ?……ごめん、ちょっと疲れてるみたいです」

 

「……それだけ?」

 

まるで、心の中を見透かされているようだった。心配そうにこちらを見つめる果南の瞳から、未来は目を逸らす。

 

「それだけです。ーーーーそうだ、曜。スクールアイドル部の方はどうなってるんだ?」

 

わざと話題を変える。未来の不自然な様子に果南はおそらく気づいているのだろうが、あまり深くは詮索しようとはしなかった。

 

「全然だよ。あの生徒会長さんが結構頑固者で……」

 

「そっか……、まあ、地道にやってくしかないな」

 

と、その時、千歌が目を軽く擦りながらムクリと上体を起こして顔を右往左往させる。

 

「あれ、寝てた……?今何時ーー」

 

真正面を向いたところで、未来と視線が重なる。直後、涙を溜めた笑顔を浮かべ、未来へ抱きついた。

 

「未来くん!よかったぁーーーーーー!!」

 

「く、ぐるちい……!」

 

未来にハグする千歌を微笑ましく眺めた後、果南は曜の肩に手を置き、椅子から立ち上がった。

 

「もうそろそろ暗くなるし、千歌と曜も一緒に帰りましょ」

 

「よ、ヨーソロー!千歌ちゃん、行こっか!」

 

「えっ?」

 

半ば強引に千歌の腕を引っ張る曜。

 

「あっ!じゃあまたね未来くん!」

 

三人は病室の出入り口まで寄ると、軽く手を振ってから廊下へ出て行った。

 

 

『……?曜ちゃんの様子が、何か変だったね』

 

「そうかな?いつもと変わらない気がするけど」

 

『うーん……。ま、僕の気のせいかな』

 

 

◉◉◉

 

 

深夜2時。

 

眠れないでいた未来は、病院を抜け出して軽く散歩に行こうと、支度をしている最中だった。

 

『こんな時間に出歩いたら危ないよ』

 

「そんな子供じゃあるまいし……俺はもう17ですぅ」

 

『僕は6800歳だけどね』

 

「なんの張り合いだよ。ていうかウルトラマンの基準がわからん……」

 

軽口を叩き合いながら、未来とメビウスは病院から抜け、海岸へと向かった。

 

 

 

「ちょーっと寒いかなあ。……海は暗くて少し不気味だし」

 

『地球に来て初めて海を見た時は驚いたよ。こんなにも綺麗な水が広がっているなんて』

 

「太陽の光に照らされる海は綺麗だからな。俺も小さい頃から、この海を見て育ったんだ」

 

 

しばらく道路の上で海を眺めていると、右側から人の気配を感じ、ふと顔を向ける。

 

そこにいたのは、自分や千歌達と同い年くらいの少女だった。暑苦しそうな黒いコートに、黒いキャスケット帽。ショートボブの髪の隙間から見える肌の色はこの世のものとは思えないほどに白い。

 

(……女の子?こんな時間に、しかも一人で……?)

 

なんとなく少女が通り過ぎて行くのを見た後で、再び海の方へ視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりね」

 

冷たい声音が、耳を撫でた。

 

『未来くんッッ!!』

 

いきなりメビウスが主人格を奪い、メビウスブレスを出現させたかと思えばメビュームブレードまで展開したのだ。

 

『なんだ……?』

 

状況を理解するのに、若干の時間が必要だった。

 

二つの光剣が交差し、火花が飛び交う。

 

少女の右手から、未来の左手から、それぞれの剣を操って剣戟が繰り広げられていた。

 

「ぐっ……!」

 

鍔迫り合いのように刃を押し当てて静止する。メビウスと未来、二人の力でさえ押し負けそうなほどに強い腕力がプレッシャーを与えてくる。

 

「初めまして。あなたが……ウルトラマンの方ね?」

 

「きみっ……はっ……!誰だ……ッッ⁉︎」

 

「同類……()()()()()()()()

 

メビュームブレードを弾き飛ばし、少女は後方へ下がる。

 

「わたしはステラ。そしてーーハンターナイトツルギとの融合者」

 

コートの袖を捲り、右手に現れているナイトブレスを見せつける。

 

「あなた方と同じ、ウルトラマン」

 

『どういうことだメビウス……?』

 

(わからない!僕にもさっぱりだ!)

 

戸惑いを隠せない様子のメビウスを見て、ステラは呆れたように深く溜息を吐き出した。

 

『むっか……!おいメビウス、ちょっと変われ!』

 

「未来くん⁉︎」

 

無理矢理身体の主導権をメビウスから取り上げる未来。メビウスブレスを構えながら、ステラに向かって早口でまくし立てる。

 

「なんだお前は!いきなり現れてわけのわからんことをごちゃごちゃと……!」

 

「だからあなたはダメなの」

 

ほんの3秒ほどで距離を縮められた未来は、反応することもできずに圧倒され、尻餅をついてしまう。

 

短剣の切っ先を喉に当てられ、未来は驚きのあまり声も出せなくなる。

 

 

「今すぐにでも殺せる、けど……あなたには切る価値もない」

 

「なにっ……⁉︎」

 

「これからこの地球(ほし)は、わたし達が守ってあげる」

 

『「は、はぁ⁉︎」』

 

勝手なことを連続で言い放たれた未来とメビウスは、考えがまとまらないまま、ただステラの顔を見上げていた。

 

 

「あなた達の戦い、見てたわ。……なに?あの下手くそな戦い方。通常のボガール1匹と対峙しただけであの体たらく……片腹痛いわね」

 

「んだとぉっ……⁉︎言っとくけどな!俺は前にディノゾールを倒してーーーー」

 

「たかだか雑魚を倒したくらいではしゃいでるようじゃ、先が思いやられるわね」

 

「なっ……にぃ……⁉︎」

 

顔を真っ赤にして怒りを露わにする未来。ステラはそれを、絶対零度のように冷たい目で見下ろしている。

 

「そんなんじゃ、何も守れないって言ってるのよ!!」

 

「……っ⁉︎」

 

突然激昂するステラ。先ほどとは一変した怒り方に、未来は唖然とするばかりだった。

 

 

 

「言ってわからないのなら……いいわ」

 

ステラは持っていた短剣を、右腕に出現させていたナイトブレスへと装填した。

 

蒼い雷撃で空間が切り裂かれ、天から巨人が舞い降りる。

 

 

 

「これは……!」

 

『そんな……まさか本当に……!』

 

 

未来とメビウスの視界には、一人の蒼い巨人が映っていた。

 

 




次回はメビウスvsツルギ……⁉︎

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