メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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先日のラブライブ発表会ではライバーの皆さんにとってとても嬉しい情報が解禁されましたね。
僕も興奮で胸がいっぱいでした。




Episode10 こころ〜意思〜

「気をつけてっ!」

 

監視カメラのモニターから目を離した直後、爆発したかのような勢いで扉が破られる。

 

風圧で吹き飛ばされたノンは壁に背中を打ち付けて倒れ、衝撃で睡眠から転がるように目を覚ましたミコがエリィの横で瞬時に構える。

 

「ノン!」

 

「いったい何が……!?」

 

ブレイガンの銃口を埃の煙幕へと向ける。

 

小柄な少女と思しき人影がうっすらと揺らめいていた。

 

「…………まずは前菜といこうか」

 

「お前は……!」

 

別の部屋に閉じ込めておいたはずのステラ————いや、違う。

 

今目の前にいるのは彼女に化けた“奴”だと確信したエリィは、手が真っ白になるまで握ったブレイガンのトリガーを引き絞った。

 

「ミコ!ノンを連れて逃げなさい!」

 

「……!エリィ、あんたは……!?」

 

ミコの疑問に答える暇も与えられずに、エリィはアークボガールとの戦闘に突入した。

 

「ぐっ……!」

 

腕のみを鉤爪へ変化させたアークボガールが地を蹴り、エリィの首を狙ってそれを振りかざす。

 

回避しつつ奴の肩を掴みかかり、壁を突き破りながらも別の部屋へ移動してミコとノンから遠ざけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何の音……?」

 

振動と大きな物音で目を覚ましたステラは上体を起こしてゆっくりと部屋の出入り口に手をかけた。

 

「……あれ?」

 

ドアノブを引いても押しても、目の前の扉は道を開けてはくれなかった。

 

ガキン、と施錠されているような音が聞こえ、思わず眉をひそめる。

 

「……閉じ込められた?」

 

『そのようだな』

 

ヒカリが肯定するのを聞き流しつつ、ステラは寝起きの頭で知恵をしぼる。

 

信用されているわけではないことは薄々感じとっていたが、まさか幽閉されるとは。

 

この討伐任務に出てからこういった迂闊なミスが続いてしまっている。

 

(わたしも焼きが回ってるのかしら……)

 

立方体の部屋を隅々まで観察し、どこかに出口はないものかとあちこちを探るが、それらしいものは見つからなかった。

 

「……斬って出ましょうか」

 

『いや待て、何かが近づいてきている』

 

ナイトブレードを取り出して低く腰を下ろしたステラにヒカリから待ったがかかった。

 

徐々に迫ってくる気配を察知し、その直後に反射的なバックステップを踏んだ。

 

 

 

「……!?」

 

ドゴォ!と扉を破壊して部屋の中に飛び込んできた者が二人。

 

一人はブレイガンを手に持ったエリィ、そしてもう片方は————

 

「……わたしと同じ顔……!?」

 

「ステラ!!」

 

鉤爪と光の刃の鍔迫り合いを制したエリィが鉤爪の腕を持つ少女を横薙ぎに蹴り飛ばす。

 

その射線上にいたステラは即座に片足を上げて“奴”の身体に大砲のごとき重みを帯びた回転蹴りを叩き込んだ。

 

「————」

 

瓦礫に埋もれる自分と同じ顔の怪物を見やり、ステラはエリィの横に並び立つ。

 

「どういうこと……?わたし達の居場所がバレたの……!?」

 

「……もともとこの星で隠れられる場所なんてここ以外残ってなかった。いずれは見つかると思ってはいたけど……」

 

「……!やっぱり話は後!」

 

折れた首を無理やり直し、巨大な爪を掲げながら歩み寄ってくるアークボガール。

 

「ほう、貴様らもここに身を潜めていたのか……ハンターナイトツルギに、ノイド星人の小娘」

 

「わたしの姿で辺り構わず食べ散らかすのはやめてもらえるかしら。……とても、気持ちが悪いわ」

 

睨み合い、どちらかが動けば戦闘が始めるという状況。

 

 

 

「……!?」

 

地鳴りが部屋を揺らし、三人の体勢を崩した。

 

勝ち誇った表情のアークボガールが含み笑いをしながら口を開いた。

 

「既に我が下僕が地上を囲んでいる。貴様らの運命はもう、我に食われると決まっているのだ」

 

「……!」

 

地上に向かって逃げたミコとノンの安否で頭のなかが一杯になったエリィの隙をつき、アークボガールは一瞬で彼女へ肉薄してみせた。

 

「くそっ……!」

 

振り下ろされた鉤爪を横から手を伸ばしたステラがナイトブレードで防御する。が、それを読んでいた奴は彼女の懐に潜り込むと強烈な膝蹴りをお見舞いしてきた。

 

「うっ……!」

 

「イタダキマス」

 

怪物としての姿を解放したアークボガールが背中の被膜を広げ、エリィを飲み込もうと迫った。

 

「エリィ!」

 

「————っ」

 

回避もままならないエリィが食われかける直前、壁の大穴から飛び込んできた二つの斬撃がアークボガールを襲った。

 

「チィ……!」

 

寸前でそれを避けた奴は後ろに下がり、攻撃が飛んできた方向を見やる。

 

「間に合ったか!」

 

「やっと姿を現したか……ボガールの王よ」

 

侍と青年が部屋に駆け込んでくるのを確認し、ステラは急いで膝をついているエリィの肩を抱えた。

 

「ゼロ!ザムシャー!」

 

『外の状況は!?』

 

「巨大化したボガール共が暴れてやがる!すぐに脱出するぞ!」

 

「ミコとノンは!?」

 

エリィの問いに一瞬言葉を濁らせるゼロに代わって、ザムシャーが答えた。

 

「案ずるな、二人ともここへ来る途中で保護した。……ただ、片方の娘は少々おかしなことになっているがな」

 

「……!?どういう————」

 

続けて質問しようとするエリィだが、それは体勢を立て直したアークボガールによって妨げられた。

 

「どいつもこいつも……!我の食事の邪魔を……!」

 

「……!?」

 

「ハアァァアアアアァア……!!」

 

禍々しい闇をまとって真上へと飛翔するアークボガール。

 

天井を突き破って地上へと昇った奴を追おうと、ゼロとステラがそれぞれのアイテムを取り出して装着する。

 

「デュア!」

 

「いくわよヒカリ!」

 

『ああ!』

 

光に包まれてウルトラマンへと変身した二人が地上へ急いだのを見上げ、エリィは必死な顔でザムシャーに掴みかかった。

 

「ミコとノンは……!?何があったの!?」

 

「……自分の目で確かめろ」

 

「きゃっ……!?」

 

ザムシャーはエリィを抱え、先ほどアークボガールが空けた天井の穴から上へと移動した。

 

 

◉◉◉

 

 

視界全体を覆い尽くす光が見える。

 

自分の意思で動かせない身体に戸惑いながらも、前方にそびえ立つ灰色の怪物達を視認した。

 

「◾︎◾︎◾︎◾︎————ッ!」

 

銀色の巨体を駆ける稲妻のような赤いライン。

 

機械的な印象を与える外見とは裏腹に、その挙動は獣じみたものだった。

 

 

 

 

 

 

「ノン……!?」

 

銀色の巨人の足元で呆然と立ち尽くすミコ。

 

アジトから逃走している途中に巨大ボガールの集団と遭遇し、万事休すかと思われた瞬間だった。

 

ノンの胸から眩い閃光が炸裂し、同時に彼女は銀色の巨人へと変貌したのだ。

 

「◾︎◾︎◾︎◾︎————ッ!」

 

咆哮するかのように上体を突き出して威圧するその姿に、ノンという少女の意識を感じることはできない。

 

正気を失ったようにボガールを殴りつける巨人は、ミコにはひどく恐ろしいものに見えた。

 

「ミコ!」

 

「……!エリィ……」

 

「何があったの!?」

 

「それが……」

 

どう説明していいかわからずに口を閉じてしまうミコを見かねて、エリィを連れてきたザムシャーが答える。

 

「……あれがそのノンという娘だろうよ」

 

「え……?どういうことよ!?」

 

「私に聞かれてもわかんないわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀色の巨人がボガールを殲滅している後ろで、ヒカリとゼロはタイミングを揃えて地面に着地する。

 

(なに……あいつ……!)

 

「光の国の奴じゃなさそうだな」

 

『……おそらくは彼が——』

 

ウルティノイド・ザギ。

 

ノンの身体と一体化していた生命体の本来の姿だろう。

 

(味方……なの?)

 

ボガールと戦うザギを見てそうこぼすステラだったが、内心では真逆のことを考えていた。

 

理屈じゃない。今目の前にいる巨人は、どこかおかしい。

 

直感的にそう悟ったステラは彼に襲われた時に備えて警戒しながら距離を詰めた。

 

「◾︎◾︎◾︎◾︎————ッッ!!」

 

雄々しい叫びを張り上げたザギの両腕から光線が発射される。

 

それと同時に身体を捻って回転させ、全方向に熱線を広げた。

 

「うおっ!?」

 

(わっ……!)

 

『なんてエネルギーだ……!』

 

ヒカリとゼロが巻き添えになる寸前にしゃがみ込んで回避する。

 

大量のボガールを倒し終えたザギが肩を上下させているのを見て、ステラは異様な不安感に苛まれた。

 

(……!見て!)

 

ザギの身体が徐々に実体を消滅させていく。

 

慌ててその場に駆け寄ると、ザギに変身していた少女が意識を失った状態で横たわっていた。

 

「……無事、みたいだな」

 

(……!アークボガールは……!?)

 

追ってきたはずの獲物が姿を見せていないことに気がつき、ステラは狼狽して周囲を確認した。

 

『……逃げられたか』

 

(……まだそう遠くへは行ってないはずよ。ノンを回収したら、すぐにでも追いましょう)

 

蒼い巨体を動かして手のひらを伸ばす。

 

街中に倒れていたノンを優しく手の中に収め、ヒカリはエリィ達のもとへ戻った。

 

 

◉◉◉

 

 

「オードブル風情が……!我の邪魔ばかりしおって……!」

 

アジトから数キロ離れた場所まで逃走したアークボガールだが、とても穏やかな気分とは言えなかった。

 

 

 

————随分手を焼いてるみたいだな。

 

暗闇を越えて頭の中に響いてくる声。

 

「何の用だ……エンペラ星人」

 

————報告を怠るなと伝えたはずだが?

 

「我は我のやりたいようにやる。今はまだ足りないが……いずれは勢力を拡大し、貴様らごと宇宙を喰らい尽くしてやるわ」

 

闇の皇帝は自分を殺すことはない。まだ有用だと思われている限りは絶対に。

 

アークボガールが自由に行動しているのは宇宙警備隊を撹乱し、こちらに注意を向けさせるためだろう。

 

その役目が終わらない以上、自分達の命は保証される。

 

————精々あの蒼い騎士に仕留められないよう、餌役を続けることだな。

 

 

闇の皇帝の気配が遠ざかっていくのを感じ、唸る。

 

「……違うな。餌は奴らのほうだ……!見ていろハンターナイトツルギ、そしてノイド星の小娘……!」

 

空を見上げた先に浮かぶ一つの惑星。

 

既に死んでいるその星を眺めながら、アークボガールは嗤った。

 

「墓場へ案内してやろうではないか……!」

 

 

 

 




今回は挿絵を用意できませんでした……。
アークボガールが見上げた先にあった惑星とは……⁉︎
二期が近づき、この外伝も着々と終わりに近づいています。

解説はザギについて。

スペースビーストを駆逐するという目的で作られたザギですが、自分がノアの模造品だと知って暴走。
ネクサス本編でも恐ろしい力を見せた彼が今作では味方に……⁉︎
まだまだ謎が多いザギですが、ノン達と出会ったことでどういった動きを見せるのか……⁉︎

それでは次回もお楽しみに!

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