メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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カノン編ラストです。
所々一章と繋がる部分があるので時間があればお探しください(笑)


Episode6 みらい〜明日〜

その姿は、まさに女神と例えるのがふさわしいものだった。

 

体色は神秘なる白。全身に黄金色の装甲をまとい、頭部には太陽を形取ったようなリングが見える。

 

「はあっ……!」

 

戦神となったコトハは苦しそうに背中を曲げているヒカリとゼロへ歩み寄り、両手をかざした。

 

神々しい光の粒子が二人に降りかかり、赤色に点滅していたカラータイマーから青色の輝きが取り戻される。

 

(傷が……)

 

『これが……戦神の力なのか……?』

 

「大丈夫ですか、皆さん!」

 

腹部の風穴が一瞬で塞がったことに驚愕しつつ、ステラはヒカリの体内から前方に立つ敵を見据えた。

 

三人の巨人が並び立ったのを、アークボガールは忌々しげに唸る。

 

「どうも光の戦士とやらは悪運が強いらしい。……これではさすがの我も分が悪いか」

 

アークボガールは再び背後に異次元空間を展開すると、その場から逃走しようとバックステップを踏む。

 

『(逃がすかッ!)』

 

ナイトビームブレードを一閃。光の斬撃が奴に飛来し、その身体を切断せんと迫った。

 

しかしその攻撃はまたしても奴には届かない。到達する直前に横から発射された()()によって相殺されてしまったのだ。

 

(……!?こいつらは……!)

 

異次元空間からアークボガールを守るようにして立ちはだかる複数の怪獣達を順に確認し、その面倒さに思わず歯を食いしばった。

 

「とある男から拝借した下僕だ。我のボガール達よりは厄介やもしれぬぞ?」

 

『エレキングにアーストロン……ゴモラとレッドキングまで……!』

 

どれも瞳に光が宿っていない、人形のような怪獣達。

 

アークボガールが腕を一振りすると、それに反応して真っ先に三人のもとへ接近してきた。

 

「来るぞ!」

 

(コトハ、戦闘は初めてよね。もし危なくなったら————)

 

「大丈夫です」

 

自らの心配をするステラの言葉を遮る。微かに口元を引き締めたコトハは、純白の拳を強く握って構えた。

 

「戦いは嫌いです。……でも、これが私にしかできないことならば、私はそれを受け入れます。民を守るために」

 

(……そう)

 

数秒後に起こる乱闘に備え、ヒカリは視線を前に戻した。

 

「デアッ!」

 

近づいてきたレッドキングの豪腕を回避し、手刀を与えていくゼロ。

 

エレキングとアーストロンが放った電撃と熱線は戦神が障壁で防ぎ、その後ろから飛び出したヒカリがゴモラへと迫る。

 

「◾︎◾︎◾︎◾︎————ッ!」

 

空中から距離を縮めようとしたヒカリに岩石のような尻尾が薙ぎ払われる。

 

寸前で身体を捻ってそれを回避、そのまま地面に降りて取っ組み合いに持ち込む。

 

「せいぜい励めよ。貴様らは生け捕りにして我のもとに運ばせた後で食ってやる」

 

異次元のゲートを開いて奥へと進むアークボガール。

 

(……!待て!)

 

『くっ……!』

 

奴のところへ行こうと足を踏み出した瞬間、ゴモラの繰り出したラリアットが眼前に迫った。

 

両腕でガードするが、予想以上の威力に思わず後退してしまう。

 

(どこへ行く気!?)

 

「我らボガールが拠点としている惑星がカノンだけだと思っていたか?……大間違いだ」

 

『なんだと……!?』

 

最後に言い残した言葉で不安を刻みながら、アークボガールは空中に現れたゲートを閉じて姿を消した。

 

 

 

 

 

「はああああっ!」

 

戦神が電撃を障壁で防御しつつ、手甲から伸ばした光の刃でエレキングを切り刻んでいく。

 

凄まじい痛みに甲高い悲鳴をあげ、見境なしに電流を放った。

 

「があっ……!?」

 

「ゼロさん!」

 

レッドキングと交戦していたゼロが流れ弾を喰らうかたちで直撃してしまい、体勢が崩れたところでさらに巨大な腕が追い打ちをかける。

 

吹き飛ばされたゼロに駆け寄り、コトハはおろおろと彼の背中に触れる。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

 

「ああ。……しかし奴の電撃は厄介だ。この乱戦じゃ先に始末しようにも邪魔が入る」

 

『誰かが注意を引いて、エレキングを確実に仕留めるのが一番の手だろう』

 

(ていっても……!)

 

話している途中でこちらに放たれた炎柱を咄嗟に回避する。アーストロンが吐き出したマグマ光線だ。

 

(数は向こうの方が多いわ。わたし達だけじゃ人手不足よ)

 

大量にいたボガールがいなくなった分まだマシだが、こうも特徴と能力が一致しない連中に一斉にかかってこられては苦戦を強いられるのも仕方がない。

 

レッドキングが大地に腕を突っ込み、引き抜く。

 

巨大な岩石を取り出した奴は、ヒカリ達に目掛けてそれを放り投げた。

 

『(————!?)』

 

ブレードで砕こうとしたところでステラとヒカリは遠くから発射されるミサイル攻撃を察知し、動きを止める。

 

遠方から放たれたソレは岩石を迎撃し、同時に四体の怪獣へビーム砲撃を放ったのだ。

 

「あれは……戦闘機か?」

 

(……!あいつ……)

 

城のある方向から飛び出してきた一機の戦闘機、その操縦席へと視線を移した。

 

 

 

『無事ですかコトハ様!』

 

「ダイモン!」

 

援護射撃を撃ちながら上空を飛翔する戦闘機。

 

注意がそちらに向いたのか、エレキングとアーストロンが一斉に戦闘機へと電撃、熱線を放射する。

 

『囮は俺が引き受けます!コトハ様はそいつらと一緒に奴らを!』

 

通信機を通して大音量で伝わってきた彼の声に、コトハは安堵の溜息をついた。

 

「あはは……本当に私は、助けられてばかりですね」

 

(誰にも助けられないで生きてる人なんかいないわ。……たとえ女王でもね)

 

「さあお喋りは終わりだぜお嬢さん方!」

 

ゼロの一声で怪獣達へと注意を引き戻すステラとコトハ。

 

「教えてやろうぜ……俺達を倒すのは——二万年早いってな!」

 

「そうですね!やってやりましょう!」

 

(……なんで二万年?)

 

勢いを取り戻した三人は再び走り出し、戦闘機に気を取られているエレキングとアーストロンへ肉薄する。

 

スラッガーを繋げ、ゼロツインソードを振りかざしたゼロの横からナイトビームブレードを伸ばしたヒカリが疾駆する。

 

二つの方向から繰り出された斬撃がエレキングの角を両断し、感覚を失ったことでよろけた隙をついてさらに攻撃を加えていく。

 

「◾︎◾︎◾︎◾︎————ッ!」

 

「やああっ!」

 

戦神の両腕から眩い光が放射され、真っ直ぐにエレキングの胴体を貫いた。

 

断末魔を上げて消滅したエレキングに気づいたのか、戦闘機に気を取られていた他三体の怪獣達が一気にこちらへ接近してきた。

 

発射してくる熱線を避けてレッドキングの腕をゼロが、ゴモラの尻尾を戦神が受け止める。

 

「デヤアアア!」

 

奥でマグマ光線を吐き出し続けるアーストロンの懐に突っ込んだヒカリは、咄嗟にナイトブレスにエネルギーを溜めて即座に解放。

 

「◾︎◾︎◾︎◾︎————ッッ!」

 

ゼロ距離で直撃したナイトシュートが黒い身体を焼き切られながら、ロケット噴射のように天高く昇っていく。

 

空中でアーストロンが爆発四散したのを確認し、ヒカリは背後に向き直った。

 

 

「決めるぞお姫様!」

 

「はい!」

 

ゼロスラッガーを胸元にあるプロテクターに取り付けたゼロが力を込めた後、

 

「ハアッ!」

 

カラータイマー部分から凄まじい閃光が煌めいた。

 

「はああああ……!やあっ!!」

 

同時に戦神の両腕からエレキングを仕留めた光線が放射され、ゼロツインシュートと共にゴモラ、レッドキングへと殺到する。

 

「この星は……私が……守るんだ!」

 

二体の怪獣に光線が衝突する直前にコトハはさらなる力を込める。

 

その光柱はゴモラとレッドキングの強靭な肉体を物ともせず、神々しさすら感じる破壊力を以てそれらを打倒した。

 

 

 

 

 

 

「はあっ……!はあっ……!」

 

大量のエネルギーを使用したことで疲労がやってきたのか、戦神は膝をついてしまう。

 

(やったわねコトハ)

 

「ステラ様……ヒカリ様……」

 

『周りを見てみたまえ』

 

ヒカリに言われるがまま周囲の声に耳を傾ける。

 

避難していた民たちの「ありがとう」という声が、コトハのもとに届いていた。

 

 

 

『この声援だけで……いくらでも戦える気分になるだろう?』

 

「……でも同時に、大きな責任も伴う……ってことですよね」

 

ヒカリとゼロをそれぞれ見上げ、戦いの女神は微笑する。

 

「やっぱり私に、戦いは向いていませんね」

 

 

◉◉◉

 

 

「近況報告、ねえ」

 

状況も落ち着いてきたので、アークボガールの後を追う前に地球へメッセージを送ることとなった。

 

ヒカリが現在記録している映像が空中に映し出される。

 

コトハの自室で蒼い球体と睨めっこするステラが意を決したように口を開いた。

 

「ええっと……映ってるのこれ?」

 

『ああ』

 

「……こほん。久しぶりね未来、メビウス。連絡が遅れてごめんなさい」

 

地球で任務を続けているメビウスとそのパートナーである少年に向けてのメッセージだ。

 

カノンに到着してから波乱続きで無事を報告する暇もなかったので、おかしなタイミングになってしまったが。

 

「ステラ様?何をしているのですか?」

 

「……!?」

 

音もなく背後に現れたコトハが横から割り込んできて、録画している画面に入ってしまった。

 

「ちょっ……!今取り込み中だから!」

 

「なんですかこれ⁉︎私、見たことも聞いたこともありません!不思議です!」

 

「あーもうっ!!とにかく!わたし達は無事だから!それだけ!あなた達も頑張りなさいよ!」

 

無理やり終わらせたステラはどっと疲れた様子でコトハと目を合わせた。

 

「すっかり元気になったようね」

 

「はい!おかげさまで!」

 

アークボガールを撃退してから三日が経っていた。

 

光の国からウルトラサインで次の目的地が送られてくるまで城に滞在させてもらっているのだ。

 

「ダイモンも安静にしていれば命に別状はありません」

 

「あいつもだいぶ無茶してたしね……」

 

一瞬の沈黙の後、コトハは何やら眉を下げて聞いてきた。

 

「……行ってしまうのですね」

 

「ええ。元々わたし達はアークボガールを倒すために来たんだもの」

 

奴が去ってからこの星でボガール騒ぎが起きることはなくなった。おそらくは拠点を完全に別の惑星へ移したのだろう。

 

 

 

「入るぜお二人さん」

 

ノックもなしに唐突に部屋へ入ってきたゼロが軽く手を振りながら歩いてくる。

 

『警備隊からの指令か?』

 

「ああ、ついさっきな。すぐに向かえだとよ……まったく人遣いが悪いぜ」

 

「充分休めたし、このまま行っちゃいましょうか」

 

右腕にナイトブレスを出現させたステラがナイトブレードを取り出す。

 

「待ってください!」

 

変身しようとした直前、コトハは名残惜しそうに手を伸ばした後、自分の胸元へ引っ込めた。

 

 

「……また会えるでしょうか?」

 

「さてね、今のところ予定はないわ。……それに、もうこの星はあなた達だけでもやっていけるでしょ」

 

微妙な表情の変化だが、その時ステラは確かに笑っていた。

 

ぐっと息を呑んだコトハは、それに応えるように笑顔を浮かべる。

 

「……ありがとうございました!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

小さく頷いた後、眩い閃光が部屋を満たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さあ行きましょうゼロ、ヒカリ。任務はまだ終わってないわ)

 

「もちろんだぜ……!」

 

『ああ、今度こそこの因縁にケリをつけよう』

 

二人の巨人がカノンの空を駆け抜ける。

 

女王はその姿を、いつまでも眺めていた。




今回はいきなり解説から!

登場した怪獣は全てジードに登場したものとなっております。
ちなみにアークボガールにこれらの戦力を提供したのは一章で色々と暗躍していた黒いアイツです。
スペックもオリジナルよりは低めなので、案外あっさりと倒されてしまいましたね。

次回からは新しい舞台……!なのですが、作者のリアルでの都合により更新が遅れると思います。
読者様には深いお詫びをm(_ _)m

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