まだ内容は予想できない感じですが、放送されるのが楽しみで仕方ありません!
「ワイドゼロショットォ!!」
L字に組まれたゼロの腕から幾筋もの光が熱線となってボガール群のど真ん中へ直撃し、爆発。
かれこれ一時間は同じ戦況が続いている。
ボガール達はひたすら城を目指し、ゼロは背後にあるそれを防衛。
しかし全方位から取り囲んでいる奴らを完全に阻むのは不可能だ。
今はまだギリギリを保ってはいるが、ゼロ自身の体力が底をつくのも時間の問題だった。
「ちくしょう……!何体いやがるんだ……!」
五十体以上いたボガールも少しは減少した……と思いきや、見る限りだとそう数は変わっていない様子だ。
「……!?しまった……!」
ふと足元に視線を落とすと、親衛隊と思われる兵士たちが何人も地面に転がっている。
そして城の入り口には彼らを殺害したであろう小型のボガール————レッサーボガールの姿が確認できた。
(でかい奴に俺を足止めさせて、小さい方が伏兵として城に潜入……ってわけか……!)
何度もこちらの予想を上回っていくボガール達の連携に息を呑みつつ、ゼロは頭部のスラッガーを取り外して合体。
ゼロツインソードを目の前のボガール達へと構えた。
(もうこいつらは怪獣の思考能力を超えている……。これで宇宙人じゃねえってのがまた……)
末恐ろしい。
いや、通常のものやレッサーも充分に脅威なのだが、やはり最も注意すべきなのはアークボガールだ。
一度はその暴食さゆえに四天王の座を逐われ、現在は再びエンペラ星人の配下についたといわれているボガールの王。
「……気をつけろよヒカリ、ステラ。こいつら……俺達を殺す準備は整っているみたいだからな」
◉◉◉
背後で泣き叫ぶ少女の声が胸に刺さる。
ノイド星がボガール達の襲撃にあった時、何もできなかった自分の姿を連想させるコトハの嘆き。
————今度は誰の番だ?次は何を奪われる?
(させるものか……!)
絶え間なく振り下ろされる鉤爪をナイトブレードでいなし、反撃。
再び回避、斬撃。アークボガールとの戦闘が始まってからこれの繰り返しだ。
奴を巨大化させるわけにはいかない。この状況のなかで怪獣としての力を発揮されれば、こちらの勝機は完全に失われる。
ステラはなんとか奴をこの場に押し留め————いや、倒そうと思考を巡らせた。
「こんなものか」
「……!?」
ブレードの切っ先をアークボガールの腹部に突きたてようと迫った瞬間、奴の姿が目の前から消えた。
(うし……ろ————ッ!)
咄嗟に身体を捻って方向転換し、背後に回ったであろう奴に斬撃を浴びせ——
「あぐっ……!」
巨大な柱で殴られたかのような横薙ぎがステラを捉え、反応しきれずに直撃を受けてしまう。
石で組まれた壁に激突し、ステラは声にならない叫びを上げた。
『大丈夫か!?』
「平気よ、このくらい……!」
横腹を片手で押さえながら立ち上がり、紫がかった肌の怪物を睨みつける。
「貴様の眼からは覇気が感じられない。しばらく見ないうちに随分とかわいらしくなったじゃないか」
「黙りなさい……!」
「その心から以前のような殺意を取り戻さない限り……我には勝てんぞ?」
この緊迫した空気のなか軽口をたたく余裕を見せるアークボガール。
『……ステラ』
「心配しないで。わたしはもう、同じ過ちは繰り返さない」
地球で
手段を選ばなければ犠牲が増えるだけ。ここで冷静さを欠いてしまってはいけない。
「わたしは今宇宙警備隊、ウルトラマンヒカリの一部としてここにいるんだから」
「……ほう」
痛覚を無視しろ。ここで奴を殺すことが最重要事項だ。
敏捷さはこちらのほうが上だ。翻弄しつつ、奴の隙を——
「……ヒカリ」
『ああ』
頭の中で作戦を伝え、改めてアークボガールと対峙する。
「はああああッッ!」
奴の懐へ肉薄したステラは
急に攻撃方法を変えた彼女に驚きつつ、アークボガールはそれすらも即座に対応してみせる。
「先よりもスピードが落ちているぞ?」
「……!」
身軽に体勢を変えてはトリッキーに打撃を放ってくるステラを軽くあしらい、一瞬よろけたところを狙って鋭い爪が振り下ろされる。
「——っ」
自らの身体が引き裂かれようとする直前、ステラはかすかに笑った。
「貴様は……っ!?」
「デアッ!」
先ほどまではいなかった男性がナイトブレードを振り下ろし、アークボガールの肩に一太刀浴びせる。
「ぐうっ……!?」
男はステラの隣に並び、やがて身体を群青の光球へと変化させると、ステラの胸の中へ消えていった。
「一時的な分離……か……!」
「ここで消えろ……!」
再びナイトブレードを構えたステラが怪物へ接近する。
青い風が一瞬で眼前まで迫り、黄金色の刃が首筋に充てられ————
「……なっ……!?」
その攻撃は空振りに終わった。
地面に展開された異次元空間に身体の半分を埋め、その間に生まれた身長差で回避されたのだ。
「終わりだ」
鈍い音と感覚が聞こえる。
真下から突き出された鉤爪に反応しきれず、数秒後にそれはステラの腹部を貫いた。
「ぁ……!ごぼ……っ……!」
吐血し、苦痛に顔を歪ませるステラをまじまじと眺めた後、腕を振り払って彼女を弾き飛ばすアークボガール。
「ステラ様……!ヒカリ様……!」
「————……!う……っ……!」
「これで邪魔者はただ一人、あの光の戦士だけだ」
アークボガールは窓から見えるゼロに視線を移し、不気味な笑みを浮かべた。
「ハァァァアアアアア…………!!」
奴は全身を禍々しい光で覆い、その場からミサイルのように壁を突き抜けて外へ飛び出した。
「ステラ様……ステラ様……!!ステラさま!!」
ダイモンを壁に寄りかからせて休ませた後、血相をさらに青くさせたコトハが駆けつけてくる。
「はぁ……っ……はぁ…………ぅ……!」
「どうしよう、どうしようこんな……!」
頭の中が完全に漂白されたコトハは、ただ倒れ伏す彼女の手を握ることしかできなかった。
『くそっ……!このままでは……!』
ヒカリは持てる全ての力を治癒に回すが、それでもステラの体力が保つかはわからない。
「……ありがとうヒカリ。大丈夫、わたしはまだ戦えるから……!」
「やめてください!本当に死んでしまいます!」
無理やり身体に力を込めて立ち上がろうとするステラを慌てて制止するコトハ。
「もう……!もういやですこんなの!もうお母様もいない……!私のせいで、こんな……!こんなことになるなら……!大人しく食べられたほうがいいです!」
ボガール達の狙いは自分だと。
コトハは自分さえ犠牲になれば他の民は襲われないと思ったのだろう。
しかしそれは大きな間違いだ。奴らの暴虐はおそらくこの星の生命全てを食い尽くすまで止まらないだろう。
「……それ、本気で言ってるなら怒るわよ」
「へ……?」
「あなたがこうして弱音を吐いてるうちもね……他の兵士達は命をかけてあなたを守ろうとしているのよ」
頭部から流れてきた血をそのままにし、ステラはコトハの両肩に手をかけた。
「あなたがダイモンや彼らの働きを無下にするというのなら、それは救いようのないバカがすることよ」
「……っ……!」
「あなたはわたしの時とは違う……あなたには……!」
「ステラ様……?」
「あなたには力があるでしょう!それを使わないでどうするの!!」
——集団でかかれ!
——一体ずつならば我々の敵ではない!
——コトハ様は無事か!?
——民の避難を急げ!
ステラの言葉を聞いた瞬間、今まで気づいていなかった周りの声がはっきりと聞こえた気がした。
「どうせ死ぬのなら、せめて最後くらいは戦ったらどうかしら」
腹部の傷口を押さえつつ、右腕を前にかざしてナイトブレスを出現させるステラ。
「私の……力……」
目の前で変身したステラが蒼い光に包まれて外へ移動するのを見届けると、コトハは胸に手を当ててぐっと息を呑んだ。
◉◉◉
「がはっ……!」
「ふん……歯応えのない」
大量のボガールを相手にし、満身創痍となったゼロを容赦なく蹂躙するアークボガール。
胸にあるカラータイマーが点滅を始め、鈍る感覚のなかで勇ましく両手を構える。
「テメェがこいつらのボスか……ヘヘっ……!わざわざ出てくるとはな、探す手間が省けたぜ」
「そうか」
「うおっ……!?」
発射された光弾を回避しつつ、待ち構えていたボガール達をゼロスラッガーで一掃。
「くっそ……!」
倒しても後からやってくるボガール達に行く手を阻まれ、アークボガールのいる場所まで到達できない。
「喰らえ」
「なに……っ!?」
ゼロの周囲に大量のボガールがいるにもかかわらず巨大なエネルギー弾を放とうとした奴に驚愕する。
「仲間ごと撃つ気か!?」
「仲間……?そいつらはただの駒だ」
凄まじい熱量がアークボガールの鉤爪に集中している。
「さらばだ————」
その腕が振り下ろされる直前に黄金の斬撃が奴の胴体に直撃し、体勢が崩れるのと同時に集めていたエネルギーが拡散する。
「デヤァァァァッ!」
「……!ヒカリ!ステラ!」
「死に損ないが……!」
ナイトビームブレードを伸ばして切りかかったヒカリのカラータイマーは既に赤く点滅していた。
振り下ろされた刃を腕で防ぎ、一旦距離をとるアークボガール。
「おい、大丈夫なのか……!?」
(戦いに集中して!)
『無理はするなよステラ……!』
どのみちこのままでは負ける。
腹に穴が空いていても、まだ動けるならやるしかない。
(倒す……!今度こそこいつを……!)
前に重なって立つボガールの群れを一瞥し、ヒカリは右腕のブレードで軽く
(邪魔を……!するなあああアアアアアアッッ!!)
ボロボロの身体で突き進もうとするヒカリの後ろから少し遅れてゼロが走り出す。
「うおおおおおっ!」
ゼロスラッガーを念力で操り周囲のボガールを次々に撃破し、アークボガールまでの活路を開いた。
『(————ッ!)』
右腕を天高く掲げ、ナイトブレスにエネルギーを凝縮。
ヒカリとゼロは同時に腕を十字に組み、それぞれの光線を放射した。
「「シュアッ!」」
まっすぐ前方へ伸びた二つの光は途中で重なり、一つになる。
「チィ……!」
アークボガールの前に残っていたボガール達全員が集結し、奴の盾となって防御した。
「「ハアアアアアア……!」」
爆発し、徐々のその数を減らしていくボガール達の後ろで、アークボガールは異次元空間に通じるゲートを開いた。
「ぐあっ……!」
合体光線は咄嗟に避けたアークボガールの腕を掠め、後方にいたボガール達までもを消滅させる。
「ハア……ハア……!ウッ……!」
「ちょ、おい……!?」
膝から崩れ落ちたヒカリを介抱するゼロ。
アークボガールは二人を忌々しげに睨んだ後、再び片腕を上げてエネルギーを集めだした。
「ここまでのようだな。貴様らはどう足掻いても我に食われる運命、ということだ」
「くっ……!」
————お待ちなさい!
突如頭の中で響いた声に反応し、三人は同時に城の方向を振り向く。
(この声は……)
直後、城とその周辺が眩い光を放ち始め、凄まじい力が溢れ出てくるのがわかった。
————ボガール。あなた達に最後の警告を出します。
「ほう?」
————直ちにこの惑星から立ち去りなさい。さもなくば戦神の名の下、あなた達を殲滅します。
「我はその手の交渉が苦手なのでね……!」
アークボガールは身体の向きを変え、集めていたエネルギーを城に向かって解放した。
刹那、見えない障壁に弾かれるように光弾が消滅する。
「……なに……!?」
————よくわかりました。それならば私も覚悟を決めましょう。
神々しいオーラが膨れ上がる。
今まで眠っていた力が、目覚めるような気配。
————私の名はコトハ!この惑星、カノンの……
アークボガールは異次元空間も使用できるので厄介ですよね。
カノン編は次回でラストになるかな?
今回の解説は気になった人も多いであろうμ'sのそっくりキャラについて。
カノン編に登場したコトハから始まり、次の舞台でもとある三人を基にしたキャラが出てくる予定ですが……もちろん地球のμ'sメンバーとは一切関わりがありません。似てるだけです。
当初は完全オリジナルのキャラクターを出そうかと思っていましたが、ただでさえラブライブ要素のない外伝にさらに自キャラを投下するのは流石にやばいと思ったので、「μ'sのそっくりさん」として出てもらいました。
次回は満を辞して登場した戦神の戦闘……⁉︎